奇妙な論理 1 (ハヤカワ文庫 NF 272)

  • 早川書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (318ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150502720

作品紹介・あらすじ

「相対論は嘘である」「進化などなかった」「虹彩を見れば病気がわかる」など、壮大な科学理論から健康上の身近な問題まで、奇妙奇天烈な説を標榜する者は跡をたたない。なぜそれらにたやすく騙されるのか?世に蔓延する擬似科学の驚くべき実態を、科学解説書の第一人者がシニカルかつユーモアあふれる筆致で描く。「トンデモ科学を批判的に楽しむ」態度の先駆を成す不朽の名著。

感想・レビュー・書評

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  • 1952年に書かれた、トンデモさん研究の嚆矢。
    いまでも、似たようなトンデモさんの活躍は続いている。

  • 原書は50年以上前に刊行された本だが、現代にも通じる普遍的な内容を含んでいると思う。

    「なぜ勉強しないといけないのか」と子どもに質問されたら、「他人に騙されないように」というのが、悲しいことだがもしかすると現代ではもっとも説得力のある答えなのかも知れない。

    それにしても、今日に至ってもなお「誰かエライ人が顕れてこの世を救ってくれる」などというまやかしを信じたがる人がまだ多くいるのには驚かされる。そしてそういう欺瞞を流布するための講演会のポスターが臆面もなく貼られていたりするのを見ると、腹立たしささえ覚える。


    悪意があるかどうかは別として、人を騙そうとする言説には様々なトリックが仕掛けられている。本の紹介とは趣旨がずれるが、この機会にいくつか紹介したいと思うのである。

    まず、われわれ自身ついつい犯してしまいやすいのが、【根拠のトリック】である。

    これは、簡単に言えば、主張にとって都合の良い事実だけを採り上げて根拠とするやり方である。
    岩波現代文庫の『ご冗談でしょう、ファインマンさん』はとってもお茶目な本であるが、その中でファインマン教授がここだけは真面目な口調で述べている個所がある。

    “たとえばもし諸君が実験をする場合、その実験の結果を無効にしてしまうかもしれないことまでも、一つ残らず報告すべきなのです。”
    (下巻・p295)


    それから、【確率のトリック】。

    『奇妙な論理〈1〉』の最終章に登場するあわれなライン教授は、このトリックの呪縛から抜け出せなかった人だ。

    百万回に1回という奇跡がもし身近で起こったら、誰でも奇跡を信じてしまうだろう。だがその背後には、同じ条件の下でも99万9999回の「奇跡は起こらなかった」という事実があることを忘れてはいけないのだ。

    三番目に紹介したいのが、【論理のトリック】。

    「AであればBである」が真実なら「BでなければAではない」もまた真であるが、「AでなければBでない」とは必ずしも言えない。
    そこの論理をうまくすり替え、巧みな文章で飾り立てることによって納得させてしまおうとする輩もいる。

    四番目が、【定理のトリック】。

    経済や歴史の通説(定説)には、それに反する事実や文献がいくらでも見つかる。それをことさらクローズアップし、数学や物理学の法則や定理(矛盾や反例を許さない)に対するのと同じ考え方をもって通説や定説をひっくり返そうとする例がよくある。


    以上、とりあえず思いつくものを掲げたが、たぶん他にもあると思う。

    実はセールストークのテクニックとしても、このようなトリックは往々にして使われる。だがそれを排除して客観的に正しいとされたことだけを話題にしなければならないとしたら、私たちの会話はとんでもなくつまらないものになってしまうだろう。

    私たちは、こうしたロジックやトリックとうまくつき合う術を学ばなければならないのだと思う。

    最後に、かのニュルンベルク裁判における、ある証言を掲げておく。

    “国民にむかって、われわれは攻撃されかかっているのだと煽り、平和主義者に対しては、愛国心が欠けていると非難すればよいのです。
    このやりかたはどんな国でも有効ですよ。”
    (ヘルマン・ゲーリング)

  • 疑似科学批判のための基礎的な本。ハヤカワから文庫化。

    人に貸して返ってこないなーと思っていたら家の中から出てきた。返してもらってたのだった。

  • 1950年代の出版だが、現在も同じような疑似科学が存在しているので、参考になる書籍である。カール・セーガンの同様な本も出ている。

  •  擬似科学批判の古典。原書が出たのは今から60年も前。解説は山本弘で,彼の人生を変えた本ということだ。この本が邦訳されなかったら「と学会」はなかったのかも。
     60年前のアメリカも,今の日本も,トンデモな説が結構影響力をもっているのは変わらない。科学時代が始まって以来,科学を騙るまがいものがはびこるのは,普遍的な現象のようだ。特にアメリカっぽいのは反進化論。あと,論者たちはかなり壮大な理論体系を脳内構築しているらしいのも特徴的。
     地球が平らだとか,空洞だとか,あからさまにデタラメっぽいのから,相対論を否定するためにリーマン幾何学の破綻を示そうと,平行線公準を「証明」してしまおうという一見それっぽいのまでいろいろあるけど,どれも話にならない。言ってる本人は大真面目で確信に満ちているのだが…。
     医療とか,心理学の関係する分野では,特にトンデモが隆盛を極める。なぜかというと,儲かるし,なんだかわからないけれどうまくいったように見えるからだ。病気は何もしなくても良くなることがあるが,それをホメオパシーのおかげだとか勘違いしてしまう。
     フロイトの弟子でデタラメ心理分析とかやってたらしい人も取り上げられている。というかフロイト自身かなりその気が…。
     結構有名人も擬似科学にはまる。エジソンは心霊現象を信じていたらしいし(p.303),文豪ゲーテもニュートンの光学を否定する支離滅裂な色彩論をものしてる(p.89)。
     古い本なので,状況がかわってることもあるのは仕方ない。 確実な科学とダメダメな非科学の間に,「賛否両論のかしましい理論」として「宇宙が膨脹しつつあるという理論」を挙げてる(p.21)のとか,「くすりというものは多くの場合自然界に見出される化合物」という記述(p.182)とか。

  • 読んだときは知らなかったけど、「歴史的名著」らしいです。
    こんな面白そうな本、読まないわけにはいかないじゃん!
    でも名著だと思って読んだら拍子抜けするかもね。気軽に読むべき。ガードナーの突っ込みが素敵だった。

  • 懐疑主義はマーチン・ガードナーを以って嚆矢とすると言われているかと思いますが、サイエンスの周辺領域を広範囲に吟味した古典です。「オルガノン」とか「エホバの証人」とか「カイロプラクティック」とか、この本で初めてその出自を知ったものは数しれません。

  • 「奇妙な論理I」

    著者 マーティン・ガードナー   訳 市場泰男
    出版 早川書房

    p37より引用
    “私たちも本書を読んだあとでは、
    未来の科学的奇人にはじめてあったとたんに、
    それと認識できるようになるかもしれない。”

    科学解説かである著者による、
    疑似科学をまとめて解説した一冊。
    文庫二分冊のうちの上巻、
    原著が出版されたのは1952年です。
    巻末の解説は、
    と学会会長である山本氏が書かれています。

    上記の引用は、
    ベテランの医師や警官の経験に基づく勘に匹敵する物を、
    身に付けられる可能性についての一文
    何かおかしな事を言っている事にピンとくる様になれば、
    嫌な思いをする事も減るのではないでしょうか。
    元祖「トンデモ本の世界」とも言える一冊ですので、
    それらのシリーズが好きな方なら、
    文句無く楽しめます。

    ーーーーー

  • 奇妙な論理を展開する疑似科学を紹介した名著。
    特に気難しい内容ではなく、サラリと読めて面白い。

  • 飛行機の中で読むのに最適だった。
    あっというまの2時間を過ごせます。

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著者プロフィール

1914年アメリカ・オクラホマ生まれ。批評家、数学者、サイエンス・ライター。ルイス・キャロルその人と作品に関する世界有数の専門家。これまで100冊以上の著書を持ち、『サイエンティフィック・アメリカン』誌上では1956~1981年まで25年に渡って人気コラム「数学ゲーム」を連載した。『ゲーテル、エッシャ、バッハ』のダグラス・ホフスタッターからも「20世紀アメリカの生んだ偉大な知性」と評されている。邦訳書に『マーチン・ガードナーの数学ゲーム』(全3巻、日経サイエンス)、『ルイス・キャロル――遊びの宇宙』(白揚社)、『奇妙な論理』(全2巻、ハヤカワ文庫)など多数。

「2019年 『詳注アリス 完全決定版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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