進化は万能である 人類・テクノロジー・宇宙の未来 (ハヤカワ文庫NF)

  • 早川書房 (2018年6月5日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (496ページ) / ISBN・EAN: 9784150505240

作品紹介・あらすじ

宇宙、経済、文化、テクノロジーまであらゆる物の変化はボトムアップの進化原理で説明できる! 名著『繁栄』と対をなす科学解説

感想・レビュー・書評

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  •  進化は私たちの周りのいたるところで起こっている、というのが、本書における著者の主張である。
     ところが、我々は、デザインや指図、企画立案を過度に重視し、進化をあまりに軽視している。そのため、「将軍が戦いに勝ち、政治家が国家を運営し、科学者が真理を発見し、芸術家が新しいジャンルを生み出し、発明家が画期的躍進をもたらし、教師が生徒の頭脳を形成し、哲学者が人々の思考を変え、聖職者が道徳を説き、ビジネスマンが企業を引っ張り、策謀家が危機を招き、神々が道徳を定めるように見えてしまう。」そのようなトップダウンで変わるのではない、内部から自然発生的に進化は起こるのだ、として、以下、宇宙、道徳、生物、遺伝子、文化、経済、テクノロジー、心、人格、教育、人口、リーダーシップ、政府、宗教、通貨、インターネットといった各分野について、具体的な例を通して詳しく説明される。

     各テーマで取り上げられる例は興味深く、著者の主張に納得するところは多いが、指図や計画、規制を否定するがために自由放任が良し、と言っているように思われるところについて(変な形です上からコントロールしようとして、内発性を阻害するようなことはするな、ということを言いたいのだろうが)は、それはそれで行き過ぎにはならないか、そんなことも考えた。

  • 非常に奥深い含蓄のある本です!著者のマット・リドレーは万物の進化と言う観点から進化はどのようにして進んでいくのか、進化と言うものは人間が意図的に創造し意図的に計画をし意図的に世の中を素晴らしく改革しているものとは全く類の違うものであると言うことを解説している。すなわちこの世のあらゆる進化と言うものは人間が想像して計画して予定して出来上がるものではなく自然発生的に意図されていない方向へ進んでいき、民衆の底辺から生まれてくるものであり、それが結果的に世の中全体を動かし向かっていくもの、それを文明文化の進化と説明する。それは、現在からすると、いっそう素晴らしくより一層繁栄し、より一層発展的に創発的に物事は良くなっている証左であると言うことを解説する。進化と言うものは人間が計画し管理すればするほど、イノベーションや発展は起こり得ないと言うことを著者は訴えており、大変含蓄があって面白い本でした。
    一読の価値はありますよ。

  • 450ページ余りの分厚い本なので、買ってしばらくは積読状態でしたが、自分の中で世界の見方が変わるような面白い一冊でした。

    本書では、宇宙、生物、遺伝子など自然科学の分野にとどまらず、道徳、経済、政府なども含む16の分野(章)について、ユーモアや皮肉、はたまた挑発的言動も交えつつ、過去から現在にわたる進化の過程を論じていきます。

    あらゆる分野における「進化」は、人間のデザインやトップダウンの企図によるものでなく、自然発生的かつボトムアップ的に漸進を続けてきた結果である、というのが著者の主張です。

    一番インパクトがあったのは「宗教の進化」の章でした。
    宗教的常識では神が人間を創造したことになっているのですが、「神は明らかに人間の創造物なのだ」という一文には、思わず膝を打ちました。
    さらに、この章では「気候の神」として地球温暖化にまで話は及び、二酸化炭素を温暖化の原因として過大評価する傾向について、科学界の意見も交えながら、「過度に単純な原因を探し求めるのは宗教の特徴」と断じ、気候変動の主張が宗教に近づきつつある、とまで皮肉たっぷりに断じます。(賛否はあるでしょうが)

    ただ、著者は万物の進化から見える未来を楽観的に捉えているようです。
    21世紀も悪いニュースの衝撃が幅を利かせているが、良いことも目に見えない形で進展する、という著者の主張に頷きながら、そう思うと世の中捨てたもんじゃないな、と希望が見えてきた気がします。
    進化の力は偉大なり。

  • マット・リドレーは好きなライターでありこちらの本も評判が良かったので購入。
    なんだが、ちょっと扱う範囲が広範囲で、またなんとなくスカイフックというアイデアに固執している、もしくは自説の主張が強い、という印象で、期待していた感じとはちょっと違ったかな。
    『進化は万能である-The evolution of everything』、サブタイトルは「人類・テクノロジー・宇宙の未来」とあるのだからタイトルを見れば予想できたはずなのだが、『赤の女王』や『やわらかな遺伝子』の印象がつよく、生物学的な分析が読めるのかと思いこんでしまっていた。

    本作品は16章で構成されており、それぞれで異なるものの進化を扱っている。
    宇宙から始まり、道徳、生物と続き(このあたりはまだ良い)、後半はテクノロジー、政府、リーダーシップ、果てはインターネットへと続く。
    広範囲なものを扱っているため必然的に一つ一つへの掘り下げは限定的であり、その点が自分の期待には沿わなかったのだが、マット・リドレーはタイトル通り“進化”というものの万能性を語りたかったのだと読み終えて納得した。進化はあらゆるところに見え、それは自然発生的で、効率性や改善などに向かい変化し続ける、その現象に面白みを感じたのだと考える。
    その視点は、ありそうであまりない視点のような気がする。多くの人は当たり前に受け取り、“進化”という現象を広い分野で共通で発生している現象としては深く考えないのではないかな。

    それを前提にいつか再読してみたいとも思うが、今は積読がたまっているので、後で。

  • あらゆる進化をまとめてくれている

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著者プロフィール

マット・リドレー(Matt Ridley):1958年、英国ニューカッスル生まれ。オックスフォード大学で動物学を専攻。『エコノミスト』誌で科学記者となる。著書に、『赤の女王』『繁栄』『進化は万能である』(いずれも早川書房)などがある。

「2024年 『徳の起源 他人をおもいやる遺伝子』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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