ロセンデール家の嵐 (ハヤカワ文庫 NV コ 8-2)

  • 早川書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (517ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150407520

作品紹介・あらすじ

ひさしぶりに帰郷した伯爵ジョン・ロセンデールは、ヴァンゴッホ初期の《ひまわり》を探そうとしていた。四年前、この名画は母が売却する直前に盗まれてしまった。その犯人であると疑われたジョンは、海を放浪する旅へと逃げだしたのだ。だが母亡きあと、障害をもつ下の妹の面倒をみるために、行方不明の絵を見つけださねばならない。そう決心したジョンは何者かに命を狙われる羽目に。日本冒険小説協会大賞受賞の傑作。

感想・レビュー・書評

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  • 冒険小説。面白かった。

  • 伝統の英国冒険小説の底力に平伏すコーンウェル1994年発表作で、没落した貴族の末裔である主人公の挫折と再生をドラマチックに謳い上げた傑作。

    俗世間との関わりを厭忌し、洋上の漂泊者となっていたジョン・ロセンデールが4年振りに帰郷する。久しぶりの再会であるにも関わらず、母親は不信の眼差しで息子を罵倒、病に冒されたまま間もなく死ぬ。ジョンが憎しみの蔓延する家を捨て、海原へと逃走した理由とは、落ちぶれた旧家を救うはずだった母方の遺産が盗まれ、現場の状況から容疑者として一度は疑われたからだった。冷え切った関係となっていたジョンの双子で妹のエリザベスは不穏な動きを見せ、異常なまでに敵対視してきた。さらに富豪の美術品蒐集家の代理人や暴力を厭わない別の一派が、失われた宝を手にしようと謀を巡らせて接近してくる。ジョンは、障害者として冷遇されていた下の妹ジョージーナの身を案じ、ロセンデール家の嵐のただ中へと舞い戻る。探し求めるものとは、400万ポンドの価値を持つゴッホ初期の絵画「ひまわり」。その足となるのは美しい帆船「サンフラワー号」だった。

    失われた絵画を巡る骨肉の争い、洋上での自然の猛威との闘い、狡猾な敵対者との対決、そして刹那的で甘美な恋愛などを通して、一人の男が再び自信と誇りを取り戻すまでを丹念に描いている。特に中盤に於いて、己の不甲斐なさ故に愛する女と船を傷付けられた男が、絶望の中で静かに復讐の炎を燃やしていく過程がひたすらに熱く、物語はクライマックスへ向けて一気に疾走する。主人公の心の揺らぎ、物語の起伏に応じて、大海の波浪が時に激しく時に穏やかに呼応する情景描写も熟練した作家ならではの筆致だ。

  • 前回「殺意の海へ」に続く著者現代もの第二作にあたる。原題「Sea Lord」、名の通り主人公ニックは落ちぶれた伯爵家の当主となる。その彼が何故英国を去り海のジプシ-の暮らしをしているのか。母親の危篤の知らせにアンテイグアのイングリッシュ・ハ-バ-から帆走して帰国している場面から始まる息づまるような事件の流れ。謎がなぞを呼ぶこれぞミステリ-。そして海洋冒険小説、ラブロマンス。色々な読み方もある。自らヨットマンの著者が放つ特上の英国冒険小説スピリット。

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