アルジャーノンに花束を〔新版〕(ハヤカワ文庫NV)

制作 : 小尾 芙佐 
  • 早川書房
4.19
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本棚登録 : 2075
レビュー : 152
  • Amazon.co.jp ・本 (464ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150413330

作品紹介・あらすじ

累計320万部の不朽の名作が新版に。野島伸司脚本監修、山下智久主演で連続ドラマ化が決定。知を求める青年チャーリイの苦悩と愛の物語。

感想・レビュー・書評

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  • ひらがなや簡単な漢字だけで綴られた、句読点もない"けえかほうこく"から始まる本書。
    この経過報告は書き手であるチャーリィ・ゴードンの急激な知能の発達に伴い、書かれている内容はどんどん変化していきます。
    彼の一人称の報告を読んでいると、だんだんチャーリィの記憶や心の動きがシンクロしてきて、いつしか自分の中にチャーリィがいるような気持ちになりました。

    知能が高くなるにつれ孤立していくチャーリィ。
    だんだん周囲が離れていく様子も、よみがえる幼少時代の記憶も、読んでいてとても苦しかったです。
    「かしこくなりたい」という彼の望みは叶ったのに…。
    この望みの根底には「かしこくなればもっと愛してもらえる」という思いがあるゆえに、よりいっそう切ないのです。

    終盤からラスト一行まで、油断すると泣いてしまいそう。
    ああ、すごいものを読んだ…という静かな興奮とともに本を閉じました。
    読後も胸の中を駆け巡るさまざまな感情を、うまく言葉にまとめられないのが悔しいです。

  • 言わずと知れたSFの必読書。

    知ってしまうことの残酷さはあるのだけど、自分は知らないよりも知っていたい。
    だから手術を受けるというチャーリーの選択には全力で同意した。

    知性の獲得が、より高度な愛の発見に寄与するのが面白かった。

    そして知性が失われていく過程の描写に打ち震えた。
    知能の向上がSF的な要素であるのに対して、その衰えは広く万人に当てはまるものだから、物語の終盤はもはやSFの域を出ていた。

    知能が失われた後も、原初的な暖かい感覚は残っていたのが泣けて仕方なかった。そしてそれを原動力にして、人間はいつでも向上心を持てるのかもしれないと、希望を与えられたような気がした。

    そして文学ならではのレトリックも良かったね。訳者の技巧の高さに舌を巻いた。

  • 「知的障害者に対して知能を与えたとき、その人の幸せは増幅されるのだろうか?」

    というテーマの小説です。


    物語を通して、筆者は、知識への偏重はむしろ人間関係を排除してしまうため、幸せが遠のいてしまう、と説きます。そして、幸せになるためにはむしろ、他人と繋がり、共感することが大切であるということを教えてくれます。

    個人的には、「知識の探求は人間関係を排除する」は言い過ぎだと感じました。沢山の知識を得て、それを正しく活用することは、より良好な人間関係を築く上で必要だと信じているからです(だからこそ私は、本を読み、学ぶのです)。しかしながら、「知識獲得に偏ってはいけない」という意見には完全に同意します。


    あっという間に読了してしまいましたが、その中で何度も、人生について、人間について考えさせられました。手術によって、感情を置いて知識のみを成長させてしまった主人公・チャーリイが、人間関係を上手く作れず困惑するシーンでは、拳を握りしめてチャーリイを応援しました。また、チャーリイから知識が去っていくシーンでは、自分の未来を映し出されている気分がし、絶望感を感じました。


    人生についてこれほどまで考えさせてくれる、この本に出会えて本当に幸せです。

  • キョンキョンをはじめ多くの有名人が愛読書にあげてる作品。前から興味はあったけど何故か手にする機会がなかった。
    もしも人工的に知能レベルを急激に上げる事が出来たら?
    という所謂実験小説だが、そのリアリティの高さに驚かされる。チャーリーが知識を構築して行く様、周囲に疑いを感じるようになる様、凄いと思っていた人が実はちっぽけな俗物だったと失望する様、どれも子どもから大人に成長して行く過程に通じる。
    チャーリーの変化に接した周りの人間の驚きや狼狽や恐怖、実にありありと描かれていてまるで実録を読んでいるよう。
    名作だと思う。そして、読むのが辛い一冊だった。

  • 知的障害のチャーリイ(32歳)は、アルジャーノン(白ネズミ)の動物実験で成功した最先端脳手術を受けて、高い知能を得る。この力作のスゴいところは、全編が彼自身の日記で語られる点で、はじめのほうのひらがなだらけのたどたどしいにっきは、段々と漢字混じりの洗練された文章になっていく。ということは、もちのろん、障害者の視点で語られるとても重たい話でもある。友達と仲良く遊んでいた過去の記憶はじつはいじめだったと知る。子供の頃に虐待を受けて母親不信の彼は、恐怖で女性ともうまく付き合えない。そして同じく高度な知恵を得たはずのアルジャーノンが。。。総じて救われない話なんだけど、日記という主観的な形式なので、逆にそれぞれのエピソードを客観視できるのが秀逸。ハイライトは母親との20年振りの再会。家族の苦悩をここまで鮮烈に描いた作品はなかなかない。「ライ麦畑でつかまえて」を挫折した過去があって心配だったけど、斬新な文章構成にも助けられて、なんとか読了した。翻訳者の苦労と工夫に敬意を表する。チャーリイは最後の最後まで、おりこうさんになりたい、つまり知的向上心をもった人間として描かれる。議論があるとすればそこだろう、、障害の有無にかかわらず。

  • とても優しい魂を持つ人に出会いました。

    天才に変貌した青年が知ることとなった愛と憎しみ、喜びや孤独、醜い感情、そして人の心の真実。

    チャーリイの検査から手術、術後の経過報告を読者が読むという形で話が進むのが斬新だなと感じました。

    チャーリイの持つ純粋な心に、最後まで前向きな気持ちを持ち続けたことに胸を打たれました。
    アルジャーノンに起こった事態から、手術の副作用で自分がこれからどうなるのかということにチャ―リィが気付いてからは読むのがとても辛かったです。

  • 一瀬さんに薦められて読みました。どんどん引き込まれてあっという間に完読しました。
    手術してデキる人間になった自分の周りからどんどん人が離れていってしまい、当の本人はその理由に気づいていない感じが読んでいて寂しかったです。
    チャーリィの母親がもう典型的な自己愛人間でこの変も読んでいて切なかったです。
    そんなチャーリィが最期の最後で自分のこれまでの人生とこれからの運命全てを知って言ったセリフが重たかったです。

    「人間的な愛情の裏打ちのない知能や教育なんて何の値打ちもない」
    「愛情を与えたり受けたりする能力がなければ、知能というものは精神的道徳的な崩壊をもたらし、神経症ないし精神病すらひきおこすものである」

  • 後世に残すべき不朽の名作
    映画レナードの朝やベンジャミンバトンに通ずるストーリー


    作品はチャーリーの報告書という形のため、そのときのチャーリーの主観的な視点を通してストーリーが展開される。
    最初の知能レベルが低いときに感じていたことが、知能指数に比例して理解できるようになっていく様、でも精神的には成長しきれておらず高慢な様、そして失われていく知識に怯える様など、
    1人のリアルな人生として流れ込んでくる。

    食堂の店員をのろまなやつだと罵ってた連中と一緒に笑ってたら、実はその店員が障害者だと知ったときに、激昂したシーン、
    一度疎遠になったパン屋の友人達が、自分が白痴に戻った時に助けてくれたシーン
    が印象的


    結局大切なのは、知識ではなく、イデア的な善なんだということを再確認させてくれる。



    ラストの文が、そのままタイトルになるという格好良さもいい。

  • 友人からの勧めで、本書を手にとった。本書は、ある知的障害を持った中年男性が最新の手術を元に天才的な頭脳を手にするが、最後には元の知能まで戻ってしまう様子を描いた物語である。頭脳の発展と衰退の過程における彼の苦しみの描写は、人間とは何なのか、またどうあるべきなのかとの問いを改めて考えさせてくれるきっかけとなった。本書中の「人間的な愛情の裏打ちのない知能や能力なんて何の価値もない」との言葉は、著者が本書で一番伝えたかったメッセージなのではないかと思う。また、科学的進歩に重点を置きすぎた結果、倫理性に欠く社会を築いいてはならないとの著者の警告も感じ取れた。私も人間性や人間的振る舞いとは何かということを今後模索していきたいと思う。

  • 登場人物ほとんどを理解できるし、自分でもある。
    チャーリーも、また私自身であると感じる。
    もう一度、読む。

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