カオスの紡ぐ夢の中で 「数理を愉しむ」シリーズ (ハヤカワ文庫NF)
- 早川書房 (2010年5月21日発売)
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感想 : 33件
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Amazon.co.jp ・本 (100ページ) / ISBN・EAN: 9784150503642
感想・レビュー・書評
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再読。
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一読した感想はバーチャルインタビューが代弁してくれてる。「まずこの本はいったい何だろうかつまてのがよく分からないんですよね。エッセイがあったり小説があったり。その中身も、文化論みたいのがあるかと思うと、複雑系の研究の解説っぽいこともあったりして、急に難しくなるかと思うと、そのつぎの段落が芸能界や野球の話になったりして。」
輪郭が判然としないまま読み進めてしまったけど、『小説 進物史観』にそれまでの内容のエッセンスが詰められているので、むしろこっちから読んだ方が良かったかも。金子さんの研究観というか、複雑系理論を通した自然科学的な世界の見方がよく伝わってきて面白い。 -
内容をひと言では表せない一冊。
でも、ひたすら「面白い」ことは確か。
「カオス」についての解説書みたいなのを期待すると、ちょっと肩透かしかも。
そういう部分では、「ねじとねじ回し」に近い。
けれど、本書は「金子邦彦」という希有な語り手の魅力によって、がっしりとした土台が築かれている。
強固な意志や柔軟な思考といった、研究者としての魅力が行間から滲み出している。
エッセイ部だけではなく、後半の小説部にもその魅力が充ちていることが、ただひたすらに凄いという他ない。
さらに、その凄さがあとがきに至っても衰えてない。
一巻丸々、ただひたすらに凄くて面白い一冊だった。
そして、円城塔氏による解説が、これまた凄い。
まず始まりからして凄い。<blockquote> 天才科学者というものに対し、どういうイメージをお持ちだろうか。
二十世紀最大の数学者の一人、マーク・カッツは、あらゆる証明に対して次のどれかの応答を返したという。1.自明である。 2.間違っている。 3.私がやった。
二十世紀最大の物理学者の一人、レフ・ランダウは、学生の研究成果発表会に際し、そのタイトルしか聞かなかったと言われている。多少興味を持ったなら、要旨を聞いて下がらせる。そんなことは滅多にないので、研究所には動揺が走ったのだと伝わる。これが内容までを聞こうとしたなら、ヨーロッパ中に激震が走ったという。
二十世紀最大の数学者の一人、ダフィット・ヒルベルトは、彼の学生が数学から詩人へ転じたのを聞き、「彼には創造性が足りないと思っていた」と漏らしたらしい。
もっとも、これは誤伝だという。伝説というのは大抵誤伝だ。
さて、金子邦彦である。天才に属する。</blockquote>この最後の一行の切れ味ときたら!
堪らないなあ。 -
[『カオスの紡ぐ夢の中で』を読んで - heyheytower]( http://maijou2501.hateblo.jp/entry/20121207/1354899450 )
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第三回毎週ビブリオバトル
チャンプ本 -
科学は文化・創造活動である、
自分が文化創造の担い手たりうる、
そういう言葉が印象深かった。 -
どうしてこういう考えが一般に浸透しないのかとんと理解できない。という感想もある。
しかしそんな単純な話じゃないみたいだ。大体、カオスの説明で度々登場する「ダイナミズム」という言葉の意味は自分がイメージしていたものと違う。何度読んでも分からないが、金子さんは一言で自明な概念を表す言葉として使っている感じだ。
解説で円城さんが否定していたが、なんとなく自分にはブログ記事のような親しみやすさも覚えた。こういう本がこういう形で出版されていたというのは牧歌的でよい文化だなとも思う。 -
複雑系とは何か?「部分の和で表せない全体というのは論理的にどういうものか、それを捉えるにはどうしたらよいか」あとがきより。
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円城塔を勧めてくれた知人に借りて読んだ。複雑系を研究している金子教授による、エッセイ&小説。これが興味深くて面白い。カオスつてなんだろうのエッセンスがナンセンスSF小説に詰まっており、思わずニヤリとしてしまう。
これを読んだあとは、また円城塔の作品を読んでみたくなる。 -
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複雑系いわゆる「カオス理論」で著名な金子邦彦氏のエッセイ&小説。題名に冠す「カオス」の解説はあまり無く、(良い意味で)題材がごった煮のカオス的様相を呈している。
金子氏が強く主張する、科学「≠ものの発見」「=見方の提示」「=文化」、いうなれば芸術に近いものがあるという記述はなるほどと思わせられる。軽快なタッチながら鋭い洞察のエッセイ部分、人工知能を通したカオス理論が描かれる小説部分。天才ならではの飛び飛び感があるので好き嫌いが分かれるかもしれない。 -
“科学が○○物質発見競争であって、科学=「もの」だとされては、たぶんある時、心が癒されなくなる者もいるだろう。そうなった時、文化というレベルがないので一気にすっとんで神秘的なものに向かってしまう”
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挫折しました!
どうやら、ファン向けのエッセイ&小説であるようです。
近所の顔見知りだけが来店する閉鎖的な喫茶店に間違えて入っちゃったかんじ。
それにしても、どういう読者に向けて書いているのかさっぱりわからなかったです。
こんな簡単なことは説明するのに、その専門用語は説明なしで使うの?という部分がたくさんあり、その違和感で読み続けられなくなりました。
ファンの方はファンでない方の分まで読むことをおすすめします。 -
「カオス理論」の入門書?
ではなく、研究者のエッセイでした。
ま、科学者のエッセイってのも、実に興味深い、ってことで。 -
円城塔氏の筆名のもとになった小説作成プログラムが登場する小説を含んだ本。『小説 進物史観』は、毒のような小説。ダーウィニズムによって進化する小説群に、読み手が影響を受け、社会が変化するという展開は恐ろしくも面白い。円城塔氏の解説同様、「上手いのでは」と思ったのですでにこの小説の毒にあてられたかもしれない。人をくったようなあとがきも含め、カオスなり複雑系なりの著者の世界観を体験している感じがする。
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1-4-1 複雑系
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芥川賞作家の円城塔さんのペンネームの由来になったSF小説が所収されている。もちろん、解説も円城さんが担当されている。
前半のエッセイは、わたしにとってはかなり難しい内容。小説ももちろん一筋縄ではいかない。
物語と進化。
人類が進化の過程で、地球の環境を変えて住みやすい街をつくっていった事を思い出す。 -
すごぉく分かりやすい本で好感を覚えました。円城塔とは違って(笑)
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カオス・フラクタルの本は結構持っていたのですが、この本が文庫になったのには気づかなかった。
第一章とも言うべき「複雑系へのカオス的遍歴」にある20篇ほどのエッセイが印象的でした。
積読になったものについても読み返してみたいところです。 -
この本は文庫の発売直後に、金子研出身の人の研究室にいる先輩(つまり金子さんの孫弟子?)に教わって買った。買ってすぐに最初のエッセイの数編を読んだけど、大した印象も持たずに放り出してしまった。このたび久しぶりに手にとったら今度はすらすら読めた。その間、金子さんは仁科賞を、文庫本の解説を書いている円城塔は芥川賞を、と師弟で有名な賞を受賞している。
さてこの本については、3つの部分からなっていて最初は科学エッセイ。解説で円城塔は絶賛しているけど、僕はとくに面白いとは思わなかった。
次の「カオス出門」は、カオスがなくなったらどうなるかという、短編SFみたいな。カオスだけがいきなりなくなるという設定に無理があるのだけど、まあまあ面白かった。初出は教養学部報らしい。駒場に行くといっぱい置いてあるあれか。
ここまではまあ、ふつうの研究者でも書きそうなことだと思った。この本のメインコンテンツは後ろ半分を占める「進物史観」という長編小説だ。僕はふだんSFをほとんど読まないのだけど、素人目に見てこの話はかなり面白かった。正直、ここまでのものとは予想していなかった。これが世に出る前、研究者仲間にこれを見せたところ、ふだんの論文と同じではないかと言われたそうだけど、たしかに僕にしても、物語が面白かったのか、こういう研究があるとしてその研究の話を楽しんでいたのか微妙なところ。だけど、よく知らないんだけど、SFってアイディアが重要そうだし、このアイディアはSF好きな人も楽しめるんじゃないかと思う。
金子さんと同じ分野の研究者で、僕もたまにお世話になっている(た)菊池さんによる書評があったので、リンクを張っておく。
http://www.cp.cmc.osaka-u.ac.jp/~kikuchi/weblog/index.php?UID=1274373906
著者プロフィール
金子邦彦の作品
