災厄の町〔新訳版〕 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

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  • 早川書房 (2014年12月5日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (528ページ) / ISBN・EAN: 9784150701512

作品紹介・あらすじ

不幸な過去を抱えた家で起きる毒殺事件。エラリイを苦しめる、錯綜した謎と過去の呪縛

みんなの感想まとめ

人間ドラマとミステリーが巧みに交錯する物語が展開されます。結婚式直前に失踪したジムの帰還をきっかけに、町で起こる毒殺事件が描かれ、過去の呪縛が絡み合う様子が印象的です。エラリー・クイーンの作品の中でも...

感想・レビュー・書評

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  • 『ハヤカワ海外ミステリハンドブック』で紹介されていたので読んでみたかった。

    『Xの悲劇』『Yの悲劇』とは違って、人間ドラマが濃くてクリスティーのような感じ。

    結婚式直前に失踪したジムが突如ライツヴィルの町に戻ってきた。3年間彼の帰りを待っていたノーラと無事に式を挙げ、ようやく幸せな日々が始まったように見えたが…。

    ミスリードがわかりやすいので、早い段階で犯人など色々気付いてしまう。自分だけでなく気付いてしまう人は多いと思う。
    最後まで予想を裏切ることなく終わってしまった。
    謎解きメインではなく人間ドラマを読むシリーズなのかな。

    • Naotyさん
      akikobbさん
      akikobbさんはクイーンファンとおっしゃってましたよね♪
      すみません、読む順番もわからず初心者が生意気なことばかり言...
      akikobbさん
      akikobbさんはクイーンファンとおっしゃってましたよね♪
      すみません、読む順番もわからず初心者が生意気なことばかり言って申し訳ないです(TT)

      クリスティーに似てるかなと思ってこの作品を選びました。
      読み始めはクリスティーのような感じを受けたのですが、これも生意気ですみませんが私の感想では、女性の描き方がクリスティーの方が惹き込まれると感じました。
      それはやはりクリスティーが女性なので、女性の繊細な気持ちなどがわかるからなんでしょうか。
      自分自身も女性なので、クリスティーの描く女性の苦悩だったりに共感できるのだと思います。

      逆にクリスティーに出てくる男性には惹かれたことがないんですが、この作品の探偵役のエラリイ・クイーンが魅力的でした!
      ずっと側にいてくれて安心感があるし、グイグイ来るわけでもなく急にキュンとするようなことを言ってきたり。
      これはパットが好きになるのもわかるわ〜と思いながら読んでました(*^^*)
      2024/10/08
    • akikobbさん
      生意気だなんてとんでもない、、、ちょっとつっこんだ感想お聞きしたかったので、お返事いただけて嬉しいです。
      女性の登場人物に共感できるかどうか...
      生意気だなんてとんでもない、、、ちょっとつっこんだ感想お聞きしたかったので、お返事いただけて嬉しいです。
      女性の登場人物に共感できるかどうか着目しての鑑賞、わかりやすいです!名もなき群衆の怖さみたいなものは印象的でしたが、誰かに共感したり、感情移入したりしてのめり込む感じではないかも…と私も思います。逆にクリスティの楽しみ方も教えていただいたような気持ちです。ありがとうございます!

      ひまわりめろんさんのおっしゃるとおり、国名シリーズと比べて読むと、作者のクイーンの挑戦というか、新境地を切り開こうとしている様が味わい深かったりもしますが、人間ドラマ読みたい派の方にとって国名シリーズ一作目の『ローマ帽子の秘密』とか苦行でしかない可能性あります、お気をつけください(笑)X,Yと同じ年に書かれた『エジプト十字架〜』『ギリシャ棺〜』の方が少なくともエンタメ性は高いです。ドラマ性は、うーん…。エラリー、その父リチャード、その他レギュラー男性陣の生き生きしたキャラクターが楽しめることは請け合いです。

      (ちなみに私は、エラリーかっこいい〜って思いたいという不純な動機で読んでいるので、エラリーの出ない『〜の悲劇』は未読という、偏ったクイーンファンですw)
      2024/10/09
    • Naotyさん
      akikobbさん☆彡

      お返事ありがとうございます!
      エラリーかっこいい〜というakikobbさんの楽しみ方を聞いて、探偵エラリー・クイー...
      akikobbさん☆彡

      お返事ありがとうございます!
      エラリーかっこいい〜というakikobbさんの楽しみ方を聞いて、探偵エラリー・クイーンをもっと読んでみたくなりました。⁠◕⁠‿⁠◕⁠。
      私もその目線で楽しみたいと思います♪

      『ローマ帽子の秘密』は苦行の可能性ありなんですね笑
      教えていただいてありがとうございます!
      1作目は『ギリシャ』か『エジプト』でいってみたいと思います(*^^*)
      やっぱり男性陣が生き生きしてるんですね。
      それも頭に入れながら楽しみたいと思います。

      クリスティーは女性が生き生きしてます。
      こんな嫌な人いる〜という嫌な女性を描くのも上手いですが、クリスティー自身が自立したかっこいい女性なので、特に自分の意見をはっきり持っていて自立しているかっこいい女性のキャラクターが私は大好きです。

      色々と教えていただいてありがとうございました\(^o^)/
      2024/10/09
  • ライツヴィルシリーズの第一弾。クイーンの恋愛絡みエピソードはあるあるなのか?ちょっと冗長感。容疑者を取り囲む群衆の様子などリアルで今もネット上では同様だと思う。『十日間〜』がよりロジカルで好みだが悲劇ドラマとしては読み応えあった。

  • 冒頭から、EQは不動産屋にて部屋を借りようとするも、いかにもな曰く付きの家(災厄の家)を借りることになり、(エラリイ・スミスという偽名で)珍しい始まり方で面白い。
    その後、いつになったら事件が起こるのかと思えば、そこそこ話の進んだp188にて。

    著名な作家がやってきたらしいということで町ではちょっとした騒ぎになったものの、パットは最初からスミスではなくEQであることに気づいており、その後、EQとコンビめいたやりとりをしていく。

    災厄の家を建てた新婚夫婦だったはずの2人がメインとなる話だが、ノーラはジョンに命を狙われている、ジョンは妻を殺すと言い、ノーラは献身的にジョンを信じて犯人はジョンじゃないと言う、そんな構図であったのが、
    実は2人とも本当のことを言ってはいるのだが、それぞれに裏があるという、面白構造だった。
    姉は偽りで、最悪の女だったという落ち。

    導入と真相は面白かったが、話が長すぎるのもあり、人間模様がめんどくさくなってきて途中はいくらか読み飛ばしてしまった。

    翻訳にて、過去の翻訳では妹だったのを、今回は姉にしたとある。原文はsisterであるため、どちらともとれる。日本との文化の違いであり、ややこしいところだ。

  • ライツヴィルの町で一時期逗留するために不動産屋を訪れた推理小説作家のエラリィ・クィーン。彼は旧家の屋敷の隣の家を紹介される。しかしその家は、新居になる予定だった二人の結婚式直前に花婿が失踪し、貸家となってからも内覧に来た男性が急死したことから、『災厄の家』と呼ばれるいわくつきの家だった。
    いわれを気にせず住み始めたエラリィだが、失踪した花婿のジムが三年ぶりに戻ってきて婚約者だったノーラと無事に式を挙げたことから、家は彼らに明け渡すことになる。

    ジムとノーラ、二人の三年越しの結婚生活が始まったが、ノーラはジムの持ち物の中から自分の死を予言するかのような手紙を発見する。さらに、不穏な雰囲気の中開かれた大みそかのパーティでついに毒殺事件が。
    エラリィは、ノーラの妹、パットとともに真相の究明に挑む。

    クリスティーと同時期に活躍した本格ミステリの巨匠の作品。時代の雰囲気がクリスティーと共通するためか、安心して読むことができる。新訳なので文章も滑らかで読みやすい。
    ただ、結婚式の日に自分を捨て、三年ぶりに戻ってきたあげく詳しいことを話すわけでもなく、いきなり結婚しよう、といわれても、果たして心情的に受け入れられるものなのだろうか。性格にもよるだろうが、自分なら考えられないなあ、と思ってしまい、ストーリーに入り込みにくくなってしまった。
    また、推理力のない私でも早い段階から犯人とその動機を当てることができるほどだったので、犯人の意外性は少ないかもしれない。

    主人公、エラリィ・クィーン氏は、女性が気を許しやすい当て馬的存在で、最後には紳士的に身を引く、といった役回りである。ポアロシリーズでいうヘイスティングズに近いが、探偵役でもあり、ヘイスティングズよりもモテキャラである。クリスティーの作品に登場する男性は、クリスティー好きの私から見ても一部を除き型にはまった人物が多く残念に思うことが多いのだが、エラリィはなかなか魅力的だ。

    逆に、女性の登場人物はクリスティーに比べるとちょっと物足りなく感じる。
    本書では、事件の中心となる次女のノーラ、エラリィと一緒に謎を解く三女のパット、若い頃に駆け落ちをして家族と疎遠になっている長女のローラがストーリーを引っ張っていくのだが、ローラの人物像が自分の中で最後までまとまらず、ぼんやりした印象になってしまった。これがクリスティーならもっと魅力的な人物になったのではないかという気がする。

    エラリィ・クィーンシリーズは初読み。新訳が次々と刊行されているようなので、最初の印象だけで決めつけず、続けて読んでみようと思う。

  • エラリー クイーン作品のなかでも話の展開が大きくてスピード感がありリズムよく読める一冊だった。
    トリック・犯人共に最後までわからなくて焦らしに焦らされた。なんとなく国名シリーズ内のエラリークイーンよりもアクティブな印象を受けた。ちょっと恋愛要素が強めだったのが意外。

  •  本格推理と言うよりも、家庭小説と呼んだ方がいい作品ですね。

     クイーンがこのライツヴィルの作品で変わったというのが、よくわかります。

     勿論、小説の基本は推理だともいわれるわけですので、これだけの力量があるのは当然だったのだと思うのですが、離れてしまったがゆえにこれまで読まなかったことに大後悔です。

     とても家庭的な悲劇な作品でした。読みごたえがありました!

  • 前々から読まねばと感じていたし、ハヤカワさんの『海外ミステリハンドブック』で紹介されていたので手に取った一冊。クイーンはX,Yの悲劇も読みましたが、うーーーん、私には早かった……。

    国名シリーズを読まずに本書を読んでしまったので、ついに「ぼくの名前はエラリイ・クイーンです」と名乗るシーンにもそこまでテンションが上がらず。
    他のシリーズよりも人間ドラマに重きを置いているそうなのですが、それにしても町の人々が多く、証言のシーンが長い。そして何より、パットのような若くてかわいい後先考えないキャラが苦手なのもあるかもしれません。総じて女性キャラがどうにも……。
    というか、あの手紙の日付を見た時点でなぜ「これから起こることを予言している!」と感じるのか……?!

    それでも、どう考えてもジムしかいないだろうと思われるところから明かされる真相には驚きましたが……そこまで集中力が保てなかったのが正直なところ。同じライツヴィルを舞台にした『九尾の猫』も気になってはいるのですが、私がもう少し辛抱強くなってから読んだほうがいいのかもしれませんねぇ。

  • エラリー・クイーンのライツヴィルシリーズ第一弾。新訳版で。国名シリーズを半分ほど、レーン四部作は読了済み。

    正直、エラリー・クイーンはパズラーとしての側面が強く、登場人物もそこまで掘り下げないイメージだったが、今作はいい意味で裏切られた。

    前半は殺害予告と殺人に至るまでの過程、中盤は白熱の裁判シーン、後半はある一つの事実でひっくり返る真相。そこに、クイーンらしからぬ人物描写が加わり、より魅力的な作品に仕上がっている。ライツヴィルという町の空気感も独特。

    真相も凄い。
    一つの事実が分かった途端、全ての見え方が変わる。クイーン作品では今までXの悲劇が一番面白いと思っていたが、今作はそれを上回る良さだった。ハヤカワミステリ文庫の新訳シリーズ、楽しみになってきた。

    で、作中のクイーン氏、結構なキス魔でチャラいので、国名シリーズのクイーン氏が好きな人は注意笑

  • エラリー・クイーンの1942年発表の本、その新訳。
    災厄の家、という話かと思ったら、災厄は町全体、その人々。
    銀行家のライト氏の美しい3人の娘たちと、
    偶然訪れた小説家、エラリー・クイーン(?都合良すぎ!)アメリカの田舎の富裕層の家庭が、推測ではあるけれど垣間見られて、長閑で平和だけれど悪意に満ちた物見高い庶民達の噂話が大きくこのストーリーを左右している。だけど、年代をみたら大戦前夜。
    この町も国も、そして我が国もやがて時代の大きな波に飲み込まれてゆくんじゃないですか!
    アメリカという大きな国のまた、その一部をみつけてしまった

  • 「早川ミステリハンドブック」で新発見いっぱいのクラシックミステリであがっているので読んだ。クイーンは中学生の時にⅩとYを読んだきり。粛々と謎解きが進むといったような内容だったと思うが、それに比べこれはどうだ。シュールで騒々しく極彩色な面々と行動、それを覆う街。テリー・ギリアムの「ゼロの未来」の画面をなぜか思い浮かべてしまった。う~ん、名作だというがなじめなかったなあ。でも映画にしたらおもしろいかもと感じた。

    ライツヴィルという小さな町を舞台にライト家の三姉妹がからむ。長女は離婚して町に戻ってきていて、二女ノーラは3年前の結婚式直前に新郎ジムが雲隠れ、裕福な親が用意した家は空き家になっていてそこに作家エラリー・クイーンが借家する、が突然ジムが帰ってきてめでたくノーラと結婚。クイーンは隣の母屋に間借りし直すが、ノーラは夫の蔵書の間から「妻を殺す・・」という3通の手紙をみつける。クイーンは三女パットとともに真相を追うが・・  そのうち夫ジムの姉だというローズマリーが新居にやってきて居座ってしまい・・ この姉、最初から姉じゃないだろうという気はするんだよなあ。

    「災厄の街」CALAMITY TOWNという題名のように、街を襲ったライト家と街の人々の騒動。

    1942発表
    2014.12.15発行 2021.8.25第4刷 図書館

  • 面白かった。クイーンは旧訳のドルリー・レーンものを四苦八苦しながら読んで以来なので、新訳の読みやすさに感動しながら読んだ。

    エラリイが偽名で滞在するライツヴィルで、借りた家の持ち主の家族の中で計画殺人が??という話だけど、クイーンらしくとてもフェアだし、手がかりは全て読者に示されていて、そこそこミステリ読んできた人なら、なんとなくの真相の大枠は掴めるのではないかなと思う。
    本が梱包されていた件にしたって、エラリイには最終盤になってパットから聞かされるまでわからないけれど、読者にはもう最初から詳らかにされていたわけだし。
    手紙にしても現在進行形のものではないだろう、とか、ジムが不在の三年のうちに誰か別の妻を持ったのでは、とか“姉”の正体だとか、察しはつくよね。“姉”殺しだって、この不可能性を見れば、読みなれた人ならすぐ真犯人にたどり着く。
    でも、そこはそんなに問題じゃない。作者のクイーンは「ほらみなさん、作中のエラリイは知らなかったけど、みなさんには最初から明かしていたでしょう?」と言いたげで面白いけど、そこはそんなに問題じゃない。

    私が読んでて面白かったのは、このフェアさもだけど、やはり、「ライツヴィルの町」自体が主人公と言えるこの町の物語。群衆のいやらしさ、陪審制の気味の悪さに圧倒されながら読んだ。
    そして、クイーンが"パズル小説"から"人間ドラマ"に移行しようと買いたものと解説にあったけれど、それを目指しながら、やはりフェアな謎解きでもあるところ、さすがクイーンという感じで、おもしろい推理小説だった。すごくよかった。

  • ライツヴィルの名士の家で起こった毒殺事件。夫が資産家の妻を殺そうとしたという実に単純な、しかし考えてみれば奇怪な事件にエラリイ・クイーンが挑むミステリ。
    事件が起こって以降のライツヴィルが本当に嫌です。まあミステリではありがちなんですがこういう閉鎖的な村だとか町だとか。疎外されてしまうほうからすればたまったものじゃないなあ。そんな中でジムの無実を証明しようとするライト家の人々とエラリイ。とはいえ傍から見ればジムが犯人で全然おかしくない、むしろそれ以外にどんな真相があるというのか、と決めつけたくなる気持ちもわかりました。だからこそその事件の後で起こる悲劇と明かされる真相にはやりきれないものが。
    わかってみれば手掛かりはいろいろあったのだけれど全然気づけなかった……登場人物のさまざまな発言の裏に隠された真実にも愕然。ものすごーくシンプルな謎だと思っていたけれど、これは解けません。完敗。

  • 結婚したばかりのノーラが、「夫のジムが自分を毒殺しようとしているのでは?」と疑念を抱くところから始まる。
    実際ノーラは毒の症状でずっと体調が悪いのだが、新年を迎えるパーティーの中、ノーラのグラスを奪い取ったローズマリー(夫の姉)が毒で死亡し、グラスを用意していたジムが疑われる。

    ジムの無実を信じるノーラの家族たちだが、この町の人達にはこの一家を敵とみなすような態度をとられ、それでもあきらめずに戦う。主人公のエラリーも見捨てずに家族に寄り添う。

    ノーラとジムのことは悲しい結末だけど、ノーラの赤ちゃんは生まれ、パットとカートの手で幸せになるように育てられていくだろう。真実は知らせず、きっと墓場まで持って行く。それがこの子のためと信じて。

  • 主人公は国名シリーズと同じくエラリー・クイーンで、作家で警視の息子という設定は共通している。だがこちらのエラリーは、皮肉屋で理屈っぽい国名シリーズのエラリーとは異なり感情豊かで思いやりがあり、ロマンチスト。さらには武闘派でもある。だからこそ、残酷な運命に翻弄される一家の悲しみがエラリーを通してダイレクトに伝わってくる。
    舞台となるライツヴィルはセント・メアリ・ミードのような、隠し事など決してできない小さな町。町の名士であるライト家をめぐる騒動は、ローマン・ホリデーよろしくあっという間に拡散する。口さがない人々はただ陰口を叩くだけでは飽き足らず、それが正義とばかりにまるで集団ヒステリーか魔女狩りのごとく一家を迫害する。ライト家に世話になるエラリーは当然一家のために戦うが、アウトサイダーであるエラリーもその迫害にさらされ、疑惑を持たれてしまう。町の人々に後ろ指を指されることで、一家はジムの無実を証明するために一致団結する。
    最終的にエラリーは事件の真相に辿り着くものの、とてもではないが晴れやかな結末とは言い難い。娘を失い、それでも娘の忘れ形見である孫を育て上げることを使命として生きていこうとするジョンとハーマイオニー夫妻、自らの運命を受け入れて口を閉ざすジム、真相を胸の奥にしまい込み生きていくことになるパットとカートがあまりにも不憫。パットをカートに託し、静かに退場するエラリーは哀愁すら漂っている。
    陽気な登場人物も多く、パットとのロマンスもあるにもかかわらず全編を通してまるで靄がかかったように薄暗く夢の中の世界のよう。約500ページの長編ということもあり、自分自身もライツヴィルの町にいるような気持ちになる。
    国名シリーズよりも人間ドラマに重きを置いた作品なので、本格好きの読書には少し物足りないのかなと思うが、クリスティ好きの私には最後まで楽しく読むことができた。

  •  最初は正直これがそんなに評判なのか?と思うような展開だった。
     しかし、あらゆる要素によって犯人がただ1人しかありえないという分かりきった状況が続く中、物語が終わりに近づくにつれてその驚愕の真相と隠れた真の悲劇がその姿を見せていったのには見事に騙されて言葉が出なかった。
     これから読むという人に言いたいのは、この作品を楽しみたいなら変に探ろうとせず気楽に騙されてくださいということである。

  • 96点:「ぼくならできました」

    エラリイクイーンが単なる外部の観察者ではなく、事件の当事者として裁判で証言をする。名探偵というものと行動の不自然さ、一般常識とミステリロジックの衝突、世間からみた探偵のいかがわしさが裁判の中であきらかになり、ただそういったものをロジックで突破するところは大きな爽快感を感じる。
    世界文学としてもミステリとしてもクイーンシリーズとしても圧倒的におもしろい‼️

  • 初めて読んだエラリイ・クイーンの小説。
    前半では、田舎町の良い面も描かれるが、事件後は圧倒的に悪い面が多く描かれる。
    登場人物たちの濃い人間関係によって拗れていく事件が、緻密な人間描写によって、なんの無理もなく展開されていく様子は、圧巻だった。
    こうした、ドロドロとした関係のミステリ、そして、探偵が気付くのがあまりにも遅いミステリは、イライラして読むのが辛いこともあるのだが、今作は、エラリイの人柄もあって、スルスルと読めた。
    真犯人が被害者となるはずだったノーラであることに関しては、状況的に考えて、わりとすぐわかるのだが、ジムの姉にまつわる謎解きは、最後までわからなかった。
    何より、意外だったのは、ノーラが、夫を犯人に仕立て上げた事で、物語序盤から、魅力的なパットに感情移入させられてしまっていたので、読者もエラリイも、ノーラの狂気に気づくことができない、という仕掛けを、作者は作っていたのかなと思った。

  • 国名シリーズを読み終えてからの、災厄の町。
    キレッキレのエラリーに馴染んでいたので、しがらみに埋もれてなかなか動けないエラリーが、風采が上がらないように見えて、もどかしい。。

    ただ、背後に不穏な音楽がずっと流れているようでざわざわしながら、先へ先へとページを送りました。
    排他的な集団の結束や、親しい間柄程話し合いができず問題を大きくしていくことの恐ろしさを感じました。

  • クリスティ読みすぎて先が読めてしまっていたのが残念だったものの、そうでなければもっと楽しめたであろうにな、と思うのであった。

  •  読み了えてみれば、犯人はこの人しかいないだろうと思えるのに、そのこの人が解らない。今回もしてやられた。
     なかなか事件が起こらず、ページを繰る手が進まない。「クイーンの最高傑作」というお墨付きを信じて読む。
     エラリイ、モテモテである。ニッキーやポーラはどうなったのだろう?
     1940年といえば太平洋戦争前年。にも関わらず、アメリカ地方都市では余裕ある日常が続いている。
     

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著者プロフィール

越前 敏弥
1961年生まれ。文芸翻訳者。訳書『世界文学大図鑑』『世界物語大事典』(以上、三省堂)、クイーン『Yの悲劇』、ブラウン『ダ・ヴィンチ・コード』(以上、KADOKAWA)、ダウド『ロンドン・アイの謎』、ブラウン『真っ白な嘘』(以上、東京創元社)、ハミルトン『解錠師』(早川書房)、マッキー『ストーリー』(フィルムアート社)など。著書『文芸翻訳教室』(研究社)、『翻訳百景』(KADOKAWA)、『名作ミステリで学ぶ英文読解』(早川書房)、『はじめて読む! 海外文学ブックガイド』(河出書房新社、共著)など。

「2023年 『オリンピア』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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