フィーバー: 発熱 (ハヤカワ文庫 NV ク 2-9)

  • 早川書房
3.25
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  • Amazon.co.jp ・本 (479ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150406325

作品紹介・あらすじ

癌の免疫療法を研究する医師チャールズは、愛娘ミシェルが血液の癌-急性白血病に冒されていると宣告された。絶望のあまり彼は半狂乱になるが、自宅近くの池の異臭に気づき、恐るべき事実を発見した。川の上流にある工場がたれ流した有毒物質が、ミシェルの体を蝕んだのだ。チャールズは工場を閉鎖させようと孤独な闘いを挑む一方で、自らの手で娘の生命を救うために最後の手段にでるが…。社会派医学サスペンス。

感想・レビュー・書評

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  • 医療系ミステリ小説の騎手ロビン・クック。『発熱』ときたら、もう今読むしか無いだろうと読みかけたら、感染症の話じゃない。

    企業のがんセンター研究所に勤めるチャールズは、論文を書けていない、研究費を獲得していないという理由で、がん免疫の研究を取り上げられ、不祥事を起こした別の研究者の研究を押し付けられる。そんな折、12歳の娘の体調不良から、悪性の骨髄性白血病が発覚する。家に流れ込む悪臭を放つ工場排水。白血病の原因であることを確信し、工場に乗り込むが…。

    論文が書けていないことを理由に、やっていた研究を取り上げられ、関係ないことをさせられ、それもうまくいかなければ「協調性がない」と首を切られる…。多分一般の人にはどうでもいいかもしれないけど、我々にはものすごく現実味の有る恐怖が身にしみる。また、白血病の原因を確信するのはあっという間で、ちょっと不完全な感じはあるものの、日本の小説だともっと湿っぽくなるところを、さすがはアメリカン、マッチョで戦い抜いて最後は…となるのである。

    書かれたのが1982年と古いため、急性の骨髄性白血病が不治の病として描かれていることに、多少の違和感を感じるかもしれない。ただ、当時はまだほとんど何もなされていなかった、活性化リンパ球療法をためそう、しかも…というストーリーは、研究者としても、よく調べてチャレンジングに描いたなという印象。まあ、作者は医者だけど。

    一番印象に残るのが「(一例だから)この治療法が効いたのか、その前の化学療法が効いたのかは、わからない」というところ。医療、特にがん治療の擁するジレンマというものを、短い中に凝縮している。こういうことがきちんと書ける作家は少ない。

    エンターテインメントとして、結構面白く読める作品であった。感染は『アウトブレイク』か。同名の映画のやつね。あったら買いたい。少し前に読んだ某作品と比較するためにも。

  • 去年読んでいたことを忘れて再読してしまった・・・

    感情の起伏が激しい主人公チャールズは怒りやすく、簡単には感情移入できません。病気の原因となったと思われる工場の排水、医療研究機関と企業の関係、継母と子供の複雑な関係、職を失いそうになっている研究者とそのモラルなど、悪化する容態という時間的制約の中で様々なやきもきする要素を盛り込んでこれでもかとばかり、読者を悶々とさせていきます。さすがメディカル・サスペンスの巨匠ロビン・クック!

    病気になってしまったら、周りの者はほぼ何もできずにいるだけ。死にいたる病の場合は、本当に死んでいくのをただ見守ることしかできない。
    これ程のホラーはあるだろうか。

    そして仰天の解決方法!う~ん、こんな一発勝負ありなのか!?何度読んでも読んでいるこっちが気が狂いそうだ。

    2014/4/6感想

    ロビン・クック祭り第3弾。かなりエキセントリックな科学者チャーリーは前妻をリンパ腫で亡くし、いままた末の子供が急性白血病となった!

    危ないところへは行かなければいいけれど、病気は万人が逃れようがない状況に追いこまれやすいだけに真のホラー。

    クックは自身が医者だけに話の運びが論理的なのですが、意図的に主人公ですら突き放したというか、距離をおいた描写で、精神的に切れていってしまう姿が不気味に描かれていきます。後半の奇妙な展開は巨匠キングの別名リチャード・バックマンの作風を思い浮かべます。

    花粉症で眠れなくなった夜に朦朧として読むメディカル・スリラーのまた凄い事。入院中に読んだら悶絶ものなんだろうな・・・

  • 続・久しぶりのクック

     3月ぶりのクックだ。

     今回は妻を癌で失った医者が主人公。長男、次男、長女と再婚の妻との幸福な生活が、長女の白血病発症で一気に崩壊へ。幼い女の子の白血病は痛いテーマだ。

     非現実的だが、化学療法が効かない娘を自宅へ連れ戻し、自らを実験台にして白血病治癒を試みる主人公を描くラストはスリリング。

     洋の東西を問わず病気に関してふつうの人々が感じることが本書に述べられている。
    病気になった時、一番悪いのは様子がわからないことです。何か知っていれば、その範囲で人はそれに対処できる。何もわからずあがくから、それでみんなが頭へくるようになるのです

     おっしゃるとおり。さて、結局どうなるのかって点はラストのとてもいいセンテンスの引用(主人公の妻の発言)が適当だろう。
    家はないし、お金もほんの少しだし、それに、おなかをすかした三人のこどもがいるし

     過去のクック作品のなかで最高のエンディングだと思う。最高のハッピーエンドだと思う。いい作品だ。

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