卵をめぐる祖父の戦争 (ハヤカワ文庫NV)

  • 早川書房 (2011年12月8日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (480ページ) / ISBN・EAN: 9784150412487

作品紹介・あらすじ

「ナイフの使い手だった私の祖父は十八歳になるまえにドイツ人をふたり殺している」作家のデイヴィッドは、祖父のレフが戦時下に体験した冒険を取材していた。ときは一九四二年、十七歳の祖父はナチス包囲下のレニングラードに暮らしていた。軍の大佐の娘の結婚式のために卵の調達を命令された彼は、饒舌な青年兵コーリャを相棒に探索に従事することに。だが、この飢餓の最中、一体どこに卵なんて?――戦争の愚かさと、逆境に抗ってたくましく生きる若者たちの友情と冒険を描く、歴史エンターテインメントの傑作

みんなの感想まとめ

戦時下のレニングラードを舞台に、卵を調達するために冒険を繰り広げる二人の少年の物語が描かれています。ナチスに包囲され、飢餓に苦しむ中で、脱走兵のコーリャと自信のないレフが織りなす友情や軽妙なおしゃべり...

感想・レビュー・書評

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  • ナチスドイツ軍のレニングラード包囲戦中にソ連で脱走兵として捕まり、国民全体が飢餓の最中、軍の大佐の娘の結婚式用の卵1ダースの調達を命じられる少年二人の話。

    下ネタばかり言う憎めない美少年コーリャとチェスは得意で自信がない少年レフのロードノベルです。

    卵を探し歩く中での戦争の地獄が強烈です。なかなかキツいです。

    でも人物の魅力でぐいぐい読まされました。二人が喋ってばかりいて、辛い状況なのに不思議と前向きになれます。

  • 1942年1月、ドイツ軍に包囲され飢餓に苦しむレニングラードで、大佐の命令で十七歳の青年が卵を探し求める。前線の話ではないし、ちょっとした冒険みたいだ。
    その相棒は脱走兵で、くだらないおしゃべりが尽きない彼のおかげか軽快な雰囲気すら感じる。
    彼が脱走した理由も、その性格を裏切らないあほらしさで、なかなかいい。
    でも読んでいるとやっぱり戦時下であることを思い知らされて、卵調達なんていうのんきにも思える命令とのギャップに戸惑う。というか、そんな場合かというツッコミが通用しない状況に無性に腹が立った。
    手放しで楽しいというのとは違うけど、面白かった。

  • 数年前のコノミスの上位で見た覚えが、というだけで購入。
    みすてりー?
    そういうんじゃなくってこれは深い。
    ドイツ軍侵攻による飢餓状態のソビエト、レニングラードの庶民の様子がイタクて読み進めることができないほど。
    凌辱されつつ拷問を受けた少女の話やら人肉の描写やら・・・
    それでも読後感が切なくも一種爽快な感じがするのは
    男同士の友情や日々の困難の中でもちょっとしたユーモアを
    感じさせる登場人物のキャラが堪らなく愛おしいからでした。

  • 昔読んだときにはfeelしない気がして途中で挫折してしまっていたデイヴィッド・ベニオフの長編小説を改めて読み直した。きっかけはあるPodcastの影響。わたしは読書に関してもかなり影響を受けやすいのだけれど、そんな自分のことも、影響からはじまる読書のチャンスも、わりと愛おしく思っている。

    さて。これは祖父が孫に語る戦時中の特別だった7日間の物語。卵はひとつのきっかけで、それよりも残酷で凄惨で愚かな戦争のなかにも、あるいはだからこそ(であれ戦争は絶対に肯定しないけれど)あった青春の、友情と恋をめぐる物語。
    祖父が孫に語る、ということは若き日の彼はこの戦争に生き残るということでもあって、つまりは傷付き苦しみ疲弊しながらもある種のハッピーエンド(解決と言ってもいい)に向かうことが“わかっている”物語。それでも読み進めていけば、そのなかには幾つものドラマがあって、冷めることなくのめり込んで、悲しんだり憤ったり喜びを感じたり、ときにニヤつきながらあらゆる角度から感動していた。ああ、物語を読むというのはこういうことでもあったのだった、と改めて思ったりもして。寄り添うように読んでいけば、しっかりとfeelしてくれる素晴らしい小説だった、と今回は納得できた。
    それとこれは、もうひとつの書かれることのなかった小説にまつわる物語でもあって。『中庭の猟犬』というタイトルのその小説は、もし読むことができたならきっと大好きになっていたような気もしている。引きこもりの男と犬にまつわる物語。ああ、そうだデイヴィッド・ベニオフはあのピットブルブルを救うことからはじまる傑作、『25時』を書いた作家だものな、と少し本編から離れたところでも納得していたのだった。

  • この小説、なかなかユニークな邦題だが、
    時は1942年、舞台はナチス包囲下のレニングラード、そこでの僅か一週間足らずの出来事が描かれている。

    歴史に明るい方なら、レニングラード包囲戦といえば、ああ、第二次世界大戦における独ソ戦か!とピンとくるだろう。
    1941年から1944年にかけて、ドイツ軍は900日もの間、ソビエト連邦第二の都市・レニングラード(現・サンクトペテルブルク)を包囲した。


    だが、私は歴史にも疎い。(苦笑)

    そして、それは歴史に疎い私でさえひき込まれてしまう、見事で素晴らしい作品だった。

    一人称で語られるその歴史は、あの戦争から70年以上経っていても、それは歴史ではなく現実として読者に迫ってくる。
    時にうざいとさえ思うほどの描写が、脳裏に小説をリアル化させる。

    また、主役級の登場人物の一人、脱走兵のコーリャ(本人は脱走兵とは認めていない)のあっけらかんな態度といい、物言いといい、これが実に爽快である。
    ちょっと根暗で悶々とした主人公レフとの掛け合いも非常に愉快だった。

    ユーモアのあるリズミカルな文章に、らしさもきちんと描いている。

    ロシアらしさ、ロシア人らしさ、ユダヤ人らしさ、それらをきちんと描き切ってる上に、
    他愛無い、ちょぴり下品でさえあるユーモアで、あまりに残忍な内容さえも重くならず、それが逆に戦争の悲惨さや浅はかさ、愚かさをストレートに伝える辺り、作者の力量に脱帽した。


    これは戦争物である上に、二人の青年の青春物語でもあったりする。

    だから、飽きない。



    あ、面白さのあまり、どんな内容かも書かないうちに、とりとめもなく記してしまったが、、、


    17歳である主人公のレフは、作者ディビッドの祖父として描かれている。

    夜間外出禁止令を破って捕まったレフと脱走兵のコーリャは、軍の大佐から大佐の娘の結婚式のために卵を一ダース手に入れるよう命じられる。

    今日は土曜日、期限は木曜の夜明けまで、一週間もない。

    だが、レニングラードには卵などどこにもない。

    こんな飢餓の中、どこに卵があるというのか?

    卵を求める二人の前には、信じられない残酷な場面が展開する。

    が、そこはコーリャだ。
    この愛すべきキャラクターのおかげで救われたのはレフだけでなく、一読者である私もだった。



    それにしても、命令を下す大佐のこの言葉。

    「娘は本物の結婚式を望んでる。 きちんとした結婚式をだ。
    それはいいことだ。 人生は続くのだからな。
    今、われわれは野蛮人と戦ってはいるが、だからといって、人間らしさを失っていいことにはならん。
    ロシア人でありつづけなきゃならん。
    だから、音楽もダンスもある結婚式になるだろう・・・・・それにケーキもある結婚式にな」

    ナチスもナチスなら、こいつもこいつだな。(苦笑)


    だが、戦争というものはそんなものなのかもしれない。

    大義名分なんて、はなっから存在しないのだ。

  • ナチスに包囲されたレニングラード攻防戦を生き延びた祖父。17歳だった祖父はロシアの大佐の命令で12個の卵を手に入れるために、お喋りな脱走兵コーリャと二人で、雪の中を探索の旅に出る。
    時間がかかったけど、読み終わると面白かったと思わされる。

  • すばらしい。 ドイツの包囲戦にあったレニングラードを舞台に
    17歳の少年レフ(主人公)と20歳の脱走兵コーリャの2人が
    1ダースの卵を持ち帰るという任務においての道中を描いている。

    二人の掛け合いは、まるで『吾輩が猫である』の苦沙弥先生と迷亭君の様である。 レフは幾分神経質で真面目で賢く、痩せている。 コーリャは美青年だが口から生まれてきた様な人間で、いつもジョークや法螺を吹いている。「中庭の猟犬」という小説を常に頭の中で構成し、レフに話を聞かせている。大の女好きで脱走兵になってしまったのも、それが原因で笑える。

    いつドイツ軍に見つかって殺されるか分からない道中で コーリャの冗談や冷やかしに、うんざりするレフであったが、飢餓と寒さの中でコーリャといなければ生きる気力を無くしていただろう。まるで映画「ライフ イズ ビューティフル」の中で、ナチス軍に捕まった親子の父親が、そんな状況下の中でも明るく振舞っている様子を思い出させる。
    しかし、コーリャの能天気さ計算ではなく、本来の気質であるのも面白いし、詩人を父に持つレフの場面場面での想像力・妄想力が半端でなく、
    楽しめる。

    「戦争の悲惨さ」と「彼等のやり取りの滑稽さ」の対峙バランスが絶妙である。

    2人の卵探しの中で出会った(出くわした)様々な人や状況で、当時の「レニングラード包囲戦」の悲惨さを知ることができる。 「卵探し」 というキーワードから様々な情勢が見えてくる。

    訳者あとがき・・にもあるが、著者は祖父母もアメリカ人という生粋のアメリカ人であり、ロシアの血は入っていないようだ。しかも1970年生まれでまだ若く、小説家というより、映画の脚色もこなす映画人らしい。
    彼もレフ同様、想像力豊かな人物なのだろう。

  • レニングラード包囲戦という凄惨な戦争が舞台の小説。
    ユーモアに溢れるコーリャと、彼に振り回されるレフとの掛け合いに笑いつつも、戦乱による悲惨な情景描写に圧倒された。

    何よりも、作者のバランス感覚が素晴らしい。
    ユーモアの明るさと戦争の暗さを絶妙な塩梅で配分し、展開に飽きさせない構成。
    最後、読み終えてからプロローグを読み返しに戻った人が何人居るだろう?
    自分もその一人だ。

  • 明日には飢餓で死ぬか爆撃で死ぬか。ドイツ軍に包囲されたレニングラードで言い渡された処刑を免れるたったひとつの命令は、1ダースの卵を調達すること。
    かくして二人の青年が卵調達隊として飢えに喘ぐ戦時のロシアを彷徨うことになる。

    当然行き合う出来事は悲惨なものばかりなのに、妙に軽快な雰囲気は卵の捜索というちぐはぐな設定のせいか、下ネタにまみれた凸凹コンビの会話のせいか。
    戦争という特別な状況でも、何も特別でない人達が必死に、そして普通に生きている。そんな事を思わせる二人だから、戦争と卵と読者という奇妙なピースを繋いで読み手の深い所にまで届けてくれる。

    クソが出ただけで笑ったのは某金塊漫画以来だけれど、血塗れの大立ち回りの後でも笑えるのが、なんだか滑稽で温かでそして切ない。

    にしてもこの小説、軍人やらイケメンやらも出るのにヒロインが一番かっこいいのはどういうわけか。

  • Amazonなどで絶賛されているのを見て、普段は読まない海外作品を。
    忙しくて飛ばし飛ばしでしか読めなかったのが悔やまれる!
    でも、一気読みよりじっくり読みがオススメ。

    下ネタジョークを飛ばしまくるコーリャと神経質なレフ。
    戦争の悲惨さ、残酷さを目の当たりにする場面がいくつも出てくるけどこの2人は淡々としていて、それが日常となってしまっているのが伝わってきて切なかった。
    でもこれは戦争小説などではなく、2人の青春の軌跡の記録であり、レフのラブストーリーと言い切れる。
    いよいよ冒険が終わるというところでコーリャを襲う出来事には「こんなのってない!」と思ったけれど、ラストまで読み進めると「最高のラストだ!」と思ってしまう。
    溜めこんでいたクソを出した時のコーリャが最高!
    またドイツ兵?!と思ったらそっちか!
    高校生には読んだ欲しいけど女子中学生にはオススメしづらいかもw(下ネタ的に!)

    2013/02/11-22

  •  とても良かった! 久し振りに本にのめり込んだ。

     話は、作家である孫が、現在は祖母と共にアメリカに暮らしているソヴィエト出身の祖父に、戦争の話を聞く所から始まる。
     舞台は第二次世界大戦、包囲戦で飢餓に苦しむレニングラード。
     物語は、コソ泥として軍に捕えられたレフ(祖父)が、脱走兵として捕えられたコーリャと共に、自分の娘の結婚式に必要な卵一ダースを探し出し持ち帰るよう、大佐から命令を受ける。その期限である一週間の出来事を、祖父が語って聞かせる形。

     邦題がコミカルなので、軽めの話なのかと思っていたら、とても残酷で重い内容だった。
     以前に、この包囲戦で餓死した少年の日記を読んだ事があったので、その内容も思い出されて、かなり辛かった。
     でも邦題が内容に合っていないわけではなく、文章にはユーモアがふんだんに散りばめられていて、読んでいて楽しい部分も沢山あった。
     というか、ユーモアの部分は全てコーリャ一人が引き受けている感じ。美形で体格もよく体力もあり、おしゃべりで下品で自信家で楽天家で、友達思いのコーリャ。コーリャ当人からは戦争の残酷さ、悲惨さ、愚かさは全く感じられない。
     でもそういう彼がいるからこそ、却ってそれらが際立つような物語に仕上がっているんだと思う。
     ラスト直前のシーンは、電車の中だったにも係わらず、ちょっと涙ぐんでしまった。

     映画化したら、きっと私の想像した通りの映像が観られるんだろうなという描写だった。流石は映画界で活躍してる人が書いた本、という感想。

     それから、本のラストが、祖父の昔語りでそのまま終わっており、孫の視点に戻ってこないところが、読者それぞれの読後感を大切にしてくれている感じで、とても気に入った。

  • どういうわけか、タイトルだけ見て遺伝子操作に絡むSFだと勝手に思い込んでいて、数ページ読んでビックリ!全く違うお話みたい。

    ただお話し自体はストレートで分かりやすく、類型的ではあるが楽しめます。

    もっともらしく書けば戦争の悲惨さやら、人間の業の深さやらとシリアスなことも書けると思うが、レフとコーリャとヴィカの個性満載3人組の青春ロードノベルとして正に一気読みの楽しさでした。

  • 映像化にピッタリの非常に面白いお話だった。
    コメディとアクションとシリアスとヒューマンドラマの配分が抜群で、どれもしびれるほど良い。
    残酷描写と下ネタに抵抗のない人なら100%お勧め。

  • 傑作!この小説はいい。

    舞台は近代戦最長の900日に及ぶ包囲戦下のレニングラード。飢えと戦争被害に苦しむレニングラードの描写、その戦下日々を必死に生きる主人公が、ひょんなことからイケメンで下品で饒舌な脱走兵とコンビを組み、赤軍士官の命令で玉子1ダースを探すことになる。

    人間ってほんま愚かで、その骨頂が戦争だと思う。生産性も幸せも食べ物すらない悲惨な状態を、人間は凝りもせず何度も何度も繰り返す。この本でも戦争の悲惨さ愚かさは繰り返し描写される。ただでさえ気候条件が厳しい冬のレニングラードで、なんでこんなバカな行為を…。

    主人公レフと相棒コーリャのタマゴを探す冒険も実に愚かである。支配者の欲を満たすだけの目的、命の危機にも関わらず続く下品な会話…、アホやなぁ人間て…。でもこの愚かさは戦争のそれと違い愛すべき愚かさ。

    許されざる愚かさと愛すべき愚かさ、愚かな人間の極端な両面を描くこの小説。しかしラスト1文を読めば、人間だって愚かであっても悲劇に至らない生き方はできると分かる。そう、きっと悲しい歴史を刻まないことだってできるはずなんだ!

  • 二人の少年が卵を探す話
    タイトルだけで古い本かと勘違いしてました。
    卵を探す道中で起こる出来事一つ一つが
    印象的なのと、下ネタと悲惨な環境の組み合わせ
    奇妙な感覚で読み進めたけど、
    キャラクター達も面白くて
    読ませる。

  • レニングラード攻防戦の最中、略奪罪で捕まった主人公レフと脱走兵コーリャが、秘密警察の大佐から娘の結婚式までに卵を一ダース持ってこい、という指令を受ける。戦争なのだから当然食料はなく、外には人喰いまでいるような状況の中に「卵を取ってくる」という、皮肉めいた状況がまずたまらない。

    焼け落ちた都市や凍える寒さが文章から伝わってくる。死の臭いが立ち込める中で繰り広げられる、主人公とコーリャの笑いと下ネタ(主にコーリャからだが)が秀逸。童貞とからかわれる主人公の十七歳という多感な時期の心情が伝わってくる。

    後半の結末に向かっていく展開は本当に燃える。ご都合的なところはなく、二人や途中加わる仲間たちはどこまでも普通の人間だ。冒険小説であり、戦争小説であり、青春小説という一冊で三つの味が楽しめる。

  • レニングラード包囲戦さなかで生きる少年の青春冒険物語。

    その日に食べるものさえないレニングラードでなんの頼りもないまま卵を探す、という絶望的な状況に追い込まれた割にレフとコーリャの話はひたすら女・女・女。
    現実逃避の意味もあるのですがそのギャップがまだ未成年の2人らしくシリアスだけにならず読み進める手助けになりました。
    人食い夫婦、餓死寸前の少年とニワトリ、図書館スティック、ソーニャ、ドイツ兵に囲われた少女たち、パルチザン…
    一つ一つのエピソードが印象的でレフとコーリャと共に冒険している気分になります。
    話が進むにつれて最初の目的からはずれつつもラスボス的人物がみえてくる展開は熱いです。
    ”ドイツ人を二人を殺している”という最初の一文が重要な意味を持ってくるところもちょっとしたアハ体験でした。
    また主人公レフの一人称で語られる部分がいかにも思春期17歳って感じで面白いな~と思う文章が多かったです。
    ”まだ十七だった。愚かだった。だから彼を信じた”とか”この世で一番淋しい音はほかの男女が愛を交わす音だ”は思わず笑いました。ヒロインであるヴィカと出会ったあとのかっこつけようと精一杯な感じもかわいかったです。
    すべてがハッピーエンドで終わってほっとしたあとにあの展開は悲しすぎますが、最後の場面で救われました。

  • 最後の一文に、これほど感心した作品はありません。
    それほど最後の一文にはやられました。
    巧い、の一言。
    お陰さまで、戦争の悲惨さ、理不尽さをことごとく感じさせる中盤~終盤の展開(しかし、饒舌な青年コーリャのおかげで意外と重苦しさはありません)を払拭してくれました。

    物語は、第二次世界大戦下のソ連にて、主人公のレフ(著者の祖父の設定)が、ひょんなことから出会った青年コーリャと共に「卵」を探しに行くというもの。それも秘密警察の大佐の娘の結婚式で出されるケーキを作るために。
    物語のプロットからして、理不尽さを感じさせますね。
    戦争を扱う作品は、得てして戦争の理不尽さを訴えてきますが、本書もそれに違わず。ただし、前述したとおりコーリャのおかげで重苦しさはありません。その代わり、どこか滑稽さを覚えます。もしかすると、この滑稽さこそが本書が訴えたいことなのかもしれません。
    そう考えると、確かに最後も滑稽ですね。
    最高の滑稽さですが。

  • 「ナイフの使い手だった祖父は18歳になるまでにドイツ兵を2人殺している」
    一体どんな経緯があってそんなことを?
    祖父が語る昔話は、第二次世界大戦下のロシア・レニングラードを舞台にした、卵をめぐる特別な1週間だった――。

    味方軍の大佐の娘の結婚式のために卵を1ダース探すのかふんふんと、あらすじから気軽に読めるコメディ小説かなと思って購入しました。
    そんわけあるか、戦争中の話やぞ。
    その上、舞台はレニングラード。ドイツ軍に囲まれ味方からの供給の途絶えたこの都市で、人々を苦しめるのは戦火だけではありません。冬の過酷な寒さと飢餓です。
    人肉、地雷、生きるために性的暴行を受け入れる人々……徐々に明らかになっていく戦争の本来の姿と犠牲となっている人々の登場に何度も胸が苦しくなりました。

    それでもね、やっぱりコメディ要素は十分に感じられるんですよ。

    臆病な17歳の少年・レフに、嘘と冗談が得意なおしゃべり脱走兵・コーリャ。
    常に緊迫した状況が続きますが、彼らの下半身だって常に正直で下ネタのオンパレード。さらにコーリャは本当によく喋るし、なんだかんだでレフだって心の中がずっとおしゃべりです。
    友情だってどんどん育まれ絆が強くなっていく。
    等身大の彼らの明るさが愛おしく、だからこそ戦争中という苛烈な描写のギャップが辛くなる。
    できることならもっと平和な時に小競り合いでキャッキャしてほしかった。
    翻訳や解説の方々が述べてらっしゃいましたが、二人の会話こそが戦時下の自由の象徴でもあるんですよ。

    そんな彼らが次々と遭遇する過酷な試練、コーリャの話術や人脈でなんとか切り抜ける姿はまさに冒険。

    物語への感想とは別にして、展開の妙と言いますか、本当に流れが上手いし熱いなぁ~と唸ったのがやはり最後の対アーベントロート少佐戦。
    卵を探して人々と出会い道を進んでいくうちに、どんどんとドイツ軍包囲網内に近づいていくレフたち。試練も惨忍さが極まっていきます。いつしか目的は一人の無辜の少女を酷く扱った、ドイツ軍のアーベントロート少佐への復讐に代わり……。

    いや君たち卵はどうした、そしてレフはいつナイフで活躍するんだ。

    この疑問が対アーベントロート少佐戦で一気に解消されるのが、物語の展開として非情に熱かった。
    レフが一人立ち向かうことになる展開も一切無理がなく、カタルシスが全てここに詰まっていました。
    憎むべき相手であるはずのアーベントロート少佐のキャラも強い。できれば平和な世でもう一度レフと戦ってほしかった。

    果たしてレフとコーリャはどうやって目的を達成するのか。
    次々と出てくる女の子たちに祖母はいるのか。
    下ネタ混じりに過酷な戦時下を進んでいく青年たちの友情と冒険譚、ぜひお楽しみください。

  • 【あらすじ】
    独ソ戦下のレニングラード。ドイツ軍に完全包囲された中で人々は飢餓に苦しんでいた。
    ユダヤ人で皮肉屋のレフと長身の美青年だがお調子者のコーリャ。デコボココンビの2人は大佐の命令で1ダースの卵を1週間以内に探す羽目になってしまった。
    荒廃したレニングラードを舞台に2人の冒険が始まる。

    【感想】
    冒頭から最後の最後までずっと面白い傑作小説。
    主人公レフのひねくれ者で小心者な所が等身大でとても良い。一方、コーリャの完璧超人でありながら好色でお調子者な所はアメリカンヒーロー的だ。
    2人の掛け合いの面白さで盛り上げつつも、冒険の中身はえげつない。
    人肉食夫婦に地雷犬、慰み者にされている少女など、戦争の悲惨さを容赦なく叩きつけてくる。
    戦争というものは辛く苦しく、そしてこの上なく滑稽で可笑しい。

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