深夜プラス1〔新訳版〕 (ハヤカワ文庫NV)

  • 早川書房
4.04
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感想 : 26
  • Amazon.co.jp ・本 (425ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150413835

作品紹介・あらすじ

敵の追撃をかわして、タイムリミットまで突っ走れ。冒険小説の名作が装いも新たに登場

感想・レビュー・書評

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  • 第二次大戦で大活躍した元レジスタンスの英雄”キャントン”ことイギリス人のルイス・ケインとヨーロッパではトップ3に入るガンマンで元シークレットサービスのアメリカ人・ハーヴィー・ラヴェルのコンビが、殺し屋と警察双方に追われる実業家マガンハルトとその美人秘書をフランスからスイスを経由し、リヒテンシュタインまで送り届けるという護送する依頼を受ける。タイムリミットは3日後の零時ジャスト。その間、殺し屋たちから命の危機にさらされ、警察からも執拗な追跡を受けながらも自分の生き方を曲げないルイスとハーヴィーの姿を描いたハードボイルド冒険小説の古典的名作。

    本書の存在はかなり前から知っていたが、今まで未読だった。2016年に新訳が出ているので新訳の方を読んでみた。
    1965年に発表された本書であるが、本書を読んでいるとハンフリー・ボガード主演の『カサブランカ』や『三つ数えろ』のような名作白黒映画を思い出した。セリフや主人公達の行動がいちいち格好いいのだ。

    ハードボイルド冒険小説としては銃撃戦あり、騙し合いあり、裏切りあり、と極めてオーソドックスなストーリー。かといって今の冒険小説にありがちなジェットコースターアクションでは決してない。
    順序よく定期的に敵や警察の襲撃に遇い、それを撃退しながら目的地へ車や列車を使って進んでいくという、どちらかというとロードムービー的な要素が強い。そして各種イベントの間に主人公達の小気味よい会話が繰り広げられ、読者はそこで一息つく。

    『深夜プラス1』の魅力はなんと言ってもそのキャラクターとセリフ。
    元英国特殊工作員“キャントン”ことルイス・ケイン、そして腕は凄腕なのだがアル中のハーヴィー・ラヴェル、この二人の男の美学を読者は本書を読みながら感じまくることができる。
    例えば、ルイスとハーヴィーは任務中に警官は殺さないと決めている。ハーヴィーがそれをマガンハルトに説明するセリフがまた痺れる。
      『おれたちみたいに逃げる連中なんか、お巡りは気にしない。それもあたりまえだと思っている――むしろ歓迎する。
      逃げるのは敬意を示すことなんだから。だけど、お巡りを殺すやつは?そいつは逃げなかった。敬意を示さなかった。つまりそいつは法を犯してるだけじゃなくて、法を破壊しようとしてるんだ。
      お巡りが自分たちの象徴していると考えるものに、ことごとく挑戦しているわけだよ。法、秩序、文明――そしてすべての警官に。
      それはもう他人事じゃない。そいつだけはつかまえなきゃならない』

     自分たちにとって現在は敵である警察官にも敬意を払う。もう『男の美学』という言葉しか見つからない。

    そしてルイスとハーヴィーの掛け合いを読んでいると、どうしても『ルパン三世』のルパンとその相棒のガンマン・次元大介を思い出してしまう。伝説の英雄“キャントン”がルパンというのはちょっと軽すぎるかもしれないが、敵の声色使って相手を騙すところや、敵になりすまして相手をやり込めるなんてところは変装が得意なルパンと共通する。
    そして、ハーヴィーはそのまま次元大介だ。公式的には何の発表もないが、たぶん次元大介のモデルはこのハーヴィー(ちなみに漫画『ルパン三世』で次元大介が初登場したのが1967年10月号『週刊漫画アクション』第10話『ルパン殺し』。『深夜プラス1』の発表が本国では1965年、日本語訳初出が1967年なのでその可能性は高い)。

    ガンマンとして随一の腕を誇りながらもアル中で酒を飲まないと手が震えてくるハーヴェイと帽子を被らないと正確に銃が撃てないという弱点を持つ次元大介、弱点を持つガンマン、そしてクールな男の渋みが持ち味というところが二人の共通点だ。
    その脇を固めるのが時折不可解な行動をとるマガンハルトの美人秘書ミス・ジャーマン(『ルパン三世』的な立場で言えば峰不二子かな(笑))とルイスの元恋人のジネット。彼女達とルイス、ハーヴィーとのやりとりもおしゃれで素敵だ。

    『深夜プラス1』は冒険小説の古典であり、数々の作品の元ネタとなってきた。
    先ほどの『ルパン三世』やタイムリミットがあるなか二人組の相棒同士が困難な任務に挑む話など、それこそ星の数ほど作られているが、本書が元ネタだと思われるものがなんと多いことか。それだけ、今の時代二番煎じ、三番煎じのモノが溢れているということなのだろう。

    本書は今から50年以上前に書かれた小説であるが、全く古さは感じない。むしろ、ハードボイルド冒険小説とは本来こういうものかと新鮮さを感じたほどだ。
    冒険小説ファンを名乗る読者人なら一度は読んでおかねばならない一冊だろう。

  • ゴールデン街の故内藤陳さんの店、深夜プラス1はこの冒険小説(冒険小説!って最近聞かんよな)から取った店名。
    主人公のルイス・ケイン(キャントン)とその相棒?役のアル中のガンマン、ハーヴィ・ラヴェルのキャラクターが秀逸。これぞハードボイルド小説、という感じでとてもかっこいい。

    作者のギャビン・ライアルは他にも良い小説を書いているようだが、キンドル化はもちろん、ハヤカワ・ミステリになっていた邦訳もほぼすべて品切れ絶版状態のようで、手に入れるなら神保町のその手のミステリが積んである店で探すしかないようだ。とりあえず早川さんには過去の名作のキンドルでの復刊を望む。

  • 名作冒険小説の新訳版!
    この会話、サイコーにかっこいい!
    初めて読んだのは中学生だったかな、大人になるとより楽しめる気がする。

  • 冒頭の1ページからラスト1行まで痺れる小説など滅多にあるものではない。冒険小説の名作として散々語り継がれてきた「深夜プラス1」だが、読者が年齢を重ねる程に味わい方も深くなる大人のためのエンターテイメント小説であり、陶酔感でいえば当代随一であろう。優れた作家のみが成し得る唯一無二の世界へとどっぷりと嵌り、惜しくも最終ページへと辿り着いたあとは、軽い恍惚感と心地良い余韻にしばし浸る。他の作品では今ひとつ精彩が無いギャビン・ライアルが遺した奇跡のような「深夜プラス1」。発表は1965年。新訳を機に再読する。

    第二次大戦終結から二十年後。元レジスタンスの闘士ルイス・ケインは、無実の罪で警察に追われる実業家をフランスからリヒテンシュタインまで護送する依頼を引き受ける。護衛役となる相棒には、元シークレットサービスで欧州3位の腕を持つガンマン/ハーヴィー・ラヴェル。大西洋岸のブルターニュに到着した実業家と秘書を乗せ、目的地に向けてシトロエンDSは闇の中を疾走する。その先に待ち受けるのは、正体不明の人物に雇われた殺し屋たちの罠。予測不能の強襲に対し、ケインらは培った経験と技術で応酬する。

    物語の構成は極めてシンプルで、黒幕となる人物も意外性としては低い。だが、複雑なプロットを排した故に、展開するストーリーの密度が濃くなっている。一瞬の判断で危険を察知/回避し、敵を如何に欺いて翻弄するか。プロの仕事に徹するケインとラヴェルの伎倆が燻し銀の輝きを放つ。

    成熟しながらも過去への感傷を捨てきれない男のロマンティシズムが横溢し、独自の世界観を創り出す。主人公や脇役、端役に至るまで、その場/その状況に応じてぴたりとはまる言動をとるのだが、これが実にクールでスタイリッシュなのである。登場人物の信条やレトリック、銃器や自動車へのこだわりなど、本筋よりも細部を味わうことに喜びを見出す〝欲深い〟冒険小説ファンにとっては、読めば読むほど味が出るに違いない。殺し屋を「ガンマン」と呼称するところなど、懐古的でありながらも、舞台をヨーロッパに移した「ウエスタン」としても捉えることでき、新鮮な印象を残す。

    キャラクターとして人気の高いラヴェルだが、ドライなケインに比してウエットな性格であり、中途からは殆ど役に立たない。硬い殻の中に弱さ/ナイーブな一面を持つラヴェルは、或る種の女々しさも併せ持つハードボイルドの世界を象徴する人物ともいえる。ハードに生きる男の理想像を描きつつ、ラヴェルのような鬱屈した人物を配置したライアルの巧さが光る。再び暴力の世界へと戻り、己を律することで仕事を成し遂げたケインの自信と誇り。ラストシーンにおいて、対極的に収束する二人のアイデンティティー。その対峙は一層際立っている。

    名前から女性によく間違えられるらしいが、翻訳家・鈴木恵は男性である。翻訳の良し悪しを評価できる素養を私は持たないが、硬質ながらも単調な言い回しが気になる菊池光に比べ、よりしなやかでスマートな文章に仕上がっており、一人称であるからこその魅力を伝えている。
    ソフィスティケートの極みともいうべき「深夜プラス1」。終幕をそのままに表したものだが、名作に相応しいタイトルを付けたライアルは、この時まさに神懸かっていたのだろう。

  • 1965年発表
    原題:Midnight Plus One

  • 久しぶりに再読、こんなもんだったっけ。昔夢中で読んだんだが、至って普通。

  • 何度読んでも魂が震える。菊池光の訳も良かったが今回の新訳も良い。話が良いんだから当然だ。15年前の戦争で特殊部隊で名を上げたキャントンことドライバーのケインは、弁護士メルランの依頼で、シンプルな仕事を引き受けた。マガンハルトという実業家を大西洋岸からフランス、スイスを横断してリヒテンシュタインへ約束の日時までに車で送り届けるというものだった。しかし、マガンハルトはフランス警察に追われ命を狙う者たちもいるからと、アル中のガンマン、ハーヴィーが雇われた。そしてマガンハルトの連れて来た美人秘書の4人で車に乗り込んだ。派手なアクション、駆け引き、一か八かの賭け。アルコールに逃げ出したくなる極度の緊張と逃げ、セクシャルで魅力的な女、庶民とは違う価値観に生きる実業家、ケインの過去に関わってきたレジスタンスの仲間たち。ケインは命を狙う側ではなく狙われる男の側にいることに義を感じる。時に弱さを見せながらもプロとしての覚悟が上廻る。葉隠の武士道のような死の覚悟を照れで隠しながら、常に甘えず頼らず自分の足で立ち、やり遂げる。そしてラストのどんでん返し。マガンハルトの命を狙っていた男の謎が明かされケリをつける。無駄のない文章、科白と動き。共に戦った信頼が生んだ男たちの友情。最後まで痺れっぱなし。

  • 楽しめた。昔の小説だな、と感じるところはあれどキャラクターの造形が良い。簡潔で読みやすいのは新訳のおかげなのかな。でも、もっと若いうちに読んでおけばよかったかも

  • ハードボイルド。男が請け負った仕事は金持ちの投資家を1人、国境越えて逃すこと。ところがもう1人スナイパーが現れてボディーガードをすると言い出し、逃す方も秘書の女を連れてきて一緒に逃げると言うし、なかなかの面倒に発展する。終始、シリアス。

  • 「深夜プラス1」(ギャビン・ライアル : 鈴木 恵 訳)を読んだ。
    新訳ですね。旧訳(菊池光)で読んだのはもう何十年も前だ。新訳はさらっと読みやすくなってる気がする。

    『だが、キャントンでいるということは数えられない。』(本文より)

    そうなんだよな。
    そういうことなんだよな。

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