これからの「正義」の話をしよう (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

  • 早川書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (475ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150503765

作品紹介・あらすじ

「1人を殺せば5人が助かる。あなたはその1人を殺すべきか?」正解のない究極の難問に挑み続ける、ハーバード大学の超人気哲学講義"JUSTICE"。経済危機から大災害にいたるまで、現代を覆う苦難の根底には、つねに「正義」をめぐる哲学の問題が潜んでいる。サンデル教授の問いに取り組むことで見えてくる、よりよい社会の姿とは?NHK『ハーバード白熱教室』とともに社会現象を巻き起こした大ベストセラー、待望の文庫化。

感想・レビュー・書評

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  • 結局のところ完全な正義なんてのは無くて、ひたすらにより良い世界へしていくために議論するその姿勢こそが大切なんだろうなと思う。
    政治、宗教、ビジネスなど何にしても圧倒的正解なんてのは無いはずなのにみんな追い求めてる。
    良いところも悪いところも等しく見極めて、より良い選択肢を選べるようにしたい。そのためにも自分の生きる軸みたいな哲学が必要なんだと思う。

  •  正義とは直感的な感覚で判断しがちであるが、異なる立場の正義を、道徳的、福祉的、経済的なファクターにバラして、それぞれから徹底して合理的に考えていっている。話が進むにつれ善悪や道徳を超えた哲学的な話に行き着くと、まるで禅問答のようになりかなり難解な内容であった。
     自分は職業として正義を考え実現しなければならない立場にあるが、絶対がない正義について各立場、各ファクターから多面的に見ていく必要を改めて感じたものの内容がとにかく難解であった。

  • 今までの哲学的な話をわかりやすい例をもとに解説し、より良い社会とはどのような形かを問う。さまざまな技術が発達し、倫理的な問題が増える中、これからはより哲学や倫理が大切になることは疑いがなくなっている。
    アリストテレスからカント、キリスト教など、今までの倫理観を紹介している。
    欧米ではキリスト教は避けて通れない問題であることもここから良く分かった。
    先人の知恵を知り、さらに深く考えていく必要を感じさせる本だった。

  • 「正義への三つのアプローチ」を前提として順に確認し、本当にあるべき正義、道徳、自由とは何かを問い掛ける。10章立て、本文は約400ページ、巻末に原注と同著者の『それをお金で買いますか』序文が付属する。

    大学の講義がもとになっており、「この本は思想史の本ではない」としながらも関連する一部の哲学者・思想家を紹介する側面もあわせもつ。本書の主な動機と見受けられるのは、サブプライムローン問題で破産した大企業の幹部が税金によって多額のボーナスを受け取っていた事実などをわかりやすい例として、貧富の差の拡大という現代的な問題が考えられる。

    著者が前提とする「正義への三つのアプローチ」とは、すなわち「①福祉の最大化」「②自由の尊重」「③美徳の促進」であり、①は功利主義、②は自由至上主義(リバタリアニズム)がこれに該当する。これに沿って第2章で、ジェレミー・ベンサムとジョン・スチュアート・ミルによる功利主義の考え方と二人の違いを紹介し、第3章では個人の自由こそを正義とするリバタリアニズムの論拠を確認する。

    これら二つの正義の捉え方を踏まえ、第4章で「戦場で戦う行為」と「子どもを産む行為」を例に功利主義とリバタリアニズムの不備を指摘する。そのうえで第5章以降はカントとジョン・ロールズの思想をベースに、アリストテレスによる道徳観も対置しつつ、「美徳の促進」としての正義とは何かについて論を進めていく。

    構成のバランスからもわかる通り、「正義への三つのアプローチ」は等しく扱われるものではなく、著者自身が本書終盤で三つ目のアプローチとして挙がる「美徳の促進」としての正義に拠って立つことを明言している。書籍としてのあり方としてはいかにも中立的にみえるが、実際はリベラル派によるあるべき社会・政治を問い直す意思があり、冒頭のとおり現代社会の新自由主義的な現実への批判を基礎と考えて良さそうだ。

    全体としては、哲学者や思想家が提唱した概念や理想をわかりやすく解説しながら、現実的な問題とリンクする例がふんだんに盛り込まれており、このあたりの配慮がベストセラーにつながったとも思われる。終盤には既存の「美徳の促進」としての正義を検証する流れの最後で著者なりの改善点を付け加えるに至り、ここで斬新な結論が導かれるのかと思いきや、結果としてはやや拍子抜けに終わった。

    個人的には第5章にあるカントの思想の解説が抜けて興味深かった。もっと哲学思想解説寄りの内容に徹して良かった気もする。

  • 「1人を殺せば5人が助かるが…」というあまりにも有名なトロッコ列車の命題から始まる。
    全部で10章に分かれ、各々で”正義”とは何か、というよりどう考えるのが”正義”に最も近づけるのかを、様々な立ち位置から考察されていく。

    が、それが哲学的であるがゆえに思考のロジックが延々と続き、徐々に読んでいるこちらが混乱してくる。
    自分のレベルでは完全に理解したとはいえず、再読が必要だろう。

    特に5章以降は哲学者の考察も入ってきて益々わかりにくくなり、そこに控えめにサンデルの意見がさしはさまれる。

    これが大学の授業かと思うと、羨ましくなる。
    こういう考えを色々知ることは、人生にとってもプラスになるだろう。

  •   マイケル・サンデル「Justice ~ What's the Right Thing to do?」(邦訳「これからの正義の話をしよう」)をやっと、ふぅ、と云いながら読み終える。
      息子が置いて帰った時にはあまり関心はなかったのに、読んでゆくうちに引き込まれたと云っていいだろう。普段何気なくしていること、当然だと思っていることが果たして正義の観点から正しいと云えるのか、改めて気づかされ、かつまた深く考えさせられる。
      例えば、米国における現在の志願兵制度、これは正義なのかという疑問。恵まれない環境の同胞を金で雇い、危険な仕事をさせる。その決定を下すのは決して生死のリスクを負わない人々だという事実(そういう上流階級の人たちの子女は兵隊にならない)。だからアフガンにしろイラクにしろ、平気で兵隊を派遣できたのだと。これは果たして正義と云えるのか。
      米国の奴隷制度、現代では勿論これは認められないものだが、では南北戦争前に白人が黒人を奴隷として扱ったことに対して、現代の白人たちは責任を負わないのか。あれは過去のことで今を生きる白人たちには何ら責任がない、現在の白人は奴隷制度と何のかかわりもない、と云えるのか、それは正義として正しいことなのか。
      同じようなケースで、ドイツは第二次大戦後、ホロコーストを犯したことに対してドイツ国民としてユダヤの人々に謝罪した。時の大統領がイスラエルの議会に出向いて謝罪の演説をした。これは立派なことだが、正義の観点から必要だったということなのか。ナチスの罪をナチスとは無関係だったドイツ人が負うことが本当に正義の要求することなのか。では日本の場合はどうなのか。今を生きる戦後生まれの我々に戦争の責任を負う或は感じることは必要なのか。
      次々と例を検証してゆくこの本のプロセス。このサンデルさんの話について行くにつれ、やはりこれまでそこまで深く考えていたか云えばウソになる。現在の辺野古移転問題一つとっても何が正義なのだろう。米国の志願兵の問題と同じく、我々は犠牲になる側の人間ではなく、リスクを背負わずに辺野古問題を眺めているに過ぎない。歴代の政府の人間もしかり。国家という全体のためには一部に犠牲があっても仕方がない、これは正義と云えるのか。

      人間にはそれぞれ立場の違いがあり、それが前提となって論じられる問題の正義の考え方というものは本当に難しい。この本はサンデル教授が講義をするような流れで書かれているが、実際に生の声を聴きながら話を聴く、それが最もふさわしいテーマと云えるのではなかろうか。いつだったか、NHKで抗議の有様が放送されていたが、その時には関心もなく逃してしまったのが残念。

  • 本書は、正義とは何か?という問いに対し、次の3つの視点から説明している。

    ①最大多数の最大幸福(効用や福祉の最大化を目的にした功利主義的な見方)
    ②選択の自由(市場を重視する自由至上主義的な立場と、リベラルな平等主義者とで立場が別れる)
    ③美徳と共通善


    現代において正義をめぐる議論は、効用や自由を中心に行われているが、
    本書ではそれらについて功利主義や自由至上主主義における伝統的な議論を踏まえた上でその限界を示す。

    そういった正義における考え方の限界を乗り越えるために、美徳や共通善からのアプローチが必要だと著者のマイケル・サンデルは説く。


    本書を読んで良かったことは、正義における様々な立場を理解することができたこと。

    この本の目的としては、正義をめぐるいくつもの考察を経ることで、自分自身がこれまで漠然と抱いてきた見解を批判的に見るということだと思う。

    効用の最大化も、選択の自由も、必ずしも道徳や正義にかなう結論には至らない場合もあり、
    「この考えが正解」という万能薬は無く、時代や状況に合わせて共通の善や美徳を追求するという考え方も大事だと感じた。

  • 啓蒙時代から現代まで続く道徳哲学を整理しなおし、今なお問題になっている公共的諸問題を考えていくための足掛かりを提供してくれる。
    大まかな整理としては以下▼
    ①人間の便益を共通尺度としその最大化を志向する功利主義的道徳観
     ベンサム

    ②個人の自由を軸に価値観の中立性を重んじる社会契約的道徳観
     ロールズ、カント、リバタリアン

    ③何が善いかの価値判断を積極的に行い、その実現を目指す目的論的道徳観
     アリストテレス

    このようにこれまでの道徳観を睥睨したうえで著者は、自身の持って生まれたアイデンティティや共同体、つまり中立ではありえない偶然性を抜きにして社会問題を論じることは、道徳的に貧弱であると批判している。
    或る個人は個人であると同時にいやおうなく或る「時代」、或る「場所」に生まれ、その偶然的歴史性から完全に自由ではありえない。そんな自身の偏りを引き受けることには、自身が属する環境の中で関わるあらゆる価値に対してのひいきが少なからず発生する。
    ここで問われるのは、誰しもが抱える偏りを無視して徹底的な中立性を固持しようとすることに果たして意義があるのかということ。
    サンデルは「ない」と考えているようだ。
    賞賛されるべき美徳は何かを問い、当の美徳を目的として志向する制度こそ正義にかなうとする③の道徳観を支持している。
    これは古代ギリシア以来繰り返されてきたにも関わらず、昨今の多元的価値社会では古臭いとさえ見なされがちな「善き生とは何か?」の問いを再評価することだ。自分が善いと思える価値を判断し、公共空間で意見表明をしあうこと。これが肝要なのだが、そうすると様々な立場からの意見が並列し、まとまることは稀だろう。しかし中立性に徹し自身の意見を表明しなかった場合、そもそもそういった立場がこの世界に存在しえると示せなくなることに思いを留めるべきである。各個人を創り上げてきた偶然性は他らなぬ自分自身が擁護してやるしかないのだから。

  • 当たり前と思っていたこと、考えもしなかったこと、様々なことを改めて考えさせられるキッカケとなった。

  • ハーバード大学教授のサンデル氏の「正義」についての公開授業は日本でもテレビで放映されたそうですね。
    「正義」にはいろいろな見方がある。私が思う「正義」が他の人にとってはそうじゃないかもしれない。

    例えばアファーマティブアクション。学生の人種的バランスを保つために、入試で高得点を取った白人生徒を不合格にし、まあまあの点を取ったアフリカ系やヒスパニック系生徒を合格にする。私自身はこれって白人への逆差別では?!と感じるうちの一人です。今では白人に代わりアジア系にとって厳しいと聞きます。教育熱心な親に育てられたアジア系学生たちはテストの点数がかなり良い。点数を基準に入学を許したらアジア人だらけの大学になってしまうから、大学はアジア系への選考基準のハードルをかなり高くする。正直、不公平だなぁと思います。でももし私がアフリカ系かヒスパニック系だったら「当然だ」と思うのかもしれない。
    今までもいろいろと思うところがあったので、これについて書かれた章はとても興味深かった。

    サンデル氏の奥様は「キク」さんというのですね。日本人ではないけれど沖縄出身なのだとか!

    • reader93さん
      だいさんコメントありがとうございます。「伸びしろ」ですか。興味深いですね。人種背景も含め、その学生のこれからの可能性が考慮されるのですね。
      だいさんコメントありがとうございます。「伸びしろ」ですか。興味深いですね。人種背景も含め、その学生のこれからの可能性が考慮されるのですね。
      2016/06/21
    • だいさん
      明確な目標を持たないと 人は成長しません
      逆に言えば目標を持っている人は
      その目標を達成するために 様々な努力をします
      現代では知...
      明確な目標を持たないと 人は成長しません
      逆に言えば目標を持っている人は
      その目標を達成するために 様々な努力をします
      現代では知識はネットを使えば 容易に手に入ります
      しかし生きるための知恵はネットを介しては手に入らないと思います
      そこで色々な人たちとのふれあいは大切なのではないでしょうか
      2016/06/22
    • reader93さん
      だいさん、成長のためには明確な目標が必要なのですね。私もそう思います。目標、努力、人とのふれあい、どれも大切ですね。
      だいさん、成長のためには明確な目標が必要なのですね。私もそう思います。目標、努力、人とのふれあい、どれも大切ですね。
      2016/06/28
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著者プロフィール

1953年、アメリカ合衆国ミネソタ州ミネアポリス生まれ。アメリカ合衆国の哲学者、政治学者、倫理学者。ハーバード大学教授。

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