深夜プラス1〔新訳版〕 (ハヤカワ文庫NV)

  • 早川書房
4.00
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  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150413835

作品紹介・あらすじ

敵の追撃をかわして、タイムリミットまで突っ走れ。冒険小説の名作が装いも新たに登場

感想・レビュー・書評

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  • 「顧客がブルターニュからリヒテンシュタインに行きたがっているんだが。それを望まない連中がいる。ドンパチもありうる。連れていってやってくれないか?」SOEの元工作員ルイス・ケイン(キャントン)が、パリの弁護士アンリ・メルランから依頼を受けるところから物語は始まる。アル中(dips)のボディガードのハーヴィー・ラヴェルとのコンビで富豪の顧客マガンハルトを守りリヒテンシュタインへのドライブ中、行く手を阻もうとする敵が幾重にも待ち構える。二人はそれぞれに過去の心の傷を抱えているが、プロフェッショナルとして命懸けで使命感を果たそうとする。ドライユーモアを含むテンポのいい会話や、名車、銃などのスペックも楽しめ、映画を見ているような一冊でした。

  • 著者、ギャビン・ライアルさん、どのような方かというと、ウィキペディアには次のように書かれています。

    ---引用開始

    ギャビン・テューダー・ライアル(Gavin Tudor Lyall、1932年5月9日 - 2003年1月18日)は、イギリスの冒険小説・スリラー小説家。

    ---引用終了

    で、本作の内容は、次のとおり。

    ---引用開始

    腕利きドライバーのケインが受けた仕事は、ごくシンプルに思えた。相棒となるボディガードとともに、大西洋岸のブルターニュからフランスとスイスを車で縦断し、一人の男を期限までにリヒテンシュタインへ送り届けるだけだ。だがその行く手には、男を追うフランス警察、そして謎の敵が放った名うてのガンマンたちが立ちはだかっていた! 次々と迫る困難を切り抜けて、タイムリミットの零時1分過ぎまでに、目的地へ到達できるのか? 車と銃のプロフェッショナルたちが、意地と矜持を見せつける。冒険小説の名作中の名作が、最新訳で登場!

    ---引用終了

    冒険小説というジャンルの作品は、ほとんど読んだことがない。
    本作は、内藤陳さんのおすすめ本ということで、手にした次第。
    新たな世界をかいまみることが出来たという点では、良かった。
    新たな世界というのは、外国を舞台にした作品ということ。
    本作では、フランス、スイス、リヒテンシュタインという国を登場人物が移動する話になっており、都市名も出てくる。
    リヒテンシュタインという国は知らなかったので、その辺を知ることが出来たのは良かった。

  • 20年くらい前に旧訳を読んで以来の再読。前回はやたら面白かった記憶であったが、今回はふつうに面白いといった印象であった。第二次世界大戦の少し後という時代設定は理解するも、やはり現代のエンターテイメント作品と比べると話の筋がやや古く感じるのは否めない。それでも各登場人物の個性が際立っていて、この作品が名作であることに異論はない。

  • 第二次大戦で大活躍した元レジスタンスの英雄”キャントン”ことイギリス人のルイス・ケインとヨーロッパではトップ3に入るガンマンで元シークレットサービスのアメリカ人・ハーヴィー・ラヴェルのコンビが、殺し屋と警察双方に追われる実業家マガンハルトとその美人秘書をフランスからスイスを経由し、リヒテンシュタインまで送り届けるという護送する依頼を受ける。タイムリミットは3日後の零時ジャスト。その間、殺し屋たちから命の危機にさらされ、警察からも執拗な追跡を受けながらも自分の生き方を曲げないルイスとハーヴィーの姿を描いたハードボイルド冒険小説の古典的名作。

    本書の存在はかなり前から知っていたが、今まで未読だった。2016年に新訳が出ているので新訳の方を読んでみた。
    1965年に発表された本書であるが、本書を読んでいるとハンフリー・ボガード主演の『カサブランカ』や『三つ数えろ』のような名作白黒映画を思い出した。セリフや主人公達の行動がいちいち格好いいのだ。

    ハードボイルド冒険小説としては銃撃戦あり、騙し合いあり、裏切りあり、と極めてオーソドックスなストーリー。かといって今の冒険小説にありがちなジェットコースターアクションでは決してない。
    順序よく定期的に敵や警察の襲撃に遇い、それを撃退しながら目的地へ車や列車を使って進んでいくという、どちらかというとロードムービー的な要素が強い。そして各種イベントの間に主人公達の小気味よい会話が繰り広げられ、読者はそこで一息つく。

    『深夜プラス1』の魅力はなんと言ってもそのキャラクターとセリフ。
    元英国特殊工作員“キャントン”ことルイス・ケイン、そして腕は凄腕なのだがアル中のハーヴィー・ラヴェル、この二人の男の美学を読者は本書を読みながら感じまくることができる。
    例えば、ルイスとハーヴィーは任務中に警官は殺さないと決めている。ハーヴィーがそれをマガンハルトに説明するセリフがまた痺れる。
      『おれたちみたいに逃げる連中なんか、お巡りは気にしない。それもあたりまえだと思っている――むしろ歓迎する。
      逃げるのは敬意を示すことなんだから。だけど、お巡りを殺すやつは?そいつは逃げなかった。敬意を示さなかった。つまりそいつは法を犯してるだけじゃなくて、法を破壊しようとしてるんだ。
      お巡りが自分たちの象徴していると考えるものに、ことごとく挑戦しているわけだよ。法、秩序、文明――そしてすべての警官に。
      それはもう他人事じゃない。そいつだけはつかまえなきゃならない』

     自分たちにとって現在は敵である警察官にも敬意を払う。もう『男の美学』という言葉しか見つからない。

    そしてルイスとハーヴィーの掛け合いを読んでいると、どうしても『ルパン三世』のルパンとその相棒のガンマン・次元大介を思い出してしまう。伝説の英雄“キャントン”がルパンというのはちょっと軽すぎるかもしれないが、敵の声色使って相手を騙すところや、敵になりすまして相手をやり込めるなんてところは変装が得意なルパンと共通する。
    そして、ハーヴィーはそのまま次元大介だ。公式的には何の発表もないが、たぶん次元大介のモデルはこのハーヴィー(ちなみに漫画『ルパン三世』で次元大介が初登場したのが1967年10月号『週刊漫画アクション』第10話『ルパン殺し』。『深夜プラス1』の発表が本国では1965年、日本語訳初出が1967年なのでその可能性は高い)。

    ガンマンとして随一の腕を誇りながらもアル中で酒を飲まないと手が震えてくるハーヴェイと帽子を被らないと正確に銃が撃てないという弱点を持つ次元大介、弱点を持つガンマン、そしてクールな男の渋みが持ち味というところが二人の共通点だ。
    その脇を固めるのが時折不可解な行動をとるマガンハルトの美人秘書ミス・ジャーマン(『ルパン三世』的な立場で言えば峰不二子かな(笑))とルイスの元恋人のジネット。彼女達とルイス、ハーヴィーとのやりとりもおしゃれで素敵だ。

    『深夜プラス1』は冒険小説の古典であり、数々の作品の元ネタとなってきた。
    先ほどの『ルパン三世』やタイムリミットがあるなか二人組の相棒同士が困難な任務に挑む話など、それこそ星の数ほど作られているが、本書が元ネタだと思われるものがなんと多いことか。それだけ、今の時代二番煎じ、三番煎じのモノが溢れているということなのだろう。

    本書は今から50年以上前に書かれた小説であるが、全く古さは感じない。むしろ、ハードボイルド冒険小説とは本来こういうものかと新鮮さを感じたほどだ。
    冒険小説ファンを名乗る読者人なら一度は読んでおかねばならない一冊だろう。

  • ゴールデン街の故内藤陳さんの店、深夜プラス1はこの冒険小説(冒険小説!って最近聞かんよな)から取った店名。
    主人公のルイス・ケイン(キャントン)とその相棒?役のアル中のガンマン、ハーヴィ・ラヴェルのキャラクターが秀逸。これぞハードボイルド小説、という感じでとてもかっこいい。

    作者のギャビン・ライアルは他にも良い小説を書いているようだが、キンドル化はもちろん、ハヤカワ・ミステリになっていた邦訳もほぼすべて品切れ絶版状態のようで、手に入れるなら神保町のその手のミステリが積んである店で探すしかないようだ。とりあえず早川さんには過去の名作のキンドルでの復刊を望む。

  • 名作冒険小説の新訳版!
    この会話、サイコーにかっこいい!
    初めて読んだのは中学生だったかな、大人になるとより楽しめる気がする。

  • 冒頭の1ページからラスト1行まで痺れる小説など滅多にあるものではない。冒険小説の名作として散々語り継がれてきた「深夜プラス1」だが、読者が年齢を重ねる程に味わい方も深くなる大人のためのエンターテイメント小説であり、陶酔感でいえば当代随一であろう。優れた作家のみが成し得る唯一無二の世界へとどっぷりと嵌り、惜しくも最終ページへと辿り着いたあとは、軽い恍惚感と心地良い余韻にしばし浸る。他の作品では今ひとつ精彩が無いギャビン・ライアルが遺した奇跡のような「深夜プラス1」。発表は1965年。新訳を機に再読する。

    第二次大戦終結から二十年後。元レジスタンスの闘士ルイス・ケインは、無実の罪で警察に追われる実業家をフランスからリヒテンシュタインまで護送する依頼を引き受ける。護衛役となる相棒には、元シークレットサービスで欧州3位の腕を持つガンマン/ハーヴィー・ラヴェル。大西洋岸のブルターニュに到着した実業家と秘書を乗せ、目的地に向けてシトロエンDSは闇の中を疾走する。その先に待ち受けるのは、正体不明の人物に雇われた殺し屋たちの罠。予測不能の強襲に対し、ケインらは培った経験と技術で応酬する。

    物語の構成は極めてシンプルで、黒幕となる人物も意外性としては低い。だが、複雑なプロットを排した故に、展開するストーリーの密度が濃くなっている。一瞬の判断で危険を察知/回避し、敵を如何に欺いて翻弄するか。プロの仕事に徹するケインとラヴェルの伎倆が燻し銀の輝きを放つ。

    成熟しながらも過去への感傷を捨てきれない男のロマンティシズムが横溢し、独自の世界観を創り出す。主人公や脇役、端役に至るまで、その場/その状況に応じてぴたりとはまる言動をとるのだが、これが実にクールでスタイリッシュなのである。登場人物の信条やレトリック、銃器や自動車へのこだわりなど、本筋よりも細部を味わうことに喜びを見出す〝欲深い〟冒険小説ファンにとっては、読めば読むほど味が出るに違いない。殺し屋を「ガンマン」と呼称するところなど、懐古的でありながらも、舞台をヨーロッパに移した「ウエスタン」としても捉えることでき、新鮮な印象を残す。

    キャラクターとして人気の高いラヴェルだが、ドライなケインに比してウエットな性格であり、中途からは殆ど役に立たない。硬い殻の中に弱さ/ナイーブな一面を持つラヴェルは、或る種の女々しさも併せ持つハードボイルドの世界を象徴する人物ともいえる。ハードに生きる男の理想像を描きつつ、ラヴェルのような鬱屈した人物を配置したライアルの巧さが光る。再び暴力の世界へと戻り、己を律することで仕事を成し遂げたケインの自信と誇り。ラストシーンにおいて、対極的に収束する二人のアイデンティティー。その対峙は一層際立っている。

    名前から女性によく間違えられるらしいが、翻訳家・鈴木恵は男性である。翻訳の良し悪しを評価できる素養を私は持たないが、硬質ながらも単調な言い回しが気になる菊池光に比べ、よりしなやかでスマートな文章に仕上がっており、一人称であるからこその魅力を伝えている。
    ソフィスティケートの極みともいうべき「深夜プラス1」。終幕をそのままに表したものだが、名作に相応しいタイトルを付けたライアルは、この時まさに神懸かっていたのだろう。

  • 面白いんだけど、翻訳のせいなのかな?読みにくく、状況が頭に入ってこなかった。終盤のシーンとか。

    あと、主人公を取り巻く人間関係が、都合良すぎではないかな。評判ほどではないかな。

  • 3.2

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