最初の刑事――ウィッチャー警部とロード・ヒル・ハウス殺人事件 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

制作 : 日暮雅通 
  • 早川書房
3.62
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本棚登録 : 57
レビュー : 10
  • Amazon.co.jp ・本 (544ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150504588

作品紹介・あらすじ

英国で50万部突破! 数多くの探偵小説を生んだ幼児惨殺事件の真相に迫る衝撃の実話

感想・レビュー・書評

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  • 職業として最初に刑事となったスコットランドヤードのウィッチャー警部が取り組んだ
    150年ほど前の殺人事件についてのノンフィクション。

    単なる殺人事件の記録ではなく、事件を取り巻く環境について、
    事件そのものと同じくらい当時のイギリスの様子が詳細に描かれていて、
    ミステリとは違う視点での殺人事件の捉え方は新鮮。

    この事件をイギリスの大きなターニングポイントとして捉え、
    古い記録をていねいに探っていき現在の倫理観や世論と比較していく著者の姿勢は尊敬できるし共感できる

  • 実際にあった事件の真相に迫るノンフィクション。
    ノンフィクションとは言われているが、ミステリを読んでいるような読後感。まぁ、ミステリとしてはオチがスッキリしないのだが……。

  • 1860年にイギリスで起きたロード・ヒル・ハウス殺人事件 とこの事件を捜査した、創設まもないスコットランド・ヤードの刑事、ウィッチャー警部を描いたノンフィクション。

    この本を読む前は、なんとなく最初の刑事が解いた難事件が描かれるのかと思っていたが、そうではなく、その当時の社会状況と最初の刑事達の出自と社会的立場、そしてロード・ヒル・ハウス殺人事件とウィッチャー警部が生まれて間もない探偵小説に与えた影響が書かれている。

    当時の中産階級が崩壊していく最中のイギリスにおいて、低所得者層から身を立てようとする最初の刑事達へ圧力をかける社会が興味深い。
    新聞がメディアとして力を持つようになったばかりの当時における、メディアと大衆の狂騒状態は、現代のインターネットによる不謹慎狩りの狂騒状態にも似ている気がする。

  • ノンフィクション。全ての英国人が注目し熱中したロードヒルハウス事件の顛末を事細かに綴った名著。殺された坊やの家族、捜査した刑事に警官、そして弁護士や判事、事件に関わらざるを得なかった多くの人々のその時とその後が記されている。社会の熱狂ぶりはもちろんのこと、静かな結末とエピローグがとても興味深い。

  • 読み応えはあるけど、ノンフィクションという事でスッキリとしない部分もあり。
    あと必要やとは思うけど、注釈多すぎ。

  • ヴィクトリア朝のイギリス。スコットランドヤードに初めて刑事課が
    設立された。優秀な警察官から選抜された8人の刑事のなかに、本書
    の主役であるウィッチャー警部がいた。

    鋭い観察眼を持つウィッチャー警部はそれまでにも多くの事件を解決
    し、刑事としての仕事にも自信を持っていた。そんな彼が、ある殺人
    事件の解決の為にとある村に派遣された。

    事件が起きたのは1860年の6月。中流家庭のカントリーハウスで、
    3歳の男の子が眠っていたベッドから連れ出され無惨な死体となって
    発見された。

    州警察が捜査にあたるものの、事件は進展せず。電信が発達して新聞
    報道が活発になったことで、周辺住民や新聞は州警察に対して不信感
    を露わにしたことから、スコットランドヤードからウィッチャー警部
    が解決に乗り出すことになった。

    イギリスは現在でも階級社会だが、ヴィクトリア朝の時代ではそれが
    更に顕著だ。家庭内で起きた殺人事件とは言え、中流階級の生活を
    世間の目に晒すことをよしとしない。

    それでも、状況証拠を積み重ねてウィッチャー警部は犯人を特定する。
    しかし、「労働者階級の刑事が、中流家庭の人間を裁くなんてとんで
    もない」との意識が検察官や州警察にあったこともあり、ウィッチャー
    警部が犯人と確信した人物は不起訴処分とんされた。

    この事件が引き金となって、ウィッチャー警部の名声は一挙に地に墜ち
    てしまう。そもそも、州警察の初動捜査が杜撰極まりないものだったの
    だが、この時代も中央と地方の警察との意地の張り合いがあったのか
    と感じた。

    ロード・ヒル・ハウス事件と呼ばれるこの殺人事件と解決にあったた
    ウィッチャー警部は、ディケンズらの探偵小説に多大な影響を及ぼし
    ているらしい。

    本書ではウィッチャー警部の挫折後の活動以外にも、家族を失った
    一家のその後、事件後数年が経過してからの自白など、入手可能な
    限りの資料を駆使して綿密に追っている。

    翻訳が少々私には合わなかったのだが、イギリスでは切り裂きジャック
    と同様に有名だという本書の事件の顛末は犯人の自白はあるものの謎も
    残っていて興味深かった。

    世間はウィッチャー警部を非難しながらも、新聞や警察に「犯人につい
    て、自分はこう思う。こう確信している」との投書が有名無名取り交ぜ
    て多く届いていたなんていうのは、21世紀の現在とあまり変わってない
    のかな。今はインターネットだけどね。

    捜査方法こそ発達したものの、刑事の仕事のどこ臭さはその最初期から
    現在まで、あまり変化していないのかもしれない。

    探偵小説も好きだが、その探偵小説に影響を与えた事件と刑事の話を
    誌って探偵小説を読むとまた違った味わいがあるかも。

  • 1860年代に起きた実際の事件、実在した人物が描かれている。個人情報など気にも留めなかった時代でそれでも階級制度が括りとなって警察側は操作困難に陥る。
    これがのちの今、推理小説と呼ばれる分野になってゆくのかと思うと感慨深い。

    この頃読んだある小説二塁是下天多々ある。

  • 英国の富裕な役人の息子(3歳)が殺された。時はヴィクトリア時代、ところはカントリー・ハウス、被害者の母親はガヴァネスあがりの後妻で、今やその子供たちが冷遇されている亡き先妻には精神錯乱の噂が…。
    どこの古典ミステリだ、というような舞台立てだが、これが小説ではないのである。本書は1860年に実際に起こった事件と、それを追った刑事たちの動きを描くノンフィクションなのだ。
    重要なポイントとして、本件は「実際に起こった殺人事件」だが「未解決事件」ではない。キレイにオチがついて読者をスッキリさせる構成は、この手の本では珍しい。マニアにはそこが食い足りなかったりしなくもないのだが、一般読者には間違いなく、こちらのほうが親切だろう。
    脱サラして私立探偵になっ(て最期には零落し)たり、花の栽培が趣味だったり、「怪しいお屋敷の住人たち」のみならず、刑事たちもキャラが立っている。フィクションのミステリは好きだが実録殺人ものにはあまりなじみがない、という向きにもおすすめ。

    2017/3/18〜3/20読了

  • 今から150年前にイギリスで起きた悲惨な殺人事件に迫るノンフィクション。原注や主要参考文献の多さを見ると、かなりの労作であることが窺える。

    事件は単純極まりなく、核心は犯人が誰かということであり、スコットランド・ヤードの最初の刑事であるウィッチャー警部が執念の捜査で犯人の正体を暴くというのが大筋である。しかし、ノンフィクションというだけに事件の核心とは別の方向に枝葉が伸び、ミステリーとして読むのが間違いであったことに気付かされる。

    早川書房創立70周年企画のハヤカワ文庫補完計画の一冊。

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