★3つ4分の3
トリコロール三部作などで日本でも人気の高いポーランドの巨匠、クシシュトフ キェシロフスキ監督の同名映画のノベライズ。
88年から89年製作で、日本での公開は1996年1月。観に行く気満々でノベライズ本も購入したわけだが(ノベライズ本の初版も1996年1月)結局観に行かなかった。何回も劇場に足を運ばなければならないのが面倒くさかったのだと思う。
本のほうも、第一話の『ある運命に関する物語』を読んで以降16年間(!?)も積読。どんだけ積読なの自分。監督は96年3月にすでに亡くなってるし。
10の物語からなる本書は、旧約聖書の十戒をモチーフに、ワルシャワ郊外の団地(高島平団地みたいなイメージらしい>訳者あとがきより)に住む10人のありふれた日常が、大なり小なり“変化”する様を、それぞれの独立した物語中に、少しだけ他の物語の登場人物をリンクさせたりして展開するショート・ストーリー集。
そこいらの凡作より濃厚な物語が楽しめる。
ノベライズ本はあまり読んだことがないのだが、監督自身と脚本家の共同執筆からなる本書は、さすがに読み応えがあった。
ただ、一つだけ気になったのが、どの物語の登場人物も何となく、映像ありきなのが判ってしまうキャラになっている点。
映画のノベライズなのだからあたり前なのだが、映画を観ないで単純に本として読んだ場合、それが結構後を引く。
ポーランドでは公開当時、評論家に「第五話(ある殺人に関する物語)の青年をのぞいて、すべての登場人物が余りにも空々しく、作り物めいて見え〜」と叩かれたらしいが、その辺のことと関係があるのかも。
(第五話『ある殺人に関する物語』の主人公(殺人犯)が作り物めいていないというのもどうなんだ?)
デカローグとしての映画は観に行かなかったが、「殺人に関する短いフィルム」「愛に関する短いフィルム」は、同じ作品とは知らずに鑑賞済み。個人的に後味の悪い二つだけを観ているって一体……機会があれば全編通しで観てみたいところではある。
話としては、「第2話 ある選択に関する物語」「第4話 ある父と娘に関する物語」「第8話 ある過去に関する物語」が特に好き。