樹木たちの知られざる生活 森林管理官が聴いた森の声 (ハヤカワ文庫NF)

  • 早川書房 (2018年11月6日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (288ページ) / ISBN・EAN: 9784150505318

作品紹介・あらすじ

樹木は子供を教育し、会話し、ときに助け合う。ドイツの森林管理官が長年の経験と科学的知見をもとに語る、まったく新しい森の姿

感想・レビュー・書評

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  • 登山、キャンプ…ともによく行くのでどちらかというと自然にはよく触れている
    しかしながら、木をきちんと観察(?)したことあるだろうか…?
    自然の背景として、当たり前の景色として目に移ってしまっていた
    木の種類もほとんど知識がない
    こちらを読んだら、まずは「木」さん、今までごめんなさい…となる
    Amazonの紹介にある通り、ドイツで長年森林管理をしてきた著者のノンフィクション、驚くべき樹木の生態を知ることができる


    ■木は助け合って生きている
    どうやって?
    それは「根を通じて」だ
    根が直接繋がったり菌糸が栄養の交換を手伝う 
    糖液を譲り合うのだ
    生態系を作り出し自分たちが棲みやすい環境を整えるために
    (木も人と同じで一人でできることは限られる)

    ■木のコミュニケーション
    自分を表現する手段として芳香物質がある
    (人で言うところのフェロモンみたいな感じであろうか)
    こんな実例があげられている
    アフリカサバンナのキリンは、アカシアの葉を食べる
    もちろん木は食べられたくない
    そこでキリンを追い払うために葉の中に有害物質を集める
    毒に気づいたキリンは別の木に移動する
    しかし驚くのはまだ早い!
    最初に葉を食べられたアカシアは、まわりの仲間に災害が近づいていることを警報ガス(エチレン)を発散し、香りのメッセージで仲間に知らせるのだ!
    他にも、自分を脅かす害虫に対してどう抵抗するかというと…
    まず木はこの害虫の種類が唾液の成分でわかるらしい(ってことは味覚みたいなものがあるのだろうか?)
    そこで木は自己防衛のため、この害虫の天敵の好きなにおいを発散することもできる
    (花ではなく木が!である…驚いた)
    他にも香りではない自己防衛として、「ナラ」は苦くて毒性のあるタンニンを樹皮と葉に送り込むことができるため、美味しかった葉がまずくなり害虫は逃げ出す
    メッセージの伝達は香り以外に、電気信号も使うらしい
    菌類があいだに入っているため、菌糸がインターネットの光ファイバーのような役目をし、地中を走り、森全体を網羅している
    菌糸のケーブルを使って情報が伝達されるのだ
    (ワールドワイドウェブならぬ、ウッドワイドウェブというしゃれた言い回しが業界内であるそう)

    ■木はゆっくり生長する
    親が子の成長の教育として、光を遮る(立派な親の下に子がいるため)
    樹齢200歳の親の下に80歳の子供が居る
    まだ200年は独立できない
    ただし野生の樹木の話だ
    ゆっくり生長することで、内部の細胞がとても、細かく、空気をほとんど含まない
    柔軟性が高く、嵐が来ても折れにくい
    抵抗力も強く長生きできる
    (辛抱強くゆっくり生長していくことが結果的に立派な樹木として生き残るコツだ 子供が焦ってしまわぬよう、うまくできている)

    ■木製のエアコン
    樹木が自分たちの力で生活環境を変える力がある
    定期的な間伐がなされる針葉樹林と古いブナの原生林の気温差は10度もある! 
    生きている木と朽ちた木質の総量が多いほど土壌の腐植土の層が厚くなり、より多くの水分が蓄えられる
    その水分が蒸発することで温度が下がる
    (人が汗をかいて体温調節するのと同じだ)


    ■ストリートチルドレン
    公園などに植樹された樹木は、幼少期に故郷を離れ、両親なしで一人で生きていくことになる
    サポートしてくれる保護者や、助け合う友だちもいない(ううっ泣ける)
    おまけに、公園の土壌は森林の豊かな土壌とは異なり、硬くて痩せている
    当然、樹木の生長に全く適さない
    人間が近づいて根元の土を踏むため、ますます踏み固められてしまう
    しかし光は一人占めできるため、世間知らずの若木はどんどん生長する
    だがこれは正しい成長ではない
    結果的に根が育っていないため不安定になる
    ほかにも人の手で刈り込まれたり、切り落とされたりし、そこから菌類の侵入が始まる
    公園だけでなく、街の街路樹もおなじだ
    森とは違う街の熱放射、汚染物質を含む空気、欲しくもない肥料、凍結防止剤、犬のおしっこ…
    これがストリートチルドレンの長く生きられないかわいそうな運命だ
    当然ストレスのかかった木は森の木とは違い、私達に綺麗な空気を与えてはくれない
    (間違った森林浴をしていることがあるということだ)


    他にも実に興味深い樹木の生態が盛りだくさんだ
    樹木の凄さを改めて知った
    うっすら凄い奴だろうとは思っていたが…
    そんなもんじゃあなかった(失礼しました)
    深い深い!
    一番驚いたのは植林した木と自生した原生林との違いがこれほどなんだ…と
    一見美しく見える公園など、木にとっては不幸な場所なんだなぁ
    そう考えると人間の欲望の犠牲になった不幸な樹木たちがたくさんいる
    木は菌類、昆虫、動物、人間の支えとなっている
    いやもっと言えばこの地球を支える大きな大きな存在だ
    私たちはもっと大切にしなくてはいけない
    そして樹木に対する知識が増えると、何気ない風景がとても感慨深くなる
    公園にいるこの木は今何を感じているのか
    山で見かけたこの大木は一体何年前からここに存在するのだろうか
    山で見る崩壊された樹木たち…もしかしたら他の木の助けによってまだ生きていて回復しようとしているのではないだろか
    見る目がすっかり変わりそうだ(自然がますます好きになるな、こりゃ)

    この本は樹木を愛する著者のエッセイのような形で読めるため、親しみやすくとても読みやすい
    難しい学術的なことはまったくないので、気軽に手に取ってくれる人が増えるといいなぁ…と願いをこめて

    • abba-rainbowさん
      いつもありがとうございます。
      ハイジさんの読まれてる本は興味深いものばかりです。幅広く、またバランス感覚よく読まれていて、凄いなと感じてま...
      いつもありがとうございます。
      ハイジさんの読まれてる本は興味深いものばかりです。幅広く、またバランス感覚よく読まれていて、凄いなと感じてます。なかなか思うように読書が進みませんが、ハイジさんのレビューを参考に、少しでも着手出来ればとなぁと、願望だけは持続してます(笑)。
      2020/11/16
  • 高橋源一郎さんが紹介していた本。
    著者は「木はとても思慮深い存在だ」という。そんな風に考えたこともなかったので軽い衝撃を受けました。地中の根を通じて仲間同士で助け合っていること、良からぬ虫や菌類から身を守るために撃退する物質を発散する仕組みを持っていること、長くゆっくり生長する樹木にも記憶する能力が認められること…などなど知らなかった森林の生態が面白かったです。

  • まず表紙が素敵。
    内容にぴったりだ。
    普段見掛けることの多い木々達の話なので想像しやすく、美しい緑色の葉や、力強い幹の茶色、シダーウッドのような香りを思い浮かべながら、気持ちよく読んだ。
    想像の中ではミツバチも飛び、キノコや苔が生え、枝を揺らす風も吹いていた。
    ノンフィクションではあるけれど、著者が見せてくれる世界に癒された。

    なんて理に叶った生き方なんだろう。
    ブナもナラも、その他の樹木も、みな長所短所を併せ持ち、工夫しながら、自然界の公平な間引きを受けて生きている。
    人類も、少しは彼ら樹木の生き方を見倣ったら良いのに。。。
    本書が世界的ベストセラーとなっているのが分かる。
    全人類が本書を読むべきとさえ思う。

    読み初めて直ぐに、"社会の真の価値は、そのなかのもっとも弱いメンバーをいかに守るかによって決まる"との職人たちの言葉に心打たれた。
    生態系のルールは残酷で厳しいこともあるけれど、彼ら樹木同士の関係性は基本公平であり、成長もゆっくりだ。
    地球上の生命の新参者である人類は、傍若無人で急ぎすぎているように思えた。

    けれど木々たちは、ただゆったりのんびりなわけではない。
    公平に助け合い、工夫をし、他の生き物を上手く使い、バランスよく、"過ぎないように"している。
    そのルールを守れなかった木々、縄張り争いに破れた木々、それらは傷を負い朽ちてゆく。
    それらはまるで、啓発本を読んでいるかのような印象だった。
    著者の森への愛情が、木々を擬人化させ、読者である私にも伝わってきたのかもしれない。

    森は生きている。
    「『森は自分の居場所を自分で理想に近づける』。私たち林業専門家がよく口にする言葉だ。」
    木々たちは根や菌糸を通じて情報を伝達し、水分や栄養までも補い合いながら生きている。
    それも数百年の単位で。
    木々は経験から学習もするのだという。
    「これは子どもたちのためを思った教育なのだ。たとえとして"教育"と言っているのではない。林業を営むものは、昔からこの"教育"という言葉を使っている。」
    時間をかけて繁殖し、数百年かけて育ち、ゆっくり朽ちてゆく。
    私は大きな森に足を踏み入れたことが無い分、その時の刻みに、とてつもなく壮大なものを感じた。
    そしてとても愛おしい。

    「時間がかかるからといって、生き物として価値が低いということにはならないはずだ。植物と動物にたくさんの共通点があることが証明されれば、私たち人間の植物に対する態度がより思いやりのあるものになるのではないかと、私は期待している。」

    読み終えたときに思ったのは、改めて、この地球上の生命体は種別ごとに独立して生きているわけではないということ。
    人類だけが心地よく暮らせることばかりを優先していると、回り回って皺寄せが返ってくる。
    そんなこと分かっていると思われるかもしれない。
    でも手に取りやすい厚みの文庫に、こんなに驚きと共感が詰まっている。
    少なくとも私には、知らないことばかりだった。
    本書は森林浴をしているかのような心地よさも味合わせてくれた。
    著者には森への愛と敬意が溢れていたし、長谷川圭さんの訳も読みやすい。
    一冊を通して気持ちよく、森の声を聴くことが出来たように思う。

  • とにかく素晴らしい本。
    これまでは、人の手がかかっていない山林は荒れてしまう、適切な手入れがどうしても必要だ、と聞いてました。ちがうかも。
    ひとが他の生物と違うところは、文字を持って、知識を他のひとや後世に残せること、と思っていた。ちがうかも。
    植物には脳がないから感じない、考えていない・・・これもちがう。
    寒い冬に、暖かい日がたまたま何日か ”続いた" とき、それがどれだけ続いたか、を考えて春なのか、冬なのかの判断をしている。そう。間違うこともあるけれど、"続いた" ことを覚えている。
    植物は記憶することができている。
    脳じゃなくてもいいんですね。考えるところ、それは菌糸と一緒に作り上げたインターネットだ、と言っている。
    範囲も、時間も、そのスケールがひとの想像を超えている。
    ひとを基準に考えてはだめですね。
    動物は目や耳で感じ、すぐに判断しているけれど、樹木はそうではない。1年、10年、100年単位で環境を捉え、記憶し、判断し、そして移動している。木が移動するわけない、と思っていたけれど、樹木は個ではなくて森〈菌糸・微生物を含めて)でひとつ。森は移動している。大きな、そして偉大な存在だ。
    海岸から大陸の内側まで、”手付かずの” 森林を残さないといけない。今の私たちにすべきことは、まずここから。私たちは大量消費・経済発展よりも、何よりも子孫に大事な環境を残すことが大事。

    • しずくさん
      辛4さん、おはようございます!
      丁寧な返信をありがとうございます。本当に本書を5年前の10月に挙げていて、そのままになっていたみたいです。...
      辛4さん、おはようございます!
      丁寧な返信をありがとうございます。本当に本書を5年前の10月に挙げていて、そのままになっていたみたいです。どうりでどこかで見かけたような表紙でした。気づいて下さってありがとう!
      生まれは鹿児島で18歳から長崎住まいの生粋九州人の私にとって、昔から北海道は憧れの地。
      サンカヨウ(山荷葉)は中国地方から以北の寒い地に生息するので、残念ながら見たことがありません。雨に濡れると氷のように透明感のある花びらへと変化する姿を、テレビで観ました。とても素敵で出逢いたい花です。
      ”スープカレーの辛さは4”のネーム名?
      たまたま、隣人からお土産に富良野スープカレーのレトルトを戴きました。スープカレーなるもの初めてで楽しみ味わいたいと思います。
      こちらこそよろしくお願いします!
      2023/08/18
    • 辛4さん
      しずくさん、おはようございます。
      そうでした。気候が違いすぎるくらい違いました。当たり前のように生育しているわけではなかったですね。You...
      しずくさん、おはようございます。
      そうでした。気候が違いすぎるくらい違いました。当たり前のように生育しているわけではなかったですね。YouTubeで検索してみることができるサンカヨウと、窪さんのお話があまりによかったので、現物はどうかな?ととても気になっているのです。簡単に出会えない(雨の日に山にいかないですよね)難易度の高さ、寿命が短いのも、また神秘性をあげているのかな、とおもっています。
      九州は数回しか行ったことがありません。しかも全部出張だったかも。
      九州は電車のデザイン(特に内装ね)がお洒落で、驚いたことを覚えています(出張なので、そんな印象しかないところが残念)。
      スープカレーは好きです。辛めがやっぱりいいので。わりと辛さ4みたいな、激辛ではない割と辛めをお願いしています。
      チェーン店でも、北海道では地元カレーとしてスープカレーがメニューにあるんですよ~。
      娘がカレー屋さん(の会長様)から今年も引き続き奨学金をいただくことになったので、お礼兼ねて先週食べに行ってきました。去年もスープカレーをいただきました。かなりおいしんです。もっと通うべきでした。
      しずくさん、スープカレーにはまったらぜひ現地(北海道)にもおこしください。
      マルトマのホッキカレーは現地で食べたら衝撃かくじつです~
      それではよい週末をお過ごしください。
      2023/08/19
    • しずくさん
      辛4さん、返信コメントをありがとうございます。
      今夏の暑さは特に厳しく感じますが、北海道もそうなのかしらと思いながらパソコンに向かっていま...
      辛4さん、返信コメントをありがとうございます。
      今夏の暑さは特に厳しく感じますが、北海道もそうなのかしらと思いながらパソコンに向かっています。
      出張で数回九州に来られたとは、カッコイイ!?
      スープカレーのメニューなんて(外食は滅多にしないので)知りませんでした。スープカレーと一緒にもらったホッキカレーは辛4さんとコメントする前(台風6号接近の折に)に既に食べちゃっています。マルトマだったのかは不明ですが、何とも初めての微妙な味わいで夫と顔を見合わせながら食べましたよ(笑)
      カレー屋さんが出す奨学金というのも、これまたユニーク!
      辛4さんは私より随分お若いと察します。
      昨日冷たいものを取りすぎたせいか、昨夜の腹痛で睡眠不足気味・・・
      またお話ししましょう!
      2023/08/20
  • 樹木にコミュニケーション能力があったり、痛かったり辛かったりすることをテレビで知って、より深く知りたくて読みました。
    自分が今勤めている職場では、人間の都合でいとも簡単に木を伐採したりしているけれど、木にだって気持ちがあるのだと思うと、とても辛いです。
    本の内容は素晴らしいと思う。でも人間に処分されたり、人間の営みが木に悪い影響を及ぼしていることをより深く知ることにもなり、読み進めることが辛かったので、星1つ減らしてしまった。
    木がもっとのびのびと生きていける環境を増やしてあげたいなと思いました。

  • 樹木の見方、考え方が変わる一冊。樹木や動物、鳥、昆虫、菌類などとの関係や樹木同士の生存競争、助け合いのネットワークなど、環境になんとか適合しながら生きていく様は、環境破壊を繰り返す人間への警鐘とも捉えられる。生産と分配だけでなく、自然との共存を考えさせられた。

  • 興味深いお話であった。
    森林管理者として、樹木たちを見続けてきた作者の言葉が
    心にささる。気づかされる。

    「問うべきは、人間が必要以上に森林生態系を自分のために利用していいのか、
    木々に不必要な苦しみを与えてしまってもいいのか、ということだろう。」

    原生林の木々の力。
    人間が手を加えることによって里山、木々は整っていくものと思っていたが、
    どうやら違うのかもしれないと、この本をよんで感じました。
    樹木同士の助け合いや生存競争。動物、菌類、気候などなどとの関係。
    繊細であり、たくましくもある樹木達の自然界での営み。
    興味深く読んだ。
    「ポンプとしての森」はとても興味深く。
    地球での樹木の役割は大きいなと感じました。
    「森には、私たちが守るべき謎と奇跡がある」
    ということを忘れてはいけないと感じました。

  • ペーター・ヴォールレーベン(1964年~)は、ドイツのボン生まれ、大学で森林学を専攻した後、ドイツ西南部のラインラント=プファルツ州の営林署に20年以上勤め、その後、フリーで森林の管理を行う。
    本書は、長年森林の管理をしてきた著者が、豊富な経験と科学的知見をもとに、森林と樹木の生活について綴ったエッセイ集。2015年に出版され、全世界で100万部を超えるベストセラーとなり、2017年に出版された邦訳(2018年文庫化)も、多数の新聞書評で絶賛された。
    私は、30年近く前に数年間ドイツで過ごしたことがあり、そのときにドイツ国内の各地を訪れたが、ドイツは、南部のアルプス沿いを除いて険しい山地がなく、また、地方分権的な体制となっているために巨大な都市もなく、全土がなだらかな丘陵と森林に覆われているという印象であった。そして、ドイツ人は、休日に郊外の森を家族で散歩することが、この上なく好きであった。
    本書を読んで、まず頭に浮かんだのは、上記のようなドイツの森の様子とドイツ人の行動パターンなのだが、同時に、知らなければ見過ごしてしまう樹木たちの姿や行動に納得し、ドイツ人があれほど森が好きなのは、おそらくこうした知識を子供の頃から家族に徐々に教わり、それによって森に愛着が増していくからなのだろうと思った。
    また、ページをめくりながら、以前読んだ、植物が生き延びるための様々な“すごい”能力・仕組みを紹介した、田中修『植物はすごい』を思い出したのだが、そうした能力・仕組みは、植物が能動的に身に付けたわけではなく、偶々生じた(突然)変異で、生存に有利な形・生態が自然選択され、その膨大な積み重ねによってそうなったものだ。(そう言ってしまうと、身も蓋もないのだが。。。)
    しかし、著者は本書で、そうした科学的な事実を、樹木を人間に、森を人間社会に喩え、あたかも人格があるかのように描くのである。これは、著者の樹木に対する優しさ・愛情があってのもので、読んでいてとても心地よいし、本書を類書と画する最大の特徴だろう。
    今後、樹木のある公園や森を歩くときに、周りを見る目や心持ちが変わることが間違いない、好感度の高い一冊と思う。
    (2024年6月了)

  • 木の子育てとは興味深い。今までそういう視点は持っていなかった。

    「ストリートチルドレン」比喩ではなく本当にそうなんだなと思うと、街中の樹を見るとちょっと哀しくなる。

    ヨーロッパの原生林、静かな中を歩いてみたいな。

  • 驚きの連続。なるほど、樹木たち、知られざる生活をしてました。自然保護云々という以前に、知的好奇心をくすぐられる。そして、植物に対する見方が変わる。

    とりあえず、樹木と脳の神経細胞の情報伝達の方法が、そっくりでびっくり。樹状突起とはよく言ったもので。森は地球の脳なんだなあ。その脳でいったい何を思考しているだろう。などと想像したり。

  • 森の樹木たちの生活、子育て、コミュニティ、戦いについての本。面白い。何百年と言う長いスパンでの木の一生では、生活の全てがゆっくりと行われるので読んでいるとなんだか途方もない、という感覚に襲われる。
    害虫からの防衛ですら、有害物質を葉に集めるのに一時間(!)かかり、傷付いた幹の修復も何年もかけて、その間細菌との長い戦いをする。子育ても何十年、何百年かけてゆっくりと。人生(?)のスケールが違う。木の種類による生存戦略の違いとか、木の形のあれこれとか、街路樹の苦しみとか勉強になること多々あり、それも愛を持って語られるので心地よく頭に残る。
    樹木たちの社会生活の話も面白かった。土の中に隠された根と菌糸が樹木同士をつなぎ、栄養と情報を分け合って、一本一本違った個性を持つ木たちが寄り添いながら暮らしている。

    前に読んだ「夜と霧」でマロニエの木とおしゃべりをする女性の話があってそれを思い出した。
    「木はこういうんです。わたしはここにいるよ、わたしは、ここに、いるよ、わたしは命、永遠の命だって……」
    ここでいう永遠の命はもちろん文字通りの意味ではなくキリスト教的意味合いと思うのだが、長くて何千年の命を生きる樹木たちが、二重の意味でそれに近いのかもしれない、と感じる。ただひたすらに生き抜くことが。
    樹木の命というものが見えてくると、目に入る木々や今まで読んだ本たちに出てきた木のお話がまた全然違った厚みをもって心に迫ってきて、頭の中でずっと反響し続けている。

  • ドイツの森林管理官が、森の木々たちが何を考えて生活を営んでいるのかについて熱く語っている本です。

    樹木たちは、危険が迫ったこと(害虫による襲撃とか…)について会話したり、栄養を分け与えて助け合うこともあるし、環境の変化を見ながら生き延びるために数を数えて芽吹くタイミングを計ったり、前年の気候の変化の記憶を踏まえた身体づくりの工夫をしたりしているとのこと。最適空間を求めて移動だってするというのです。いずれも、私たち人間には想像もつかない長い長い時間軸の中で、何世代…すなわち何百年、何千年という単位での繁殖を経てということですが。森の中の生存競争のし烈さと、たくましく若木を育てるために自らの枝葉で日光を遮断し過酷な育生環境を生み出すブナの親木の愛(?)なども描かれており、野山の木々に対する意識が一変しました。

    著者によると、こうした力をしっかり発揮している樹木は、人の手の入らない、自然の力だけで何世代もの時間を経過している森林の中の木だけだそう。植林や、間伐など手入れされた一見美しく見える自然公園、ましてや緑化のために植えられている街路樹などは、持てる能力も発揮できないままリスクに弱い身体しか作ることができず、短命に終わってしまう「不健康」な木々だとか。人の手が入ること(時には自然災害による環境変化もあるでしょうが)による森のダメージの大きさとリカバリーの難しさが樹木の立場で丁寧に語られているのを読むと、私たちが勝手な美意識やら快適さを求めて自然に手を出してはいけないのだな、としみじみ感じます。以前、一世を風靡した(!?)「サピエンス全史(上巻)」という本を読んだ時にも、人間がいかに自然界の秩序と安定を崩してきたかを思い知ったのですが、それと同じような感じでしょうか。

    広大なドイツの森林がベースに記されているので、風雨や雪、地滑りなど山地でのリスクにさらされている日本の樹木たちでは当てはまらない面もあるのかもしれませんが、日本の樹木たちもきっと互いにコミュニケーションをとりながら世代交代を重ねて生きているに違いありません。

    先日、信州でちょこっとブナ林の中やら湿地エリアやらを散策したりしたのですが、この本を読み終えてから行っていれば木々の形や芽吹く姿を見る印象が違ったかもと思いました。読み終わった今こそ、行きたい!もう一度森の中を歩きに行きたい…できたら遠くに…そんな気分です。

    新鮮な驚きに満ちた本でした。

  • 植物、樹木への理解を深めることができ、そして読みものとしても最高に楽しめる本でした。私のボンクラな植物や樹木の概念を根底から覆えされました。私にとっては、ある意味衝撃の一冊となりました。
    私は、これまで植物は意志を持たずただ偶発的な自然環境に左右される生物という認識でいました。本書を読むとわかりますが、決してそんなことはなく外敵が来れば近くの樹木にその情報は伝達していたり、巨木となるような樹木はしっかりと子育てをしていること等を知りました。著者の森林に対する無垢な好奇心と愛情が感じられる語り口がとても心地がよく、いつまでも聴いていたい(実際には読むという行為ですが、著者から直接聴いているような感覚で表現しています)と思えた作品です。

    2017年に単行本、2018年に文庫本が出版されていますので、すでにお読みの方は多いのでしょう。今年(2023年)になって初めて読んだ私的には、今年のノンフィクション部門のベスト1です(笑)。

  • 「樹木は根で他の樹々と交信している」「人間が手間をかけて世話をする自然保護区とは違って、(原生林こそが)自然の自由な営みを観察することができる」と、いまの日本の自然保護関係者が見たら眉を潜めそうな事柄まで記されている。
    ただ、著者の思想に通底しているのは「人間は原生林が発する声を聴くべき」という、ごくまっとうな事柄。

    僕は地元の里山保全ボランティア団体に関わっているのだけれど、仲間の中でもいろいろ意見が分かれる所。しかし、こうした「多様性」こそが、森の持続性をもたらしてくれるものだと思う。

  • 自分の世界観をガラッと変える本にはあまり出会えないけれど、この本はそんな一冊。「いつも見ているのに見えていないもの」がこの世界にはたくさんあるんだなぁ。ああ、木が好きだぁ。

  • 原生林に行って一日中ぼ〜っとしたくなった。

    樹木を感じたい笑

  • 最新の科学と長年の観察が明かす木々の驚くべき社会的な営みとは?ドイツで長年、森林の管理をしてきた著者が、豊かな経験と科学的事実をもとに綴る樹木への愛に満ちた世界的ベストセラー。
    面白かった!無知すぎてこんなに樹木が助け合いながら何百年もかけて成長し、危険に立ち向かっているとは思いもよらなかったな。動物と同じ、もしかしたらそれ以上に感情や記憶もあるのかもしれないと考えるとすごいことだ。人間の目に映らないからといって、イコール何もないわけではないという事実を分かりやすく伝えてくれる一冊。完全に手を加えずに育った森林を見てみたいけど、それを見るのは何世代も後の子孫たちになる。せめて彼らに今より豊かな樹木を残してあげたいものです。

  • 植物が会話したり、友情があったり。本書を読むと、身近な木々の言葉を聞いてみたくなる。
    「謎めいた水輸送」、木が根からどうやって葉まで吸い上げているかは、わかってないなんて!たしかに、維管束を習ったときに、どういう力って運んでいるかは、説明なかったなぁと、思い返してみたり。

  • 自分の森林についての知識の浅さに驚くくらい初めて知ることが沢山あった
    木々が会話をしたり同種の木と助け合ったりしているなんて思いもしなかった。
    また現在多くの国で行われている植林や街中の緑化運動は一見とても良いことに見えるけど実際は本物の原生林とは環境が違いすぎて、それらの木々は原生林の木々と比べて成長にかなりの差が出ることも驚いた。
    人間は歴史の中で最も簡単に木々を伐採し農地や街を拡げてきたけど、それを元に戻すのは単に木を植えればいいだけでなくて、とてつもない時間がかかるものなんだなと実感……。
    日常でよく使う木製のものといえば私の中では紙とか割り箸とかなんだけど、なるべく再生紙などのリサイクル品を使ったり、無駄遣いを無くそうと思えた。
    日本はドイツとかなり紀行が異なるから森に足を踏み入れるハードルが高いけど、この本でよく出てきた木たちを実際に見に行ってみたくなった。

  • 木同士が香りで会話をするなんて知らなかった。虫や菌の侵略により身の危険を感じると葉の成分を変化させて身を守り、さらに香りや根のネットワークを使って周りの仲間に危険を知らせることまで出来るなんて想像もしなかった。木は本当に生きているし、人間が思っている以上に仲間と繋がっている。そんな仲間からはぐれた街路樹をストリートチルドレンと名付ける著者のセンスには脱帽である。木に関する様々な知識を、著者の木への愛を持って科学的に教えてくれる良書。

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