ヨーロッパ炎上 新・100年予測 動乱の地政学 (ハヤカワ文庫NF 495)
- 早川書房 (2017年4月20日発売)
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感想 : 10件
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Amazon.co.jp ・本 (528ページ) / ISBN・EAN: 9784150504953
作品紹介・あらすじ
戦争の時代にふたたび突入か!? クリミア危
機を見事に予言した男が、世界平和を揺るが
すヨーロッパ中の危険な兆候を徹底検証する
感想・レビュー・書評
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ウクライナ問題ときいて、この本を思い出した。改めて良書。
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人を巡るものである以上、政治が理屈や正論だけで成立しないことがよくわかる。歴史や過去のしがらみを完全に断ちきることはできないしその地に根付いた感情から解き放たれることはない。それらが理性より大きな力となり歴史を動かすこともある。大陸から遠く離れた日本から表層を超えてヨーロッパ情勢を理解しようとするならば異文化理解をなくしてなし得ないと改めて。ニュースのその奥が学べる良書。500ページ頑張る価値はある。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
①なぜヨーロッパが世界を支配できたのか(古代から大戦まで)、②なぜ二度にわたる大戦が起き、ヨーロッパが覇権を手放すこととなったのか、③今後、ヨーロッパに何が起きるのかという観点から、世界史を俯瞰していく。
本書の原題でもある"Flashpoints"すなわち「紛争の火種」というのが、ヨーロッパ情勢を理解する一つのキーワードとなる。
ヨーロッパは、狭い地域に多数の国家、民族が集まっており、過去の戦争、虐殺など負の歴史は脈々と受け継がれている。
とりわけ境界地帯(たとえばライン川流域(独仏の境界)、東欧地域(現在のハンガリー・ルーマニア・ベラルーシ・ウクライナなど、大陸ヨーロッパとロシアとの境界)、バルカン、トルコなど)は、歴史的に不安定要素を多く抱えてきたが、今もその火種はくすぶり続けている。
ヨーロッパは、その成り立ちの歴史からしても、決して「均一な人たち」ではない。
EUの目指した統合と繁栄は、今や火種の再燃(ターニングポイントは、2008年の金融危機と2014年のロシアのウクライナ(クリミア)侵攻)によって、画餅と化そうとしている。
今後、どこの火種がいつ爆発するかもわからない、世界はそういった状況にあり続けているということが、本書を読むとよくわかる。
「戦争がいかに悲惨かものかは誰もが知っており、したいと望む人間はいない。戦争をするのはその必要に迫られるからだ。戦争をするよう現実に強制されるのである。」(本書492-493ページ)
人間社会の悲しい真実だろう。
世界の歴史と情勢を把握し、今後を予測するために必須の知恵を与えてくれる一冊。
地政学の面白さもよくわかる。
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私、このシリーズ絶対読んでますねー(笑)
一作目は眉唾やなぁと思っていたりもしたのだけど、あれから日本とトルコが台頭する、そんな世界をちょっぴり夢見ていたりする。
それから訳者さんが、櫻井祐子さんから夏目大さんに変わったのだけど、違和感ないくらい今回も読みやすいです。
今作は、ヨーロッパが主軸。
筆者がユダヤ人だとは知らなかったのだけれど、ナチスのホロコーストと父母の亡命の経緯から始まり、なぜ「それ」が起こったのか。
また、ヨーロッパのかつてのパワーバランスと、この先それを「取り戻し得るのか」が書かれている。
西洋史の好きな私にとっては、近代ヨーロッパが、国家としての視点を獲得し、自国の領土の有利不利をどう認め、どこに手を伸ばしていったのか、ということが非常に分かりやすく書かれていて、すごく面白く読めた。
「啓蒙主義では、人間を評価できる基準は理性だけであるとしたが、理性的な人間と理性的でない人間を議論の余地なく区別する方法は示されなかった。その結果、他人の優れた思想に敬意を払うことなく、好き勝手に物を考え、発言をする人間が多数現れてしまった。」
「ドイツの哲学者に関してよく言われることがある。彼らは他国の哲学者に比べて、心の深いところまで降りて行き、またそこに他よりも長くとどまるという。そして、上へと戻ってくる時には他よりも汚れた姿になっているというのだ。」
読んでいる中で、どうしても日本とドイツの重なりを見てしまう。(土地的にはイギリスに近いものがあるなぁと思うけれど)
ただ、日本はアジアに含まれるけれど、私個人としては大陸に連なっているアジア諸国とは、どこかまとめられない思いでいる。
そう思うと、国という視点はまだまだ切り離せそうにないし、イギリスのEU離脱がどうなるかによって、更に個を見つめる側の動きが強まっていくのかもしれない。
また、続巻が出たら読む!
特にイスラム圏編を期待。。。 -
1914-1945 ロシア トルコ ドイツ フランス アメリカ イギリス ベネルクス3国 コーカサス ジョージア アルメニア ベルギー オランダ EU
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本書を腑に落とすレベルで地理・歴史を学ばないと
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ルターは個人の良心、思考の重要性を強調して、過去の権威に立ち向かった。
ベーコンは理性、つまり人間の思考を、自然を理解するための機械とみなすようになった。
科学の敵は迷信。
迷信とは、証拠ではなく権威に基づく信念のこと。
ヒトラーはドイツの復興のためにまず、ドイツ人が誇りを取り戻す必要があると考えた。
そのためにドイツという国を根本から定義し直した。
①国家は「血筋」で決まる
②民族はすべて平等というわけではない
特にスカンジナビア人とドイツ人は生来、世界を支配する資格があるとした。
③歴史の創作と神話 -
現在は過去の上にしか成り立たない、という立場からの未来予測本。
原題"Flashpoints: The Emerging Crisis in Europe" -
ヨーロッパの歴史・地政条件から未来を予測する本。
かなり長い(500P超)だが実に面白い。
「見える人」には世界はこのように見えているのか…と唸ってしまう。
各国から見たそれぞれの歴史的な背景、関係性がよく分かる。
特に「矛盾を恐れない」「最小限をしてあとは放っておく」という、フランス独特の考え方が興味深かった。
知らず知らずのうち、黒白をつけたがるアメリカ人の発想に染まっていたかもしれない、と反省。 -
原題無視で100年予測シリーズになっているので、
当然ながらこの本では100年後の予測はないけど、
わかりやすさと読みやすさではシリーズでは一番。
まず地政学をキーワードにしたヨーロッパの振り返り方が、
ハンパなくインパクトが強い。しかも内容がまとまっている。
地政学だけでなく、イデオロギーや経済などもからめて、
ヨーロッパの過去から現在、そして未来を紐解いていく。
EUとはなんだったのか?とすでに過去形みたいな書き方がこわい。 -
タイトルから想起されるのは、本書が冷徹な未来予測であると言う事だが、いざ読み始めてみると、導入部分は著者の生い立ち等が語られ、少し肩透かしを食らった様に思える。
しかし、その導入部分の理解が重要で、著者自身・著者の家族の生い立ちと、これらの予測が密接に結び付いていることがわかる。それは、悪い意味ではなく、いい意味である。
著者の様な経験をしたからこそ理解できる社会の変化、動きと言うモノがあり、それを下にした本書の内容は「答え知っていたの?」と聞きたくなるぐらい、現実に近いものとなっている。
この100年予測シリーズは複数あるが、一番中身が分かりやすかった。
ジョージ・フリードマンの作品
