いつも「時間がない」あなたに (ハヤカワ文庫 NF 483)

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  • Amazon.co.jp ・本 (375ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150504830

作品紹介・あらすじ

金や時間などが足りないと感じたとき、認知能力は落ちている。欠乏が欠乏を生む仕組みを精査し、行動経済学の常識を塗り替える書

感想・レビュー・書評

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  • この本は「欠乏感」がもたらす多大な影響と余裕「スラッグ」の大切さについて、多面的な角度から検証した本です。
    めちゃくちゃ面白く、ためになりました!
    ぜひぜひ読んでみて下さい。

  • ハーバード大の経済学教授(ノーベル経済学賞の受賞も噂されてるそうですが、今年は残念ながら…だったようで)とプリンストン大の心理学教授の共著による、「欠乏」をテーマとした1冊。
    原著を直訳すると「欠乏:なぜ足りないことがそれだけ意味を持つのか」でしょうか。
    人間は、欠乏しているモノ/コトに意識を奪われてしまう。ただ、それだけではなくて、その分野に強い能力を発揮することもできる、と。

    読了して感じたのは、「本当の問題」を探すことの重要さと大変さ。
    貧困に悩む人々に補助金を支給しても、結局貧困から抜け出せないという事例が出てきます。それを「貧困者たちのマインドが欠如している」みたいに言い訳を連ねるのは簡単ですが、結局それじゃ世の中はいつまで経っても良くならない。
    彼らを貧困に繋ぎとめているのは経済的な欠乏だけでなく、様々な悩みに気を取られる「処理能力の欠乏」もあって…という話。
    ではどうすれば良いのか。著者が例に出したのが、米軍の爆撃機でパイロットが着陸後に(なぜか)車輪を引き上げる事故が多発していた事例への対処。パイロットの訓練や資質の問題ではなく、コクピットの設計が紛らわしくて事故が起きてしまっていた。
    制度の設計も同じで、支給の仕方を上手く考えないといけない、という話でした。

    本著の内容とは少し外れますが、個人的に感じたのは、今後の世の中において、潤沢なリソースを活用できるのは贅沢な一部のプロジェクトに限られると思うので、常に「欠乏」と付き合う必要があるということ。
    そう思った時、本著のように現場に目を張り付けて事例を分析して解決策を見つけ出して、みたいなアプローチができるかしら…とちょいと暗い気持ちになりました(^^;
    ちょっとした工夫で乗り切れそうなものもありましたが、それも現場へ落とし込むのは大変だよなぁ。。と。

    ちなみに、本著、なぜか読むのにすっごい時間がかかりました。とにかくモチベーションが湧かず、図書館の返却期限に追われて(本著にある「集中ボーナス」そのまんま…)なんとか読了した次第です。
    「時間がない」とか「欠乏」とか表紙に書かれて、中身もそんな事例ばっかだからでしょうか…。行動経済学者の皆さまには、この事象の解明をぜひお願いしたいです!(笑

  • <どんな本?一言で紹介>
    エリック・シュミット(グーグル会長)も推奨した、“欠乏"の心理的な罠について書かれた行動経済学の本。

    <どんな人におすすめ?>
    ・思うとおりに物事が片付けられない人。
    ・ダイエットに取り組んでも、長続きしない人。
    ・同じ状態から抜け出せない人。

    <読んだら、どんなことが分かるの?>
    時間とお金の欠乏に陥ったときの現象の深層を知り、どうすべきかが分かる。

    <目次>
    序章
    第1章 集中とトンネリング
    第2章 処理能力への負荷
    第3章 荷づくりとスラック
    第4章 専門知識
    第5章 借金と近視眼
    第6章 欠乏の罠
    第7章 貧困
    第8章 貧困者の生活改善
    第9章 組織における欠乏への対処
    第10章 日常生活の欠乏
    結論

    <日々の生活、仕事などに活かせるポイント>

    1.「スラック」を持つことが、欠乏の罠を退ける
    ひとつのことに集中するということは、他のことを放っておくということ。集中する力は物事をシャットアウトする力でもある。欠乏は「集中」を生む代わりに、「トンネリング」を引き起こす。この「トンネリング」とは、トンネルの内側にあるものは鮮明に見えるが、外側にあるものは何も見えなくなる視野狭窄(トンネル視)のこと。人はトンネリングを起こすと、ほかのことを完全に放置する。トンネルの外の物事ははっきり見えにくく、過小評価されやすく、省かれる可能性が高い。欠乏によって「トンネリング」に陥り、のめり込んでしまうせいで、本当は大切にしているものを疎かにしてしまう。

    たとえば、今週を切り抜けることに集中していると、次の週に何があるのか、細かいことまでわからなくなる。予想しておくべきだったことが起きて、驚く。これが続くと、緊急の課題を曲芸なみに次から次へとやりくりする「ジャグリング」状態になっていく。ジャグリングは、トンネリングの論理的帰結だ。人はトンネリングを起こすと、問題をその場しのぎで「解決」し、今できることをやるのだが、それが将来の新しい問題を生んでしまう。

    重要なのは、突発的に起こるショックを乗り切るために「スラック」を持つこと。ショックを和らげるクッションが必要だ。そして、効果的にスラックを与えるには、たとえば、お金の欠乏で「トンネリング」に陥ってしまうのであれば、低所得者層向けの補助金や生活保護費など、1回にまとめてたくさん払うのではなく、できるだけ支給のタイミングを分散して回数を増やす、という方法が考えられる。また、個人や組織レベルでも、できるだけスラックを持たせる仕組みをつくることで、平均的なパフォーマンスを引き上げることができる。たとえば、ワーク・ライフ・バランス改善の動きに沿って、長時間労働の是正を行った企業や部署では、生産性が大きく向上したケースも報告されている。時間に追われてトンネリングを起こしていた個人やチームが、欠乏から解放されて一気に生産的になった結果なのかもしれない。

    2.「集中ボーナス」を利用して、生産性を上げる(※落とし穴付き)
    たとえば、締切のある仕事を引き受けたとき、質の高い成果を出すためにはどうすればよいか。とある書籍の解説文を2週間で書かなければいけないとき、良い文章を書くために、皆さんならどうするだろうか。

    本書の答えは、「締切ギリギリまで書かない」こと。締切が迫ってきて執筆時間が欠乏すると、人は自然と作業に集中できる。そのおかげで、普段はなかなか書けない文章が簡単に書けるようになる、という理屈だ。本当に書けるかどうかは本人の能力にもよるが、集中によって仕事の質が上がるロジックは理解しやすい。

    このように時間の欠乏が集中力を高める効果を、本書では「集中ボーナス」と呼ぶ。 興味深いのは、この集中ボーナスが、時間だけでなくモノやお金などの他の資源が欠乏した時にも、同じように生じるという点だ。例えば、カツカツの家計で生活する一人暮らしの学生を想像して欲しい。食費を1円でも浮かせるために、安い食材や飲食店の情報収集し、値段と味・カロリーなどのバランスを考えた食事をとる。他にも、服や飲み会への出費、バイトのシフトを何時間にするか、といったお金に関する問題に対して、細かいトレードオフを意識しながら意思決定を行う。つまり、お金が欠乏することで、お金の使い方について集中ボーナスが発生し、買い物上手になるというわけだ。

    ただし、集中ボーナスとトンネリングはコインの表裏の関係。あることに集中すれば、別のことがおろそかになってしまうのは避けられない。そして、このプラスとマイナスの正反対の2つの効果はどちらが強いのだろうか。著者たちは、マイナスの効果が圧倒的に強い、と警鐘を鳴らしている。欠乏に伴う集中によって脳の処理能力に大きな負荷がかかること、トンネリングによって本来重要な問題が無視されてしまうことの弊害は、集中ボーナスによるプラスを帳消しにしてなお余りあるほどだという。

    3.自分の処理能力を把握し、備えをする習慣を持つことで、自分の環境を「耐欠乏症」にできる
    貧困者が一番欲しいものは、すぐに借りられてすぐに返せる少額のお金だ。貧しい人の処理能力を考慮すると、まとまった額のお金が慎重に時間をかけて提供されるよりも、ちょうどいいタイミングで現金を与えるという単純なことが、大きなプラスになる。

    人は自分の環境を「耐欠乏性」にすることができる。まずすることは、欠乏を理解すること。つまり、「欠乏によって考え方が変わってしまうこと」を理解し、「長年の問題に対処するのにどれだけ役立つか」を認識すること。欠乏への対処として、トンネル内のものを動かすことが重要。たとえば、貯金は重要だが緊急の課題ではないためトンネルの外に出てしまう。しかし、毎月月末に携帯メールか手紙で送る簡単なリマインダ―だけで、貯蓄を増やすことができる。リマインダ―の効果はお金に限ったことではなく、他にも多くのことに影響がある。

    良い親でいること、貯金すること、正しい食事をとることなど、多くの良い行いは長期に渡る心がけを求める。一方、借金をする、軽率に責任を引き受ける、ばかな買い物をするなど、多くの悪い行いは一度やっただけで苦難を引き起こしてしまう。対策としては、心がけが必要な行為(例えば、毎月の請求書の支払い)を一度の手続きで自動引き落としにすることだ。問題の1回限りの行為を、心がけが必要なものに変えることにも効果がある。

    また、欠乏は処理能力に負荷をかける。そのため、処理能力で大切なのは、限られた情報処理力の割り振りだ。処理能力はいつでも一定ではない。仕事の時間帯だけでなく、最善の順番を設定することも必要。

    欠乏に陥っていないときに、緩衝となる蓄えを築くことも重要。例えば、時間の欠乏では、スケジュールに余分な空きを残しておくこと、お金の欠乏では、まさかのときに備える口座をつくって貯金することなど。こういうことは楽ではない。欠乏は起こり得るとわかっていても、豊かなときにはそう強く感じないからだ。

    欠乏が人を引きずり込む力は強いが、その論理を理解することで、ネガティブな影響を最小限にとどめることも可能である。自分の環境を「耐欠乏症」にするため、備えをする習慣を持つべきだ。

    <感想>
    「トンネルを抜けると、そこは次のトンネルの入り口だった」(「川端康成 雪国」)。
    「リマインド」の設定など、ちょっとしたことだけど軽視して面倒がってやらなったことをすることで、トンネルの外の「本来やるべき事」を内側に持っていくことができる。

    また、「忙しい」は、欠乏状態だと知れた。忙しいと、処理能力が低下する。自分の処理能力を把握して、無理のない計画を立てること。
    また、余裕のある時に備えることなど、普段の心がけも知れた。
    時間管理というよりも、生産性を上げる方法が分かる本だ。
    日本の政府関係者に読んでほしいと、こっそり思いつつも、自分はトンネリングに陥りやすいので、自分の中でスラックを作るように心がける。

  • 公平世界信念を持った、悪気のないナチュラルな差別主義者必読

    欠乏の行動経済学・心理学である。空腹の人間は食物を欲し、食べ物の文字さえより早く認識したり、孤独な人間は他人の顔から感情を把握する能力に優れているという。

    『貧困者は個人として処理能力が低いのではない。そうではなく、貧困の経験が人の処理能力を奪うのだ。』これエグいね。時間的な欠乏(締め切り前)は集中力を上げる作用を持つが、金銭的欠乏は人間の能力を落とすらしい。貧困の子どもの方が硬貨のサイズを大きく勘違いするという話もあった。
    金銭的欠乏は処理能力の低下を生み、新しいレザージャケットを買うことに繋がる! 時間的欠乏は処理能力を低下させ、新しい予定をいれることになる!

    流動性知能を測る、レーヴンマトリックステストによる貧困層と富裕層のスコアの比較。300ドルの車の修繕費用がいるという思考実験の後にテストしたときは、富裕層でもそうでなくても結果に差はない。しかし、3000ドルの修繕の場合、富裕層は結果は良いが、貧困層はスコアが下がったそうだ。貧困(金銭の欠乏)は恐ろしくも脳を衰えさせる! これは、徹夜よりもスコアの減少幅が大きいらしい。

    検証実験はいささか怪しいが、欠乏は人間の脳の処理能力を落として衝動性を高めるそうだ。ならばADHDの人間の脳は欠乏が占拠している?

    面白い! (恐らく)インドのサトウキビ畑の農家の実験。金銭に困るはずの収穫前と、ある程度お金のある収穫後で試験の比較。同じ人間でも収穫前のほうが貧しいのでスコアが低い!

    そして、ダイエット。ダイエットは食事の欠乏であり、逆説的に食に支配される。孤独も同様。人間関係の欠乏がある。これらは総じて知能試験の成績を落とす。

    『多忙な営業部長が娘に八つ当たりをすれば、悪い親に見える。お金に困っている学生が簡単な問題をまちがえると、無能か怠け者に見える。しかしこの人たちは未熟でも思いやりがないわけでもなく、ただ重い負荷をかけられているだけである。問題は人ではなく、欠乏している状況なのだ。』これすごいね。本当の学力、本当の有能さなんてのは、条件を厳密に同じにするのは不可能かも。

    へーーー! 普通は大量に購入した場合、少し割安になることが期待できるが、中には大量に購入するほうが単品で買うより高くなるブランドもあるらしい! 大量に変えるような人は、大量に買うときに金銭消費の多寡を考えないから。逆に貧困な地域のスーパーとかはちゃんと大量に買うと安くなるっぽい。

    金銭的欠乏という話で、借金が出てきた。
    『基本的に、私たちはひとつのローンを返済するために別のローンを利用する羽目になり、毎月手数料を四九五ドルから六〇〇ドル払うことになり、借入金そのものはまったく返済していませんでした』最初の請求書をやりくりするために、金銭的欠乏からトンネリングを起こして給料日ローンに手を出し、それの支払いに別のローンを使う。今火を消すのは大切で数ヶ月後にもっと火が燃え盛ることを考えられない。

    インドの露天商の実験。半分には借金があり欠乏の罠に嵌っているが介入せず、残り半分には借金を肩代わりし、一年後の金銭的予後を確認した。結果、両者とも一年後の借金の額は変わらないそうだ。欠乏に対する安全マージンがスラックだが、露天商にはこのスラックがないので、いつか必ず起こる「想定外」の出費には耐えられない。こうして一人ずつ、借金の沼に嵌まる。

    人間関係的欠乏、つまり孤独についての実験。半分は「レコーダーに話せ、後で評価する」と言われ、残り半分には「レコーダーに話せ」と言われ評価云々は説明されなかった。レコードを聞いて、(わりと主観的な評価だが)前者はつまらなく、後者は面白いらしい。孤独な人の問題は魅力がないわけでも他人の感情を読めないでもなくて、大事だと思うと緊張してうまく行かない点だそうだ。

    『お金が少ないということは、時間が少ないということだ。お金が少ないということは、人づきあいをするのが難しいということだ。お金が少ないということは、低品質の健康によくないものを食べるということだ。貧困とは、生活のほぼあらゆる側面を支える生活必需品そのものの欠乏を意味する』エグい。

    お、医学の話になった。怠薬の話。結核とDOTSも。曰く、『怠薬は大勢の人に見られるが、とくに多い集団がひとつある。貧困層だ。どんな所得レベルの人も服薬を怠る可能性があるが、その頻度がいちばん高いのが貧困層なのだ。HIV、糖尿病、結核、次から次へとさまざまな病気で、同じパターンが繰り返される。地域、薬の種類、副作用に関係なく、共通することがひとつある。貧困層のほうが薬をきちんと飲まないのだ』とのこと。同様に、貧農は作物を育てる際に除草をせず、貧しい親は子を実質的に放置する。ここについて、作者は、こう提言している。『貧困──欠乏マインドセット──が怠慢を引き起こすのだ』と。

    全体的に読書カロリーが高いが、面白い本。特に貧困と能力の話が最も面白かった。何らかの欠乏は、必ず欠乏以上に心を惑わせ能力の変化を生む。ならば、富裕は能力を変化させるのか? その研究をせねばならないというところで本は終わっている。

  • 「時間管理術」のビジネス書のようなタイトルだが、そうではない。副題の「欠乏の行動経済学」のほうが、内容を正確に要約している(こちらをメインタイトルにしたら本が売れないと判断したのだろう)。

    著者は、ハーバード大の経済学教授(センディル)とプリンストン大の心理学教授。2人とも、経済学と心理学を融合させた「行動経済学」の研究者で、貧困問題などの解決を目指すNPOの共同創設者でもある。

    本書も、タイトルからは想像もつかないが、じつは貧困問題を考えるための書でもある。というのも、「時間がない」「お金がない」などのさまざまな「欠乏」が、我々にどのような心理的影響を与えるかを研究した書だから。

    時間の欠乏についての章もあるから、タイトルは偽りではないが、じつはお金の欠乏=貧困に重点が置かれている。

    貧困問題を行動経済学の視点から考察した、類のない書である。
    とくに目からウロコが落ちたのは、貧困がさまざまな「処理能力」を大幅に減退させることを論証している点。

    「欠乏」は、人間の処理能力に大きな負荷をかける。
    時間がなくてバタバタしているときは、仕事でミスが生じがちだ。同様に、貧困層はお金の工面のことでつねに頭が一杯になっているから、生活の中で要求されるさまざまな処理能力が大幅に減退してしまっている。

    たとえば、貧困層は医者にもらった薬の飲み忘れが多い。また、子どもに対する気配りに欠ける「悪い親」は貧困層に多く、富裕な農民より貧しい農民のほうが農地の適切な除草を怠りがちだという。

    それは、「貧困層のほうが怠け者で愛情が薄いから」ではない。貧困という欠乏がもたらす処理能力の減退のせいなのだ。

    《ほぼあらゆる仕事には作業記憶が必要である。これは、いくつかの情報を使うまで頭のなかで生かしておく能力だ。貧困によって作業記憶に負荷がかけられると、人はあまりうまく仕事ができなくなる。
    (中略)
     処理能力に過剰な負荷がかかるということは、新しい情報を処理する能力が下がるということだ。たとえばあなたがつねに心ここにあらずだとして、大学の講義はどれだけ頭に入るだろう? ここで、家賃の工面についてたえず考えてしまう低所得の大学生について考えてみよう。彼女の頭にどれだけ入るだろう?》 

    《処理能力は人の行動のほぼあらゆる面を支えている。ポーカーで勝つ確率を計算するのにも、人の表情を読み取るにも、自分の感情をコントロールするのにも、衝動を抑えるのにも、本を読むのにも、独創的な発想をするのにも使われる。高度な認知機能のほぼすべてが、処理能力に依存している。しかし処理能力への負荷は見逃されやすい》

    処理能力の減退は、仕事や勉強、人間関係などに広範な悪影響を与える。ゆえに、貧困層は人生において、心理的にも大きな不利にさらされている。それこそが「貧困が貧困を生む」要因の一つなのだ。

    いわゆる「貧困の連鎖」をこのような視点から解き明かした本は、これまでになかった。

  • 最後の解説が良いまとめ。良くまとまっていて、あのボリューム読まなくても解説だけでも良いかもしれない。
    集中ボーナス
    トンネリング
    スラック
    間違えない仕組み作り
    解説通りに、「時間がない」ことの解決方法を示してくれるかと思いきや、「時間がない」のは欠乏のせいであることの分析。フィールドワークや例、過去の調査結果をエビデンスに論拠をはっている。
    なんか違和感があったのは…欠乏による人の反応が帰納法で見解を示していて、なんかこう医学的というか科学的に理由付けがほしい。あまりにも人間の行動が単純過ぎるように思えてならない。

  • 時間もお金も同じ欠乏、欠乏しているものがあるとストレスで生産性がさがって睡眠不足の時のようにあんまり集中できないというのは驚き。
    特に忙しさについて感じているので、
    手前に締め切りを設定する、その場でやる、できるだけ自動化などできることはやっていきたい。
    とりあえずサボってた英会話の予約をしよう。

  • いつも時間が無い、借金を重ねてしまう、ダイエットが続かない・・
    これらはバラバラに見えて、実は原因は同じではないか?という話。その原因は、「欠乏」(自分の持っているものが、必要だと思う量よりも少ないこと。心に余裕がないこと。)。欠乏が起こると、脳の処理は欠乏に対して大きく使われてしまう。これをトンネリングという。トンネリングには、「集中ボーナス」がつくことがある(締切効果)。とはいえマイナスの方が大きいので、欠乏が起こらないようにすることが大切。
    自分は、夏休みの宿題を初日に全部終わらせるタイプだし、プロジェクトは二週間は余裕がないと不安。欠乏をひたすら避けてきたと思う。他要因で切羽詰まったプロジェクトは全部失敗してきた。

    ・適切な期限を設ける
    ・適切なバッファを設ける。
    色々書いてあったものの、結局はこれだけなんじゃないか。

  • 欠乏は集中力を増し処理能力を上げる一方トンネリング(視野狭窄)を起こして処理能力を下げる。ちなみに処理能力の高低は能力そのものの高低ではなく欠乏が生み出した状況である。後者は負の連鎖を起こすためネガティブな影響が大きいが、この状況に陥るのを防ぐためにはスラック(余剰、ゆとり)を持つことが有効である。聞けば当たり前に聞こえるが、世界の貧困問題からタスクに追われる家庭人、ビジネスパーソンにも広く影響するこの欠乏問題は省みられていないことが多い。日本語タイトルがミスリードな所が惜しいが大変貴重な名著。

  • 「貧すれば鈍する」と言われる。常におカネや時間などの不足分に気を取られて(どんな手を使ってでも埋め合わせよう!)IQが下がってしまっているという。「まな板の法則」のように不足分に関する雑念がCPUを専有して、切るべき具材を置くスペースが狭くなるのだ。つまりピンチ度合いが増すほどに酔っ払っているくらい思考力が低下してしまうということ。本書はそんな「欠乏の行動経済学」について解説されている。

    (行動)経済学からの説明は本書に譲るが、自己啓発系の本家「7つの習慣」の第一の習慣「主体性を発揮する」ためのマインドセットとしても本書は重要である。つまり「0の習慣」ともいうべきなのが「心身ともに余裕のある状態を作ること」である。本書のアドバイスに従えば、「第三の習慣」で最重要視される「緊急ではないが重要なタスク」を継続できるようになる。
    行動経済学の権威であるダニエル・カーネマンが「ファスト&スロー( https://x.gd/18Q0p )」で説いた認知バイアスの「システム1」に囚われないようにするためにもまずは「余裕のある状態」に自分を置くことである。
    そのためにはおカネも時間もギチギチに使い道(予定)を詰め込むのではなく3~4割程度の余裕(バッファー)を設けておきたいところだ。

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