シブミ 下 (ハヤカワ文庫NV)

  • 早川書房 (2011年3月10日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (368ページ) / ISBN・EAN: 9784150412357

みんなの感想まとめ

物語は、米ソ冷戦時代の情報機関のやり取りを背景に、主人公ニコライ・ヘルの内面的な成長と文化の衝突を描いています。ヘルは西欧文化の影響を受けた日本に見切りをつけ、バスク地方で隠居生活を送っているところに...

感想・レビュー・書評

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  • 1979年の小説ですので、米ソ冷戦時代の情報機関のやり取りで、当時の雰囲気も感じることができます。何より、主人公のニコライ・ヘルのたたずまいが、日本人の美徳に沿ったもので、違和感なく物語が展開するのが楽しかったのです。
    別の作家が、本作品の前日弾を物語にした『サトリ』と言う作品があり、そちらも読むつもりです。

  • 少年から青年に成長する多感な頃に、シブミの何たるかを肌身に感じ、それを是として生きることに決めたニコライ・ヘルの成長の物語。

    CIA、謎の組織とミュンヘンオリンピックの「黒の9月事件」との関連など、スケール大きく描かれるが、テーマはアメリカの実利主義に対する強烈な批判だ。

    トレヴェニアンは、その時代のアメリカ実利主義を石油ビジネスを軸に描き、人間としての本当の価値観はシブミであることと対比させ、本当の真実とは何であるか、を描き出そうとする。
    だからと言って日本礼賛一辺倒の物語ではない。ヘルが生涯の地として選んだのはバスクであり、日本ではなかった。理由はアメリカナイズされた日本に古き良きシブミの精神がもう残っていなかったからである。

  • シブミを体得したヘルは、西欧文化に毒されてしまった日本に見切りをつけ、バスク地方に隠居中(なんでバスク?)。
    その中にミュンヘン・ファイブの生き残りのハンナが厄介事を持ち込み、ヘルは引っ張り出されてしまう。

    テロリストとの戦いを描いてはいますが、単にそれだけだったら古びてしまったことでしょう。
    背景に文化の衝突を描いているところが物語の厚みを増しています。もうこれは冒険小説の体裁の日本文化論ですね。
    碁を打ちたくなってくるなぁ。

    アイガー・サンクションも探して読んでみよう。

    戦後東京拘置所から開放されるところから始まる前日譚を、ドン・ウィンズロウが続編として書いているのも興味深いです。
    ウィンズロウで大丈夫なのだろうか?恐る恐る続編へ・・・

    • たまもひさん
      ウィンズロウの「サトリ」すごーく面白かったですよ!わたしとしては「シブミ」より好みだなあと思いました。ウィンズロウらしいドキドキ感があります...
      ウィンズロウの「サトリ」すごーく面白かったですよ!わたしとしては「シブミ」より好みだなあと思いました。ウィンズロウらしいドキドキ感があります。
      「シブミ」も読み直さなければ。
      2015/02/16
  • 後半になっても、ニコライの精神性を表すケイビング描写などが長く退屈。
    読み応えある文章は魅力的だし、陰影のあるキャラはそれなりに魅力的なので、もう少しストーリーが走れば面白くなったのでは?

  • (上下巻共通。)
    日本を舞台にした第二次世界大戦秘話と洞窟探検と暗殺者の三題噺。
    どのパートも楽しく読めました。
    解説とかを見ると、間違った日本観を楽しむ本なのかと考えてしまいますが、日本文化についてもかなり正しく描かれています。
    叙情的なところも好印象。

  • 暗殺者ヘルの活躍を期待していたが、すでに引退していた。恩義のある友人の娘の依頼により表舞台に引っ張り出される。組織の力を使って追い込みをかけてくるダイアモンド。一番の友人も殺され、愛人の生死も不明、さすがのヘルもこれで終わりなのか!!と最後まで楽しめました。復讐は思ったよりあっさり目だったな~

  • キャラクターがいいなぁ。
    けどいいキャラクターが死んでまったりして残念。
    ハナとニコライが今後どうなるのか、あとハナの傷はどうなったのか、その辺も気になるなぁ。

  • ニコライ・ヘルが何故、ニコライ・ヘルなのか、それを完全に書いてる。多分、現代が舞台の小説の暗殺者の中で最強はこの人やろう。会えるなら会うてみたい、彼の中の日本人と。

  • これはやはりトレヴァニアンならではの重層的な小説。
    ハードボイルドでもないし、まして冒険小説でもない。
    サトリから読んでしまったのは大失敗。ウィンズロウも勿論シブミを読んでいる前提でサトリを書いたんだと思う。
    しかし両作品のベクトルは全く違うものでした。

    シブミが 高度に含蓄のある演劇だとすると
    サトリは 失礼だが、平均的米国大衆が求めるB級スパイ映画。
    かな、、、サトリもそれなりに面白かったので悪口書きたくないですが。

    いずれにせよ シブミは 随所に彼独特の(主に米国流に対する)冷笑的な警句にあふれているし、いくつかの異なる色相をもった断片(主人公の日本における青春的パートとか)から構成されていて、非常にオリジナルな印象をもった作品でした。

  • 『サトリ』を先に読んでいたので比較になってしまうけど、ストーリーの重厚さ、人物設定等『シブミ』に軍配。
    こっち先に読んでたらウィンズロウは薄い上に軽かったやろな~

  • ミュンヘンオリンピック選手村でのテロへの報復を狙うユダヤ人組織とCIAやマザーカンパニーとの抗争に否応なく巻き込まれるニコライ・ヘル。冷徹にして巨大な組織を相手に立ち向かう姿を描いた一大冒険叙事詩。作者は没してしまったが、その前に本人による続編も読みたかった。

  • 日本人論、アメリカ人論にそこそこのページを割いているが、本作は冒険小説に属する作品。引退した殺し屋ニコライ・ヘルとマザーカンパニーの対決を中心に置き、洞窟探検、詩人ル・カゴとの交友、バスクの風景、伝説的情報屋との再会、恩人の姪の保護、情婦との交流が濃密に描かれる。物語としても面白く、主人公のヘルもかっこいいし、翻訳も自然であるが、好きな味の小説ではない。外国人著者が日本人以上に「シブミ」を表現できることに多少の違和感があるのかもしれない。また、ヘルのユーモアも若干趣味に合わない。さらに、著者の博識も嫌味に思えた。したがい、★は3つとしたが、下巻も一気読みした。ヘルの若き日を描いた「サトリ」もいつか読むのだと思う。

  • ノスタルジックかつリリカルな上巻から一転、ケイビング(洞窟探検)場面での幕開け。当然これはクライマックスへ向けての伏線となっている訳だが、幾ら何でも80頁は長すぎる。全体の4分の3くらい過ぎて、やっと話が動き出すが、最強の暗殺者と言いながら、攻めは強いが守りは弱い。西洋版金田一耕助といったところか。世界を裏から牛耳る黒幕とは談合し、実行部隊に対してのみ復讐するなど、今一つ感情移入し切れなかった。但、上下巻平均すれば水準以上の出来栄えと言える。上巻が気に入ったら『夢果つる街』を是非 読んでほしい。哀感絶品。


    『見知らぬ国は狼の国』『しかし、鳥はそれぞれ美しい巣を持っている』

  • 洞窟探検というあまり馴染みのないスポーツがニコライの趣味のひとつとして、しばしば出てくる。
    それらは大きな意味を持っていた、と最後にわかるのだけれど、馴染みがないだけにすごく綿密な描写にもかかわらず、想像しきれないと言うのが残念だった。

    シブミを読んで初めて、サトリは本当にうまく、要所要所をとりあげて、続編に仕立ててあるなと思う反面、深みがないな、上っ面だけだな、と改めて思った。それほどトレヴェニアンはすべての(たぶん)事柄を掘り下げて、調べて丁寧に描いている。
    桜の木の下での岸川と、ニコライのやりとりなど、日本人以上の心情が描かれているのではないだろうか。

    最後に興味深かったこと。
    サトリでもニコライの拳法というか技が今ひとつ腑に落ちなかったが、トレヴェニアンはわざわざ文中で断りを入れている。
    以前の作品の中で、登攀の技術や、絵画の窃盗について記したところ、実際に同じ手口で事件が起こってしまった。そのため今回、ニコライの技については詳しくは書かないと。きっとその方面でも詳しく研究したうえでの事だと思う。

    もう一度。あ~読んで良かった。

  • 下巻はストーリーが一気に進むが、対決に関しては、ややアッサリしてる。ケイヴィングの描写が強く、冒険小説だと改めて実感。

  • これだけいろいろなスタイルが入った小説はなかなかない。

    秘密組織の作戦会議、ニコライ・ヘルという単一人物の”なり”を創り上げる長い回想譚、巨大洞穴という自然と相対する冒険物語(映像がないとちょっとイメージしずらい)、そして主軸であるテロリストとの報復合戦。
    まさにテーブルゲームの展開のように、序盤から中盤、終盤から勝負ありまで物語の様相が変わっていくのが非常におもしろい。

    中盤過ぎからル・カゴという魅力的な人物も加わり、言いえて妙なフレーズも数多出てくる。
    最後の締めはそこだけの展開を見ると雑な感じはするが、たぶんこの物語としては重要な局面ではないので、変に膨らますよりよっぽどさっぱりしていた。

    ウィンズロウはこの世界を再現できているのだろうか?

  • ドン・ウィンズロウの新作「サトリ」がこの作品のアンソロジーと聞き、予習のために購入。スパイ小説特有の「絶対死なない主人公」像はご都合主義だなあと思いつつ、バスク地方や戦後日本の光景が目に浮かぶような描写にワクワク。一気読み可能。

  • 表紙すてき

    • しろコシオさん
      はじめまして、昨日『シブミ』を読了し、こちらのレビューに辿り着きました。
      この作品に対する着眼、造詣、語られる文化の対比、さらに「ゴルゴ13...
      はじめまして、昨日『シブミ』を読了し、こちらのレビューに辿り着きました。
      この作品に対する着眼、造詣、語られる文化の対比、さらに「ゴルゴ13」への引用にまで及ぶなど、自分の感想と全く同じで嬉しくなりました。

      このあと『サトリ』を読む予定です。
      2011/12/31
  • シブミとは「渋み」のことで、主人公の暗殺者、ニコライ・ヘルは日本人から侘び寂びの思想を学ぶ。と言ってしまうと、毛唐が抱きがちな俗悪な東洋趣味がすぐに思い浮かぶが、本書に一貫して流れている「渋み」は、日本人が読んでもまったく違和感のないもので、まずは著者の日本文化に対する通りいっぺんではない造詣の深さに唸らされる。ストレートではあるけれど確実に意表を突かれるプロットの巧みさ、名作「アイガー・サンクション」の著者ならではの洞窟における死闘の描写力、そして何度も繰り返される「色事」のゾクッとするような艶めかしさ。圧倒的と言うしかない。久しぶりにやられた。完敗である。

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