歴史は「べき乗則」で動く 種の絶滅から戦争までを読み解く複雑系科学 「数理を愉しむ」シリーズ (ハヤカワ文庫NF)
- 早川書房 (2009年8月21日発売)
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感想 : 95件
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Amazon.co.jp ・本 (400ページ) / ISBN・EAN: 9784150503581
みんなの感想まとめ
歴史の動きや自然現象は、偶然と必然が交錯する複雑なものです。本書では、第一次世界大戦の引き金となったサラエボ事件のように、運命的な出来事が歴史を変えることがある一方で、歴史の流れを理解するためには、具...
感想・レビュー・書評
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歴史は「べき乗則」で動く
数理を愉しむ
著:マーク・ブキャナン
訳:水谷 淳
ハヤカワ文庫 NF358
現代自然科学に立ちふさがる超難問、それが、複雑系である。
本書は、その中で、べき(乗)分布に従う事象を扱う
「歴史とは、決して繰り返されることのない事柄についての科学である」 ポール・ヴァレリー
悲惨な戦争、大地震、山火事、株の大暴落、生物の大量絶滅、これらは一見何の関係も無いように見える
しかし、それらは、数学的には1つの共通したモデルと見なされる。そう、それは、べき分布を描いていることなのだ
多数の因果関係があるのかないのかがわからないような要素をもち、何が原因なのかも、はっきりとはわかっていないことも、共通点です。
複雑系の世界で、臨界点に達すると、それらはたちまち大崩壊をおこしてしまう。
砂粒を1つづつ落としていき、山が崩れるモデルも、このべき分布にしたがっている。
これらに共通することは、また、次にどうなるのかが予測がつかないことでもある。
一見、なんの変哲もない些細な変化が、あとあとに大きな変動の原因になっている、これをバタフライ効果という
カタストロフ、カオス、フラクタルなどといわれている複雑系の現象の1つなのです
Amazonでおなじみのロングテールも、べき分布の典型例の1つである
「歴史とは偉人たちの伝記である」トーマス・カーライル
しかし、歴史とは、個人が左右できるべき代物ではない
歴史とは単純なもので、個人の力など限定的にすぎない。
構造が単純にもかかわらず、予測できないことも告げている。
自然科学は、複雑系という1つの壁の前にいるのである。
目次
謝辞
第1章 なぜ世界は予期せぬ大激変に見舞われるのか
第2章 地震には「前兆」も「周期」もない
第3章 地震の規模と頻度の驚くべき関係―べき乗則の発見
第4章 べき乗則は自然界にあまねく宿る
第5章 最初の地滑りが運命の分かれ道―地震と臨界状態
第6章 世界は見た目よりも単純で、細部は重要ではない
第7章 防火対策を講じるほど山火事は大きくなる
第8章 大量絶滅は特別な出来事ではない
第9章 臨界状態へと自己組織化する生物ネットワーク
第10章 なぜ金融市場は暴落するのか―人間社会もべき乗則に従う
第11章 では、個人の自由意志はどうなるのか
第12章 科学は地続きに「進歩」するのではない
第13章 「学説ネットワークの雪崩」としての科学革命
第14章 「クレオパトラの鼻」が歴史を変えるのか
第15章 歴史物理学の可能性
訳者あとがき
解説/増田直紀
原注
ISBN:9784150503581
出版社:早川書房
判型:文庫
ページ数:387ページ
定価:860円(本体)
2009年08月25日発行
2010年12月15日四刷詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
第一次世界大戦の引き金となったサラエボ事件は、オーストリア=ハンガリー帝国の皇太子フランツ・フェルディナンドとその妻を乗せた車が道を間違えたことによって生じたとは知らず、冒頭から驚かされた。
間違えた道の先に、テロリストの一員、ガブリロ・プリンツィプが銃を持って立っていたのだ。なんたる運の悪さ。
まあこういう物語が歴史を知る醍醐味なのかもしれないが、しかし本書は正反対の方向へ舵を切っていく。
実は歴史をいろどる具体的なエピソードはそれほど重要ではないんじゃないか。というのだ。
次の戦争を予想し、予防することが歴史学の役割のひとつであるとするなら、それは不可能である。ある戦争の原因が特定された(かに見えた)ところで、はっきりいってほとんど役には立たない。
というのも、統計学的に見れば、戦争の規模の大小とその発生数というのは、ただ「べき乗則」(y=a^xというやつ)に従って偶然に生じているというのだ。
いくら条件らしきものがそろったって、起きないときは起きない。
これは地震にも当てはまる。大規模な地震もまた予測不可能。しかし震度の大きさとその地震の頻度はやはりべき乗則に従っている。ひっきりなしに小さな地震は起きている。その地震を予測できないのと同じように、大きな地震も予測できない。というのもそれらはフラクタルな構造をしているから。大きな地震は、「特別な」現象ではない。
森林火災も同様にべき乗則に従う。それは頻繁に起きているが、たまたま大規模な延焼が生じる。
非常に興味深かったのは、むやみに小規模な火災をくいとめてしまうと、かえってあとあと手に負えない火災が起きてしまうということ。むしろ、小規模の火災は放置しておいたほうがよいというなんだか逆説的な話。
本書の著者はまた、国際連合があることでかえって、大規模な戦争が起こりかねないことを、なかば冗談ぽく示唆している。でもあながちこれは真理かもしれないと思った。
「予防」というのは、きわめて政治的な振る舞いなのだなと本書を読んでひどく実感した。 -
地震の大きさと発生頻度、戦死者数と発生頻度、論文の引用回数とその引用される論文数、至る所で現れるグーテンベルク=リヒター則のお話。
(ある数字が2倍になると、その関数が2のn乗数倍(の逆数)になるべき乗則の話) -
世界のあらゆる事象、地震、山火事、砂山の崩落、金融市場などは、すべてべき乗則に従っていることが、世界の学者たちの研究やシミュレーションによって証左されていることが、紹介されています。多数の犠牲者を出した第一次世界大戦の端緒が、運転手の道間違いにあるという冒頭のエピソードには震撼しました。世界がべき乗則、そしてカオスな状態にある時、いつどこで臨界点に達するのか、誰にも予想できないのでしょうか。
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1980年ごろから、カオスや複雑系など、予測不可能なことを理論化しようとする試みがなされてきた。本書は、同様に予測しづらい事象である、べき乗則(べき分布)についての啓蒙書である。人間の体重などは平均値の周りに分散する正規分布を描くことが多いが、地震の発生頻度と強さはべき分布に従う。小さい地震は頻度が高いが大きい地震は頻度が低い。しかし頻度は低くてもゼロにはならず、大地震は発生し、壊滅的な被害をもたらす。
地殻のプレートが運動してその歪が開放されて地震が発生すると考えられている。プレートの動きは一定なので、ある程度の歪が貯まれば開放されて、周期的に大地震が発生するという考え方もあった。しかし統計データによってそれは否定されている。歪が開放されるエネルギーはべき乗則に従う。大きな開放は小さな開放と全く同じで、発生頻度が違うだけ。大きな地震は頻度は低いが周期的には発生せず、予測は不可能だ。地震のべき乗則は岩石の壊れ方のべき乗則からきており、根本的には壊れた破片の大きさスケールに関する自己相似性(スケール不変性)が原理となっている。
この現象(べき乗則)は自己組織的な臨界状態を持つ構造に対してトリガーがかかって連鎖反応が発生するメカニズムによって発生し、そこらかしこで見られる。それは、自然科学の分野に限らない。株価の変動、都市の人口分布、資産分布、論文の引用数など、人間社会のあちこにも見られる。
そして、戦争の死者数と頻度の関係もべき乗則に従う。歴史家によれば戦争の原因は色々あるだろうが、統計的には、戦争は結局起こる。小さい戦争は度々、大きい戦争も希に。それは、戦争の背景にも根本的な一つの原因があり、それがスケール普遍性を持っていることを示している。世界大戦は特別な原因で発生する特別なことではない。確率的に少ないが必ず発生する、単なる戦争の一つなのだ。地震の比喩でいえば、なにかのきっかけで争いが発生し、それがどこまで大きくなるかは確率による。 -
「べき乗則」を歴史への考察に結びつけていく流れは少々強引な気もしますが、有名な科学者や偉人たちも登場し、読み物としては大変面白いと思います。「正規分布」「フラクタル」「金融工学」「数理生態学」などの話題を別の視点から眺めてみたい人にもオススメです。
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「べき乗則」というのは、「規模が2倍になると発生する確率は4分の1になる」というもの。
ただし、"2"という数字は例として出しただけで、対象によって別々の値になる。
この法則は平たく言うと
「規模の大きい事が起きる確立は低い」
と、あまりに当たり前な事になってしまうが、非均衡状態、つまり不安定になる直前の状態にあるものの多くに成り立つ、というのがミソ。
例として挙げられているのは、
地震
森林火災
種の絶滅
株価の動き
など。
規模が大きいものと小さいものには原因の違いはなく、どこまで影響範囲が広がったかの違いのみ、だという。
不安になるのは「べき乗則」が成り立つものには「周期」「典型的な規模」といものは存在せず、予知ができない、という点。
特に地震に関しては間違っていて欲しいと思う。
ただ、逆に規模の小さいものがたくさん起きていれば、規模の大きなものになるほどの「力」は蓄えられない、とも言える。
「適度なガス抜き」というのは人間の集団に対してだけでなく、自然現象が相手でも効果的らしい。
ところで、原題は "Ubiquity"。辞書を開くと「偏在性」と載っている。
タイトルは”歴史は「べき乗則」で動く”だが、最後の章で、その「可能性」について論じれいるにすぎないので、日本語タイトルと内容に相違がある。
しかも一歩間違うと、トンデモ本として扱われかねないタイトルだ。もう少しいいタイトルは考えられなかったのだろうか。
SFの古典、アイザック・アシモフの「ファウンデーション」シリーズでは、人類の未来を予測する「心理歴史学」という理論が登場する。
読んでいるうちにその「心理歴史学」の話を連想したが、あとがきで触れられていた。
自分の独自の考えでなかった事が判明し、残念。 -
"期待していただけに、ちょっと残念!?"
【選書理由】
タイトルに惹かれて。
【感想】
歴史は「べき乗則」で動く と書いてあったので、
グラフや数値を多用して説明しているのかと思いきや、
そこまでではなかった。むしろ少なく感じた。
それもそのはず。原題は「UBIQUITY」。
文庫化前のタイトルは「歴史の方程式」。
そして文庫化で「歴史は『べき乗則』で動く」。
改悪だと思う。現代を確認しなかった私にも責任はあるが。
この本に興味がある場合、以下の順番がオススメ。
サイト:「なんでもフラクタル(WIRED VISION)」を読む。
面白いなぁと思ったら、本を手にとり巻末の「解説」を読む。
理解できそうだなぁと思ったら、購入して本文を読む。 -
だからと言って、未来を予測できるわけではない本
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べき乗則と数学的に難しく言っているが平たく言えばカオス理論〜フラクタルあたりの思考の噛み砕き。地震はなぜ予測できないか、歴史の出来事はいかにして起こり得たかなど、まあそりゃ複雑で予測できないよねということを長々と説いていてまあ飽きる。ためになったのは山火事について。火事を消してしまうから余計な枯れ葉や落ち葉が残り、より強い火災になってしまうという因果関係は興味深い。微妙に主題から外れているが…
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図書館で借りた。
タイトルを見て、「歴史学の新しい切り口を拓いた本かな?」と思い借りてみたが、複雑科学系の本だった。よく調べてから予約すればよかったのだが…、空振り。
解説の文を借りれば、統計物理学の視点から語った啓蒙書で、複雑系やフラクタルに関連しているジャンルだ。科学の本としては、積極的に歴史を語っているが、人文科学の歴史書と思って読むとちんぷんかんぷんなので注意したい。 -
歴史はべき乗則で動く
マークブキャナン 早川
種の絶滅から戦争までを読み解く複雑系化学
いきなりテロリストによる
オーストリア皇太子暗殺の場面から始まり
世界大戦の話へと入り込む
まるで文学作品のように
文章のキレが良く惹き込まれてしまう
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背ラベル:420.4-ブ
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歴史の法則に絡むこととかと思ったらべき乗則の解説のみで
うーむ思ってたんと違う -
世界の複雑性を知れる一冊。複雑性の科学を分かりやすく書いてある本は多くないので入門書としておすすめ。
なぜ、良い方も悪い方も急激な変化が起こるのか?歴史的な出来事に法則はあるのか?
1人の人間が大き過ぎること気にし過ぎても仕方ないよねという安心感がある。
ただし、地震はいつか必ず起こることだけは覚えておきたい -
科学エッセイのジャンルは人気で、よく使われる手法は門外漢にはよくわからないことをわかりやすく伝えるために身近な例をあげるというもの。この本も、地震から経済、生き物の絶滅などが、伝えるための材料として使われている。
十年以上前の書籍なので、内容自体には古さも感じるし、いくら一般向けとはいえ、いまさら複雑系の紹介を最後にするなど、いかにも初級者向けの文章だが、読んでもすぐに忘れてしまう初級者の自分には楽しく読めた。 -
本著は目的としては一見無秩序に見える歴史の背景にある法則を見出せるかどうか検討するところにあるが、その過程として地震、山火事、大量絶滅など多くの現象を考察している。いずれの背後にもべき分布が見い出せ、一見すると無関係かつ無秩序な現象の背後に存在する単純な法則の存在が示唆されるという。かつてニュートンは地上と宇宙は同じ重力の法則で支配されていることを示し、衝撃を与えたが、それと似た衝撃を受けた。そのような世界を垣間見たいと思った方には本著は向いていると思う。
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歴史も物理現象
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数学的に考えるべき、現実的な話題がたくさんある。特に、一筋縄ではいかない非線形なこととか、引き返せない事象のことなどについて考えさせられる。応用数学をやりたくなる本。
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訳:水谷淳、解説:増田直紀
