火刑法廷 (ハヤカワ・ミステリ文庫 5-1)

  • 早川書房
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感想 : 73
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  • Amazon.co.jp ・本 (341ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150703516

感想・レビュー・書評

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  • 棺桶からの死体消失、壁をすり抜ける謎の女などの超常現象が、魔術や幽霊といったオカルトの魔風に彩られてなんとも魅力的に提示される。
    一見、複雑怪奇に思えるが、事件も舞台も登場人物も意外とシンプル。
    抜け目ないブレナン警部や、安楽椅子探偵役を演じる犯罪研究家のゴーダン・クロスの活躍もみどころ。
    ラストのラスト、個人的には大好物。

  • 編集者のエドワードは、社の人気作家の書き下ろし原稿を見て愕然とした。
    原稿に添えられた十七世紀の毒殺犯の写真は、妻マリーにそっくりだったのだ。
    一方、隣家の老人が急死し、その死の直前、老人の部屋で古風な服装の女性が目撃され壁をすり抜けて消えたという…。

    一見非合理に見える謎をロジカルに解き明かすという快感を味あわせておきながら、最後に悪夢のような非合理性の中に読者を落とし込む。
    しかもその二つの“解”が両立し、なおかつ破綻していないという奇跡のミステリ。

    緊張感あふれる謎解きも面白かったのですが(死体消失と壁抜けのトリックは全然見抜けなかった…)、やはり最後の5ページが衝撃でした。
    この最終章があるからこそ、70年以上も読まれ続けているのでしょう。

    不朽の名作というのも納得の一作でした。

  • ホラーなの?ミステリーじゃないの?
    とモヤモヤしながら読み、
    すっきり解決!良かった良かったと思ったら最後、
    まさかのホラー結末!
    やー結局どうなの?どっちなの?!
    誰かと話し合いたい!

  • 私のミステリ指南書、
    「東西ミステリーベスト100」では14位。

    出版社に勤める主人公スティーブンスは、
    週末にすごす別荘へ行く列車の中で、
    編集長から渡された原稿に目を通す。

    十七世紀の毒殺犯を扱ったその原稿に
    添付された写真は、間違いなく自分の妻マリーであった…!

    そしてその夜、
    スティーブンスの隣の別荘では、当主が亡くなったばかり、
    その死が毒殺ではないか?と言う疑いがあり、
    元当主の甥であり、その別荘を継いだマークを手伝い、
    検分をしようと墓をあばくと、死体は消失していた…!

    使用人ヘンダーソン夫人は
    老人が死んだ夜、中世の格好をした女が老人の部屋にいるのを
    窓の外からみていた。
    その女は夫人が見ている前で壁に消えていった…。

    昔の毒殺犯の女の装身具が妻と一緒、
    謎の多い妻の過去や、
    納骨堂や、魔女裁判…

    しょっぱなからぐいぐいと引き込まれるのと同時に、
    あまりにもな設定に
    もう一人の私が「こんなことある訳がない!」と
    笑い転げてしょうがない。

    このままでは情緒不安定になってしまう…!と
    心配したけれど、しばらくしたら
    とりあえず笑いの方は収まった。

    私が魔女裁判などを怖がる環境に育っていないので
    いまいちピンとこず、そこら辺は
    「なんだか大変なんですね」と言う感慨が主だったが

    例えば日本人なら、怪死したお坊さんがいた荒れ果てたお寺から
    読経が聞こえてくる、となれば「キャー!!!」となる、
    という訳で、この舞台の国の人にとっては
    とっても恐ろしいのでしょうね。

    また、出てくる納骨堂から連想して、
    ドラキュラが棺から出てくるのが
    今までは棺型のベッドから出てくるだけ、と言う印象だったけど、
    「あ、あれは遺体のはずが出てくるというので怖いんだな」と
    気付いた。(気付くの遅い?)

    地下にある納骨堂に遺体のまま棺に入れて
    そのままずっと置いておく…、
    湿気大国日本ではありえないお話でございますね。

    私としては最後は「あれ、もしかして?」と
    読者が選べるように余地を残してくれた方が
    好みだった。

    また人物の中に特に応援したい人や感情移入したい人などがおらず
    ストーリーを追うだけ、と言う感じではあったが、

    それでもこんなにも現実離れしたこれぞ昔ながらのミステリ、で
    どっと没頭して気分転換になりました。

  • バランスがいい。納得いかない人がいるのもわかるが、雰囲気は抜群にいいし、楽しませ方を知ってる。

  • ミステリ。ホラー。
    『森博嗣のミステリィ工作室』『東西ミステリーベスト100』他、いくつかのミステリ・ハンドブックから。

    完成された怪奇ミステリであり、同時に、ミステリに擬態した怪奇小説でもあった。
    最高です…。

  • カーのベストを募ると必ず選出される本書は実はノンシリーズの1冊。

    出版社の編集員が作家ゴーダン・クロスの書いた実在の毒殺魔ブランヴィリエ夫人の物語を読み、そこに付せられた肖像画と自分の妻とのあまりの近似性に驚愕する。それ以来、妻がブランヴィリエ夫人の生まれ変わりであることを示唆する噂と奇妙な事件が彼の身の回りに起こる。

    『緑のカプセルの謎』の感想でも書いたが、カーは密室物と同じくらい毒殺物を著しており、本書もその1冊。今気づいたが後年読んだ『死が二人をわかつまで』と非常によく似たシチュエーションである。但し私の中ではこちらの方が評価は上。
    もしかしたら本書を読んでもそれほど驚かない人もいるかもしれない。この趣向を取り入れた設定の作品は今たくさんあるからだ。しかしこれこそがそれらの作品の祖だと考えればかなりエポックメイキングな作品であることに気づくだろう。つまりポーが開祖としたミステリ、つまり人外の闇の部分に論理の光を照らして人智の物とするという新しい文学形態にさらにその形態を下敷きにして新たなるスタイルを確立したとまで云っても過言ではない。

    特に読まれる方は全編に散りばめられた台詞や仕掛けに留意してもらいたい。出来れば結末を知った上で読めば、カーが含ませた数々のダブルミーニングに気づくはずだ。本書は例えば、列車に乗っているときに遭遇する進行方向から見る広告と逆方向から見る広告が角度によって全く違っている看板のようだと云えば解ってもらえるだろうか?

    ただし、ではカーのお勧めは?と未読の方に問われて、この作品を推奨するのはいささか抵抗がある。なぜならば本書はカーがこのような作品を書いたことに大きな意義があるからだ。HM卿、フェル博士シリーズなどを数多く著してきたカーだからこそ本作が光るのだ。
    ぜひとも読んでいただきたい傑作だが、ぜひともそれまでにカーの作品を何点か当たっていただきたい。素直に勧められないこのもどかしさをどうか理解して欲しい。

  • 訳が読み難い。
    レッドドラゴンの訳者みたいだな…
    そうでしたw

    何かあると匂わせつつ、ないのか。
    話の筋は通したか…やっぱあったー
    いろいろな取りかたができる結末。
    結末のために読み難いのガマンして読む価値はある。友達とどう解釈したかの話で盛り上がるわコレは。

  • 読み辛い。
    翻訳のせいだと思うが、読んでて頭に入ってこない。
    新訳を選択すりゃよかった。

    事件の謎はナカナカに面白い。
    読む側が気になって、グイグイ引き込まれる。
    謎解きとその解説は、古典的な手法で
    分かれば単純なことで
    (・3・)エェー!?
    となること間違いなし。

    でもって、最後の最後のくだりはビックリ。

  • 二重のどんでん返しがある作品。ミステリでありただのミステリを超えている、としか表現のしようがない笑 でもこれぞノベルって感じで楽しめました。けっこう読み進めるのは大変だったけど、読後は最高。

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著者プロフィール

別名にロジャー・フェアベーン、カー・ディクスン、カーター・ディクスン。1906年、アメリカ生まれ。新聞や学生雑誌への寄稿を経て、30年に「夜歩く」で作家デビュー。長年の作家活動の業績から、63年にアメリカ探偵作家クラブ賞巨匠賞、70年には同特別賞を受賞した。1977年死去。

「2020年 『帽子蒐集狂事件』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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