国家はなぜ衰退するのか 下 権力・繁栄・貧困の起源 (ハヤカワ文庫NF)

  • 早川書房 (2016年5月24日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (416ページ) / ISBN・EAN: 9784150504656

作品紹介・あらすじ

豊かな国と貧しい国の違いとは? 国家盛衰のメカニズムに迫る研究。解説/稲葉振一郎

感想・レビュー・書評

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  • 失敗国家ランキングというアメリカのシンクタンクが定める破綻しそうなヤバい国リストがある。破綻すると国家はどうなるのか。生活インフラも警察も機能せず、失業と犯罪と貧困で溢れ返る。それが「国家の衰退」だとして、なぜ、そうなるのか。本書で取り上げられる大部分は、繁栄せずにただ単に飛び立てていない、最初から衰退した国々であるという気もしないでもない。政治経済が収奪的である事が衰退の理由ならば、ある時から収奪的に変化するというより、原初的段階から収奪的であったケースの方が多いからだろう。

    その意味で、上巻であまり触れられなかった、搾取され続けたグローバルサウスの苦悩に、下巻では触れていく。

    ー ヨーロッパの拡大主義と植民地統治の悪影響。大西洋をまたぐ奴隷貿易がアフリカの政治・経済制度を収奪的になる事を助長。また、植民地の法律と制度が商業的農業の発展を阻んだ。

    いわゆる「アフリカの年」と言われる1960年、第二次世界大戦後に独立運動が活発になり、この前後に一斉にアフリカは欧州から独立を果たした。しかし、文字通り収奪的システムである植民地制度から権力を奪還しても、首がすげ替えられるだけで旧弊は中々直らない。収奪が続き、発展しない。

    ー ウズベキスタンでは、綿花が輸出品の45%を占め、1991年にソ連が崩壊して、独立して以来最も重要な作物となっている。2ヶ月続く収穫の間、子供の学校の授業が停止し、子供たちは、勉強の代わりに、綿花の収穫に駆り出される。親の同意は求められない。家が遠い子供が農機具や動物とともに寝泊まりしなくてはいけない。この大規模な強制労働の受益者は、カリモフ率いる正解のエリート、ウズベキスタンの綿花王だ。

    ー 本書では、長期的な経済発展の成否を左右する最も重要な要因は、地理的・生態学的環境条件の違いでも、社会学的要因、文化の違いでも、いわんや人々の間の生物学的・遺伝的差異でもなく、政治経済制度の違いである、と主張し、それを歴史的な比較分析でもって論証していく。

    欲深き独裁者が搾取し続ければ経済は成長しない。それを転覆する一つの手段として革命がある。しかし、独裁が続いても、経済制度に資本主義を取り入れたり、独裁者のモチベーションとして、例えば「中華民族の偉大な復興」なんていうものを掲げるなら、収奪的領域が外部に及ぶために、セコイ内部搾取による衰退から一定範囲距離を保てる、という気もする。その収奪の手法として、今度はアフリカへの中国資本が進出する。

    つまり、資本主義による国益追求にしても、新自由主義にしても収奪的制度じゃないか、と私は思うのだが、奪うターゲットが内部から対外範囲に広く及べば、収奪の意味合いは異なり、独裁も活きてくる。そして、その時は漏れなく民族主義的な危うさがついてくる。ゲルマンがどうとか、スラブがどう、中華民族、大東亜など。ある種の構造的衰退に対する、脱構築的回避だ。

  • 国家はなぜ衰退するのか 下
    権力・繁栄・貧困の起源
    ハヤカワ文庫NF
    著:ダロン・アセモグル
    著:ジェイムズ・A・ロビンソン
    訳:鬼澤 忍
    出版社:早川書房

    なぜ、自然環境や、風土がおなじなのに、豊かな国と、貧しいままの国が存在するのか
    豊かな国と、貧しいままの国の違いとはなにか
    この問いに答えようとしているのが、本書です。

    ■二重経済下の成長

    近代部門:経済的により発展した部分で、都市生活、近代産業、先端技術とむすびついている
    伝統部門:田園生活、農業、後進的な制度や技術とむすびついている

    もともと、伝統部門にいたものが、近代部門へと移ろうとすると、既得者がそれをはばみ、職業選択の自由を与えていない制度になっている

    大半の国民は、伝統部門から脱却できないままで、未熟なまま捨て置かれている

    ⇒ だから、国は貧しいままである

    ■包括的政治制度への移行

    ①大英帝国本国 清教徒革命にて、包括的政治制度へ移行する
    ②大英帝国の植民地 USA、オーストラリア、カナダ、ニュージーランド 革命を経ないでおだやかに移行する
    ③フランス、および、西欧諸国 フランス革命、および、その波及によって、包括的政治制度へ移行していく
     フランス、オーストリア、ドイツ、イタリアへ波及

    移行後の動き

    ・封建的な社会関係の解消、絶対主義の廃止
    ・ギルドの廃止 ……

    ■収奪的政治制度

    権力の乱用に一切の歯止めがかからない

    宗主国によって独立され、独立後の指導者に引き続き、収奪的政治制度を継続する
    独立は、単に前からいる現地エリートによる、クーデターというだけである

    マルクス

    歴史は繰り返す
    一度目は、悲劇として
    二度目は、喜劇として

    ■包括的政治制度への移行後

    商人、実業家の台頭
    広範囲な同盟
    より包括的な政治体制への発展

    ■まとめ

    国家が衰退していくのは収奪的制度が存在しているから

    国民が貯蓄、投資、革新するのに必要なインセンティブで豊かになっていく

    紛争は国家の破綻に拍車がかかる

    以上が、下巻の内容です

    ISBN:9784150504656
    判型:文庫
    ページ数:416ページ
    定価:1400円(本体)
    2016年05月25日発行
    2024年10月25日7刷

    目次

    上巻

    序文

    第1章 こんなに近いのに、こんなに違う

     リオ・グランデの経済学
     ブエノスアイレスの建設
     カハマルカから
     ジェームスタウンへ
     二つの憲法の話
     いいアイデアを持つこと、会社を設立すること、融資を受けること
     経路依存的な変化
     世界的不平等の理論へ向けて

    第2章 役に立たない理論

    情勢
    文化説
    無知説

    第3章 繁栄と貧困の形成過程

    三八度線の経済学
    収奪的な経済制度と包括的な経済制度
    繁栄の原動力
    収奪的な政治制度と包括的な政治制度
    必ずしも繁栄が選ばれないのはなぜか
    コンゴの長い苦悩
    収奪的な政治制度のもとでの成長

    第4章 小さな相違と決定的な岐路―歴史の重み

    ペストが生んだ世界
    包括的制度の形成
    小さくとも重要な相違
    歴史の偶発的な道筋
    情勢を理解する

    第5章 「私は未来を見た。うまくいっている未来を」―収奪的制度のもとでの成長

    私は未来を見た
    カサイ川のほとりで
    長い夏
    不安定な収奪
    何が悪いのか?

    第6章 乖離

    ヴェネツィアはいかにして博物館になったか
    ローマ人の美徳
    ローマの悪徳
    ヴィンドランダから手紙を書く者はいない
    分岐する進路
    初期の成長の帰結

    第7章 転換点

    靴下をめぐる問題
    やむことのない政争
    名誉革命
    産業革命
    なぜイングランドで?

    第8章 領域外―発展の障壁

    印刷禁止
    小さいながら重要な違い
    産業への恐怖
    海上交易禁止
    プレスター・ジョンの絶対主義
    サマーレの子孫
    持続する後進性

    文献の解説と出典
    索引

    下巻

    第9章 後退する発展

    スパイスと大殺戮
    あまりにもありふれた制度
    発展の後退

    第10章 繁栄の広がり

    盗人にも仁義
    壁を打ち破る―フランス革命
    革命の輸出
    近代を探して
    世界の不平等の根源

    第11章 好循環

    ブラック法
    民主主義のゆっくりした足取り
    トラストを解体する
    裁判所を乗っ取る
    正のフィードバックと好循環

    第12章 悪循環

    もうボー行きの列車はない
    エンコミエンダから土地の収奪まで
    奴隷制から黒人差別へ
    寡頭制の鉄則
    負のフィードバックと悪循環

    第13章 こんにち国家はなぜ衰退するのか

    ジンバブエで宝くじを当てる方法
    少年十字軍?
    国家とは何物か
    エル・コラリート(預金封鎖)
    新たな専制政治
    綿花王
    平等な機会の排除
    国家はなぜ衰退するのか

    第14章 旧弊を打破する

    アフリカの三人の首長
    南部の搾取の終焉
    中国の再生

    第15章 繁栄と貧困を理解する

    歴史的根源
    独裁政治下の成長の抗しがたい魅力
    繁栄は設計できない
    対外援助の失敗
    権限の委譲

    謝辞
    解説 なぜ「制度」は成長にとって重要なのか
    付録 著者と解説者の質疑応答
    文献の解説と出典
    参考文献
    索引

  • 上巻では包括的な政治・経済制度(自由主義、民主主義、多元主義、私有財産性、市場経済など)が、豊かな国を産んだ特徴で、収奪的な政治・経済制度(独裁主義、共産主義、奴隷、農園制度、行きすぎた中央集権主義など)が、貧しい国の特徴と述べられました。

    では、そうした制度はなぜ今日まで続き、豊かな国と貧しい国を分けているのか。そして、収奪的な制度は打破できるのか。包括的な制度が根づく条件は? が、主な下巻のテーマ。下巻でも様々な国家の歴史的事例が挙げられています。

    基本的に国家の制度は、収奪的に出来ているというのが著者の意見。それが崩れるきっかけになるのが、大きな社会的うねりだとしています。例えばヨーロッパではペストの流行で、宗教や封建制度への絶対性が揺れ、日本を例にすると、明治維新がそれにあたるそう。

    そうした社会の揺れに加えて、収奪的な制度を倒そうとする人々が必要です。イギリスの名誉革命。明治日本の大政奉還までの流れ。しかし、ここで重要なのは政治を改める人たちが多元的であること。

    もしこれが、一部の人たちの動きなら、結局その一部の人たちのための政治に置き換わるだけで、制度が抜本的に変わるということはないとのこと。

    そして、一度包括的な制度の流れができれば、選挙や憲法ができ、独裁的な政治や、占有された経済制度が生まれにくくなる。また公正なメディアも発展し、庶民に情報を与えることも、それに寄与します。

    そして包括的な政治・経済の下で国家が発展していくため、それを抑えようとする動きも弱くなります。もし、何者かが権力を握り自由な経済を閉ざせば、その瞬間経済成長が止まってしまうからです。だから、わざわざ独裁、共産的な動きをしようとする人はいなくなる。

    そういう好循環もあれば、悪循環もあると著者はしています。

    収奪的な制度は、権力者が自分たちの特権や富を守るため、軍や司法を支配します。その力は絶対的かつ魅力的。結果起こるのは権力と富を狙う終わりなき内紛。また、そうした独裁者やクーデターを抑える憲法も制度もないため、政治も経済も改められることなく、結局悪循環が続くとのこと。

    著者は中国に注目します。政治的には共産主義国家ながら、経済自体は資本主義的で今や、アメリカすら脅かす存在になりつつある中国。著者の意見では、中国の成長もこのまま続かないと予測しています。

    中国の成長というのは、イノベーションや自由競争によるものではなく、国家が先導して成長分野に積極的に投資をしているからこそ、享受できている。そのため、その成長分野が限界を迎えれば、やがて立ち行かなくなる。

    また成長にはイノベーションが欠かせない、というのは上巻でも書かれていたけど、中国はその政治体制ゆえ、イノベーションの芽が出にくい制度らしいとのこと。そのため成長に限界を迎えた先の、変化が起こらない、というのが著者の意見。

    そのように事例と意見をまとめながら、繁栄した国家、衰退していく国家の共通点を見出していきます。

    著者も本の中で言及しているけど、あえて細部を省いて大枠で見て、繁栄する国家と衰退する国家の共通点を見出していったそうです。そのため、事例や歴史的な記述が多く、ついて行くのが大変だったのですが、大枠としての著者の主張はとてもシンプルで、理解しやすかったと思います。
    世界史に明るかったら、もっと読み込めたのかなあ、と思う反面、そうでなくても主張を理解させる論の進め方は、読んでいて親切に感じました。

    この本でもう一つ印象的だったのは近代化論の話。近代化論とは、独裁、共産主義の国家であっても、労働者の給料の水準と、教育水準が上がり続ければ、いずれその国家は、民主主義、人権、市民の自由、所有権の保障などの変化が起こるというもの。
    著者は中国を例に挙げ、この近代化論に疑問を投げかけています。

    最近の中国を見ると、経済成長は確かに著しいものの、香港やウイグル、コロナウイルスの初動の問題など、政治体制が変化する兆しを見せるどころか、ますます悪くなっている印象。
    それどころか、世界に目を向ければ、アメリカの自国第一主義や、イギリスのEU離脱など、自由主義や多元主義によって成り立つ、包括的政治・経済制度はどんどん後退していっているような……。
    著者は、国家というものは基本的に収奪的制度に陥りがち、というようなことを書いていたけど、近代化どころか、衰退がまさに現実になっているような気がします。

    グローバル化が進んで、一つの大国が政治や経済を閉ざせば、それがすぐに世界に波及する現代。この本が導き出した富める国と、貧しい国の境目は、もはや一国家の問題ではなく、世界が共通してもたないといけない認識のように思いました。

  • この600ページにも及ぶ経済書は、世界の様々な地域、歴史を実例として挙げ、以下の理論を構築する。
    つまり、長期的な経済発展の成否を左右する最も重要な要因は、地理的・生態学的環境条件の違いでも、社会学的要因、文化の違いでも、人々の間の生物学的・遺伝的差異でもなく、政治経済制度の違いである。
    包括的政治制度と、包括的な経済制度、つまり自由で開放的で公平な市場経済との相互依存が好循環生み出し、経済発展が長期的に続く。
    なんと明確で腑に落ちる理論!
    世界の見え方が変わってくる。

  • なぜ豊かな国と貧しい国があるのか。それは収奪的制度と包括的制度の差である。このようなシンプルな説を豊富な国事例を用いて解説されている。経済や文化のような世界でも生物の遺伝子のように多様化されることが重要であるという観点が興味深かった。

  • 包括的な政治経済制度と収奪的なそれとの対比は、ジェイン・ジェイコブズの「市場の倫理、統治の倫理」(1998年出版)とほぼ重なる。「他人との信頼関係の網によって倫理が構築される都市部」と、「権力支配を受け入れることで安心を得るムラ社会」と言い換えても良い。収奪的な政治権力は包括的な経済制度をつまみ食いすることで強大化する。良く言えば、開発経済の韓国、開発独裁のシンガポール、「改革開放」以降の中国共産党になるし、マフィアだって実は同じ構造を持つ。そうか、エネルギー資源や鉱物資源が豊富なロシア、中東やアフリカに独裁政権が多いのもマフィアと同じだ。

    14章「旧弊を打破する」で、米国南部の黒人らが白人からの収奪的な関係性を打破していくくだり(バス・ボイコット運動からキング牧師の活躍まで)は読み応えがあった。収奪的な政治経済制度を包括的な方へ反転させる事例はとても少ない。フランス革命、イギリス名誉革命は稀有な偉業と言える。(本書では明治維新も成功例にあげているが、富国強兵から日清戦争、日露戦争、そして国際金融にズブズブにハマっていく流れを包括的な政治経済とは僕は考えられない)。

    巻末の解説と、翻訳家・稲葉さんによる著者への質問が良かった。以下に稲葉さんの質問を記す。
    ーーサハラ以南アフリカは高度成長しているが、天然資源価格の高騰、それも中国の需要に支えられている。この成長は持続不可能に見えるがどうか?
    ーー「包括的な政治経済制度」はハードルが高すぎる。過去数百年の西洋経済ですらまぐれ当たりと言う。今の非西洋政界の経済発展の展望は明るいとは思えないがどうか?

    この質問に対して筆者ダロン・アセモグル氏は明確な回答を避けている(残念)。預言者でも未来予測本でもないので仕方ない気もするが、翻訳者や専門家による対談を巻末掲載するのは本内容への理解と筆者の力量を推し量る上でとても有効と思う。

  • ローマ帝国、ヴェネツィア、清…歴史を紐解けば衰退した大国は多い。現代においても、メキシコと米国、北朝鮮と韓国のように、国境を接しながらも発展に大きな差がある国家は多い。国家はなぜ衰退するのかという遠大なテーマに対して統一理論を提供しようとする試みは挑戦的であるが、民主政治の肯定という目的が先にあるように感じる。

    創造的破壊をベースにした経済的強者の交代可能性こそが繁栄の条件であるという議論については同意できる。イノベーションを駆使することで社会的に成り上がるモチベーションが存在するからこそ経済が発展するし、そのために財産権の確保をはじめとした法の支配が必要であるというのは正しい。

    しかし、現代中国の経済発展を見ればこの条件には必ずしも多元的な民主主義は必要ないだろうとも感じる。

  • 国家の様態をこれだけで分類して分析しているのは非常に面白かった。

    ここまで綺麗に分類できても歴史は繰り返す…

  • 中央集権から民主制・包括的制度、財産権の保護・経済の環流を促進する方向へ向かうと国家は繁栄する。反面寡占性・上部エリート層の権力抗争によってその国を支配する上部エリートにとって効率的な経済を持たないインセンティブの方が上回ってしまうと技術開発と経済の環流が停滞し、衰退の道を歩む。寡占的エリートは現状維持近視眼的視野のため一般1、自分たち7の分け前に固執し経済発展による一般7、自分たち14の分け前になる視点を持ち得ないためこういう事態に陥る。概ね近代化に失敗した場所は人種や風習ではなく、イノベーションの発展による恩恵を収奪や絶対権力・社会的不均衡・大航海時代の奴隷貿易等によって故意に抑えられてきたことによることの方が大きい。

  • ハイレベルな政治経済書、制度と発展の地球規模の多岐に亙る歴史分析から、「包括的制度」と「収奪的制度」それぞれ政治的制度X経済的制度に組み合わて、数多くの国の歴史的な経験、現在進行中の事象を読み解き理論展開している。「制度経済学」とも言える魅力的な経済学分野と思う。中国、サハラ以南のアフリカやラテンアメリカの諸国の近未来予測等、興味あるテーマを展開、「下」は是非、再読を期したい。

  • 奴隷生産の話とか暗澹とするわねえ。

  • 銃・病原菌・鉄で、しっくりこなかったところをクリアにしてくれた感じがした。制度の違いが国を発展させる鍵であることに同意する。また、日本という国が、どれだけ包括的な政治、経済になっているか、どういう歴史で包括的な政治、経済になったかを、これからどうすべきかを改めて自分なりに見直す良い機会になった。
     ただ、地理説も多少影響あるのではないかと。搾取的な国は、資源を抱えているから搾取に陥りやすく、資源のない国が包括的になっているように思った。

  •  この本の題名は「国家はなぜ衰退するのか」であるのだが、追究しているテーマは中国のような収奪的な政治制度を採用している国が経済成長を続けられるかということだ。
     著者であるダロンらは、専制的な独裁政治はいずれ経済停滞を招くことを歴史的な検証により明らかにしている。そして長期的な経済発展の成否を左右する最も重要なファクターは、地理的・環境的・生物学的差異ではなく、ガバナンスの違いだとする。
     現在の中国の経済成長と日本の現状を比較すると、中国の政治体制の優位性にとらわれがちであるが、その成長の要因は、今までの「遅れの取り戻し」であり、「外国の技術の模倣」であり、「低賃金による低価格工業製品の輸出」によるものである。これは今までの日本の高度成長を支えた要因そのものであり、ここまでは日本が為したように中国もできる。問題は中進国になった以降も成長するためには、現在のガバナンスでは、新しい成長をもたらす創造的破壊が起こらないので、綺麗こう発展しなくなるというのである。

     この本を読んでいて思ったのは、これは今後中国が発展しなくなるということより、日本は中国と異なり、「民主政治」を採用しているが、本当の意味で「多様な社会集団が既存の支配者を打倒するための連合」を組んだことはないのである。日本の産業においては「創造的破壊を伴う技術革新」が行われることが少ないのは、現在のトヨタを見ているとそんな気がする。SONYもPanasonicもそうだった。

    なんだか、中国の経済発展は長続きしないという理論が日本経済の成長力の限界の理論として響いてしまった。

  • 下巻になると例が増えるガ、主張は繰り返しかつ一貫しており、収奪的な制度の下にある国は発展しない、あるいは一定の発展はあるが限界学力あるというもの。

  • 『現代において国家が衰退するのは、国民が貯蓄、投資、革新をするのに必要なインセンティヴが収奪的経済制度のせいで生み出されないからだ。収奪的な政治制度が、搾取の恩恵を受ける者の力を強固にすることで、そうした経済制度を支える。状況によって詳細は異なるものの、国家の衰退の根底には、つねに収奪的な政治・経済制度がある。』

    各国の収奪的政治や制度の誕生の仕方や続き方は様々だが 結局貧困や衰退や土地や情勢による自然発生ではなく人の選択の連続で起こるものであることがわかる。きっとこれからも人類はこういうことを繰り返していくのだろうと思った。                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                    

  • 援助対象に届くのは援助金のおよそ一〇パーセントからせいぜい二〇パーセントにすぎないという概算が、多くの調査によって出されている。現在、国連および現地の職員による援助金流用容疑で捜査中の事件は、何十件にも上る。だが、対外援助から生まれる無駄の大半は不正ではなく、たんなる無能さの結果であり、もっとひどい場合、援助機関の通常業務の結果なのだ。

    メディアなどを通じてみるだけではいいことしているなと思っていた援助がこのようなケースを生むとは想像できませんでした。手間かけずに援助できたらなと思いつつも、そこで甘い汁吸ってる偉い人はそれを決める権限があるだろうから、自分が不要になれば、もっと援助が行き渡るなんて、なかなかかんがえられないだろうな、と思います。自分も同じ立場になったら同じこと考えるかもしれません。

  • 下巻では上巻で議論した理論を現代の政治経済にあてはめ、なぜ衰退の道を進んでしまう国が制度を変えることができないのか、といった構造的な壁についての議論。エジプトやジンバブエのような権力者が短期的な利益を守るために制度改革を阻む悪循環もあれば、中国の急成長を収奪的制度でも短期的に繁栄は可能としつつも、制度改革が伴わなければ持続不可能との議論もあり、危険と繁栄が包括的制度を挟んで隣り合わせたような印象も受ける。本書の伝えたいことは、変化は困難だが不可能ではないという希望が残り、それを左右するのは制度の質と包摂性であるというメッセージかと思う。

  • ●2025年8月8日、図書館で借りて読んでる「日本経済の死角/河野龍太郎」に出てきた本。

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著者プロフィール

ダロン・アセモグル
マサチューセッツ工科大学(MIT)エリザベス&ジェイムズ・キリアン記念経済学教授
マサチューセッツ工科大学(MIT)経済学部エリザベス&ジェイムズ・キリアン記念教授。T・W・シュルツ賞、シャーウィン・ローゼン賞、ジョン・フォン・ノイマン賞、ジョン・ベイツ・クラーク賞、アーウィン・プレイン・ネンマーズ経済学賞などを受賞。専門は政治経済学、経済発展と成長、人的資本理論、成長理論、イノベーション、サーチ理論、ネットワーク経済学、ラーニングなど。主著に、『ニューヨーク・タイムズ』紙ベストセラーに選出された『国家はなぜ衰退するのか』(ジェイムズ・ロビンソンとの共著)などがある。

「2020年 『アセモグル/レイブソン/リスト 入門経済学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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