火よ燃えろ! (ハヤカワ・ミステリ文庫)

  • 早川書房 (1980年3月18日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (416ページ) / ISBN・EAN: 9784150703554

みんなの感想まとめ

歴史ミステリとして、1829年のロンドンを舞台にした不可思議な犯罪が描かれています。物語は、タイムスリップした警視チェビアトが、創設間もないスコットランド・ヤードの一員として不可解な射殺事件に巻き込ま...

感想・レビュー・書評

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  • カーは後年歴史ミステリを数作著しているが、本書もそのうちの1冊。しかしカーの歴史ミステリというのは他の作家とは違った特徴がある。
    通常歴史ミステリとはその時代の実在の登場人物、もしくは架空の登場人物を探偵役にしてそのときに起こった事件の謎を解く、もしくは現代の人物が過去の文献や資料を当たって、歴史の闇に新たな見解を示す物と大きく2つに分かれるだろう。
    カーの歴史ミステリはこの2つのジャンルミックス的なものといえる。彼の作風は現代の人物がタイムスリップしてその時代に云って騒動自体に巻き込まれて事件を解き明かすという一風変わった特徴がある。

    さて事件の内容はといえば、ロンドン警視庁の警視がタクシーに乗っていたらいつの間にかそれが二輪馬車に変わっており、1829年のロンドンにタイムスリップし、創立間もないスコットランド・ヤードの一員となって、不可解な射殺事件を解き明かすといったもの。

    私は英国史はもとより世界史にもさほど精通していないため、本書でどのような歴史的事実が盛り込まれ、活用されたのかは寡聞にして解らない。が、しかしカーの歴史ミステリの主眼は従来の作家が採る歴史上の謎となっている事件を持論を以って開陳するものではなく、その時代でしか成立しなかった犯行・トリックを使うがために歴史をさかのぼっている節がある。現代の日本人ミステリ作家でたとえるならば、二階堂黎人氏の二階堂蘭子シリーズや京極夏彦氏の妖怪シリーズが正にその設定を採用し、自己薬籠中の物として次々と作品を生み出している。
    で、その結果、カーは時代を退行することによって生じる読者への先入観を上手く引き出し、成功しているといえよう。本書の射殺事件に使われた物こそ、この時代あってこそのものであり、それを上手くミスディレクションとして使っている。

    それに加え、当時の風俗、風景描写に躍動感があり、正に水を得た魚のような筆致である。元々カーは若い頃から歴史物やノンフィクションを著しており(『深夜の密使』、『エドマンド・ゴドフリー卿殺害事件』)、このジャンルに興味があったようだ。

    ただこの特異な趣向が万人向きかと云えば、全面的に肯定できないところがある。タイムスリップという非論理的な趣向と事件を論理的に解き明かすという趣向が混じっているため、物語のスタンスが一定しておらず、なんだかちぐはぐな印象を受けるかもしれない。それは私も同様で、本作に対する評価があまり高くないのもこれがフィルターとなってしまったことによる。
    物語について寛容になった今ならば、この作品は改めて楽しく読めるのかもしれない。時間があれば再読することも頭に入れておこう。

  •  J.D.カーの歴史ものである。導入部分で過去に入り、エピローグで現代(1950年頃)に戻るが、推理の舞台は1829年頃に起こる不可能犯罪という不可思議な設定。決闘であるとか、賭博場でのドタバタであるとかの記述がやけに詳しく、余分な部分に思われるが、そこにも伏線が張ってある。ただし、少し記述が凝りすぎていて、もう少し簡潔に書いてもいいのではないかと思う。推理部分は、さすがにカーである。読み物としては面白いかもしれないが、歴史的な部分に興味がないと退屈するかもしれない。

  • 歴史ミステリです。
    ロンドン警視庁のチェビアト警視は確かに乗っていたはずのタクシーがいつのまにか二輪馬車に変貌していて驚きます。
    1829年にタイムスリップしたチェビアトは創設間もないスコットランド・ヤードの一員となり、やがて不可解な射殺事件に巻き込まれていきます。
    「ビロードの悪魔」と同様、タイプスリップという特殊な設定の作品です。
    事件の謎もそうですが、主人公の過去での冒険も大変、魅力的に書かれています。

  • 2020/08/21読了

  • ロンドンのタクシーに乗ったチェビアト。気がつくと100年前のロンドンに。目の前にあらわれたフローラ・ドレイトン。創設されたばかりのスコットランドヤードで受けた命令。捜査主任になるためのテスト。コーク夫人の鳥の餌が続けて盗まれるとの訴え。長官の主任書記ヘンリーと共にコーク夫人との会話から盗まれたの実は宝石であると突き止めるチェビアト。コーク夫人の家に同居するマーガレット・レンフィール。廊下での彼女の死。何者かに銃撃されるが銃声は聞こえない。フローラのパフから落ちた拳銃。フローラを守るための捜査。チェビアトをつけ狙うホグペンの陰謀。宣誓し証言したホグベン。フルーラの拳銃と死体から摘出された弾丸の関係。ヘンリーの杖に隠された秘密。

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著者プロフィール

別名にロジャー・フェアベーン、カー・ディクスン、カーター・ディクスン。1906年、アメリカ生まれ。新聞や学生雑誌への寄稿を経て、30年に「夜歩く」で作家デビュー。長年の作家活動の業績から、63年にアメリカ探偵作家クラブ賞巨匠賞、70年には同特別賞を受賞した。1977年死去。

「2020年 『帽子蒐集狂事件』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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