孤独の海 (ハヤカワ文庫NV)

  • 早川書房 (1992年12月18日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (320ページ) / ISBN・EAN: 9784150406806

感想・レビュー・書評

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  • かつての巨匠も旬を過ぎ、過去の人。至高の冒険小説群は1960年代まで、1985年に出版されたとなれば、なおさらのこと。まして、マクリーンであれば、短編小説集なんてありえないはず。買うには買ったが、長く積読状態とした。これが大きな誤り、ナントモ愚かであったことよ。

    大半を占めるのは、2次対戦期の戦記物、後の数編はフィクションとなる。

    戦記物は、いずれも大戦下の海が舞台。英独の別なく沈められた船の悲劇が綴られていて、短編ながらも、これらのどれもが好いんですね。

    男女を問わず登場する人物たちは、ノンフィクションである分、小説の主人公以上にリアルなものとして伝わってくる。

    沈没する船上にあり、艱難辛苦の狭間で、イギリス本土にとっての生命線となる輸送船団を、運悪く乗り合わせた女子供を、命を賭して守り抜こうと奮闘する男たちの姿には、通勤の途上の車中にあっても思わずウルウルとなってしまう。特に、多くの児童の死が綴られる一編は悲惨の一言に尽き、自然と涙を誘われる。

    小振りながらも、ユリシーズ号の乗組員と志を同じくする男達の物語を堪能できる好短編集でありまする。

    既に絶版となっているのは残念。
    (2005年記)

  •  冒険小説の巨匠マクリーンの、唯一の短編集。最後に出版された本だが、中身は逆に初期のものがほとんどで、長編第1作より前の、雑誌に投稿し入選して作家になるきっかけとなった短編も含まれている。

     戦争を背景にしたドキュメントタッチの作品は、戦いの中で船が沈む様子を描き出したものが多い。肌に粟が立つような迫力があるし、また読んでいて人間というのはこんなに簡単に死んでしまうものかと怒りさえ感じる。そしてその中に、ぎりぎりのところでの勇気や意地が発揮される一こまがあり、それが読んでいて心に食い込んでくる。傑作「女王陛下のユリシーズ号」と相通じる点がたくさんあって、実に読み応えがある。短編ということで、ぽいと投げ出すように物語が終わってしまうのも、余韻が感じられてとてもいい感じだ。

     一方でちょっとおしゃれだったりユーモラスだったりする短編もあり、そちらは中期のマクリーン作品の茶目っ気を感じさせる。長編だとどうしても重さを期待してしまうけれど、逆に短編だと、さらっと読める分いいかもしれない。特に、スパイの男女を取り上げた作品は、結末もなかなか気持ちがよくておもしろかった。

     全体としてはいい感じの短編集であった。フランシスもそうだけど、力の入った長編が書ける作家は、時々すてきな短編を書く。フルコースの中にさっとソルベが挟み込まれるようで、実においしく食べられるものだ。これが最後の本になってしまったのは本当に残念だけど。

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