ファスト&スロー(上) あなたの意思はどのように決まるか? (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

制作 : 村井章子 
  • 早川書房
4.28
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本棚登録 : 1857
レビュー : 102
  • Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150504106

作品紹介・あらすじ

直感的「速い思考」と論理的「遅い思考」による人間の意思決定メカニズムを徹底解剖。

感想・レビュー・書評

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  • ホームズの思考術にあった速い思考と遅い思考(ホームズシステムとワトソンシステム)の元ネタはダニエル・カーネマンのファスト&スローだよなあ、と思い本棚から取り出し出だし少し読んでみた。ワトソンシステムの例が書いてある。考えてみれば普段の生活はほとんどワトソンシステムに任せている。だから、思いもしない事があると、自然な対応が出来ずミスしてしまう、という事になるんだな、と。ホームズは「見る事と観察する事は違う」と語っているけれど、少し日常を観察する事を意識してみよう。

    ↓以下、丸ごと引用
    『近所の人がスティーブのことを次のように描写しました。「スティーブはとても内気で引っ込み思案だ。いつも頼りにはなるが、基本的には他人には関心がなく、現実の世界にも興味がないらしい。物静かで優しく、秩序や整理整頓を好み、細かいことにこだわる」。さてスティーブは図書館司書でしょうか?それとも農家の人でしょうか?
    スティーブの性格が図書館司書のステレオタイプとピタリと一致することは、誰もがすぐに思いつく。だがこの質問に答えるためには同じくらい重要な意味を持つ統計的事実があるのだが、こちらはまず間違いなく無視される。
    あなたはアメリカでは男性の私を1人に対して農業従事者は20人以上いると言う事実を思い出したであろうか。農家の人がこれだけたくさんいれば物静かで優しい男は図書館で座っているよりもトラクターを運転している可能性の方が高い。ところが実験の参加者はこうした統計的事実を無視し、ステレオタイプと類似性だけを問題にした。彼らは難しい判断を下すにあたり、似たものを探して単純化ヒューリスティック(大げさに言えば近道の解決法)を使ったのだと考えられる。このようにヒューリスティックに頼ると答えには予測可能なバイアス(系統的エラー)がかかることになる。』p15

    何か問題や課題が与えられた時、いかにすでに自分の脳内にある、取り出しやすい、慣れた材料で物事を判断しているか!って事ですね。単純化!サポメ課題本の失敗の科学にも単純化の例が書いてあったし、先日ひっつじーさんが紹介してくれた【心配学】でのリスクとリターンの見積もり間違いの話にも通じるなあ。今日は自分がどれほど単純化しているか、意識してみよう。

  • 人間が行う意思決定について分析した本。著者は、ノーベル経済学賞を受賞した心理学者。意思決定に使われる人間の思考を、感情的な「速い思考(システム1)」と、論理的な「遅い思考(システム2)」に分け、仕組みを解き明かしている。興味深い内容を論理的かつ学術的に説明している。
    「タスクをひんぱんに切り替えたり、知的作業をスピードアップしたりするのは本質的に不快なことであり、人間は可能であればそれを避けようとする」p60
    「認知的に忙しい状態では、利己的な選択をしやすく、挑発的な言葉遣いをしやすく、社会的な状況について表面的な判断をしやすい」p62
    「神経系は、人間の体のどの部分よりも多くのブドウ糖を消費する」p64
    「自分がどんな気分のときも、つねにやさしく親切にしなさいという忠告は、まことに当を得ている(動作が感じ方に結びつく)」p81
    「誰かに嘘を信じさせたいときの確実な方法は、何度も繰り返すことである。聞き慣れたことは真実と混同されやすいからだ。独裁者も広告主も、このことをずっと昔から知っていた」p93
    「新奇なものに疑いを抱かない動物が生き延びる可能性は低い」p100
    「慣れ親しんだものは好きになる。これが単純接触効果だ」p105
    「(モーゼの錯覚)「モーゼは何組の動物を箱船に乗せたか」この質問の間違いに気づく人は、極めて少ない。モーゼは動物を1匹も箱船に乗せていない。乗せたのは、ノアである。「箱船に乗せられる動物」という観念は、聖書の文脈を想起させる。そしてモーゼは聖書に出てきておかしくない人物である。モーゼとノアが同じ母音を持ち、音節数が同じであることも、錯覚を助長する」p110
    「アランかベンか、どちらがお好きだろうか。
    アラン:頭がいい、勤勉、直情的、批判的、頑固、嫉妬深い
    ベン:嫉妬深い、頑固、批判的、直情的、勤勉、頭がいい
    もしあなたが大多数の人と同じなら、ベンよりアランの方がずっと好きだろう」p123
    「ストーリーの出来で重要なのは情報の整合性(つじつまが合っている)であって、完全性ではない」p130
    「(人間は系統付けたがる)私たちは、人生で遭遇する大半のことはランダムであるという事実を、どうしても認めたくないのである」p173
    「住宅を買うときも、最初の提示価格に影響される。同じ住宅でも、提示価格が低いときより高いときのほうが、立派な家に見えてしまう。相手の言い値には惑わされないぞ、と心に決めていても無駄だ」p177
    「チームで仕事をする場合、自分の方が他のメンバーよりがんばっており、他のメンバーの貢献度は自分より小さいと考えがちである」p194
    「高価な商品におまけを付けたところ、そのせいで、全体が安っぽくなってしまった」p244
    「(無茶なギャンブルに出て勝利する将軍や起業家)たまたま幸運に恵まれたリーダーは、大きすぎるリスクをとったことに対して罰を受けずに終わる。それどころか、成功を探り当てる嗅覚と先見の明の持ち主だと評価される。その一方で、彼らに懐疑的だった思慮分別のある人たちは、後知恵からすると、凡庸で臆病で弱気ということになる。かくして一握りの幸運なギャンブラーは、大胆な行動と先見性のハロー効果によって「勇気あるリーダー」という称号を手に入れるのである」p298
    「うまくいっている企業のCEOは、臨機応変で理念と決断力があるようにみえるのである。しかし1年後にその企業が落ち目になっていたら、同じCEOが支離滅裂で頑固で独裁的だとこきおろされるに違いない。どちらの評価も、その時点でもっともだと思える」p300
    「専門家も所詮は人間であるから、自分を優秀だと思い込み、誤りを犯したと認めることをひどく嫌う」p319

  • 私たちの内的な決定機関には二つのシステムがあるということを、様々な実験から検証し提言する内容。ノーベル経済学賞を受賞した著者なので、内容は決して難しく書かれていないが、検証の緻密さ精密さはくどいほど。しかし目から鱗の大変面白い内容だった。

    ファスト&スローとは、簡単に言えば「直感」と「理性」といったところだろうか。私たちはあることに直面した時、自身にとって最善の方を選択しようとするし、状況と前提に合わせた回答を用意しようとする。しかしその選択の大部分は理性によって吟味されたものではなく、前提とされた状況や経験によってゆがめられている。「直感」はあるフレームがあり、それにのっとったものをストレスなく選び取ろうとする。「理性」は直感が選び取ったものをもう一度フィルターにかけて自己に問い直すような役割を果たす。しかしこの「直感」は大変揺れやすく、「理性」も直感のブレの幅に結構影響を受けてしまう。

     行動経済学に初めて触れた気がするが、この検証は結構恐ろしい。特に宗教者にとっては足元がぐらぐらする思いだ。信仰が個別的であり、自身の経験と直感にかなりの比重がかかっていることは自明である。マインドコントロールという言葉は使いたくないが、構造主義の賜物というのか。メタゲームの先に信仰は見えるのか、人生の課題でもある。

    17.12.5

  • 何度か読まないと多分理解できない。人がどのように物事を認識し、理解しているかを分解して説明している。

    人の仕組みを理解することで、あらゆることに転用が可能になる。名著。

  • この本は当たりだった。難しすぎず、易しすぎず、絶妙な語り口で行動経済学を教えてくれた。「起こったことはどうとでも言える。」とか「無理しても笑顔でいた方が幸せになれる」と言ったことを理屈で説明してくださり、僕の生き方にも影響を与えるだろう。

    ビジネス書を読んでも意味ないことも分かった。

  • ・マシュマロテスト
    p72「注意力を訓練すると実行制御能力が高まるだけでなく、非言語知能テストの成績も上がる」「子供たちが注意力をコントロールする能力は、自分の感情をコントロールする能力と密接に関連する」
    ・プライミング効果
    p83「独裁国家の指導者の写真がそこここに飾られていたら、「見張られている」という感覚を与えるだけでなく、自ら考えたり行動したりする気持ちが失せてしまうことに、疑いの余地はあるまい。」「国民に死を暗示すると、権威主義思想の訴求力が高まる」「死の恐怖を考えると、権威に頼るほうが安心できるから」
    ・認知容易性
    ・単純接触効果
    ・確証バイアス
    ・ハロー効果
    ・フレーミング効果
    ・アンカリング効果

  • システム1とシステム2。
    システム1は自動運転していてスイッチを切ることはできない。システム2による監視が必要だが、システム2が自分で選んだ選択も、実はシステム1の提案のままであることも多い。

    歩きながらシステム2はよく働くが、ペースが上がると無理になる。スピードが遅くならないよう運動を続ける努力を続けることにリソースが割かれる。
    システム2で運用するには疲れるし、限りがある。

    ヒューリスティックとバイアス
    小数の例に惹かれやすい。小さい標本に対して過剰に信頼する。
    アンカーの数字に左右される。一人限定12個まで、と書いたほうが無制限より売れる。
    利用可能な話題に惹かれる=飛行機事故が続くと飛行機に乗るのを避けようとする。
    感情の赴くままに判断しやすい。
    平均へ回帰する傾向を見やすい。

    自信過剰
    なんでも分かったつもり、になりたがる=企業の繁栄や失敗に理屈をつけたがる。単に偶然なだけなのに。
    金融業界はスキルの錯覚、で成り立っている。
    世界は予測可能、と思いがち。実際は予測は不可能、あるいは予測精度は保証されない。
    最終決定を計算式に任せるほうがいい。人の感情が入らないほうが、まだ正確。
    夫婦の離婚可能性は、セックスの回数ー喧嘩の回数、でわかる。

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  • 人間の意思決定メカニズムを徹底解剖。
    直感的「速い思考(システム1)」と論理的「遅い思考(システム2)」の理解。
    難しい。私には何度か読み直さないと理解できない箇所が多い。

  • 行動経済学や心理学の様々な研究事例に触れることができるので興味深い。 ちょっと一部でアメリカならではっぽい結果が得られてるのではと思ってしまった面もあった

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著者プロフィール

心理学者。プリンストン大学名誉教授。2002年ノーベル経済学賞受賞(心理学的研究から得られた洞察を経済学に統合した功績による)。
1934年、テル・アビブ(現イスラエル)に生まれへ移住。ヘブライ大学で学ぶ。専攻は心理学、副専攻は数学。イスラエルでの兵役を務めたのち、米国へ留学。カリフォルニア大学バークレー校で博士号(心理学)取得。その後、人間が不確実な状況下で下す判断・意思決定に関する研究を行い、その研究が行動経済学の誕生とノーベル賞受賞につながる。近年は、人間の満足度(幸福度)を測定しその向上をはかるための研究を行なっている。著作多数。より詳しくは本文第2章「自伝」および年譜を参照。

「2011年 『ダニエル・カーネマン 心理と経済を語る』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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