オリバー・ストーンが語る もうひとつのアメリカ史 3: 帝国の緩やかな黄昏 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

  • 早川書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (549ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150504410

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  • まさに黒歴史。というかまだ続くアメリカの闇、病み?

  • 第10章 デタントの崩壊 ― 真昼の暗黒
    第11章 レーガン時代 ― 民主主義の暗殺
    第12章 冷戦の終結 ― 機会の逸失
    第13章 ブッシュ=チェイニー体制の瓦解 ― 「イラクでは地獄の門が開いている」 
    第14章 オバマ―傷ついた帝国の運営


    巨大に見えるアメリカであるが、ベトナム敗北以後は負け続けている。
    今まで知らされていたアメリカとは真逆の真実の情報が満載である。
    なぜ南米でこれ程に米国が嫌われているのか、
    中東、特にイランが何故これほどにまで米国を悪者扱いするのか。
    中東の他の国々は今は静かに米国と付き合っているが、
    いつどこで米国の敵となるかわからないのではないか。
    さらに、米国は絶対に国益なしに日本人を助けたりしない。

    <全巻読了後の感想>
    ”多様性”を尊ぶことに関して、一番不寛容なのはアメリカなのではないか。
    俺様的に自らの主義主張や利益を押し付け押し通し、
    それでいて世界から好かれたがっている…というか、力に屈せよと言っている。

  • レーガン政権の冷戦からブッシュシニアの湾岸戦争、9/11テロとイラク戦争、そして貧富の差が広がった国内と戦争に疲れたアメリカを立て直そうと登場したオバマまでを綴る。

    特にレーガン政権は目を引く。
    CIA高官が小難しいテロ対策の話を会議で話せば居眠りする。ブラジルに行って「ボリビアの皆さん!」と演説で呼びかける。会見や演説で自身の自慢エピソードを脚色しウソを盛ることが得意。そんなレーガンは、周囲が呆れるほど知的レベルの低い大統領だった。だからこそブレーンたちにつけ込まれ、「力による平和」を掲げたが、外交において無残な害悪を世界にばら撒くことになった。

    ソ連との緊張緩和はレーガン政権内の強硬派により潰される。(この強硬派が後のブッシュ・ジュニア政権のネオコンである)ゴルバチョフの登場により軍拡競争の終わりと緊張緩和への道筋が見えたのに、自国の核戦略にこだわりソ連の軍縮提案を潰してしまったのはレーガン政権だった。

    この核戦略というのが宇宙空間でソ連の核兵器を全て迎撃する「スター・ウォーズ計画」と呼ばれるもので、お前ら正気か?と思うほどの荒唐無稽で、出来の悪いSFを読むような気分だった。マンガみたいな単調で単純な世界観は、どの政権にも言えることだが、毎回驚く。

    反共のためならどんな残虐集団でも支援するというアメリカ外交のダブルスタンダードとご都合主義の伝統はレーガン期でも変わらずむしろ悪化した。
    ニカラグアのコントラへの支援やグアテマラしかり。アフガンのタリバン。アルカイダへの武器と資金援助。中東では石油をめぐる利権確保のため、昨日の敵が今日は味方になり、明日の味方が今日は敵となる。
    冷戦後にアメリカ本国にも災厄を招く国々や集団と同盟や支援関係にあった事実は9/11テロ以降やっと広く知られるようになった。

    9/11テロはアメリカだけでなく世界を悪い方向へと変えてしまった。なによりアフガンへの報復、イラク戦争へと突き進んだブッシュ政権およびネオコンの台頭が最悪(災厄)だった。テロとの終わりのない戦いを始め、国際法から戦争法規やジュネーブ協定も無視し、我々が行うことのみがすなわち正義であると言わんばかりの無制限の軍事力の行使は、アメリカの威信と理念を傷つけた。

    戦争に疲弊し傷ついたアメリカを立て直そうと救世主のごとく登場したオバマは、当初の国民の期待を裏切り、国内の超絶な経済格差を是正することもなく、軍事力の依存(今世紀は核兵器でなく戦争用ドローン開発競争だろう)は変わることなく現在も続いている。オバマ以降の記述はやや時事解説が多く歴史評価や見方がまだ定まってない印象。


    読後に感じた危惧する点というか疑問点を。

    1944年の副大統領候補を選ぶ民主党大会でヘンリー・ウォレスでなく、トルーマンが選出されたことが世界史の分水嶺だったというオリバー・ストーンの歴史観は、一見そこだけ過度に強調すると単純な陰謀論に陥ってしまう危険がある。歴史とは闘いに勝った者が事実を書き換える物語であるという通俗的見解があるとしても、それでも歴史とは複合要因と偶然が重なって綴られた物語だ。

    全3巻の「語られなかったアメリカ史」はアメリカの虚像と実像を描いたものだ。正しいアメリカへの疑問を綴った本書はアメリカの例外主義と傲慢を打ち砕く内容だった。副大統領だったトルーマンがルーズベルトの跡を継いで大統領になってしまい、日本への原爆投下が為され、がために第二次大戦を勝利に導いたと思い込み、その後の力への過信を生んだ。
    過信がその後の冷戦につながり核兵器開発競争を招き、軍拡に歯止めがかからなかった。力こそ現実を変える唯一の手段と思い込み、戦争に勝ってきたという自負が自信を深め、深まりがやがて傲慢になり、それに裏付けされたように覇権主義的な外交をアメリカは行ってきた。

    戦争に勝ったがゆえにアメリカが行うことは正しいとされ、正しいがゆえに善であるという独善意識とアメリカ例外主義が生まれた。

    もしヘンリー・ウォレスがトルーマンではなく1944年に副大統領に選ばれていたら、原爆投下もなく、その後の冷戦や核の軍拡競争もなく、軍事力に過度に依存したアメリカもなく、世界の歴史は変わっていたかもしれないという歴史観と考えは面白い思考実験であり仮説だ。
    でも、そう考えること自体、アメリカが世界史に及ぼす影響を過大評価しているように思う。
    それは結局、アメリカ例外主義と傲慢の裏返しでしかないんじゃないかな。オリバー・ストーン監督がこの点に気づいていないと思えないのだけど。

    とにかく負の側面を逃すことなく批判的な視点からみたアメリカ史の記述はよくまとまっている。3巻分厚いが、歴史のお勉強にはなります。

  • 読了

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著者プロフィール

1946年生まれ。アメリカの映画監督、脚本化、映画プロデューサー。『プラトーン』、『7月4日に生まれて』でアカデミー賞監督賞を二度受賞。著書『オリバー・ストーンが語るもうひとつのアメリカ史』はベストセラー。

「2020年 『もうひとつの日米戦後史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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