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Amazon.co.jp ・本 (320ページ) / ISBN・EAN: 9784150415334
作品紹介・あらすじ
廃止予定の宇宙停留所には家族の星へ帰るため長年出航を待つ老婆がいた……少数者に寄り添う心温まる未来を描く短篇集、文庫化!
AIがまとめたこの本の要点
この本を表す言葉
みんなの感想まとめ
未来の社会における孤独や人間関係の温かさをテーマにした短編集で、著者の豊富な理系知識を基に描かれる物語は、希望と優しさに満ちています。特に、マイノリティや女性科学者を主人公に据えた作品群は、社会の差別...
感想・レビュー・書評
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キム・チョヨプさん初読です。93年生まれ、韓国SF界新進気鋭の作家は、バリバリのリケジョでした。でも、全く堅苦しさのない、むしろ優しさが感じられる筆致でした。在学中の文学賞受賞作を含む著者のデビュー作で、 7篇の短編集です。
どこか遠い場所や未知な存在への憧れがあるという著者は、豊富な理系知識とそのアイディアを駆使し未来世界を描きます。巧みなのは、明るいはずの未来世界で、こぼれ落ち孤独な人に目を向けた構成で、希望を示している点だろうと思います。
私たちが今暮らす社会の差別や抑圧・孤独が、未来でも見られるのは悲しいですが、著者は人間の本質に迫り、私たち個々の価値を認識して人との距離を大切にする描写が、読み手に訴えてくるようです。この愛情ある表現が魅力なのでしょう。
現在と未来との差異が際立つほど、何気ない他者とのコミュニケーションの温かさが恋しく、人は温もりや絆を求めるものなのかもしれません。
著者の「宇宙の開拓が進むほど、宇宙に存在する孤独の総量を増やしていくだけ」「どの時代を生きようとも、お互いを理解しようとすることを諦めたくない」という言葉が、全編に共通する想いなのかもしれません。
恐ろしいほどのスピードでAIが進歩している昨今ですが、人の不完全さが大切にされる世の中がなくならないでほしいものです。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
韓国の新進気鋭のSF作家 キム・チョヨプの初短編集。
ほとんどの作品がマイノリティを主人公にしている。特に女性科学者が多い。これらの主人公はマイノリティである一方で、社会的には成功者達である気がするので、その辺をどう捉えたらいいんでしょうか。フェミニズム文学?マイノリティ文学?(そもそも間違っているかも?)についての理解不足が露呈している。
この短編集は地球滅亡などの大きな危機に立ち向かうものではなく、科学技術の発展した近未来での人間の心理を題材にしたものになっている。ハードの進化によるソフトの変化を考えるうえで非常に面白い作品群だった。
ハード面については、サイボーグ化といった身体改造が多かった気がする。身体にメスを入れることへの抵抗が少ないのかな、と感じた。もちろんSFなのでありがちな設定ではあるのですが。 -
韓国で注目されている、若手作家さんの作品で、
SFを軸に描かれた短編集なのですが、SFの面白い
部分と著者の専門分野でもある物理学を上手く掛け合わせた、サイエンスSFではないかと、勝手に名づけてしまいましたが、新たなSFのジャンルだと実感しました。
SFの定義とは、なんぞやという論争がよく起こりますが、それは、著者の捉え方によって、定義が
できるのではないかと、私の個人的な意見としてあります。
ドラえもんの作者である藤子・F・不二雄氏は、SF=少し不思議という捉え方をなされたりしてます。
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7つの短編SF小説
読んでいる間は
広い宇宙の中で
ひとりぼっちに見える地球を俯瞰しながら
忘却や断絶
分離主義などの
ここ 地球上にある宿命や憂いの
根っこのようなものを
ずっと望遠鏡で拡大して見ているような感覚でした
すべての物語に希望があり
心が暖かくなる気づきがあったのに
なぜか少し泣きたくなった
これからもこの場所は
困難な問題を抱えながらも
変化していくんだ
すべての物語を読み終えて
その困難さに立ち向かっていく
静かな覚悟が芽生えた
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韓国科学文学賞大賞作品を含むデビュー短篇集。7篇どれもわくわくしながら読んだ。短くてもしっかりSFでしっかりヒューマンドラマなのがスゴい。
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韓国の作家さんによるSF短編小説。
孤独や寂しさといった、どちらかと言うと陰の感情を織り交ぜながら優しく綴られた小説。
SFなので、異星人との初邂逅!とか、ワープホール通過!とか、壮大な舞台設定があるのだけれど、描かれているのは心情を主軸としたよりミクロなドラマ。なんというか、このギャップの完成度が高くて圧倒されました。作者さんの他の本も読みたいと思わせる作品でした。 -
SFにハマり、昨年末からゆっくりと読んでいました。SFだけれどもどこか懐かしく、優しさに包まれた1冊でした。
韓国語訳だからか、それとも私がSFに読み慣れていないからかか、はじめは読むリズム?ペースを掴むのが難しかったのですが、集中して読めるようになってからはこの世界観にハマってしまいました。
「わたしたちが光の速さで進めないなら」と「館内紛失」が好きです。
今年はたくさんのSFに触れたいので、また他の作品も読みたいと思います。表紙も可愛いので集めたくなりますね。 -
7つのSF短編集です。著者のキム•チョヨプさんは、韓国の工科大学で化学を専攻。魅力的な科学内容に溢れています。
この本は、物語の進行が、私にとって非常に心地良いものでした。話の始まりは、
???だったものが、キムさんお得意の科学でもって、徐々に謎が明らかになっていきます。その科学も多岐に渡っています。生物学、脳科学、宇宙に至るまで。それらが、物語とうまく絡み合っており、興味深く読むことができます。未知なるものへの憧れと、未来の世界でも、人と人が分かり合えない悲しさ。とても優しい文章で綴られています。主要な登場人物、例えば、宇宙飛行士、脳科学者などが、すべて女性というのも、この本の特徴の一つだと思います。
科学と、人の繊細な心情が、絶妙に絡み合った一冊です。
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評価の高いSF小説という事で手に取りました。7編の短編が収録されてます。
SFではあるんだけど、ガチのSFというより、SFを背景にした、日常の一コマを切り取ったような、そういう感じ(言語化放棄・・!)の作風です。一気に読み進められました。
各話、余韻を残して終わる結末が多く、感傷的とでもいうのか、私の語彙では表しにくい、ちょっと変わった雰囲気のお話たちでした。 -
韓国SFを読むのはおそらく初めて。
クローン技術やコールドスリープなんかのSF要素満載で未来的なのに、なぜか懐かしいような不思議な感覚を感じながら読んだ。舞台は未来的SFでも、出てくる人間の孤独や後悔、誰かを思う気持ちは今と変わらないからかな。
個人的に「スペクトラム」「感情の物性」「わたしのスペースヒーローについて」あたりがとても好きだった。ありそうでなさそうで、でも完全に否定もできない不思議な世界で大切な人との別離を経験し、喪失感を感じながらも日々を生きる人達の人生の機微。その描かれ方がさみしくもあり、やさしくもあり。
読後泣けるほど悲しいわけじゃないけど、胸がひんやりするような寂しさが残った。嫌な感じの寂しさではなく、少し温度のあるひとりで抱えられるくらいの寂しさ。それも含めてすごく好きな一冊だなぁと。 -
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気持ちとしては星10つけたいくらい好き
もうすっごく好きだった
SF小説は昨年読んだケン・リュウさん以来2回目なのだけど、こちらも初心者には読みやすいSFだったよう。
今よりも技術がずっと進んだ世界のことを書いているだろうに、それなのに今の世界と同じように悲しみがありふれている…
人間の変わらなさを感じる話だと思った。
表題にもなった「わたしたちが光の速さで進めないなら」はまさにそう思うようなお話で、胸が苦しくなった。技術革新の裏にある切り捨てられた人の理不尽、悲しみ…。
「わたしのスペースヒーローについて」は、設定としてはかなり悲しいのだけど、そこはあっさりと書かれていて、ジェギョンおばさんの驚きの行動と、ソヒとガユンがたどり着く答えが、普通あり得ないような個人的な理由で、なんというか面白みを感じた。ガユンもジェギョンと同じ経験をすることで、ジェギョンの気持ちを理解できてしまったけれど、ジェギョンが見なかった宇宙の果てへ行き、最後の数行語られるガユンの気持ちがすごく清々しい、、!
その他の作品も全て良かった。「感情の物性」は、もうちょっと掘り下げて欲しかったけど、あとがきで同じテーマで長編を書きたいとあるので、いまから楽しみ。
93年生まれの著者、これからどんどん作品を出されるだろうことがとても嬉しい。 -
韓国の作家さんのSF短編集。
SFならではの高度な技術進歩が、人間の不完全さをかえって愛すべきものにしているような矛盾を感じた。
人間って本当によく分からんところがいいよねっとなる一つ一つが優しく素敵な話。 -
この短編集は一貫して
人間の知的好奇心が描かれているように思う
私たちは感情があるからこそ苦しんでいるのに
苦しみさえも取り上げられたくないという
矛盾した存在であること、
目に見えない物こそ物質としての所有欲があるのではないか…などとSFを超えた哲学的問いかけがかなり読書欲を刺激してくれた。
人と“何か”の善意によって、
あるいは善意とも言えない、
本能的な、偶発的な、何かによって起こる
“こうだったら世界って素敵”って思えるような
心温まるストーリーの連続。
こんなにも好き!って思えた短編集は初めて
【巡礼者たちはなぜ帰らない】
感情のない村。愛が存在しない村。
マイナスの感情を知らない子どもたち。
大人への儀式として地球へ旅立ち、
なぜか半数は帰ってこない。
そして誰も疑問を持たない。
その構造に主人公だけが何かがおかしいと気づく。
この筋書きはSF的なのに
「人は感情を持つからこそ美しい」
という、とても普遍的なテーマ。。
これは“地球と村の対比”の物語。
やっぱり、世界は愛でできている。
【館内紛失】
魂をデータ化し、死後もそこにいることが可能
になるという設定。
物語の中で強く響いたのは、
「人は絶えず変わっていく。変わらないままのデータはただの魂の剥製ではないのか」という指摘だった。
(以下すごく感想です↓)
私はふと、父がよく話していた死生観を思い出した。
「葬式は、死者のためではなく
“残された人のため”の儀式だ。」
でも、データとして死者が残る世界ではどうなるのだろう。儀式は役割を失い、むしろ遺された側を引き留めてしまう。
データとして残ることは、残された側の執着を逆に増幅し、残されたデータ側からしても、死後まで“消費され続ける自分”という呪縛が生まれる
だからこそ、この短編が刺した痛みは
未来のテクノロジーではなく
人は変わることでしか生きられないという
本能への肯定。
私たちは成長し続ける。何かを好きになったり、
急に嫌いになったりする。
肉体も絶えず細胞が入れ替わっている。
変化こそが生きている証なのだと思う。
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1つひとつの短編に余韻があって、しばらくひたっていたくなる。
SFだから、未知で私たちの知らない世界のはずなのに、どこか懐かしい郷愁のような感覚がずっとあって、そこにひきつけられたのかもしれない。
読んでいて優しさと哀しみという絵の具をパレットで混ぜ合わせて、新しい名もない感情を胸に抱いた気持ちになった。
色があるとしたら、きっと、すごく澄んだ人を育んでくれるような色だ。
「スペクタル」「わたしたちが光の速さで進めないなら」が好き。 -
キム・チョヨプさんの短編集です。
『スペクトラム』は、宇宙探索中に遭難したヒジンが、惑星で出会った「彼ら」とのお話し。
「彼ら」の中のルイに助けられ、共に生活を送ることになりますが、言葉は通じない、表情もわからない中で、時間を共有することで信頼関係が深まっていく様子がとても良かったです。
それぞれ全く違う個であっても、心を寄せることができることを感じた作品でした。
普段SFを読まない私でも読みやすく、どこか儚くて切ないのに温かい気持ちになる作品ばかりでした。 -
いい……!SFって全然触れてこなかったけど、これは私みたいな純文学好きにもハマる本。
韓国文学熱、再燃しそう。 -
遠い未来や宇宙を舞台にしながら、描かれるのは派手な出来事ではなく、誰かを待つ時間や、届かない距離の中で生きる人々の姿。
SFという枠組みを通して、人の感情や選択を静かに見つめる短編集。
SFは考えずに楽しむもの、という印象が強かったが、ここまで静かで余白の多い作品は初めてで新鮮だった。
SFというフィルターを挟んでいるはずなのに、かえって感情が生々しく立ち上がってくるのが不思議だった。
時間と距離の隔たりが身体感覚として伝わり、説明されない部分に想像が自然と入り込む。
いまだかつて見たことのない世界に思いをはせる、その時間そのものにロマンを感じる一冊。 -
宇宙系SF多めの短編7作。おもしろかった〜
2つめの『スペクトラム』と、4つめで表題作の『わたしたちが光の速さで進めないから』が特にお気に入り。
なんで人間は、外へ外へ行きたがるんだろうか。
昔はとても小さいコミュニティの中で狭い範囲で暮らしていたはずなのに、文明が発展してどんどん外に広がって、人口が増えたからっていうのもあるだろうけど、どこまでいくんだろうか…
人間のコミュニティも広がれば広がるほど薄くなって、宇宙の膨張みたいに1人1人の感覚が広くなって孤独になるよなぁ。悲しい。寂しいよ。
会いたい時に会えないなんて辛い。会える範囲にいたい。
もっと狭いコミュニティの中で行きたい。
これ以上広がらないでほしい。 -
どの作品にも共通してあるのは愛。この先、技術が発展して宇宙開発が進んで本当に本書のような未来がやってきても愛だけは消えないで残ると思う。消えないで欲しいと思う。
とくに好きな作品はスペクトラムと表題作です。昔からSFが好きです。素晴らしい本に出会えたことに感謝します。
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