ファスト&スロー(下) あなたの意思はどのように決まるか? (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

制作 : 村井章子 
  • 早川書房
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レビュー : 58
  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150504113

感想・レビュー・書評

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  • 上巻に続き、意思決定の「妙」についての解説。経済学では人間は「合理的」となっているが、「現実を生きる経験する自己」と「記憶をもとに選択する自己」では意思決定が異なり、非合理的選択をすることも多い。長い時間心地よい音楽を聴いていても、最後に雑音が入るとすべて台無しと判断してしまうことや、嫌な状態が続いても最後にいいことがあると許してしなうことなど。こういうことは人や組織を動かす時に知っておくべき知識だと思う。

  • ●姉との会話。
    姉「いやー、年初から脚が痛くてさあ。これって転移してんじゃないの?って医者に言ったんだけど、『まずもって骨に転移することはありません!』とか言われてさー。その後結局折れて、やっぱり転移してたって言う。」
    私「おおおおそれって(医者の)バイアス!?」
    姉「だよねー!」
    以上、日常生活で使える用語のご紹介でした。

    ●ダン・アリエリーの入門書『予想どおりに不合理』を読んだ後はこちらをお勧め。
    そちらで触れられていた内容がより詳しく解説されており、各章の最後には「その概念はこうやって使うんだぜえ!」的な具体例が示されています。

    ・・・でも正直、ヒューリスティックとか使いにくいっすよね・・・・・・?

  • 上巻と比較して行動経済学に関する話題が多く少し読むハードルが高くなった
    エコン(homo economics)と比べヒューマンは合理的でないということと、振り返った時の印象と当時の実感との乖離を主に述べていたように思う
    本文中にも述べられているように誰でも何となく知っていたことを言語化し、裏付けを得て、理論として構築したことは脱帽の限りである
    これも述べられているが合理的になることは不可能であるため少しでも合理的になるようにこれから、日々の生活で出来るだけ意識してシステム2を働かせる、周囲の人とともに本書の内容の理解を深め互いに批判しあえるような関係を築く、などをしていきたい
    いうまでもなく良書なので読んでない人は是非上巻下巻ともに一読してもらいたい

  • こういうこういう本を読んで、いろんな錯覚があるから注意しなきゃと思うんだけど、1週間もすれば元の木阿弥になってしまってることが多い。【平成30年11月11日読了】

  • 上巻から続く。
    「1997年7月、スコットランドの新しい国会議事堂をエジンバラに建設する計画が議会に提出された。総工費は4000万ポンドと見積もられていた。1999年6月には、予算は1億900万ポンドに修正された。2000年4月になると、議会は予算上限を1億9500万ポンドとする法案を可決。2001年11月には議会が「最終予算見積もり」を出すように要求し、2億4100万ポンドという見積もりが提出された。この見積額は2002年中に二度上方修正され、年度末時点で2億9460万ポンドとなった。しかし2003年に三回にわたって修正され、6月時点で3億7580万ポンドとなる。そして2004年に、ついに新議事堂は落成した。総工費はおよそ4億3100万ポンドに達していた」p31
    「リスクをとる人は、たいていは自分が失敗する確率を過小評価しており、猪突猛進した末に、本当の確率を思い知ることになる」p40
    「アメリカでは、スタートアップ(起業)が5年生き延びる確率は約35%である。だが自ら起業した人は、この統計が自分に当てはまると思っていない。アメリカ人起業家は事業の継続性を期待する傾向が強く、「自社と同じような企業」が成功する確率を60%と見込む。これは実際の数字の倍に近い」p41
    「過去の説明にしても未来の予測にしても、能力のせいだと考えたがり、幸運が果たす役割を無視する傾向がある。その結果、自分の能力で結果を左右できると思い込む「コントロールの錯覚(illusion of control)」に陥りやすい」p45
    「チームがある決定に収束するにつれ、その方向性に対する疑念は次第に表明しにくくなり、しまいにはチームやリーダーに対する忠誠心の欠如と見なされるようになる」p53
    「パットの難易度やカップからの距離とは無関係に、パー狙いのパッティングはバーディー狙いよりも成功率が高い(利得よりも損失を重視する習性)」p107
    「人間を含めてあらゆる動物は、得をするより損を防ぐことに熱心である」p109
    「(ガソリンスタンドにおけるクレジットカード使用の割増料金について)「クレジット割り増し」ではなく「現金割引」と表示すべきだと述べた」p196
    「ことエラー防止に関する限り、組織のほうが個人より優れている。組織は本来的に思考のペースが遅く、また規律をもって手続きに従うことを強制できるからだ。組織では、有用なチェックリストの活用を徹底させるほか、参照クラスの予測や死亡前死因分析といったより高度な手順を用意し、実施を義務づけることができる」p273

  • 下巻の前半はプロスペクト理論の説明。
    プロスペクト理論の特徴は
    1)参照点がある
    2)感応度逓減性:100ドルが200ドルに増えればありがたいが、900ドルが1000ドルに増えてもそこまでのありがたみはない
    3)損失回避性:損失は利得の1.5−2.5倍に感じられる

    そのため、利得も損失もありうるギャンブルでは損失回避になり、リスク回避的な選択が行なわれる(損失の方が利得の二倍程度強く感じられるため)
    確実な損失と、不確実だがより大きな損失というように、どちらに転んでも悪い目の出るギャンブルではリスク追求的になる(900ドル失う苦痛の方が1000ドル失う苦痛の90%より大きいため)

    保有効果はプロスペクト理論から説明できる。何かを所有している場合にはをれを手放す苦痛があり、持っていない場合にはそれを手に入れる喜びがある。手放す苦痛は手に入れる喜びを上回る。

    最近行なわれている「貧困下での意思決定」の心理学では、貧しい人には保有効果が働かないことが示唆されている。「貧しい」ということは参照点以下の生活を送っているということであり、常に損失の状態にある。この状態では僅かなお金を得ても損が減るだけで参照点に少し近づくものの価値関数の傾きの大きい領域にとどまっている。

    ・Hansen(J Personality and social psychology 1988)によると、怒った顔は大勢のニコニコ顔の中から飛び出して見える。逆に、大勢の怒った顔に混じった一つのニコニコ顔は見つけるのが難しい。人間にかぎらず動物の脳には、悪いニュースを優先的に処理するメカニズムが組み込まれており、このおかげで捕食者を一瞬で感知できる。

    ・分母の無視
    伝染病のワクチンについて「麻痺のリスクが0,001%ある」というとリスクが小さく感じられるが「接種した子供の10万人に一人に麻痺がおこる」と聞くと
    どうだろうか。「この病気にかかると一万人に1286人が死ぬ」というのと「この病気にかかると100人に24.2人が死ぬ」だと前者の方が危険な感じがする。
    腕利きの弁護士はDNA鑑定に疑義をとなえたい場合「誤鑑定の確率は0.1%である」とは言わず「死刑判決1000件に1件の割合で誤鑑定が起きている」という

    ・フレーミング
    決定1 次のいずれかを選んでください
    A 確実に240ドルもらう
    B 25%の確率で1000ドルもらえるが、75%の確率で何ももらえない
    決定2 次のいずれかを選んでください
    C 確実に750ドル失う
    D 75%の確率で1000ドル払うが、25%の確率で何も失わない

    では73%が決定1でAを、決定2ではDを選び、BとCの組み合わせにした人は3%にすぎなかった。
    しかし

    AD 25%の確率で240ドルもらえ、75%の確率で760ドル失う
    BC 25%の確率で250ドルもらえ、75%の確率で750ドル失う

    の二つを比べるとBCは無条件でADを上回る。
    利得と損失の形で表した単純な選択は、いかようにも選択肢の組み合わせとして再構成し、一貫性を欠く選好を誘導することができる。決定する側としては、複数の決定を一つにまとめて扱える場合は、いつでも広いフレーミングの方がよい。

    ・フレーミング
    McNeil(NEJM 306:1259-62, 1982)によると
    手術に際して
    「術後一ヶ月の生存率は90%です」
    「術後一ヶ月の死亡率は10%です」
    の二つの説明を受けると、内容的には同じであるにもかかわらず前者の方が後者よりも手術を選びやすい(84%vs50%)
    フレームの再構成(リフレーミング)は努力を要するので、明白な理由のない限り、私たちの大半は意思決定問題をフレームされたとおりに受身的に受け止める。自分の選考が客観的事実ではなくフレームに左右されているおとに気づく機会はめったにない。

    ・自分たちの研究は「人間の選択が不合理であることを示した」と言われるが、そうではなく「合理的経済主体モデルではヒューマンをうまく記述できない」というべき。システム1のエラーに多くの記述をさいたが、私たちが行なう正しいことの大半もシステム1のおかげである。

  • ・ ノイズの多い環境では、統計的アルゴリズムは人間を大幅に上回る。これは、かすかだが信頼性の高い手がかりを人間より発見しやすく、かつそうした手がかりを一貫して活用することにより、ある程度の精度を常に維持できるからだと考えられる
    ・ 自分たちのケースに固有の情報を持っている場合、そのケースが属すクラスの統計データも知っておこう、と考える人は滅多にいない
    ・ 計画の錯誤を回避する責任は、計画の可否を決める意思決定者が外部情報の必要性を認めず、外部の情報を集めないこと。
    ・ 失敗をみためたくないがために追加投資をするのは、サンクコスト(埋没費用)の錯誤に他ならない
    ・ 競争の無視:見た物がすべてで、自分が平均以上だと思い込んでしまう
    ・ 不確実性を先入観なく適切に評価することは合理的な判断の第一歩であるが、それは市民や組織が望む物ではない。危険な状況で不確実性が極めて高いとき、人はどうしてよいかわからなくなる。そんなときに、当てずっぽうとしか言えないなどと認めるのは、赤kっている物が大きい時ほど許されない。何もかも知っている振りをして行動することが、往々にして好まれる(無知を示すことは許されにくい)
    ・ 今が1年後だと想像してください。私たちは先ほど決めた計画を実行しました。すると大失敗に終わりました。どんな風に失敗したのか、5〜10分で経過を簡単にまとめてください。
    ・ 損失回避性。損失と利得を直接比較した場合でも、確率で重みをつけた場合でも、損失は利得より強く感じられる。好機よりも京井に大して素早く対応する生命体の方が、生存や再生産の可能性が高まるからだ。
    ・ 損失に対する感応度は、同じ学の利得に対する感応度よりもはるかに強いのである。
    ・ 「トレーダーになったつもりで答えてください」と指示すると、損失許容度が高まり、損失に対する感情反応は大幅に減る(リスクをとりやすい「なりきり」が存在するかも)
    ・ 保有効果:保有すると物的価値以上に感性価値を感じることになるかも。使い方がイメージしやすかったりすることが要因になりそう。
    ・ 脳は単に象徴的な危機に対しても敏感に反応する
    ・ 0%→5%、95%→100%:質的な変化、60%→65%:量的な変化
    ・ あまり起きない出来事が、注意の対象、すなわち関心事象になる。ここで働くのが利用可能性ヒューリスティックだ。思いついたシナリオの数や認知容易性に従って確率を判断することになる。このときすでに、確証モードに入っているので、そうした異常が起きる頻度を多めに見積もる可能性が高い。
    ・ 複数の毛艇をひとつにまとめて扱える場合には、いつでも広いフレーミングをとった方がいい
    ・ 人間は割り増しを払うより、割引を容認する方が容易い。両者は経済学的には同じだとしても、感情的には同じではないのである
    ・ 「経験する自己」と「記憶する自己」。「今痛いですか」という質問に答えるのは前者、終わってから「全体としてどうでしたか」という質問に答えるのが後者。
    ・ 私たちの記憶は、苦痛または快楽が最も強い瞬間(ピーク時)と終了時の感覚とで経験を代表させるように進化してきた
    ・ 記憶する自己が大切な人には、経験する自己は記憶を失った他人以上にどうでもいいらしい
    ・ 幸福を感じる気質という物は身長や知能のように遺伝するすることが、出生児からはなれて育った双子の研究で判明している
    ・ 持続時間の無視とピーク・エンドの法則が重なると、長時間にわたる穏やかな幸せよりも短時間の激しい喜びを好ましいとするバイアスが形成される。
    ・ 建設的に批判するスキルには、的確な語彙が欠かせない。自分を批判する人々が正しい知識を身につけ、かつ公正であると信じられるなら、そして自分の下す決定が結果だけで判断されるのではなく、決断に至る過程も含めて判断されると信じられるなら、意思決定者はよりよい選択をするようになるだろう。

  • 膨大な実験による行動心理学の結果をぎゅっと集めた本。読み応えがあります。合理的ではない人間がおもしろいな、と改めて思う。

  • 血の通った経済学
    従来の経済学のモデルが人間の合理的な経済活動を表しているのか疑問に思っていたが、この本を読んでやはりそうではなかったと思った。

    ・火をふいているにも関わらずサンクコストに引きずられてやめられないプロジェクトに従事している者はエスケープせよ。
    ・面接官の判断がシステム1に起因するものである以上、面接すること自体意味がない。

    さすがノーベル経済学賞受賞者の言うことは違う。よくぞ言ってくれた。

  • ・プロスペクト理論
    参照点、損失回避
    ・経験する自己、記憶する自己
    ・ピークエンドの法則

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著者プロフィール

心理学者。プリンストン大学名誉教授。2002年ノーベル経済学賞受賞(心理学的研究から得られた洞察を経済学に統合した功績による)。
1934年、テル・アビブ(現イスラエル)に生まれへ移住。ヘブライ大学で学ぶ。専攻は心理学、副専攻は数学。イスラエルでの兵役を務めたのち、米国へ留学。カリフォルニア大学バークレー校で博士号(心理学)取得。その後、人間が不確実な状況下で下す判断・意思決定に関する研究を行い、その研究が行動経済学の誕生とノーベル賞受賞につながる。近年は、人間の満足度(幸福度)を測定しその向上をはかるための研究を行なっている。著作多数。より詳しくは本文第2章「自伝」および年譜を参照。

「2011年 『ダニエル・カーネマン 心理と経済を語る』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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