鏡は横にひび割れて (ハヤカワ・ミステリ文庫 ミス・マープル)

  • 早川書房 (1977年2月10日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (384ページ) / ISBN・EAN: 9784150700195

感想・レビュー・書評

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  • 英国の桂冠詩人テニスンの詩の一節がタイトルになっています。私の残念な英文学の知識ではその味わいが分からないのですが、言い知れぬ深い悲しみに貫かれたストーリーではありました。映画スターのマリーナ・グレッグの不幸にシャロット姫の絶望がどのように響いているのか…。
    この作品は1962年刊、ミス・マープルにも加齢が忍び寄っています。庭いじりは禁じられ、やたら年寄り扱いする介護人に付き添われて、それでも、明晰な頭脳は冴えています! そして、障害者差別解消法などなかった時代だったのだなぁ…という悲しさ、やりきれなさもまた胸に刺さります。

  • クリスティは早川ミステリが原点なので翻訳も懐かしい。
    今回は恩田さんの「鈍色幻視行」に触発されての読書だったが、実は初読。ネタバレ後に読んだので例の場面であー、そういう表情ねと理解しつつ楽しんで読めた。
    中学時代にクリスティを読んでいた頃は人生経験不足で読み飛ばしもしたが、これまで出会った人のタイプを分類分けして、あの人はああいうタイプで…と考えたりする。改めて読むと、ミスマープルの人間観察はとても的確で、人物総評が事件の真相に迫る伏線であったりする。さすがクリスティ!

    途中からではあるが、ミスマープル長編12編を読むことをしばしライフワークとしよう。

  • 「アガサ・クリスティ」の『鏡は横にひび割れて』を読みました。

    「アガサ・クリスティ」作品は4月に読んだ『ハロウィーン・パーティ』以来ですね。

    -----story-------------
    穏やかなセント・メアリ・ミードの村にも、都会化の波が押し寄せてきた。
    新興住宅が作られ、新しい住人がやってくる。
    まもなくアメリカの女優「マリーナ・グレッグ」がいわくつきの家「ゴシントン・ホール」に引っ越してきた。
    彼女の家で盛大なパーティが開かれるが、その最中、招待客「ヘザー・バドコック」が変死を遂げた。
    呪われた事件に永遠不滅の老婦人探偵「ミス・マープル」が挑む。
    -----------------------

    「東野圭吾」作品は大好きなのですが、、、

    読んでいると、時代背景や舞台となる場所がリアルなことや感情移入しながら読んでしまうことから、作品の中に入り込み過ぎてしまい、精神的に疲れてしまうこともしばしば。

    リアルな場所から離れてミステリーを楽しみたいと思い、時代背景も舞台となる場所も想像するしかない「アガサ・クリスティ」作品を読むことにしました。


    これまで読んだ「ミス・マープル」モノは、長閑なセント・メアリ・ミードの村が舞台でしたが、、、

    本作は1962年の作品ということもあり、セント・メアリ・ミードに新興住宅地が造成され、その新興住宅に若い世代が移り住んできて、徐々に様変わりする様子が背景に描かれています。

    でも、「ミス・マープル」の優れた観察力や洞察力は、全く影を潜めておらず、益々、磨きがかかっている感じがしましたね。


    登場人物も多く、序盤はややもどかしいテンポでの展開でしたが、、、

    中盤以降、特に第二、第三の殺人が連続して起きるあたりから、テンポが良くなり、ラストまで一気に読みたくなる「クリスティ」らしい作品でした。


    動機に繋がる事実は、第一の殺人が発生したときから読者には提示されているのですが、なかなか真相と巧く繋げることができませんでしたね。


    障害児を持つ親の気持ち、自分が障害児を生んだ原因を知ったときの衝撃と殺意、、、

    そして愛する者を守りたいが故の殺意、それらが入り混じることにより物語が複雑化しているのですが、最後に全てが繋がったときには、とてもスッキリしましたねぇ。


    「ヘザー・バドコック」や「マリーナ・グレッグ」の行動や言動から、他人を思いやることの大切さを感じた作品でした。



    ≪ちょっとネタバレ!≫

    「マリーナ・グレッグ」の死は、自殺か?他殺か?事故か?  心情的には自殺であって欲しいけど、実際は他殺だったんだろうなぁ。

    それにしても「マリーナ・グレッグ」は、パーティーで会った前々々夫や養女には、全く気付かなかったんだろうな。

    ちょっと悲しいですね。

  • 録画したドラマを観る前に復讐。マープルさん、老いてもいい切れ味。

  • いつの時代も年を取った人は新しいものや変化に拒否するものだなぁと。
    動機に本気でびっくりした。伏線の張り方が上手い。読んでる最中に引っ掛かったところがあったんやけど、そこがトリック?で、そういうことか!!ってなって嬉しかった。

  • 動機のインパクトで有名。なかなか無い。

  • セント•メアリ•ミードに住んでミスマープルとお友達になりたい!
    みんなから信頼されて、かき集めた噂や証言から真実を突き止める、おばあちゃんらしいやり方。

  • (ネタバレあり)NHKBSのクリスティ生誕120年特集に「クリスタル殺人事件」(ひどい邦題)もあり、久々に原作も読んでみた。
    学生時代The Lady of Shalottでレポート書いたこともあるので、結構好きなのだが、今回読みなおしてみたら、第2・第3の殺人の謎は放置されていた!
    第1の殺人は睡眠薬、第1と第2の間の未遂というか狂言ではヒ素、第2はシアン化物で、第1は衝動的なものなので、狂言・第2は別の犯人と普通思うよね。毒物が違うから狂言と第2とでも違うと見るべきな気もする。
    第3にいたっては銃でズドンで、しかも、動機もようわからん。第2・第3の被害者が同じことしてた風だが、別に結託していたわけでもないのも、ストーリーが拡散してどうかと思う。
    第1の殺人は衝動的なだけでなく動機も哀切なもので、その犯人がとてもこういう形で第2・第3の殺人を犯すとは思えんし、ヒ素や青酸はどこから入手したんだろ。助手の青年くんについての思わせぶりな記述も何?
    というわけで、第1の殺人だけでもっている話なのだと思った。しかし、それは実話に基づいているのだった。原因を作った人物が女優にベラベラしゃべったというところまで実話らしい。ということは、クリスティの功績ではないような・・・。
    一見ハデな映画のほうが、不要な枝葉をとってうまくまとめている。既に忘れたが、両方同じ毒にしていたかも(原作では、第1の毒物の特性が執拗に記述され、ヒ素や青酸との違いがいやでも気になるよになっているのだ)。第3の殺人はカット。そりゃそうだ。被害者の夫が実は女優の最初の夫だった、というムダなネタも不採用。ラストも、原作は「それとも誰かに与えられた…」が正解だと思うが、映画では、渡されたそれには手を付けず、本人自らの意思によること、それも、“誰か”に手を下させないために、というふうにしていて、美しい。
    それにしても、マリーナが障害のある子どもを受け入れられなかった(キャラ設定からは妥当だろうが)ことが、重苦しいのだが、(養子を捨てたことと違い)それへの違和感が書かれていないことをみると、当時としてはそれで普通だったのだろうか。・・・
    ミス・マープルが老い(というか、老人扱いされること)とどう折り合いをつけていくかがじっくり書き込まれていて、それも見所かもしれない。

  • 人間万事塞翁が馬……っていったらちょっと違うか?
    むしろ、因果応報?

  • セント・メアリー・ミードのゴシントン・ホールを買い取った有名女優が、大幅に改装した屋敷で関係者を集めたパーティーを開いた。見事に手入れされた広々とした庭園、次々に案内される招待客ににこやかに応対するホスト、和やかな雰囲気の中、招待客の一人が急死した。原因は飲み物に混ぜられた毒。死亡した招待客を狙ったものか、それとも真の狙いは女優なのか。マープルは自分の衰えに嫌気がさしているものの、相変わらずの旺盛な好奇心を持ち、事件関係者の話を聞きながら真相に近づいていく。人間の個性や本質を鋭く見抜き、その長所も短所も知り尽くしたマープルだからこそ、気づけたのだろう。今回はある女性の行動パターンへの指摘や女優の過去などから、自分にもおおよその真相が早い段階で勘づくことができた。犯行のキモとなるのは女性ならではの視点、と書くといかにもありふれた表現だが、でもそうとしかいいようのないことが原因となっている。(といった時点で犯人に女性が絡んでると言ったようなものだが)。一人の思慮の足りない行動がある人物に不幸を生み、年月を経てさらに無意識に自分自身へも不幸を招いた、どちらにとっても不幸な偶然が重なった結末はやるせない。(2010.5.8.再読&感想登録)

  • 動機に衝撃を受けた作品。マープル物は無駄に思えるおしゃべりの中から手掛かりを掴む事が多いけど、この作品は非常に無駄なく美しい。

  • マープルシーリーズの中ではこれが1番好き。マープルならではの観察眼が光ってます。

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著者プロフィール

1890年、英国、デボン州生まれ。本名アガサ・メアリ・クラリッサ・ミラー。別名メアリ・ウェストマコット、アガサ・クリスティ・マローワン。1920年、アガサ・クリスティ名義で書いたエルキュール・ポアロ物の第一作「スタイルズ荘の怪事件」で作家デビュー。以後、長編ミステリ66冊、短編ミステリ156本、戯曲15本、ノンフィクションなど4冊、メアリ・ウェストマコット名義の普通小説6冊を上梓し、幅広い分野で長きに亘って活躍した。76年死去。

「2018年 『十人の小さなインディアン』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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