子供たちは森に消えた (ハヤカワ文庫NF)

  • 早川書房 (2009年1月9日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (432ページ) / ISBN・EAN: 9784150503444

感想・レビュー・書評

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  • ソヴィエト連邦体制崩壊直前の1982~1990年にロストフ州を中心に発生した連続殺人事件を扱ったノンフィクションです。筆者が小説も執筆しているせいか、ミステリー小説の雰囲気も感じさせる描写もふんだんに盛り込まれており、事実でありながら推理小説のように読むことができます。

    主役にあたるのは犯罪研究所から事件の捜査官として抜擢されたヴィクトル・ブラコフ。中盤までは彼を中心に、一部は黒海にも面するソ連のロストフ州をはじめとした各地で発生した、女性や少年が残酷な手口で殺害される連続殺人事件の犯人を追います。登場人物が多く、このあたりは推理小説と同様に本書冒頭にある「事件に関連した人々」を確認しながら読み進めることをお勧めします。地理的な情報についてはそこまで注意を払う必要はありません。終盤は8年以上の歳月を費やして捕らえた真犯人が、どのような経緯で残虐な数多くの殺人に手を染めたかが精神科医などの手によって明らかにされます。

    このミステリー仕立てのノンフィクションの特色はある意味「失敗した捜査の記録」であることでしょう。これがミステリー小説であれば同じ犯人であっても、ここまでの犠牲者を出さずに優秀な探偵や刑事の推理や捜査によって鮮やかに解決していたかもしれません。現実に起こったこの事件は、数多くの捜査員のミス、鑑定作業、民衆の民警(警察)への反感、そして事なかれ主義をはじめとするソ連体制の問題点が犯人の追跡を困難にし、捜査員たちは次々と増える被害者たちを見過ごすしつづけ、ブラコフも精神的に追い詰められます。そこには当時のソ連の社会情勢も色濃く影響しています。

    凶悪なこの事件を起こした犯人の動機は精神鑑定を通して、大量殺人を行うだけの理由が判明します。そこには生い立ちをはじめ、スターリンの政策、ナチスとの戦争といった歴史的背景も影を落とし、精神的・肉体的な疾患を負わされた犯人の暗い生涯が解き明かされます。筆者はアメリカであれば精神異常と判定されていたであろうこの事件の結末については批判的な目を向けます。

    ※こちらの事件自体をご存じない方は、犯人がわかる箇所までは検索などによるネタバレに注意したうえでお読みになることをお勧めします。

  • ロシアの殺人鬼

  • ロシアの殺人鬼、アンドレイ・チカチーロが逮捕されるまでのノンフィクション。
    色々な意味で凄まじい……。

  • 2021/12/18購入

  • 著者はニューズウィークのモスクワ特派員ロバート・カレン。訳広瀬順弘、09年ハヤカワノンフィクション文庫。原著は93年刊。
    1982年ロシア南部ロストフ州にて8年間に53人を殺したアンドレイ・チカチーロの連続殺人事件捜査に取材したもの

  • 読書は次のタイプに分かれる。1.読みたい本、2.資料、3.参考書、4.類書である。テーマを決め、腰を据えて20~30冊ほど読み込めばどんな分野でも輪郭程度はつかめる。ま、ハズレをつかむことも多いのだが、修行を積むとハズレの見極めが早くなる。このようにして読書の枝は分かれ、2~4の本を読むことが増えるわけだが、決して楽しい読書体験とはいえない。それでも珠玉のような一冊と巡り合うためには長い道のりを歩くことが必要なのだ。
    https://sessendo.blogspot.com/2019/06/44.html

  •  四半世紀も前の本だったんだ(゚д゚)!
     小ぎれいなトール文庫ゆえ意外に思ったけど、親本から文庫化まで十数年かかったらしく、初版から再版までもずいぶん間が空いている……( ゚д゚)
     そうか、本書をもとにした小説の映画化作品「チャイルド44」公開に合わせて復刊したんだな( ´ ▽ ` )ノ
    (ちなみに、本書を直接映像化した「ロシア52人虐殺犯/チカチーロ」という作品もあるらしい)

     それはそれとして、非道い内容だったなあ……(>_<)
     ひとり殺される、手がかりなし、またひとり殺される、手がかりなし、またひとり殺される、なんの手がかりもなし……という展開がえんえんと繰り返される……(>_<)
     ミステリー小説なら、「単調」「リアリティなし」「警察無能すぎ」「ギャグ展開」「舞城王太郎かよ」云々、さんざん腐されたはず……しかし、これがまごうかたなき真実、とは(゚д゚)!

     犯行時期はだいたい80年代デケイド・ソ連崩壊期と重なっているんだけど、まさかあの頃のソビエト地方都市が、ここまでみすぼらしいありさまだったなんて、想像もしていなかった……(゚д゚)!
     いまの北朝鮮以下、日本でいえば明治期の寒村よりも未開?……(゚д゚)!
     水道もなし、DV・酒乱・贈収賄・物資横流しの横行、育児放棄、脳に障害のある子らが放浪・買売春etc.etc.……こんな体たらくの国がオリンピックやって、アメリカと冷戦して、日本人を宇宙に連れてってくれたの!?(゚д゚)!
     10年もの長きに渡ってチカチーロを見逃し、みすみす50件を超す殺人を許していたソビエト当局だけど、警察としての体を成していない「民警」のありていを知ると、むしろ彼の逮捕まで行き着けたという事実が奇跡に近いお手柄とすら思えてしまう……(゚д゚)!

     逮捕後、チカチーロの取り調べ・裁判の過程にまた、ア然・呆然……(゚д゚)!
     ナンダコイツ……(゚д゚)!
     どこからどこまで真実なんだか妄想なんだか……(´ε`;)ウーン…
     あんまりウソくさいからミスター・ロバートも書かなかったんだろうけど、Wikipediaによると彼の最後の様子は――
    「独房から出した彼を規則にのっとり ひざまずかせた。9ミリの弾を右耳の下から撃ち込み 銃殺することになっていた。撃とうとすると彼が叫んだ。"脳は撃つな日本人に売れる" と。事実 処刑された後日本人が脳を買っている。日本人が買いたがっていると噂でもあったんだろうね。最期の言葉は "脳は撃つな日本人に売れる" だった」
     ――ガ━━(;゚Д゚)━━ン!!
     ここで日本が出てくんのかよ!?ヾ(゚Д゚ )ォィォィ
     どこの誰が買ったんだよ、チカチーロの脳みそなんて!?……ウソコケ(@_@;)

     なんかもう、どこにどんな真実があるのやら、事件からなんの教訓を得ればいいんだか、自分にはさっぱりわかりません……(>_<)

     シッチャカメッチャカ、脳がドロドロになりそうな悪夢の日々を描いた快作……(>_<)
     どことなく叙情的な邦題よりも、「キラー・デパートメント」というバカっぽい原題のほうがあってると思う……(>_<)

    2019/06/07
     
     

     
     

  • 小説ではなく、これは実話なのですが、、
    ロシアこわいわーっていう、犯罪者ではなく、警察とか政府とかの側面も見えるし、いろんな意味で怖いお話でした。
    私はこの時代の事件のことはまったく知らなかったし、「チャイルド44」も読んだし映画も見たけど、実話をベースとしたものだったと知らなかったんです・・

    実話だと知った今、再び「チャイルド44」を読んだり観たりしたら、もっと恐怖感が増すかもしれません!

  • ソ連では「連続殺人は資本主義の弊害によるもの。この種の犯罪は社会主義では存在しない」ことになっており、組織だった捜査が行われなかった。そのためチカチーロは52名もの女性・子どもを殺害するに至った。

  • 旧ソビエトの連続殺人鬼アンドレイ・チカチーロを扱った一冊。
    チカチーロ側からの視点で事件の原因を探るというより、捜査側からの視点で事件を解明する。
    事件発生、遺体発見、捜査、逮捕、裁判と描かれる。

    ソビエトについて今まで余り興味がなかったが、猟奇事件には興味があるため今回読んでみた。

    犯罪が起きたときに、家庭のせい社会のせい病気のせいと事件を起こした本人ではない何かのせいにすることが嫌いだ。どんな家庭で育とうとも、どれだけ社会が非情でも、精神に深刻な問題を抱えていようとも、犯罪を起こさないひとは起こさない。なにかのせいにすることは、そういったことを乗り越え励むひとをも侮辱しているように感じられる。
    そう基本的には考えている。

    今回のチカチーロも精神的肉体的に健全ではなかった。
    ソビエトという社会も歪ではあった。
    それでもチカチーロの起こした事件はチカチーロの責任だと思う。
    そう思いながら読んでいく。

    それにしてもソビエトの考え方は変わっている。
    犯罪というものはブルジョア社会に限って起きるもので、完璧な社会主義国ソビエトに犯罪が起きるわけがない。
    そんなわけは勿論なくて、普通に、いや異常に犯罪が起きている。
    それを無理矢理無かったことにしようとするところにソビエトの恐ろしさがある。
    ソビエトで犯罪を起こすのは、精神疾患や知的障害などを持つ人間に決まっている。そういう危険な人物は捕まえて施設に放り込んでおく。
    自分の弁護も満足にできない人々は、やったかどうかよくわからない犯罪をやったことにされて拘禁される。

    日本でも冤罪はあるし、明らかに犯罪なのにろくに捜査もしてくれない、精神疾患者や未成年者は犯罪のし放題。これはこれでおかしいとも言えるけれど。

    チカチーロに辿り着くまでに多くの容疑者を調べ、多くの被害者が無残に殺された。
    チカチーロによって殺された50人以上の人々、疑いをかけられ処刑されたひと、自殺したひと。多くのひとの命が失われた。
    犯罪を犯したのはチカチーロであって、そこに同情の余地はない。そのチカチーロの犯行を重ねやすくさせ、正しい取り調べの行われなかったソビエトにも罪の一端はあると言わざるを得ない。
    チカチーロとソビエトの罪は余りにも大きい。

  • 今年公開された映画『チャイルド44』で描かれる事件のモデルとなった、ソ連末期に発生した連続猟奇殺人事件を追ったノンフィクション。社会主義国家を楽園とし、そこでは殺人など起こらないという発想はどうかしていると思ったが、逮捕された犯人の壮絶な半生が語られるクライマックスには背筋が凍った。幸せに育てず、コンプレックスに苛まれた彼が性的サディストとなって殺人を重ねることが克明に描かれているが、殺人を犯す人間の背景にはイデオロギーは関係ないというよりも、どんな社会でも止められないという恐ろしさもあった。

  • 「チャイルド44」の解説で勧められていたので。

    同じ解説で勧められていた「なで肩の男」でコストエフ特命捜査検事が中心となっていたのとは異なり、
    民警のメンバー、ブラコフ少尉を捜査の中心として書かれている。
    この著書によれば、
    コストエフはロシアが送り込んで来たものの、常駐して捜査にはあたらなかったときわ
    めて厳しく評価され、
    チカチーロの自白を引き出したのも、
    ブラコフと協力して捜査に当たっていたブハノフスキー博士ということになっている。

    どちらの主張することが本当なのかはわかりかねるが、
    こちらの方がとにかく読み進めるのがつらかった。
    殺人が重ねられるのに、遅々として進まない捜査。
    好奇心を煽るようにドラマチックに描いてほしいわけではないが、
    もうちょっとメリハリをつけてもらえないだろうか。
    この単調さが現実に近いのかもしれないが。

    最後の方で、チカチーロの生涯や家族等の周辺の人々の証言は、うまくまとめられていて良かったが、
    「なで肩の男」では感じられた
    ノンフィクションのもつ力というか、輝きというか、恐ろしさは感じられなかった。

    「なで肩の男」でも書いたが、
    「チャイルド44」がいかに良くできている作品かがわかった。

  • 本当はチャイルド44を読みたかったのだけれど、間違って借りたという…解説を読んでこの事件が元になってることを知ってあながち選んだのも間違いではなかったのかと一安心(?)なにしろ関わった人物が多すぎて、人物相関図でも書きながら読めば良かったかとかも途中で思うくらいでしたが、旧ソ連の体制の問題とか複雑な要素が絡み合ってこうなったんだろうなと思ったり。途中で残虐な描写が続いた時は読んでいて手の力がなくなりました。血の気がひくというか…

  • これのせいでシリアルキラー関係の本に目覚めてしまった…。
    本人のやったことだけでなく、当時のソビエトの社会情勢も入っていて面白い。

  • 長い!くどい!
    登場人物多すぎ!カタカナ多すぎ!覚えられへん!
    あー、読むのしんどかった。

  • なぜここまで被害者が増えたのか・・
    もちろん1番悪いのは犯人なのだけれど
    この時代の風潮・習慣・警察の対応全てがこの事件を
    悪化させて被害者を増やしたような気がしてならない。

    今の時代なら外出・・
    ましてや子供だけで外出なんてさせないだろうということと比べてしまうと
    親や周りの大人が子供だけで外出させなければ・・と思ってしまう。

    途中の被害者達の顔写真に胸が詰まる思いでした。
    精神病院へ収容するべきだったのか、死刑でよかったのかなんとも言えないです。

    あともう一つ
    名前が同じ人や似た人が多すぎで混乱しました

  • ミステリーかと思えば、実際にソ連であった話。
    恐ろしいんだけど、淡々としているので、それほど怖くない。

    むしろソ連の体制が恐ろしい。
    ゲイの人への差別、障がい者への差別。大変な国。

  • 殺人者の蛮行と、それを止められない社会

    ソビエト連邦時代のロシアで起こった、連続殺人事件の顛末を描いている。
    50人以上が犠牲となった事件でありながら、終焉までに8年を費やしている。
    本書は限られた資源のなかで、犯人を辿っていく刑事側の立場から描かれている。当時のソビエトの捜査体制の一端を知る事が出来る。

    実際に想像するとかなり猟奇的な殺人だが、被害者描写はそこそこであったので、最後まで読み切る事が出来た。
    犯罪心理学や捜査方法の遅れをひしひしと感じ、この国で殺されたら浮かばれないだろうな、とつくづく思った。
    というか、そもそも犯人をこのような犯行に及ばせたのも、社会体制や教育システムの不備、認知度の低さと言えばそれまでなんだけど。
    (ついでに、著者が外国人、という点にも色々と考えてしまう)

  • 彼がもし西側の、水準が高く公正な裁判を受けられていたならば、こういう結末は避けれたのでは…?と思いました。といって、西側の裁判が真に優れたものである、とは言い難いですけど。それを差し引いてもこれは…裁判長が自身の仕事の範囲を超えて他に干渉するのは…それが罷り通るのか…と愕然としました。逮捕から裁判までにも色々と不備が多すぎる。
    ですが、彼がこんなにも膨大な人数を手にかけるに至ったのは、単にソ連の技術面で非常に遅れた縦割り警察機構のお陰様なので、それには感謝です。勿論痛ましい事件ではありますが、倫理や道徳観は度外視します。そこは重要ではないです。別問題。
    大規模な連続殺人を中心としたあらゆる殺人事件や犯罪心理学に惹かれるきっかけとなったのがチカチーロなのですが、事件について詳細に書かれた文献を読んだのは初めてでした。一層チカチーロが好きになりました。
    殺人って面白いですよね。誰にだってそれを成す可能性はあるし、巻き込まれることも同様なのに、人はこれを非日常だと見なし、大抵は意識の外に置いている。不思議。死に関する事項なそういう扱いを受けがちですが、殊殺人に関してはまるでタブーとでもいうかのような避けられよう。なんででしょうね?

  • 名前が覚えられない。笑

    よく完読したなと思う。

    正直最後の方意地だった。

    犯人は自分を抑えられず
    殺した人間の体の一部を
    口に含むことまでしてしまう。

    想像しただけでグロテスクだが
    ありえない話じゃないとおもった。

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