ハーバード白熱教室講義録+東大特別授業〔上〕(ハヤカワ・ノンフィクション文庫) (ハヤカワ文庫 NF 378)
- 早川書房 (2012年2月9日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (299ページ)
- / ISBN・EAN: 9784150503789
作品紹介・あらすじ
遭難した男たちが生き延びるため少年を殺して食べたとき、その行為は道徳的に許されるのか?ハーバード大学の人気教授マイケル・サンデルは、鋭い問いかけで現代社会の中にひそむ「正義」の問題を取り出し、刺激的な議論を繰り広げる。その彼の話題の講義が待望の文庫化!NHK教育テレビで放送された「ハーバード白熱教室」の第1回〜6回、および東京大学特別授業の前篇「イチローの年俸は高すぎる?」を収録する。
感想・レビュー・書評
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サンデルさんの三冊目。
講義録なので、スピード感は他の二冊に比べてないのだけど、生徒の答えを受けながらサンデル先生が広げていく感じは楽しい。
巻末に東大特別授業編があるのだけど、予想していたよりは、日本向けにアレンジされていて良い印象を持った。
徴兵制のくだり。
徴兵制が良いか、外部委託が良いか、志願すれば多額の給与をもらえるようにするのが良いか。
少数派の徴兵制を支持する生徒から、このような発言が出てくる。
「難しい質問ですが、徴兵制です。国全体に戦争への責任を感じさせることができるから。少数の人々だけがイデオロギー的に支持する戦争が起きてしまうよりいいです。」
こういう理由で徴兵制は用いられないだろうけど。
考えざるを得ない場面、関わらざるを得ない場面って必要なのかもしれない。
誰かが代わりに行ってくれたら、誰かが代わりに考えてくれたら、「私は幸福だ」と思うこと、そう思う人で満たされることは正しいことなのだろうか。
難しいけれど、「社会的体面」を世間知として学ぶ私たちは、ここからもう少し、議論を進められるような気がする。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
法哲学を学ぶ上で非常に参考になる本。億万長者のビルゲイツに巨額の課税をして、富の再配分を強制することを正当化できるか?5人の命を救うために1人の命を犠牲にすることは道徳的に許容できることなのか?これらの問題を功利主義、リバタリアニズムの立場はどう評価するのか説明している。
ベンサム、ミル、ロック、カントなどの思想を例を挙げて分かりやすく説明し、法哲学という難しい学問の魅力を伝えていることが印象的であった。
マイケルサンデルのプレゼンも非常に巧妙だと感じた。議論を対話式で進め、賛成、反対の意見をぶつけ合わせている。矛盾している意見も全否定から入るのではなく、多様な意見をを自然に反映させて、筋の通った論へ導いて議論を活発にさせていた。-
レビューが詳しくなってていいね。
要約に感想を付け足していってる印象があるからもっと太一個人が考えたことの割合が増えると面白いと思う。レビューが詳しくなってていいね。
要約に感想を付け足していってる印象があるからもっと太一個人が考えたことの割合が増えると面白いと思う。2020/02/18
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教科書のような哲学書ではない。個人の思想を説明してるものではない。
1つの問題に対して、様々な思想家の考えを用いて説明、批判している面白い本であった。
哲学について考えたい、勉強したいと思い始めた方にもおすすめできる本だと思う。 -
大学で哲学を専攻しようものなら、周囲の人に「なんの役に立つの?就職できるの?」と心配される……
若い頃は哲学に対して、そんな印象が強かった。
思考をこねくりまわすのは嫌いじゃないので、一般教養の授業はけっこう楽しかったが、この年になって、
「哲学は、すべての社会の基本である」
ということが、ようやく腑に落ちるようになった。
サンデル教授の「政治哲学」の講義は、私たちが古代ギリシアの時代から哲学とは無関係に生きられなかったのだと、圧倒的な説得力をもって教えてくれる。
ハーバードや東大の優秀な学生さんみたいに、全部が全部ついていけるわけではないけれど、自分もこの社会の、そして哲学の主体者であるという意識を持ち続けて、考えることを放棄してはいけないのだと、目を覚まさせられた。
映像は見たことがないのだが、章ごとに入る千葉大教授の簡潔な解説もよい。 -
配置場所:摂枚普通図書
請求記号:311.1||S||上
資料ID:95120391 -
内容が難しいので読むのに凄く時間がかかった。
実際にNHKで放送されたものも見ていたけど、映像を観た後でこの本を読むと、サンデル教授の議論誘導の仕方の上手さを感じる。
映像では分からなかったけれど、文字になると、見当違いな話をしようとしている学生を上手くいなしたり、纏まっていない発言を短いセンテンスに集約したり、ということを頻繁に行っているということがよく分かる。
生徒がどういう発言をしてくるか分からない中で、きちんと目指した方向へ議論をみちびいていく手腕は本当に素晴らしい。
『正義』という議論しづらいものに真っ向から取り組んでいる授業内容自体も面白いけれど、サンデル教授の手腕が素晴らしくて、そこだけに着目して読んでも十分に価値のある本だと思う。 -
哲学というのは人をして距離を置かせ、衰弱させるような活動のため、精神が未熟なうちにしてしまうと社会との距離のバランスがとりづらくなってしまう。
①どこから、基本的な権利はきているのか?
②公正な手続きはどんな結果も正当化するのか?
③同意の道徳的な働きは何か?
ベンサムの功利主義をジョン・スチュアート・ミルが発展させた
「満足した豚より、不満足な人間である方がよい。満足した愚者より不満足なソクラテスである方がよい。」by スチュアート・ミル
「正義とは道徳の最も神聖な部分であり、他とは比べようもないほど拘束力の強い部分である」by ミル
ノージックは分配の公正さは
①「取得の正義」または「最初の保有」
②その分配が自由な意思決定によるものかどうか
リバタリアニズムの課税による考え方
「個人の所得を取り上げるのは、個人の労働を取り上げることと同じであり、個人の労働を取り上げることは、個人を奴隷にするのと同じことである」
リバタリアニズムへの反論
「私たちは本当は自分で自分を所有していないのではないか」
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2023.2.7読了
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意見の相違が多く存在する多元的社会では、ある問題について全員が合意するような結論には至りませんが他者を考えて他者と関わっていく態度が重要です。
多元的な社会においては、道徳的・宗教的な背景が異なり、意見の相違は至る所に存在します。
ある問題について全員が合意するような結論がでることはないだろうけど、他者を考えて他者に関わっていくことは多元的社会における相応しい態度だと結論付けられています。 -
『これからの「正義」の話をしよう』で有名になったマイケルサンデル。
政治哲学をテーマに、生徒とディスカッションしている様子が記載されている。
哲学や道徳、倫理について、深く深く思考を張り巡らせることが出来る上に、サンデルの超絶プレゼンも学べる1冊。
アリストテレス、ロック、カント、ベンサム、ミル、ロールズ、ノージックといった古今の哲学者を、巧みなリードのなかで把握できるのも素晴らしい。
価値観を右往左往してパラダイムシフトが起きる超良書。