ヴィクトリア朝時代のインターネット (ハヤカワ文庫NF)

  • 早川書房
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感想 : 19
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150506094

感想・レビュー・書評

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  •  もちろん、19世紀に『インターネット」があったわけではない。しかし、『インターネット』に匹敵するものが実用化された。電信(テレグラフ)である。
      
     腕木通信(手旗信号を機械化しリレー方式でつないでいくようなもの)から、やがて電気通信へ。さらに海底ケーブルの伸展による世界規模のネットワーク等々。現代のインターネットと同様のインパクトがあり、その発展と社会的影響は、現在のインターネットと驚くほど酷似していた。仕様の共通化、暗号化通信の導入や、電信を利用した犯罪などは、昔も今も変わらない。

     あと、発明王のエジソンが電信で財を成したことにより、電球や蓄音機の開発につながったことなどは興味深い。

     そして今では、電信(電報)は慶弔目的以外に目にしたことがない。

  • 『ヴィクトリア朝時代のインターネット』 新刊ちょい読み - HONZ(2011年12月27日)
    https://honz.jp/articles/-/6947

    トム・スタンデージ『ヴィクトリア朝時代のインターネット』が文庫で復刊される - YAMDAS現更新履歴(2024-03-18)
    https://yamdas.hatenablog.com/entry/20240318/victorian-internet

    Review of 'The Victorian Internet: The Remarkable Story of the Telegraph and the Nineteenth Century's On-Line Pioneers' | Arts & Culture| Smithsonian Magazine
    https://x.gd/IY8Nr

    ヴィクトリア朝時代のインターネット |書籍出版|NTT出版
    https://www.nttpub.co.jp/search/books/detail/100002174

    ヴィクトリア朝時代のインターネット | 種類,ハヤカワ文庫NF | ハヤカワ・オンライン
    https://www.hayakawa-online.co.jp/shopdetail/000000015821/

  • トム・スタンデージ「ヴィクトリア朝時代のインターネット」読了。19世紀のモールス信号が開発された時代がこんなに面白いとは驚いた。絵描きのモールスが世界を変える電信に没頭する様に感動した。また電信の勃興と衰退の歴史から現代のインターネットや生成AIの行く末に共通性を予見させられた 。 ー ・・ー

  • ヴィクトリア朝時代には、インターネットのように全世界を繋ぐ情報ネットワークが既に存在した。電話以前に普及していた文字通信サービス「電信」をインターネットの前身と捉え、その繁栄と衰退を描きだしたノンフィクション。


    電信とはモールス信号を使った文字通信のことで、要は今でも結婚式の謎風習として残っているあの電報である。19世紀半ばにアメリカとイギリスでほぼ同時に実用化され、誕生から20年足らずで海底ケーブルが大西洋を横断し、日本にまで電信網が引かれていた。1870年代には2万都市が繋がり、ロンドン-ボンベイ間通信の所要時間は4分!ものすごいオーバーテクノロジーだ。
    偉人伝に興味を持たずに育ったため、本書で初めてモールスの経歴を知って今更驚いた。こんな技師でも科学者でもない山師じみたド素人だったなんて、歴史って面白いなぁ。電気が「目に見えない」という理由で心霊と同じ扱いを受けていた時代だから、スポンサーの前で実演してみせても詐欺師や手品師と一緒くたにされるモールスたちがモーセみたいで笑える。降霊術とか神智学会とか千里眼とか盛り上がってたのと完全に同時進行の話だもんなぁ。
    電信局のオペレーター周りの話なんかはかなり"インターネット"で、独自に生みだした略語はプログラム言語の先祖のようだし、仕事の合間に上司の目を盗んでチャットしたりオンラインチェスをしたりも今のデスクワークと変わらない。なんとなく女性ばかりのイメージだったけど男女どちらも働いていて(部屋は別)、当時は最先端のイケてる職業だったとか。その後機械化され、猛スピードで信号を読み取る技術職だったオペレーターの地位は下がった。この辺はタイプライターの普及とも関係づけられそう(しかしタイプライターの実用化より電信の普及のほうが早いっていうのも考えてみるとタイムパラドックス感がある)。
    情報がスピード勝負の時代になったビジネスマンたちの「通信スピードが上がれば上がるほど楽にならずに仕事が増えるだけじゃねえか!」という叫びはあまりにも21世紀的すぎる。電信誕生以前は新聞屋がニュースを余裕で2日寝かせてた話なんかも面白かった。しかしまもなく電話が発明されると、電信の天下は50年足らずで終わってしまう。
    そして時代の中心は電話、ラジオ、テレビへ移り変わる。著者がこれらの音声・映像メディアよりも電信を"インターネット的"だと見做したのは、原書がでた1998年当時はインターネットの大半がまだ文字情報のやりとりだけで成り立っていたからだ。リアルタイムの情報を交換できるようになり、新聞や雑誌などのメディアが力を持ったオンラインテキスト文化。全世界を繋ぐ情報ネットワークが平和をもたらすという無邪気なユートピア幻想。この二つが100年の時を跨いで電信とインターネットを繋ぐ。97年にMITメディアラボ所長が語った「将来子どもはナショナリズムとは何かをわからなくなる」という展望とは真逆の未来にきちゃったけど、それを笑いたくはないなぁ。

  • 『ヴィクトリア朝時代のインターネット』読了。話題の絶版ノンフィクションの復刊。電信という技術が生み出され改良され普及し、社会を変える様が実に生き生きと描かれる。現代の視点から過去を照らすことで結果的に今を相対化する視座を得るというのは歴史を学ぶ意義にして醍醐味であるよな、と。

  • ヴィクトリア朝時代?
    中世ヨーロッパのインターネットって何よ、と思ったら、ヴィクトリア朝時代って、19世紀末から20世紀頭なんね。

    遠距離で高速な情報伝達の発展。

    当初は、双眼鏡で遠くを見て、みたいだったのが、電気、電信技術の発達によって、あっという間に世界の距離が短くなった。

    ビジネスや軍事についての影響、個人の生活への影響など、まさに今のインターネットの発展と相似する時代であったのだ。

    確かにそうだなあ。
    それまでは、船より早く海を渡る方法もなかったんだし、船より早く情報が届くということがどれだけ世界を変えたか。

    電信結婚とか、考えるこたあ似たようなもんだなと感心した。

  • ヴィクトリア朝時代から比べると現代はいろいろなものが大きく様変わりした。
    そのなかでも現代において欠かせないものの一つに”インターネット”がある。インターネットの登場で情報へのアクセスの量は飛躍的に増大した。そして人々のコミュニケーションにも影響を与えており、インターネット以前以後でまったく違うものになった。
    と、自分は思っていた。だから仮に昔の人が現代にタイムスリップしたらインターネットに最も驚くだろう、と。
    しかし、違うのだと本書に記されている。
    インターネットの原型であるものがヴィクトリア朝時代には既にあったのだと。
    それが”電信”技術である。
    腕木通信という腕の形をした木の形で遠くに情報を知らせる技術の誕生から、電気による通信技術の誕生、そしてテレグラフや電報、電話と姿を変えていく。
    インターネットの誕生によってテキストメッセージのやり取りが手紙というフィジカルからデータへと変化したが、既に通っていた道だったのかという驚き。
    電信オペレーターによる会ったことのない誰かとのやり取りやロマンスもSNSにも通じるようで面白かった。

  • 【概要】
    19世紀はヴィクトリア朝時代。
    新しい発明であった「電気」を使って、国中でいや世界中で瞬く間に情報のやり取りが出来る「電信」が生み出された。
    電信はビジネスを加速化させ、恋愛を生み出し、悪用しようする人間を生み出した。
    まるで現代のインターネットを先駆けたかのような発明が100年以上前に生み出されていた!

    【感想】
    電信の前段階として塔を立ててパネルを交換することによって光学的に情報を送るテレグラフがフランスで生まれたという所がまず面白い。
    それでいて、光学式テレグラフに予算を投資してしまったので、電気式テレグラフ=電信を敷設するのが遅れたという話が世界史あるあるでまた面白い。
    この新しい技術がすぐにまた新しい技術に取って代わられる……勿論電信もその例を違えず100年余りで電話に地位を奪われる!……これこそが技術の歴史の面白さだと思う。
    そして毎回新しい発明が生まれると、人間は飽きもせずそれによって世界が良い方向に向かうと楽観視する。
    電信の完全な民主化がインターネットだという著者の結論が的を射ていると思う。

  • 2024-09-28
    電信の黎明前夜から衰退までをドラマチックに描いた名著。大雑把なことは知っていたけれど、ここまでエキサイティングだったとは。そして出てくる背景(南北戦争とかナポレオンとかクリミア戦争とか)で、知識でしか無かった歴史が有機的に呼び起こされた。
    何より、電信ネットワークとインターネットの似姿に驚かされる。さて、次の大変革は何時何でもたらされるのだろうか。

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著者プロフィール

ジャーナリスト・作家・編集者。英「エコノミスト」誌副編集長。
オックスフォード大学で工学とコンピュータサイエンスの学位を取得。本書『食べ物でたどる世界史』は14カ国で各国版が刊行され、世界的なベストセラーとなっている。
他の著書に『歴史を変えた6つの飲物』、『ヴィクトリア朝時代のインターネット』など。科学とテクノロジーに関する多くの記事を「ワイアード」「ニューヨーク・タイムズ」等に寄稿。
音楽一家の中で最も非音楽的。妻子あり。ロンドンに在住。

「2024年 『食べ物でたどる世界史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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