貧困の終焉: 2025年までに世界を変える (ハヤカワ文庫 NF 404)

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  • Amazon.co.jp ・本 (636ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150504045

作品紹介・あらすじ

「世界の貧困は撲滅できる」。第一人者が具体策を語った名著の文庫化。解説/平野克己

感想・レビュー・書評

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  • ◯ 私たちの世代がなすべきことは、最低ラインにいる人びとが極度の貧困から抜け出して経済開発の梯子を自力で昇れるように手を貸すことである。(76p)

    ◯それ以来、私は何が必要かという点だけを明瞭にし、「政治的に可能」かどうかは気にしないようにした。(200p)

    ◯中国の中央集権機構(中略)は、つねに分散し変化してゆく市場経済のダイナミズムとは相容れない(294p)

    ★著者は学者として成功を収めただけでなく、政府顧問として南米、東欧、ロシア、中国、インドの経済開発でも成果をあげた。しかも冷戦が終結し、共産圏が市場経済へ移行する難しい時代に。そんな著者がアフリカの、そして世界の貧困をなくすための具体策を示した本書は、全人類にとって重要な提言である。

    ★ただ本としての評価としては、後半は同じ主張が長々と繰り返されるので読むのが大変でした。

  • ◎信州大学附属図書館OPACのリンクはこちら:
    https://www-lib.shinshu-u.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BB1580092X

  • 貧困に向き合い続けた著者の、貧困根絶のための道筋を実例とともに論じる本。

    https://note.com/t06901ky/n/n4237f65e7f32

  • 超大作やった。楽観主義過ぎず、しかし希望を失うことなく前へ前へという意志を感じる内容だった。

  •  「臨床経済学」なる分野と、開発経済におけるビックプッシュ論を展開した本。(今年となっては)あと5年で世界から貧困をなくそうという強い意志を訴えた熱い本である。
     とにかく成功事例、希望の兆しが多い。人類は貧困を撲滅できる、すべての人が教育を受けることができ、当たり前の医療を受けらえる日が来ると感じさせるものがある。一方で、開発には課題や障害も多いことがはっきりと述べられている。
     世界銀行やIMFへの批判は話半分としても、援助を出し惜しんでいる以上、世界開発の課題の半分は投資者、つまり富裕国側にあるといえるだろう。本書は、援助そのものの無駄を指摘する声を含めて議論を起こしたといわれる。少なくとも私は、人類の希望や援助の目的を第一に見据えて行動を促す本書に、そして著者サックスに賛同し「人類は貧困を根絶できる」と思う。
    今後もこの手の本を読み進めるし、行動を起こしたく機会を探っていくつもりである。

  • 貧困を終わらせるなんて言葉、よほど頭がお花畑な夢想家しか使わないだろうと思っていた。
    国際政治の最前線で貧困国の課題に尽力する人たちの成果も見ないまま、一体何を知った気になっていたのだろう。
    2000年に国連総会で宣言されたミレニアム開発目標から15年。世界は大きく前進した。

    ・1.25ドル未満で暮らす人々の割合は世界全体で36%→12%。開発途上地域では47%→14%
    ・世界の識字率は83%→91%
    ・幼児死亡率は1270万人→600万人
    ・妊婦死亡率は45%減少
    ・HIVの新たな感染は40%減少
    ・オゾン層破壊物質は98%が除去
    ・安全な飲料水にアクセスできない人の割合は9%に減少
    ・開発途上地域の栄養不良人口の割合は23.3%→12.9%
    ・マラリアの死亡者数は3分の1

    もちろん、悪化した事実もある。
    ・スラム居住者は7.9億人から8.8億人に拡大
    ・サブサハラ・アフリカ人口の41%は極度の貧困層
    ・今なお約8億人が栄養不良状態。
    さらに、統計にはあらわれない不幸も尽きるはずもなく、日本でさえ餓死するような窮乏した生活に見舞われている人も存在する。

    本書では、困窮とした人々の生活をただ憂い嘆くだけでなく、問題提起以上の具体的な解決方策が示される。
    ハイパーインフレーションの終息、安定した新通貨の導入、返済不可能な債務の帳消し、瀕死の共産主義経済からダイナミックな市場経済への移行、エイズ・肺結核・マラリア撲滅のためのグローバル基金の設立、貧困層のHIV感染者に対する現代的な薬物治療。
    これらに直接関与できない人であっても、資金を提供することは誰にでも出来る。

    遠くの見知らぬ多くの生活困窮者よりも、近くの少ない困っている人に手を差し伸べようとする人間の感覚は当然だ。
    ただ、技術革新により全世界の距離が縮みつつある中で、誰を助けるのかを選ぶということは、誰を助けないのかを選ぶことだという事実の適用範囲は広がっている。

    人類文化の繁栄は、人の、団体の、地域の分業により加速してきた。これからの未来、貧困を脱した国々が新たな分業の輪に加われば、想像を超えた新たな世界が見られるかもしれない。

  • 著者の自慢話のようにも見える。とはいえ、実務家としての豊富な示唆もあろう。もう一度、読み返したい。

  • 何年かぶり再読。わかりやすい目標を掲げることは大切!でも、具体的な処方箋を示さなければ絵に描いた餅。こうやってわかりやすい目標で大衆を引き付ける人も必要だし、地道に現場で取り組む人も大切。

  • 貧困をなくすためにアメリカがどのように動くべきかを説いている。
    極度の貧困、中程度の貧困、相対的貧困。
    極度の貧困をなくすこと。また、中程度の貧困を開発のはしごに上がること。
    豊かな社会の所得を長期的に増加させたのは科学技術。
    農作物の収穫量の増加と都市人口の増加が経済成長とともに進む。
    農業生産が貧困国かを分ける。貯蓄ができるかが重要。
    中国は東欧と違い食料を保証しなかったので、労働意欲が高まった。
    現実的という言葉を自分にとって好都合という意味で使っている。

  • 「世界の貧困問題」に関心ある人にはぜひ読んでほしい一冊。なぜ貧困問題が起こり、今もって解決されないのかについて、偏らず、冷静に分析され、具体例も豊富に掲載されている。この問題は深刻かつ複雑で、解決なんて何十年もかかると思いがちであるが、著者は必ず解決できると信じている。その信じる力がこちらにも伝わってくるような一冊。貧困に限らず複雑な問題に対しては取り組む前から無力感に苛まれることがあるが、一つ一つ分解していけばどんなものでも理解し解決できる気がする。

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