明日の幸せを科学する(ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

  • 早川書房
3.58
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本棚登録 : 424
レビュー : 32
  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150503994

作品紹介・あらすじ

人間は未来の自分を正確に予測できない。その原因である脳の錯覚や妄想を徹底検証!

感想・レビュー・書評

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  • いかに「自分の判断」というものがあやしいのかを怒涛の勢いで教えられて面食らいながら楽しんだ。

    題名は切り口、とっかかり。
    人間が「明日」という時間軸の未来についてうまく考察できない特性と、「幸せ」というものが想像力や感情、記憶にまつわる対象であることがあいまって、認知の歪みが特に顕著に観察できる。しかも、明日の幸せと聞いたら興味をもたずにはいられない。

    一番ヘェ〜と驚いたのは、「説明がつくと幸せ感が低くなる」という指摘。
    人は、説明を強く強く求めるくせに、説明がついたらついたで納得して落ち着き、印象が弱まり、感情の起伏=記憶の強度が下がり、出来事を片付けて次のことへと関心を移してしまうから、とのこと。謎が残っている方がいいんだなんて、人生訓にお墨付きが与えられたみたいだ。

    他にも、「つらい方が幸せだ」とか、しかも「少しのマイナスより多くのマイナスの方が幸せだ」とか、「終わり良ければすべて良し」は本当だとか、「脳は嘘をつく」だとか、主張の以外さ+内容の面白さ+語り口の面白さで引き込まれ続けること請け合い。

  • 本書は心理学の知見に基づいて「幸せな未来を得るためにはどうすればよいのか」を解説した本である。著者はハーバード大学の心理学部教授で,感情予測,社会知覚,信念などについての研究者だ。Scienceなどの一流誌に多数の研究を発表している。しかし本書は堅い学術書ではまったくない。ユーモアが散りばめられた軽妙な文章ですいすい読める。著者のウェブサイトを見ると学術論文のほかにSFのタイトルが挙がっているが,そうした経験がきいているのかもしれない。

    タイトルからは「ひとの幸せ」が本書の主題に見えるが,幸せそのものの解説に割かれているページはそれほど多くない(第2部)。幸せの定義はひとによって違うはずなので,自分の幸せを他人の幸せと比較するのは難しい。そもそも幸せを計るのが容易ではない。それでも不十分ながらも「幸せの測定」は可能であることが第2部では述べられている。

    本書の多くは,将来の自分が抱く感情についていかに精度の悪い予測しか立てられないのかについて解説している。そのために,未来を想像し,幸せな未来のために現在の自分が良かれと思って選んだ行動を将来の自分が喜ばないというちぐはぐした人生を歩む羽目になる。その原因は「想像する」ことが持つ3つの大きな欠点にある。

    一つ目の欠点は不十分な想像しかできないことである(第3部)。ある場面を想像するとき,その場面の細部にいたるまで何もかも思い浮かべることは不可能だ。でも問題は限界そのものではなく,思い浮かんだことだけを考慮して思い浮かばなかったことを無視するという人間の傾向にある。将来の予測についても,思い浮かばなかった他の可能性を「実現しないもの」とみなしてしまうせいで,将来の予測を誤ることになる。

    二つ目の欠点は現在の感情に大きく影響を受けながらしか想像できないことである(第4部)。人間の想像は現在の感情に大きく影響を受ける。現在の状況に依存して将来を予測する傾向があるために,「現実の今をつらいと感じることで精いっぱいのときに、創造の未来を楽しいと感じることはできない」のである。明日も今日と同じように感じるだろうという前提のもとで誤った予測をたてる。

    三つめの欠点は実際の出来事の前後で感情に変化が生じることを想像できないことである(第5部)。人間には心理的防衛システムが備わっているため,たとえば辛い出来事に遭遇しても,遭遇してしまったあとには実際よりも辛くないものと感じる傾向があるという。この心理的防衛システムの働きを理解していないために,ある出来事が実現したときの感情を事前には誤解してしまう。例えば多くのひとは「静観よりも積極的にとった行動によって失敗することを後悔するだろう」と予測するが,後から振り返ると実際に行動して失敗するよりも行動せずに失敗したことをより悔やむ傾向にある。このような例はほかにも紹介されている(激しい苦痛と穏やかな苦痛のどちらが耐えやすいか,変更ができない状況と変更が可能な状況のどちらが望ましいか,など)。

    これらの欠点があることを踏まえたうえでどうすれば将来を正確に予測して幸せな未来を実現すればよいのか。第6部は,結局のところ将来のために意思決定するために自分の感情を物差しにするのではなく,だれか他人の実際の感情を参考にするのが良いと結論している。もっとも,自分を特別な存在だと思い込んでいる人間が,その他多数のうちの誰かの感情を参考にするのが一番であるという方策を受け入れるのは難しいだろうとも著者は指摘しているが。

    進化の過程で培われてきた脳が必ずしも人間を合理的に行動させるわけではないことを心理学や進化学,経済学などの知見に基づいて解説した本はたくさんある(例えばダニエル・カーネマン『ファスト&スロー』)早川書房)やキース・E・スタノヴィッチ『心は遺伝子の論理で決まるのか』(みすず書房)など)。この本では「合理的」という言葉こそほとんど出てこないけれど,こうしたジャンルの本に分類することができるだろう。本書を読んでこのトピックに興味を持ったらほかの本を何冊か読んでみるのもよいだろう。

  • メモ程度
    人間は未来を想像する考えることができるが、こと未来を予測することは苦手だという


    幸せとは何か幸せの定義が記載されている
    感情の幸せ
    道徳の幸せ
    判断の幸せ

    未来とは今のこと
    今を生きることが未来につながる

    未来を読み違えない
    未来にたいしていい結果良い未来を呼び起こす(と信じている)方法は、
    こうしたいと思っている時に、
    実際にそうしている人に聞くこと教えを乞うことだという

    人間はみんな愚かなことに自分は他人よりも平均以上だと思う傾向があるらしい
    しかし圧倒的大多数の人間が平均というものを出している以上上記のような方法が幸せに近づく唯一の方法のようだ

    自分自身を特別視してしまう
    想像の3つの弱点も記載されている

    人間の人生の目的は幸せを求めることだ!
    と共感する方は手に取ってみると良い本かもしれません

  • 人は細部を穴埋めしてしまう。
    過去と現在から未来を想像する。
    その過去も曖昧な箇所は埋められるし、現在を重視すぎる傾向がある。
    未来の計画は前頭葉にその力がある。
    なぜ未来を想像するのか?に対して人はコントロールするのが好きだという指摘は納得度が高い。

  • 各章が冗長すぎて読むのが辛かった。

    とはいえ、学びはあった。
    おわりに。だけ読み返せばよさそう。

    ダニエル・ベルヌーイの理論、選択の正しさを発生確率×効用(それから得られる満足度や喜び)で求められるというのはモノの絶対的価値だけの判断ではないので予見の判断に使えそう。

    その効用の判断が難しい点について著者の理論が色々書いてある。そんな本。

  • 明日を幸せに感じるのは、なぜなのか。そしてそれはどれほど正確なのか?という趣旨の本だったように思います。とても面白かったです。序盤で、「幸せになるためのHowtoならば二つ隣の棚に自己啓発本がある、それ読んでもうまくいなかったから、また戻っておいで」みたいな煽りには笑いました。実際のところ、私たちは、未来をそれほど正確に予測できるわけではないので、なんか幸せになるんだろうなという勘違いをけっこうやらかしています、というまとめになるでしょうか。それは、錯視や記憶のエラーと同じようなものなので、止められない止まらない、というのも悲しくなりますが。とはいえ、未来の状態をどれだけ正確に予測できるかと、主観的にどれだけ幸せであるかとは別問題のようにも思えますね。引用がないのはいただけないです

  • 私はこの本を読み終えたら何か良いことがあると思ったが、悪いことしか無い(中身のない内容を永遠と読まされる苦痛と時間を浪費する)ことを予測することはできなかった。
    私たちは往々にして都合よく過去や未来を捉えるらしい。
    経験をした人々の報告を先に見るべきだった。

  • 良本です。幸せについて様々な実験を通してまとめてあります。

    その中でもお気に入りは。

    慣れについて

    素晴らしい出来事は最初に起こった時が一番素晴らしく、

    繰り返し起こるに連れて、薄れていってしまう。

    我が子に「ママ」と呼ばれ、連れ合いの恋人に「愛してる」と言われてた

    最初と最後のときを比べればわかるはずだ。

    私たちは一つの経験をなんども体験すると、得られる喜びが

    減っていってしまう。

    これを心理学者は「馴化(慣れ)」と呼び、経済学者は「限界効用の逓減」と呼ぶが

    我々一般人は「結婚」と呼ぶ。

    この一節はとても面白かったです。直前の限界効用の逓減などは少し難しいですが、

    結婚と聞いたときにわかりやすいなと思いました。

    やはり慣れないためには、時間を置くことが大事だそうです。

    参考になります。

  • 挫折本
    回りくどい表現についていけず、60ページぐらいまで読んで手放した。読みにくかった。

  • 自らの脳で未来を想像するのは、限界があるのと同時に、不明瞭・不確定であり、それを信じることに警鐘を鳴らす。
    結果、他人の経験を自己へ投影する術が未来を想像するのに役たつ。
    自分は他と違うという感覚と個人の多様性という根拠のない信念こそ、他人の経験を参考しない、またはわれわれが他人を代理人にするのを拒む最大の理由なのは納得するところがあった。
    自分は特別という意味のない根拠が、変なプライドを武装し、知っているフリをしてしまう。
    他人の経験を勉強することは、自分の間違った思考を考えるのにも役たつ。これが結果的に、自分の未来やどうありたいかを想像することにつながるのかも、という結論に至った。

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