海の地政学 海軍提督が語る歴史と戦略 (ハヤカワ文庫NF)

  • 早川書房 (2018年11月20日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (400ページ) / ISBN・EAN: 9784150505325

作品紹介・あらすじ

古代ローマの海戦から大航海時代、第二次大戦、中国・北朝鮮の動向まで古今東西の海事史に照らしつつ、現在の情勢と今後の戦略を探る

AIがまとめたこの本の要点

プレミアム

みんなの感想まとめ

海の地政学は、古代から現代に至る海事史を通じて、海の重要性とその影響を深く掘り下げる作品です。著者は、NATO軍の最高司令官としての豊富な経験を活かし、世界の7つの海を舞台に、歴史的な視点から海の役割...

感想・レビュー・書評

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  • 海の地政学
    海軍提督が語る歴史と戦略

    著:ジェイムズ・スタヴリディス
    訳:北川 知子
    ハヤカワ文庫 NF532

    NATO軍の欧州連合軍最高司令官まで務めた、US海軍提督の7つの海の見聞録といった内容です。

    超大国には、シーパワ:海軍を中心とした海洋国家と、ハートランドパワー:陸軍を中心とした大陸国家に2種類があります。

    ロシア、ドイツに代表されるハートランドは、広大な国土を持つ大国であるが、シーパワは、スペイン、オランダ、イギリスは小国にもかかわらず、長大な海岸線と良港をもち、効率的に大海を支配している。

    モンロー主義をとっていた、アメリカは、カリブ海で、フィリピンで、スペイン艦隊を打ち破り、シーパワーとしての大国の道を歩み始めた

    アメリカは、ベトナムでは敗れたが、二つの大戦を勝ち抜き、カリブ海を制し、パナマ運河を奪取し、冷戦を生き抜いた。7つの艦隊は世界をカバーしているが、著者は、第8艦隊を創設して世界平和に貢献すべきと称する

    気になったのは、以下です

    ■太平洋

    ・太平洋と命名したのはマゼラン
    ・イギリスは狭い海峡で大陸と接しているに対して、日本は長い間海洋に守られてきた
    ・ペリーは日本に来なければならなかった、なぜなら捕鯨船の補給基地が必要であったから
    ・ロシアが破れたのは、国内情勢が安定し、かつ、新しい技術を日本が導入していたから
    ・アメリカが太平洋を制することができたのは、ハワイ諸島を占有できたから
    ・ミッドウェイの幸運とは、15分のズレで、日本は空母から戦闘機が離陸できず、無防備のまま被弾した
    ・ミッドウェイ以後、米軍は、2つの道をたどった。
     ニミッツは、北太平洋を島伝いの北上し、マッカーサーは、オーストラリアからフィリピンへと、北上した。
    ・中国の防衛支出増加は他の国と不釣り合いなほど、大きな割合を占める。26%の増加
    ・日本は、ミサイル防衛、空中偵察、最新鋭航空機を導入し、事実上世界第二位の海軍力を有している

    ■大西洋

    ・大西洋航海へ始めた乗り出したのは、800年から1000年ごろのバイキングの活躍による
    ・大西洋を海と陸の両方で発見して植民化したのは、ポルトガル人の探検家たちである
    ・14~15世紀にかけて、航海術が飛躍的に進歩した
    ・バスコ・ダ・ガマ、コロンブス、ポルトガル人がカリブ海や南アメリカ大陸を目指したのに対して、イギリス人や、フランス人は北アメリカ大陸を目指した
    ・国王に保護されているイギリスの海賊船は、スペインとの闘いで戦略兵器になった
    ・ルーズベルト大統領は、高性能の戦艦と巡洋艦による外洋海軍を創設した
    ・1916年末にドイツのUボートによる警告なしの攻撃が始まったが、水上レーダや、ソナー、暗号解読などの新技術を生み出し、ドイツに勝利した
    ・フォークランド紛争は、水上艦が空からの攻撃にいかに脆弱かを示す好例となった

    ■インド洋

    ・イギリスの湖、オマーン、ケニア、インド、イギリスはインドへの道にある海洋を自国の海とした
    ・地政学的な重要地、それは、スエズ運河、そして、シンガポールだ
    ・アメリカは第二次世界大戦後、シンガポールと密接な関係を築き上げ、太平洋から、インド洋へ海上航路は確保した
    ・インド洋の不安定要素、それは、イランとサウジの対立、インドとパキスタン、インドと中国の確執だ
    ・インド洋は、世界の郵送量の50%、原油の70%が通過する重要な海域だ

    ■地中海

    ・地中海の重要度は、東西文明が交差する海であり、シチリア、サルディニア、マルタ、クレタ、どれもが海域に点在する重要拠点となりうる
    ・ギリシア、ペルシア、ローマ、そして、イスラムとキリスト教徒との対立は、十字軍という災厄を生むことになる
    ・18世紀、イギリスが地中海の覇権争いに加わる。いうまでもなく、インドへの道を確保するためだ
    ・第二次世界大戦で、連合国は、北アフリカから、シチリア島、イタリアを攻略してドイツの背後から迫った
    ・冷戦時代を通じて、アメリカは、イタリアの第六艦隊が地中海を哨戒した。NATO軍とソ連原潜との追跡、それから、スエズ運河を超えれば、直接ペルシャ湾や、インド洋にも展開することができる
    ・黒海は、ウクライナやシリアへと向かうロシアの生命線だ

    ■南シナ海

    ・中国のプレゼンスが、南シナ海を危険な海としている
    ・かつての南シナ海の重要度は、ベトナム戦争にあった
    ・南シナ海の北端に位置する台湾は、中国を押さえるための重要な拠点である、冷戦時代をふくめて、アメリカは、台湾を軍事的に支援しつつけている
    ・もう1つのリスクは、北朝鮮の存在だ。日本、韓国、ロシア、北朝鮮、中国、台湾の領域は、冷戦終結後も軍備拡張を続けらえている、危険の海域である

    ■カリブ海

    ・もっとも危険な海、犯罪率が非常に高く、人口10万人当たり暴力による死亡率が最大である
    ・カリブ海を通じて、麻薬はアメリカ本土のもたらされている
    ・カリブ海はアメリカの内海である、カリブ海からパナマ運河を経由して、太平洋へ艦隊を展開できる
    ・そのために、アメリカは、パナマ運河を奪取した
    ・そしてカリブ海諸国は、アメリカの干渉をうけていて、政変や経済援助を受けている

    ■北極海

    ・北極海は、いまだに闘いを経験していない海洋である
    ・原油や天然ガス、ニッケル、ぷらちな、コバルトなど、北極海には豊富な資源が眠っている
    ・地球温暖化の影響で、氷にとざされていた、北極海は、北西航路として通行実績が急速に高まっている
    ・北極海は、ロシア、カナダ、ノルウェー、アメリカ、デンマークの利害がひしめていて、統治が混乱している
     そのため、国連海洋法条約に加えて、北極評議会がある

    ■ソマリア近海

    ・ソマリア沖での海賊行為は、アル・シャバブとアルカイドの結びつきも垣間見えた
    ・東北アフリカでは長い間内戦がつづけられていて、対立や略奪行為が絶えないため、合法的に生計を立てるのがむずかしい、しかも、かれらは、多く漁民であった
    ・NATOの取り締まりが強化された結果、海賊は減ったが、反対側のギニア湾での活動が盛んになってきた

    ■アメリカの海軍戦略

    ・海軍少将であったマハンは、アメリカ海軍にシーパワーという概念をもたらした。
    ・シーパワーを適切に使用すれば、イギリスのように、世界を制することができる。いわんや、アメリカしかり
    ・マハンはオープン・グローバル・コモンズという考えを提唱した。それは公海の航行や、通行の権利、国際海洋法条約の重要性である
    ・マハンから今日にかけて、戦争行為が陸、海、空の個別にではなく、統合一体運用というシームレス指揮統制、それを可能とするものは、情報通信技術、サイバー戦争などの高度技術だ
    ・海洋に敷設されている海底ケーブルを切れば、強力な攻撃手段となる。インターネットの大半は、海底ケーブルを通じて通信されている
    ・アメリカのもっとも強力な海軍は、第7艦隊であり、グアム・沖縄を中心に配備されている。その対象は南シナ海であり、拡大しつつある中国海軍だ。

    目次

    日本の読者へ
    はじめに 海はひとつ
    第1章 太平洋 すべての海洋の母
    第2章 大西洋 植民地支配のはじまり
    第3章 インド洋 未来の海洋
    第4章 地中海 ここから海戦は始まった
    第5章 南シナ海 紛争の危機
    第6章 カリブ海 過去に閉じ込められて
    第7章 北極海 可能性と危険
    第8章 無法者の海 犯罪現場としての海洋
    第9章 アメリカと海洋 二一世紀の海軍戦略
    謝辞
    解説 海を知り尽くした提督の描く海洋地政学
    参考文献および世界の海洋に関する推奨文献

    ISBN:9784150505325
    出版社:早川書房
    判型:文庫
    ページ数:400ページ
    定価:960円(本体)
    2018年11月20日印刷
    2018年11月25日発行

  •  NATO軍最高司令官を務めたことのある著者が、豊富な経験と深い知識により世界の7つの海について語ってくれる。
    世界史が個別の国の歴史ではなく、7つの海それぞれの単位で語られると、違う角度から世界史を見ることになりとても勉強になった。全ての海に実際に行ってそこで仕事をしている経験に基づいているので、机上の伝聞記述ではなく、直接経験記述が書けるのが著者の強みだ。

    最後に「無法者の海」ということで、
    1. 海賊行為
    2.漁業
    3.環境
    を取り上げているのだが、世界の海はとても深刻な問題を抱えている。特に世界の海が急速に汚染されている現実を私たちはまだ十分知っていない。
    全ての汚染は、最終的には海へ流れる。人間が生み出す余分な熱の90%以上が最終的には海に影響する。海水温度に上昇は、海底と海面の海流(湧昇流)を減少させ、そのため深海の栄養分を表層に運んでこないばかりか、塩分濃度も減少して酸性度が高まりオゾンの枯渇を招いている。
    世界中の魚種の60%以上が再構築を必要とされている。

  • 米海軍提督による、世界中を航海した海軍士官としての実体験と海洋の歴史に基づくシーパワー論。

  • 読み味がざっくりしすぎていて、読みかけてやめてしまった。
    世界の海の歴史を地域ごとに概説。最後の章は現在と今後について。
    退役海軍大将なので、著者の回想などもふんだんに混じえて語るスタイル。

    翻訳のこの手の本によくあるのだが、ざっくりすぎて、私が知ってるトピックは知っている以上のことは書いておらず、知らないトピックは說明が足りなくて、何のことか具体的にイメージできない。

    というわけで、読む意味が見いだせず挫折。

  • 覇権国家振り返り記的な。
    歴史経済政治地理の観点から、海戦とその背景を知ることができる。地政学の面白さは、この歴史と地形的優劣がかみ合わさることにあると思う。

    筆者の引用のうまさにも驚かされる。シェイクスピア、テンペストからの引用で始まることからわかるように、文学的要素も楽しめる。また軍司令部にいたような歴戦の猛者のエピソードも出てきてよかった。

    南シナ海への執着、北極協議会、マハンアプローチ、サイバー空間と海軍のつながりの話は知れてよかった。
    ただ、シーパワーを強める根拠の多くは北朝鮮への憂慮だったのは結構ショック。時間の問題か。

  • 元・米海軍大将が7つの海について、主に軍事面ついでに経済面から解説、さらにご自身の経験や思い出を語ってます。

    主な内容は第9章に総括されてます。読む時間ない人はここだけでも。
    でも、合間に挿入される思い出話がなかなか良いので余さず読むと楽しいです。太平洋上で船乗りになりたいと思ったことや、赤道越えの記念式、ベレンの塔がある景色など。船乗りの気概を感じる美しい文章だと思います。

    面白かったのは以下の章

    ・第1章 太平洋
    英国と日本を比較しているところ。地政学的に類似点が多いのに、なぜ日本は「太平洋の大英帝国」にならなかったのか。
    →大西洋と太平洋の差。広大な太平洋は天然の緩衝地帯であり、西の海岸線を守り東へ乗り出すことはしなかった。
    (問いは面白いけど理由はちょっと弱い気がする。)

    ・第5章 南シナ海
    主に中国の人工島建設、ついでに北朝鮮の話題も。アメリカの視点(の一部)が見られて面白いです。南シナ海でのアメリカのプレゼンスを維持する方向でいくつかの方策が提案されてます。

    ・第8章 無法者の海
    対海賊の話が興味深いです。単純に知らないことばかりで。
    様々な国との協力体制、軍の活動、民間警備会社の活躍、民間船の対応など。海賊を捕まえても身分証を持たないので引き渡し先が見つからない問題や、一つの地域で海賊行為を減少させたら別の地域が盛んになったり。

    ・第9章 アメリカと海洋 21世紀の海軍戦略
    マハンの理論をベースに、アメリカへの提言と総括です。身近な太平洋はもちろん、大西洋やカリブ海、地中海のような離れた海の話も、離れているからかえって興味深いです。

  • amazonのレビューで指摘されてた「はじめに」は文庫化で改訳されたし他の部分も手を入れたようだが、どうもバグが取り切れてない感じ。そもそも軍に関する話で report や officer of the deck が訳せないのでは…。

  • オーソドックスな海の地政学。
    著者がアメリカ海軍の船乗りであったために、重要拠点となる港や海洋の経験による描写が良いので、学者の資料至上主義のアプローチとは異なり、ちょっとした旅行気分も味わえる。

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著者プロフィール

ジェイムズ・スタヴリディス Admiral James Stavridis
1955年生まれ。アナポリス海軍兵学校を卒業後、海軍へ入隊。複数の駆逐艦や空母打撃群の指揮を執り、7年にわたり海軍大将を務める。
2009年にNATO(北大西洋条約機構)欧州連合軍最高司令官。
2013年より5年間タフツ大学フレッチャースクール学長を務めた。
「第二次世界大戦以降、米海軍でもっとも頭脳明晰であり、もっとも優れた戦略家」ともいわれている。
著書に『海の地政学』(早川書房)などがある。

「2021年 『2034 米中戦争』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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