宇宙の果てまで すばる大望遠鏡プロジェクト20年の軌跡 (ハヤカワ文庫NF)
- 早川書房 (2006年5月9日発売)


- 本 ・本 (432ページ)
- / ISBN・EAN: 9784150503086
感想・レビュー・書評
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元国立天文台長の小平桂一先生が、ハワイに大型望遠鏡"すばる"を創設するまでの実録。
海外に設置した日本の研究施設第一号とのことで、その構想から~まさにゼロから~スタートし、各国の類似の施設を調べ、官僚や政治家に説明し、理解を求めて奔走し、やっと予算が着くことが決まったら今度は運用面の問題や派遣者のケアの問題など細かいことまで、関係の皆さんが様々苦労され、粘り強く問題を解決されてきたことがよくわかる。
それに、施設に関する記録だけでなく、その時々の国内外の政治情勢やご本人の気持ちなども書かれていて、小説風に読み進められた。
今各地に日本の研究施設が設置されているが、その先駆けとなり、かつ、実際に数々の高い成果も出しているすばる望遠鏡。小平先生の国際的な広い視野と先見の明に改めて感服。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
お金の使い方として一番贅沢で、でも、一番賢いと思います、こういうのは。そして結局払われるべき犠牲は払われてるんですよね、こういう話には。
そして著者に聞いてみたい、意地悪でも何でもなく研究者としての仕事に邁進していたかったか?という素朴な質問を。それが個人ベースに落とした時には、一番のprice you payでしょうから。 -
エレガントな文章。
どこか昭和な雰囲気があってそこがまたたまらなくいい。
名著。 -
「すばる」望遠鏡完成までの、20年に及ぶ歴史が描かれている本です。
計画の実現のための、著者たちの驚異的な努力にはただただ頭が下がります。
あらゆる年代の方の心に響く内容の本ですが、できれば若い方に読んでいただき、優れた先人の後に続いて欲しいです。 -
新書だけ読むはずが、大変分厚い本を手に取ってしまった。読書力もないのに、最後まで読み終えたことにホッとしています。ただ世界最大級の望遠鏡を日本ではない外国の地に作ることの大変さと、著者の科学技術に対する未来を見据えた視点に驚かされながら読むことができた。
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世界最大の光学大望遠鏡を、国外であるハワイに設置するという前例のないプロジェクトを成し遂げた天文学者の記録。
約30年間かかって、日本初の国際プロジェクトを実現させた著者の熱意と行動力には心からの尊敬を覚える。我が国の機関が国外に大望遠鏡を設置するという前例のないプロジェクトを、粘り強く、慎重に、可能な限りの方法を使って実現している。
その困難なプロジェクトを進める中で、著者は天文学者をはじめとする他の協力者への感謝や温かい配慮を常に忘れていない。
すばる光学大望遠鏡が、単なるバブル経済の遺産の箱物ではなく、世界トップレベルの望遠鏡として、世界にとって日本が学術的に尊敬されるに値する国になることに貢献できる施設となったのは、著者ならではの国際的な見識によるものだと思われた。
本書は、世界的トップレベルの学術成果をもたらした国際的な基礎科学の一大プロジェクトの貴重な記録であり、小平圭一という稀有な天文学者の奮闘の記録である。
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テーマは宇宙にとどまらない。
国際化の中での日本のありかたと、日本社会の中での研究者(学問)のありかたを本質的に問うている。
自伝に等しいこの本は、最初は研究の世界から始まる。望遠鏡から取得した成果を分析する天文学の世界。しかし、日本では肩身が狭い。天文学に対する理解が少なく、望遠鏡も小さい。
研究を進める途中で、日本で望遠鏡を作る話になる。夢を叶えるチャンスに著者が挑む。その瞬間に、物語は研究から政治・文化の世界へと広がってゆく。
外国に日本国の資産を置くことはできるか?
日本国の資産を外国人に使わせることができるか?
研究者はどのような立場で外国の望遠鏡に赴くのか?
税金は?手当は?法律は?
……と、なる。
著者はこの壁に挑む。真っ向から法律を変えさせる。真っ向から予算を取る。そして本当に実現させる。
天文学という切り口から見てもよし、日本の官僚制度という切り口から見てもよし。 -
近視眼的成果主義に対して、すばるプロジェクトはひとつの答えだと思う。
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産業・経済・政治にからむ問題に直面しつつ、巨大プロジェクト「すばる」において中心となって活動をされた著者による詳細な記録。単純なプロジェクト成功秘話の類いではない重めの内容を、文庫という読者に受け入れやすいサイズの舞台で展開。
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