ウォール街の物理学者 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

  • 早川書房 (2015年6月4日発売)
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  • Amazon.co.jp ・本 (430ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150504335

作品紹介

金融とは無縁の物理学者がなぜ莫大な富を手にできたのか? 類まれなる天才たちの群像

ウォール街の物理学者 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 数学と物理学の応用する先が「経済学」ではなく、
    ただの「経済」というところがおもしろい。

    また数学の知識をもって現実の社会で利益をだすという行動が、
    ルーレットなどのギャンブルの研究からはじまったところは興味深い。

    数学と物理学というと縁遠い印象がありましたが、
    こうして経済(おもに投資・株式)ではたしている役割を知ると、
    素粒子や宇宙の成り立ちなどよりは身近に感じました。
    とくに印象に残ったのは6章と7章。
    下記のような用語が経済現象とどうからんでいるのかわかりやすく説明してあり、

    フラクタル、自己組織化、臨界現象、対数周期、カオス理論、
    ランダムウォーク、ファットテール。

    もう物理の用語はこわくない。

  • 2015年(底本2013年)刊。著者は米カリフォルニア大学アーバイン校准教授。

     物理学専攻の学生が、金融機関に就職するようになったのはいつからだろうか?。80年代以降のように思うが、本書は、それに先立つ戦後から現在まで、確率論・統計学などを武器に、米国にて金融市場の荒波に参画していった物理学者らの来し方を叙述する。

     金融工学という観点で、マイロン・ショールズやフィッシャー・ブラックが一世を風靡したが、そのLTCM破綻以降も、リスクの数値化を精緻化する試みは断続的に続き、また失敗も繰り返されている。
     かように続く失敗は、策定され更新され続けるリスク分析の数理経済モデルが、常に何らかの条件付きの産物で、須らく限界を持つにもかかわらず、その事実を運用する側、モデル利用者側がついぞ忘れてしまいがちという点に由来する。
     しかも、新規に生み出される数理モデルをも「環境」が取り込んでいく中、経済的リスクは、その環境との相互作用によって変貌していく。
     したがって、過去データに依拠するモデルは、将来の近似解を見つけ得ても、完全解は掴まえ得ないと考えられるからだろう。

     加えて、近似解を得るための数理モデル。これすら通常人が理解・把握・利用することは不可能な中、かかる数理モデルに依拠するリスク、就中デリバティブと言われる領域に、投資という名目で素人が関わることの危険性に思いを馳せずにはいられないところだ。

  • 物理学や数学に基づいた数理モデルを使って金融市場の動きを捉えようとしてきた、科学者、クオンツたちの歴史を綴ったノンフィクション。
    2012年発刊、2013年邦訳出版され、2015年文庫化された。
    著者は本書で、「クオンツというものがどうやって生まれてきたのか、そして現代の金融理論に欠かせないものとなった「難解な数理モデル」とはいったい何なのか。・・・さらに、世界中が直面している経済問題を解決するうえで、なぜ物理学や数学の視点が必要なのか」を描いたといい、具体的に、
    ~19世紀末にパリで最初の重要な金融理論である「株価のランダム・ウォーク」を唱えたルイ・パシュリエ
    ~それを精緻化したモーリー・オズボーンとブノワ・マンデルプロ
    ~それらの理論を実践して初めて現代的なヘッジ・ファンドを生み出したエドワード・ソープ
    ~今でもあらゆるデリバティブ価格モデルの規範となる「ブラック・ショールズ・モデル」を生み出したフィッシャー・ブラック、マイロン・ショールズ、ロバート・マートン
    ~アルゴリズムを利用した予測モデルを考案したプレディクション・カンパニー(ジェイムズ・ドイン・ファーマーとノーマン・パッカード)
    ~更に大胆に例外事象「ドラゴン・キング」を予測したディディエ・ソネット、
    ~そして、エリック・ワインシュタインとピア・マラニーが中心となって進める、経済学者・物理学者・その他の研究者を結びつける大規模なコラボレーション計画「経済マンハッタン計画」
    などについて詳細に綴られている。
    私は、文系キャリアながら、1990年代半ばにロンドン・シティでソロモン・ブラザーズ出身のクオンツたちとデスクを並べ、彼等の投資手法を身近で見てきたが、彼等の、相場の動く方向に賭けずに、同時に割安なものを買って割高なものを売ることにより、ネットポジションをニュートラルに保つ「アビトラージ(裁定取引)」という投資手法に、目から鱗が落ちたことを思い出す。本書でも取り上げられている、デルタヘッジ、ダイナミックヘッジ等を利用したものである。
    数式等は一切使われていないとはいえ、難解な概念は少なくないし、金融デリバティブに馴染みのない人にはとっつき難いとは思うが、金融工学の歴史をコンパクトにまとめたものとして、意義ある書と思う。
    (2015年7月了)

  • 歴史小説としても面白い。例えば、最近の一大イベントであるリーマンショックにも言及しており、リーマンショックで物理学者が果たした役割が簡潔にまとめられており面白い。経済/数学/物理関連の話も平坦な言葉で語られ、分かりやすく、予想よりも読みやすかった。正規/対数正規分布やゆらぎなど、大学の授業で習った用語も頻出しており、本の内容と経済学に親近感が湧いた。

  • 2008年のリーマン・ショック以降、金融工学、中でもコンピュータのアルゴリズムを用いて高頻度取引を行う「クオンツ」については、主に人間の複雑な行動を、素粒子のように単純な数式で表すことは出来ないと言った批判が語られることが多い(ブラック・スワン等)。また日本では「ものづくり」といった実体のある商品の製造や、販売を重視する人が多いためか、金融工学は軽視されることが多い。本書はフランスのルイ・バシュリエが始めた初期の金融工学の成り立ちから、ブラックマンデーを乗り越えたクオンツ、絶対にラスベガスで負けない方法を見つけた大学教授、更には不況を乗り越えるための経済物理学による”新しいマンハッタン計画”まで話がまとめられている。この本は金融工学や経済学への偏見が緩和される一冊である。(T.K)

  • 経済学(金融)と物理学者の馴れ初めの話。
    株価の動きを予測しようと奮闘した物理学者達の物語。
    株価の正規分布→収益率の正規分布→ドラゴンキング→ゲージ理論と、
    簡単なモデルからスタートして、それがどういう条件で成り立つのか、成り立たない場合は新たなモデルを作り上げていくという一連のプロセスから、金融工学の発展を垣間見れてなかなか面白いです。

    ドラゴンキングの考え方は面白いなーと思いました。

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