卵をめぐる祖父の戦争 (ハヤカワ文庫NV)

  • 早川書房
4.13
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感想 : 137
  • Amazon.co.jp ・本 (469ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150412487

作品紹介・あらすじ

「ナイフの使い手だった私の祖父は十八歳になるまえにドイツ人をふたり殺している」作家のデイヴィッドは、祖父レフの戦時中の体験を取材していた。ナチス包囲下のレニングラードに暮らしていた十七歳のレフは、軍の大佐の娘の結婚式のために卵の調達を命令された。饒舌な青年兵コーリャを相棒に探索を始めることになるが、飢餓のさなか、一体どこに卵が?逆境に抗って逞しく生きる若者達の友情と冒険を描く、傑作長篇。

感想・レビュー・書評

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  • 1942年1月、ドイツ軍に包囲され飢餓に苦しむレニングラードで、大佐の命令で十七歳の青年が卵を探し求める。前線の話ではないし、ちょっとした冒険みたいだ。
    その相棒は脱走兵で、くだらないおしゃべりが尽きない彼のおかげか軽快な雰囲気すら感じる。
    彼が脱走した理由も、その性格を裏切らないあほらしさで、なかなかいい。
    でも読んでいるとやっぱり戦時下であることを思い知らされて、卵調達なんていうのんきにも思える命令とのギャップに戸惑う。というか、そんな場合かというツッコミが通用しない状況に無性に腹が立った。
    手放しで楽しいというのとは違うけど、面白かった。

  • 数年前のコノミスの上位で見た覚えが、というだけで購入。
    みすてりー?
    そういうんじゃなくってこれは深い。
    ドイツ軍侵攻による飢餓状態のソビエト、レニングラードの庶民の様子がイタクて読み進めることができないほど。
    凌辱されつつ拷問を受けた少女の話やら人肉の描写やら・・・
    それでも読後感が切なくも一種爽快な感じがするのは
    男同士の友情や日々の困難の中でもちょっとしたユーモアを
    感じさせる登場人物のキャラが堪らなく愛おしいからでした。

  • この小説、なかなかユニークな邦題だが、
    時は1942年、舞台はナチス包囲下のレニングラード、そこでの僅か一週間足らずの出来事が描かれている。

    歴史に明るい方なら、レニングラード包囲戦といえば、ああ、第二次世界大戦における独ソ戦か!とピンとくるだろう。
    1941年から1944年にかけて、ドイツ軍は900日もの間、ソビエト連邦第二の都市・レニングラード(現・サンクトペテルブルク)を包囲した。


    だが、私は歴史にも疎い。(苦笑)

    そして、それは歴史に疎い私でさえひき込まれてしまう、見事で素晴らしい作品だった。

    一人称で語られるその歴史は、あの戦争から70年以上経っていても、それは歴史ではなく現実として読者に迫ってくる。
    時にうざいとさえ思うほどの描写が、脳裏に小説をリアル化させる。

    また、主役級の登場人物の一人、脱走兵のコーリャ(本人は脱走兵とは認めていない)のあっけらかんな態度といい、物言いといい、これが実に爽快である。
    ちょっと根暗で悶々とした主人公レフとの掛け合いも非常に愉快だった。

    ユーモアのあるリズミカルな文章に、らしさもきちんと描いている。

    ロシアらしさ、ロシア人らしさ、ユダヤ人らしさ、それらをきちんと描き切ってる上に、
    他愛無い、ちょぴり下品でさえあるユーモアで、あまりに残忍な内容さえも重くならず、それが逆に戦争の悲惨さや浅はかさ、愚かさをストレートに伝える辺り、作者の力量に脱帽した。


    これは戦争物である上に、二人の青年の青春物語でもあったりする。

    だから、飽きない。



    あ、面白さのあまり、どんな内容かも書かないうちに、とりとめもなく記してしまったが、、、


    17歳である主人公のレフは、作者ディビッドの祖父として描かれている。

    夜間外出禁止令を破って捕まったレフと脱走兵のコーリャは、軍の大佐から大佐の娘の結婚式のために卵を一ダース手に入れるよう命じられる。

    今日は土曜日、期限は木曜の夜明けまで、一週間もない。

    だが、レニングラードには卵などどこにもない。

    こんな飢餓の中、どこに卵があるというのか?

    卵を求める二人の前には、信じられない残酷な場面が展開する。

    が、そこはコーリャだ。
    この愛すべきキャラクターのおかげで救われたのはレフだけでなく、一読者である私もだった。



    それにしても、命令を下す大佐のこの言葉。

    「娘は本物の結婚式を望んでる。 きちんとした結婚式をだ。
    それはいいことだ。 人生は続くのだからな。
    今、われわれは野蛮人と戦ってはいるが、だからといって、人間らしさを失っていいことにはならん。
    ロシア人でありつづけなきゃならん。
    だから、音楽もダンスもある結婚式になるだろう・・・・・それにケーキもある結婚式にな」

    ナチスもナチスなら、こいつもこいつだな。(苦笑)


    だが、戦争というものはそんなものなのかもしれない。

    大義名分なんて、はなっから存在しないのだ。

  • ナチスに包囲されたレニングラード攻防戦を生き延びた祖父。17歳だった祖父はロシアの大佐の命令で12個の卵を手に入れるために、お喋りな脱走兵コーリャと二人で、雪の中を探索の旅に出る。
    時間がかかったけど、読み終わると面白かったと思わされる。

  • すばらしい。 ドイツの包囲戦にあったレニングラードを舞台に
    17歳の少年レフ(主人公)と20歳の脱走兵コーリャの2人が
    1ダースの卵を持ち帰るという任務においての道中を描いている。

    二人の掛け合いは、まるで『吾輩が猫である』の苦沙弥先生と迷亭君の様である。 レフは幾分神経質で真面目で賢く、痩せている。 コーリャは美青年だが口から生まれてきた様な人間で、いつもジョークや法螺を吹いている。「中庭の猟犬」という小説を常に頭の中で構成し、レフに話を聞かせている。大の女好きで脱走兵になってしまったのも、それが原因で笑える。

    いつドイツ軍に見つかって殺されるか分からない道中で コーリャの冗談や冷やかしに、うんざりするレフであったが、飢餓と寒さの中でコーリャといなければ生きる気力を無くしていただろう。まるで映画「ライフ イズ ビューティフル」の中で、ナチス軍に捕まった親子の父親が、そんな状況下の中でも明るく振舞っている様子を思い出させる。
    しかし、コーリャの能天気さ計算ではなく、本来の気質であるのも面白いし、詩人を父に持つレフの場面場面での想像力・妄想力が半端でなく、
    楽しめる。

    「戦争の悲惨さ」と「彼等のやり取りの滑稽さ」の対峙バランスが絶妙である。

    2人の卵探しの中で出会った(出くわした)様々な人や状況で、当時の「レニングラード包囲戦」の悲惨さを知ることができる。 「卵探し」 というキーワードから様々な情勢が見えてくる。

    訳者あとがき・・にもあるが、著者は祖父母もアメリカ人という生粋のアメリカ人であり、ロシアの血は入っていないようだ。しかも1970年生まれでまだ若く、小説家というより、映画の脚色もこなす映画人らしい。
    彼もレフ同様、想像力豊かな人物なのだろう。

  • Amazonなどで絶賛されているのを見て、普段は読まない海外作品を。
    忙しくて飛ばし飛ばしでしか読めなかったのが悔やまれる!
    でも、一気読みよりじっくり読みがオススメ。

    下ネタジョークを飛ばしまくるコーリャと神経質なレフ。
    戦争の悲惨さ、残酷さを目の当たりにする場面がいくつも出てくるけどこの2人は淡々としていて、それが日常となってしまっているのが伝わってきて切なかった。
    でもこれは戦争小説などではなく、2人の青春の軌跡の記録であり、レフのラブストーリーと言い切れる。
    いよいよ冒険が終わるというところでコーリャを襲う出来事には「こんなのってない!」と思ったけれど、ラストまで読み進めると「最高のラストだ!」と思ってしまう。
    溜めこんでいたクソを出した時のコーリャが最高!
    またドイツ兵?!と思ったらそっちか!
    高校生には読んだ欲しいけど女子中学生にはオススメしづらいかもw(下ネタ的に!)

    2013/02/11-22

  • 映像化にピッタリの非常に面白いお話だった。
    コメディとアクションとシリアスとヒューマンドラマの配分が抜群で、どれもしびれるほど良い。
    残酷描写と下ネタに抵抗のない人なら100%お勧め。

  • レニングラード包囲戦という凄惨な戦争が舞台の小説。
    ユーモアに溢れるコーリャと、彼に振り回されるレフとの掛け合いに笑いつつも、戦乱による悲惨な情景描写に圧倒された。

    何よりも、作者のバランス感覚が素晴らしい。
    ユーモアの明るさと戦争の暗さを絶妙な塩梅で配分し、展開に飽きさせない構成。
    最後、読み終えてからプロローグを読み返しに戻った人が何人居るだろう?
    自分もその一人だ。

  • 明日には飢餓で死ぬか爆撃で死ぬか。ドイツ軍に包囲されたレニングラードで言い渡された処刑を免れるたったひとつの命令は、1ダースの卵を調達すること。
    かくして二人の青年が卵調達隊として飢えに喘ぐ戦時のロシアを彷徨うことになる。

    当然行き合う出来事は悲惨なものばかりなのに、妙に軽快な雰囲気は卵の捜索というちぐはぐな設定のせいか、下ネタにまみれた凸凹コンビの会話のせいか。
    戦争という特別な状況でも、何も特別でない人達が必死に、そして普通に生きている。そんな事を思わせる二人だから、戦争と卵と読者という奇妙なピースを繋いで読み手の深い所にまで届けてくれる。

    クソが出ただけで笑ったのは某金塊漫画以来だけれど、血塗れの大立ち回りの後でも笑えるのが、なんだか滑稽で温かでそして切ない。

    にしてもこの小説、軍人やらイケメンやらも出るのにヒロインが一番かっこいいのはどういうわけか。

  • レニングラード攻防戦の最中、略奪罪で捕まった主人公レフと脱走兵コーリャが、秘密警察の大佐から娘の結婚式までに卵を一ダース持ってこい、という指令を受ける。戦争なのだから当然食料はなく、外には人喰いまでいるような状況の中に「卵を取ってくる」という、皮肉めいた状況がまずたまらない。

    焼け落ちた都市や凍える寒さが文章から伝わってくる。死の臭いが立ち込める中で繰り広げられる、主人公とコーリャの笑いと下ネタ(主にコーリャからだが)が秀逸。童貞とからかわれる主人公の十七歳という多感な時期の心情が伝わってくる。

    後半の結末に向かっていく展開は本当に燃える。ご都合的なところはなく、二人や途中加わる仲間たちはどこまでも普通の人間だ。冒険小説であり、戦争小説であり、青春小説という一冊で三つの味が楽しめる。

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