鳩のなかの猫 (ハヤカワ・ミステリ文庫 1-29)

  • 早川書房
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感想 : 11
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  • Amazon.co.jp ・本 (357ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150700294

感想・レビュー・書評

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  • 英国有数の女子高で起こった女性教師殺害事件と、亡命に失敗し不慮の事故を遂げた中東の国王の財宝の行方。これら二つの事件の謎にポアロが挑む。

    『アガサ・クリスティー完全攻略』の中で、著者の霜月蒼氏は、クリスティの描くスリラーは古く、稚拙すぎて現代に生きる我々の鑑賞に堪えない、として、スリラー要素のある作品の評価を軒並み低くしている。私はスリラーというジャンルをあまり読んでいないので、その批評について特に言うこともないのだが、確かにクリスティの小説でスパイが出てくるものは嘘くさいなあ、という印象で、総じて面白くないと思っている。
    この話は、冒頭のあらすじを見てもわかるようにスリラーである。だが、これに関していうと、私はそこそこ楽しんで読むことができた。というのは、女子高パートがなかなか面白いのである。
    舞台となった女子高はカリスマ性のある校長が一からつくり上げてきたものであるが、引退を考え始めた彼女は自分の後継者を決めかねている。個性派ぞろいの教師たちを抱えて学校のマネジメントに悩む校長の描写は、現代人でもうんうん、とうなづけるような説得力がある。
    この本は良作とは思わないし、謎解きの結果も消化不良なのだが、クリスティの人間観察力と描写力によって力技で読ませるものに仕上がっているという感じである。

  • 新訳版再読後投稿

    物語は壮大に二つのパートにわかれている。
     一つは革命が起きた中東の地ラマット。国王であるアリは信頼出来る友人のボブと国からの脱出を目論見ながら、王家に伝わる宝石をボブに託す。ボブは人知れず宝石を国外に持ち出す算段をつけて行動する。その後、革命に巻き込まれて彼らは命を落とすが、肝心の宝石は行方知れずのまま。
     一つはロンドン郊外にある名門女子校メドウバンク校。バルストロードは一代でメドウバンク校を立ち上げたやり手の校長。学校は倍率も高く王族等も通う。特徴的な教員が在籍しており、優秀な人達が多い。
     今作はこの二つの側面が合わさって、サスペンスミステリーの様相を持つ。謎解きの中心はメドウバンク校での事件であり、ラマット国の革命はバックボーン的なイメージだが、彼の国から持ち出された宝石がとある理由からメドウバンク校に持ち込まれていると考えられる事が事件が発展する要因になる。
     警部のケルシーやスパイのアダムも魅力的ではあるが、最大に貢献したのはジュリアという女学生であり、彼女が「マギンティ夫人は死んだ」に出てくるサマーヘイズ夫人の姪っ子でポアロの噂を聞いており、学校を抜け出して彼に相談にきた事、更には今までの事件からとある事実を推測し確信に触れている部分は優秀で、彼女がポアロに相談しなければ間違い無く事件は解決しなかっただろう。
     人物として、校長であるオノリア・バロストロードはとても優秀な人物で、考え方や人の導き方、生き方がとても立派で、外国人として対面してきたポアロにも偏見などを持たずに相対している。また、元諜報部員のサットクリフ婦人も個性があり、彼女を捕まえれば事件は難なく解決だった訳だが、旅をしており終盤まで警察も協力要請出来なかった。メドウバンクはこの後とても難しい試練を進むが、バロストロード校長をはじめ困難に立ち向かう人物が魅力的に描写されていてきっと上手く立ち直るだろうと予測できる。
     事件を整理した上で犯人は学校に潜入しており、必ず誰かに化けているはずで、ポアロは捜査として先生方の親まで調べ上げ捜査をする。ポアロ自体登場は終盤になるが必要な部分を効果的に調査し事件を真相へと導く。また、犯人判明した後もとある理由で読者は驚かさるわけだが、流石はクリスティ、一筋縄ではいかない仕掛けだ。物語の結び方も好きで、そういう結末もいいなあと感じた。国王が海外に持ち出そうと策略した巨額な宝石を巡るサスペンスミステリーだ。

  • フラップジャックスを焼いた。なにかこれがでてくるポワロかメープルの話があったと思い、ググってみたら「鳩のなかの猫」がヒットした。ところが読み終わってもフラップジャックスはでてこなかった。なんだったかなー。

  • もし教育学部に知り合いがいたら、プレゼントしてあげたかったような作品。

  • 415070029x 357p 1988・4・30 20刷

  • アガサ・クリスティの放つ女学校×スパイアクション超大作!!
    ポワロもでるよ。。

    みたいな。
    物語が行ったり来たり時間が戻ったり視点がころころ変わるのが苦手な人は読みにくいでしょうね。

    私はこういうスパイ小説もどきくらいのものが一番楽しめるので、結構良かった。ポワロ物を初めて読んだなら、なんてスマートな探偵の登場の仕方かしらんとか想ったかもしれない。

    全体的には正直普通に面白く読めたかな。不満はない。

  • 1959年発表
    原題:Cat Among the Pigeons

  • 女子校が舞台のミステリー。
    ポアロが途中から登場するパターンを初めて読んだので、新鮮だった。生徒の視点から書かれていることが多いのに、そこまで重要視されていないのが少し残念。
    しかし犯人追及までの道筋は綺麗だったし、作者の教師の理想像が色濃く反映されているのもよかった。

  • これは1冊でさまざまな楽しみ方の
    できる本になっていて、
    一方ではお嬢様学校での学園もの、
    もう一方では、とある国家で革命に巻き込まれた
    国王が残したとされる宝石にまつわるもの…

    一見したらどこでつながるんですかい?
    と思ってしまうことでしょう。
    しかしながらきちんとこの二つの事象は
    つながることになっていて
    おまけに読者が信じていた事実が
    否定されたりするのです。

    そして最後は
    どことなくさびしいものがありました。

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