ファスト&スロー(上) あなたの意思はどのように決まるか? (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

制作 : 村井章子 
  • 早川書房
4.27
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本棚登録 : 2503
レビュー : 132
  • Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150504106

作品紹介・あらすじ

直感的「速い思考」と論理的「遅い思考」による人間の意思決定メカニズムを徹底解剖。

感想・レビュー・書評

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  • ホームズの思考術にあった速い思考と遅い思考(ホームズシステムとワトソンシステム)の元ネタはダニエル・カーネマンのファスト&スローだよなあ、と思い本棚から取り出し出だし少し読んでみた。ワトソンシステムの例が書いてある。考えてみれば普段の生活はほとんどワトソンシステムに任せている。だから、思いもしない事があると、自然な対応が出来ずミスしてしまう、という事になるんだな、と。ホームズは「見る事と観察する事は違う」と語っているけれど、少し日常を観察する事を意識してみよう。

    ↓以下、丸ごと引用
    『近所の人がスティーブのことを次のように描写しました。「スティーブはとても内気で引っ込み思案だ。いつも頼りにはなるが、基本的には他人には関心がなく、現実の世界にも興味がないらしい。物静かで優しく、秩序や整理整頓を好み、細かいことにこだわる」。さてスティーブは図書館司書でしょうか?それとも農家の人でしょうか?
    スティーブの性格が図書館司書のステレオタイプとピタリと一致することは、誰もがすぐに思いつく。だがこの質問に答えるためには同じくらい重要な意味を持つ統計的事実があるのだが、こちらはまず間違いなく無視される。
    あなたはアメリカでは男性の私を1人に対して農業従事者は20人以上いると言う事実を思い出したであろうか。農家の人がこれだけたくさんいれば物静かで優しい男は図書館で座っているよりもトラクターを運転している可能性の方が高い。ところが実験の参加者はこうした統計的事実を無視し、ステレオタイプと類似性だけを問題にした。彼らは難しい判断を下すにあたり、似たものを探して単純化ヒューリスティック(大げさに言えば近道の解決法)を使ったのだと考えられる。このようにヒューリスティックに頼ると答えには予測可能なバイアス(系統的エラー)がかかることになる。』p15

    何か問題や課題が与えられた時、いかにすでに自分の脳内にある、取り出しやすい、慣れた材料で物事を判断しているか!って事ですね。単純化!サポメ課題本の失敗の科学にも単純化の例が書いてあったし、先日ひっつじーさんが紹介してくれた【心配学】でのリスクとリターンの見積もり間違いの話にも通じるなあ。今日は自分がどれほど単純化しているか、意識してみよう。

  • 2002年、ノーベル経済学賞受賞のダニエル・カーネマンによる大作。

    前々からこの本の評判は聞いていたものの、内容が重厚そうで中々チャレンジできなかったのですが、
    学校の指定教科書になってしまったので、強制的に読む機会を得ました。
    結果としては、大満足のとても面白い内容、もっと早く読んでも良かったと思わせてくれる本でした。
    内容の割には読みやすく(決して簡単で軽い本ではないですが)、
    一度読み始めると次の展開が気になって仕方なくなってしまう本でした。

    簡単に内容を紹介すると、著者は人が頭の中で思考するとき、
    速い思考(「直観」のようなもの)と遅い思考(「熟考」のようなもの)の2パターンがあると主張しています(主張というより、比喩を用いて説明しているという感じ)。
    この2つはときに、人の決断・判断を誤らせることがあり、
    どういったときに人は間違った決断・判断をしてしまうのかを
    様々な心理学の実験や統計的な知識を用いて解説してくれます。
    代表的なものが色々なところで言われているヒューリスティック・バイアスでしょう。
    この本を読んで実践できれば、そういった間違いを減らす可能性が高まるでしょう。
    (といっても、実践するのは結構難しい。。)

    欲を言えば、彼の主張を脳科学の観点から補足できれば、より魅力的な&知的好奇心を刺激される内容になったと思われます。
    (誰か脳科学者の方に本の開設をしてもらいたいです。)

  • 人間が行う意思決定について分析した本。著者は、ノーベル経済学賞を受賞した心理学者。意思決定に使われる人間の思考を、感情的な「速い思考(システム1)」と、論理的な「遅い思考(システム2)」に分け、仕組みを解き明かしている。興味深い内容を論理的かつ学術的に説明している。
    「タスクをひんぱんに切り替えたり、知的作業をスピードアップしたりするのは本質的に不快なことであり、人間は可能であればそれを避けようとする」p60
    「認知的に忙しい状態では、利己的な選択をしやすく、挑発的な言葉遣いをしやすく、社会的な状況について表面的な判断をしやすい」p62
    「神経系は、人間の体のどの部分よりも多くのブドウ糖を消費する」p64
    「自分がどんな気分のときも、つねにやさしく親切にしなさいという忠告は、まことに当を得ている(動作が感じ方に結びつく)」p81
    「誰かに嘘を信じさせたいときの確実な方法は、何度も繰り返すことである。聞き慣れたことは真実と混同されやすいからだ。独裁者も広告主も、このことをずっと昔から知っていた」p93
    「新奇なものに疑いを抱かない動物が生き延びる可能性は低い」p100
    「慣れ親しんだものは好きになる。これが単純接触効果だ」p105
    「(モーゼの錯覚)「モーゼは何組の動物を箱船に乗せたか」この質問の間違いに気づく人は、極めて少ない。モーゼは動物を1匹も箱船に乗せていない。乗せたのは、ノアである。「箱船に乗せられる動物」という観念は、聖書の文脈を想起させる。そしてモーゼは聖書に出てきておかしくない人物である。モーゼとノアが同じ母音を持ち、音節数が同じであることも、錯覚を助長する」p110
    「アランかベンか、どちらがお好きだろうか。
    アラン:頭がいい、勤勉、直情的、批判的、頑固、嫉妬深い
    ベン:嫉妬深い、頑固、批判的、直情的、勤勉、頭がいい
    もしあなたが大多数の人と同じなら、ベンよりアランの方がずっと好きだろう」p123
    「ストーリーの出来で重要なのは情報の整合性(つじつまが合っている)であって、完全性ではない」p130
    「(人間は系統付けたがる)私たちは、人生で遭遇する大半のことはランダムであるという事実を、どうしても認めたくないのである」p173
    「住宅を買うときも、最初の提示価格に影響される。同じ住宅でも、提示価格が低いときより高いときのほうが、立派な家に見えてしまう。相手の言い値には惑わされないぞ、と心に決めていても無駄だ」p177
    「チームで仕事をする場合、自分の方が他のメンバーよりがんばっており、他のメンバーの貢献度は自分より小さいと考えがちである」p194
    「高価な商品におまけを付けたところ、そのせいで、全体が安っぽくなってしまった」p244
    「(無茶なギャンブルに出て勝利する将軍や起業家)たまたま幸運に恵まれたリーダーは、大きすぎるリスクをとったことに対して罰を受けずに終わる。それどころか、成功を探り当てる嗅覚と先見の明の持ち主だと評価される。その一方で、彼らに懐疑的だった思慮分別のある人たちは、後知恵からすると、凡庸で臆病で弱気ということになる。かくして一握りの幸運なギャンブラーは、大胆な行動と先見性のハロー効果によって「勇気あるリーダー」という称号を手に入れるのである」p298
    「うまくいっている企業のCEOは、臨機応変で理念と決断力があるようにみえるのである。しかし1年後にその企業が落ち目になっていたら、同じCEOが支離滅裂で頑固で独裁的だとこきおろされるに違いない。どちらの評価も、その時点でもっともだと思える」p300
    「専門家も所詮は人間であるから、自分を優秀だと思い込み、誤りを犯したと認めることをひどく嫌う」p319

  • 私たちの内的な決定機関には二つのシステムがあるということを、様々な実験から検証し提言する内容。ノーベル経済学賞を受賞した著者なので、内容は決して難しく書かれていないが、検証の緻密さ精密さはくどいほど。しかし目から鱗の大変面白い内容だった。

    ファスト&スローとは、簡単に言えば「直感」と「理性」といったところだろうか。私たちはあることに直面した時、自身にとって最善の方を選択しようとするし、状況と前提に合わせた回答を用意しようとする。しかしその選択の大部分は理性によって吟味されたものではなく、前提とされた状況や経験によってゆがめられている。「直感」はあるフレームがあり、それにのっとったものをストレスなく選び取ろうとする。「理性」は直感が選び取ったものをもう一度フィルターにかけて自己に問い直すような役割を果たす。しかしこの「直感」は大変揺れやすく、「理性」も直感のブレの幅に結構影響を受けてしまう。

     行動経済学に初めて触れた気がするが、この検証は結構恐ろしい。特に宗教者にとっては足元がぐらぐらする思いだ。信仰が個別的であり、自身の経験と直感にかなりの比重がかかっていることは自明である。マインドコントロールという言葉は使いたくないが、構造主義の賜物というのか。メタゲームの先に信仰は見えるのか、人生の課題でもある。

    17.12.5

  • プライミング、ハロー効果、アンカー。ダニエル・カーネマンは、人間の意思決定が、こうした表面的な観察に容易に影響を受けるシステム1と、それを検証ししようとするシステム2の二つにより成り立っていることを本書で多くの実験事例を挙げて紹介しています。

    数少ない目立つ事例や現象は意識に残りやすく、人はその観察事例が少ないことを失念しやすいことから判断にバイアスがかかりやすくなる、ということから母集団の基準率を良く把握することの大切さも説いています。

    平均への回帰というコンセプトは特に興味深く読みました。うまくいっているときには、それが永遠に続いて欲しいと誰しも願うものですが、それは全く何の根拠もないこだと。成功している企業や人がどうしてそうなのかを著した本はビジネス書として巷間に溢れていますが、それらが良く売れるのは、システム1が因果関係を探したがる傾向によるもののようです。実際は、運によるところが大きいといいます。

  • 人間の判断がいかにいい加減・気まぐれ・自信過剰・偶然的・不毛なものかをこれでもかと教えてくれる本。いやー,怖い,怖い,怖い。イギリスやアメリカの哲学の本読んだときと同じ恐怖感がある。人間がますます嫌いになってしまうね。謙虚に生きます。

  • 長かったけど、行動経済学について、実例つきで解説された本。

    「ヘンテコノミクス」は読んだことがあったが、それ以上に実社会の人間の行動を紐解いていて、ちゃんと読めれば行動経済学の理解はかなり深まる。

    ただ長いので、根気は必要かも。
    良書でした。

  • Kindle

  • 何度か読まないと多分理解できない。人がどのように物事を認識し、理解しているかを分解して説明している。

    人の仕組みを理解することで、あらゆることに転用が可能になる。名著。

  • 意図的な数量制限が効果的なマーケティング手法になることはご存知だろうか。例えば、あるスーパーマーケットが定価から10%引きで販売した。

    数日間は、「お1人様12個まで」の張り紙が出され、残りの数日間は「お1人様何個でもどうぞ」の張り紙に変わった。

    すると制限されていた日の平均購入数は7缶で、制限なしの日の二倍に達したのである。

    数量制限を設けることで、品物が飛ぶように売れていく様子が想像され、買い物客は急いで買い溜めしなければ、という気にさせられたことだろう。

    そして「12個」という表示が、いい加減に選ばれたとしても効果は変わらないだろう。

    ここでは「アンカリング効果」も適用されている。「アンカリング効果」とは基準値を設定することで、そのことを想像しやすくする効果がある。

    例えば、「あなたは環境汚染のためにいくら寄付しますか?」という質問があるとする。この時に「いくら」ではなく「5ドル以上寄付するつもりはありますか?」と質問したとする。

    その結果、平均20ドルの寄付額になった。しかしここで、もし「400ドル以上寄付するつもりはありますか?」とする。

    そうすると面白いことに平均143ドルの寄付額が集まった。

    つまり、逆を考えれば提示された金額が高めに設定されていれば、私たちはかなり値切れたと思っても実は全然値切れていない可能性がある。

    そういった時に効果的な対処法は、高すぎる金額に対して、低すぎる金額を提示するのではない。

    憤慨して、その場を立ち去る素ぶりを見せたり、自分はその金額では交渉を続けるつもりはないという姿勢を見せることが大事である。

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著者プロフィール

心理学者。プリンストン大学名誉教授。2002年ノーベル経済学賞受賞(心理学的研究から得られた洞察を経済学に統合した功績による)。
1934年、テル・アビブ(現イスラエル)に生まれへ移住。ヘブライ大学で学ぶ。専攻は心理学、副専攻は数学。イスラエルでの兵役を務めたのち、米国へ留学。カリフォルニア大学バークレー校で博士号(心理学)取得。その後、人間が不確実な状況下で下す判断・意思決定に関する研究を行い、その研究が行動経済学の誕生とノーベル賞受賞につながる。近年は、人間の満足度(幸福度)を測定しその向上をはかるための研究を行なっている。著作多数。より詳しくは本文第2章「自伝」および年譜を参照。

「2011年 『ダニエル・カーネマン 心理と経済を語る』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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