ブレイクアウト・ネーションズ 「これから来る国」はどこか? (ハヤカワ文庫NF)
- 早川書房 (2015年4月22日発売)
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感想 : 5件
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Amazon.co.jp ・本 (496ページ) / ISBN・EAN: 9784150504298
作品紹介・あらすじ
BRICsの時代は終わった。では次に成長を遂げる国、停滞する国とは? 投資のプロが新興諸国の未来を徹底予測。解説/吉崎達彦
感想・レビュー・書評
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やや古くなってしまったが、随所に示唆に富む指摘が。日本について、ソフトランディングばかりを大事にして、本当の改革を回避しているうちに生産性を著しく落としてしまったという指摘は、傾聴に値すると思う。
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外国人投資家から見たアジア諸国と日本の評価が分かるだけでも貴重な本。
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こういったものは非常に賞味期限が短いが、それでいて文庫化までこぎつけるというのはさすがの本である。実際トピック的にはすでに2、3年前なのでISISもまだいないし先日の中国大暴落もまだない。しかし、世界を見るときにどういうことを考えなければならないかということの発見が多いし、政治と経済を縦横無尽に行き来する話の幅広さが何より面白い。アメリカの成長は止まらない、一方日本に関しては悲観的、日本人の楽観性(とあうか危機感のなさ)はどこから来るのだろうというのは共通の認識。
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モルガン・スタンレーで250億ドルを運用するルチル・シャルマが世界経済の脈を測りたい時にチェックするのは、ロンドンでも、フランクフルトでも、東京でもない。ソウルだ。過去50年の平均経済成長率が5%を上回ったのは韓国と台湾のみで世界の経済レースにおける金メダリストだ。韓国の一人当たりGDPは28千ドルを超え、アベノミクスで円安になった日本の33千ドル(2011年比で3割ダウン)に並びかけようとしている。金融危機の後創造的破壊から生まれ変わった韓国をシャルマはブレイクアウト・ネーション(現状を突破できる国)の筆頭候補に挙げている。一方で日本に対する評価は厳しく、ブレイクアウトを忘れた方がいい国だ。
中国に対する幻想
賃金が上がり組み立て産業としての国際競争力を無くしつつある中国だが内需の拡大で質的転換を図り経済成長を続けるというのが中国政府の方針だ。しかし、この30年間中国の消費支出は年平均9%近いペースで伸びてきた。高度成長期の日本より1ポイント高く絶好調時の台湾に匹敵する。GDPに占める消費の割合は40%とまだ低めだが、それは単に投資の伸びが大きすぎるだけだ。中国の成長が減速しても製造セクターは他国にシェアが奪われるだけで世界経済が地殻変動を起こすことはない。
インドの魔術
インドの富裕層の純資産の対GDP比率は17%、ロシアの29%ほでではないが中国の4%を大きく超える。縁故主義がはびこりビジネスにおける決定的な要因が政府との正しいコネの有無になっている。しかもチャーチルがかつて言ったようにインドは国というより地域と捉える方が実態に近い。インド合衆国では州ごとの地方政府の影響が強いのだ。またインドでは州ごとに売れ筋が違う。どうやらインドと言うマーケットはないらしい。人口ボーナスを享受するためには農村から都市への人口の移動と農業から工業への転換がつきものだが政府の福祉政策のために村から離れたがらない。それでも出発点の低いインドはこれからも発展する。
ブラジルはあまりにもインフラ投資がなくGDPの僅か2%。需要はあるのにインフラが整備されていないために供給が追いつかずインフレに苦しむことになる。天然資源のコモディティー頼りの経済では投機的な資金が流れ込み、投資に回らない。フォーシーズンズの宿泊費を比べるとモスクワが924ドル、サンパウロが720ドルイスタンブールが659ドルと続く。同じく資源国のジャカルタは230ドルで、KLは160ドルだ。ロシアとともにコモディティー価格が下がり始めこれからは苦難が待っている。
ブレイクアウト・ネーションの候補は韓国を始めとしヨーロッパのスイートスポットであるポーランドとチェコ、イスラム教とうまく折り合ったトルコ、コモディティーから得られた金をしっかり国内投資にまわしたインドネシアなどだが忘れてはいけないのが製造業に回帰しつつあるアメリカだ。
ルチル・シャルマは机上の投資家ではなく、毎月1週間を新興国で暮らし、現場の話を聞いている。過去10年は多くの国が追い風に乗って反映してきた。しかしこれからは違う。「風がなければ、自ら漕ぎ出せ」投資家のルチルからすればそれを実践してきた韓国の評価が高く、できるだけ現状を守ろうとしてきた日本の評価は低い。
著者プロフィール
ルチル・シャルマの作品
