- Amazon.co.jp ・本 (7ページ)
- / ISBN・EAN: 9784150504120
作品紹介・あらすじ
「生まれか育ちか」の時代は終わった。ゲノム解読で見えてきた遺伝子の驚くべき仕組み
感想・レビュー・書評
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将来、AIが個人の最適な職業を提案することが可能になったとして、それはどの段階で可能となるだろうか?
成人してから?赤ん坊の頃?それとも受精卵すら発生する前の両親の遺伝子を判定して?
原題は「Nature Via Nurture:Genes,Experience and What Makes Us Human」であり、若干の意訳がすぎるところがあるが、いつの時代でも両親の心配事となる「生まれか育ちか」論争に答えを出す一冊だ。
今の時代、親でなくとも子育てには環境と遺伝子の両方が影響していることに疑いを持つ人は少ないだろう。
特別な英才教育の環境を用意されたとしても、真剣に取り組む子もいれば、遊び回って手がつけられない子もいる。それは兄弟姉妹であったとしても同じことだ。
この性格の違いは、生まれによるどうしようもないものなのか、これからの環境次第で変えられるものなのか。
本書は「生まれと育ちの両方とも重要」ということを改めて語るものではなく、「遺伝子は環境を通して発現する」ことを説明する。
例えば、鳥類の刷り込み。
「最初に見たものについていく」という遺伝子なしには有り得ないし、それが親鳥であるかどうかは環境次第。
ヘビを知らないサルの子供に、ヘビを怖がる母猿の映像を見せると、ヘビを怖がるようになるが、花を怖がる母猿の映像を見せても、花を怖がるように教育することはできない。
もちろん、本書で取り上げられるのは動物の事例だけではない。
不幸にも幼少期に言語を学ぶ機会を奪われた子供は、成長後の如何なる教育によっても喋れるようにはならない。
被虐待児は、あるタイプの遺伝子をもっている場合のみ反社会的な行動を示すように育つ。
子供が犯罪を犯す確率は、実父母と養父母の両方が犯罪者であるときに一層高まる。
養父母が離婚したときよりも、実父母が離婚したほうが子の離婚の確率は高まる。
つまるところ、遺伝子とは、環境から情報を引き出す書庫であり、レシピであり、スイッチである。
意志や教育や文化の力を総動員したとしても、遺伝子情報を変えることはできないが、その特性は適した環境がなければ発現しない。
さらに付け加えるならば、遺伝子と環境の条件が揃ったとしても、最終的には"確率"の問題となる。
遺伝子と確率がどうにもできないものならば、適した環境を探し続けるしか、出来ることはないだろう。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
原題は、本文中でもたびたび登場する、「生まれは育ちを通じて」
生まれ持った遺伝的要因と、育った環境要因と、どちらが影響が大きいのか?という点について、進化の歴史を辿りながら、答えを探ります。
脳科学、教育学、言語学、生物学など、いろんな要因が絡みつつ、「学習する」本能など、興味深いヒトの性質が明らかになっていく過程はとても面白いです。
そこまで難しい話はないので、広く浅く、いろんな話題から結論を導いたと言えるでしょうか。ときどき読み返したいと思える一冊です。 -
自分的にはマット・リドレー『赤の女王』からの二作目。
『赤の女王』がとても面白かったので。
面白さ、とっつきやすさで言えば、『赤の女王』の方が自分的には良かったかな、と思うが、本書もとても興味深い。
テーマは、「生まれか育ちか」。
人は、本テーマに関わらず、二元論が大好きで2つのうちどちらかにカテゴライズしたがる。だがどちらも影響するんだよ、というのがメインメッセージ。実例やこれまでの研究結果などとともに何故どちらもなのか、といった根拠を展開していく。
持論と書いたが、私から見ると充分に客観的で納得できる主張で、読んでいてストレスがない。
展開される過去の研究結果や実例もわかりやすく説明されているため(それは翻訳者の功績も大きいと推測される)、専門的な事柄を扱っているにもかかわらず、読者も置き去りにされることがない。
『やわらかな遺伝子』というタイトルは、とてもアイキャッチーで美しいタイトルで秀逸な言葉の選択だなと個人的には考える。
原題が『Nature via Nurture』ということで、初めこそ「全然違う!」と感じたものの、巻末の変更の理由を読んで、原題から直訳する際のもどかしさを理解をした。であれば、いっそきれいなタイトルに変更するのは一つの選択であろう。
ただ、”やわらかな”という表現が、訳者独自の理解に基づいている気がして、そこが若干モヤモヤするところではある。
だが、そういったことは些末な点で、とても面白く人に進められる良書であることは間違いない。 -
原題:Nature Via Nurture: Genes, Experience and What Makes Us Human
著者:Matt Ridley(1958-)
訳者:中村 桂子
訳者:斉藤 隆央
【版元の紹介】
ゲノム解析が進むにつれ、明らかになってきた遺伝子のはたらき。それは身体や脳を作る命令を出すが、環境に反応してスイッチをオン/オフし、すぐに作ったものを改造しはじめる柔軟な装置だった。遺伝子は何かを制約するものではなく、可能にするものだったのだ。私たちを形成するのは「生まれか育ちか」――長年の論争に、最新及び過去の膨大な研究データを用いてまったく新しい考え方を示した世界的ベストセラー。
http://www.hayakawa-online.co.jp/product/books/90412.html
【簡易目次】
目次 [005-007]
写真 [008-009]
プロローグ 十二人のひげづら男 013
第1章 動物たちの鑑 023
第2章 幾多の本能 071
第3章 語呂のいい便利な言葉 119
第4章 狂気と原因 165
第5章 第四の次元の遺伝子 207
第6章 形成期 247
第7章 学習 288
第8章 文化の難題 327
第9章 「遺伝子」の七つの意味 376
第10章 逆説的な教訓 405
エピローグ 麦わら人形 449
謝辞 [455-458]
訳者あとがき [459-468]
原注 [469-497]
索引 [498-510] -
「生まれは育ちを通じて」
自分を産んだ親とか育った環境は、今の人格にどれだけ影響しているんだろう、ということが知りたくて読んだ一冊。
自分の理解としては、「遺伝子により決定した素質が胎児期を含めた幼少期の育ちの環境で強化されていく、強化期間は設定されておりそれを過ぎると固定される」ということで、「三つ子の魂百まで」ということわざは間違ってないのだなという感じ。
変わろうと努力して、変わったように見えても根本は変わることはないのだなあと。
なんとなく絶望感を感じたと同時にある種の諦めというか、ある意味気が楽になったというのが感想です。 -
生まれか、育ちかというテーマをもとに、遺伝子と環境が行動に及ぼす影響について、生物学史に沿って、理論を展開していく。なかなか頭に入らない部分もあるが、遺伝子を経由として環境の影響を受けるのということが理解できた。