プレーグ・コートの殺人 (ハヤカワ・ミステリ文庫 6-4)

  • 早川書房
3.68
  • (6)
  • (12)
  • (11)
  • (1)
  • (1)
本棚登録 : 92
感想 : 7
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (306ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150704049

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 古いロンドンの屋敷に漂う底知れぬ怖さと霊魂に囚われる狂気をバックに、密室殺人を解決する、ヘンリー卿。想像以上に面白かった。

  • HM卿デビュー作の本書。
    正直、例によって読みにくい文章のため、中盤まではほとんど読後の結果については諦めていた。しかし、世評に名高い本書は、最後に至って複雑な絵図を読者の眼前に晒してくれた。

    石室という離れで起こった密室殺人については、実のところ、あまり驚きをもたらさない。千枚通しのような短剣で刺された無数の傷痕の正体が実は弾痕だったというのはなかなか面白い発想だと思ったが、その犯行を成す方法がアクロバティックで、綱渡りのような危うさがあって、腑に落ちない(窓から塀の上に飛び降りて、屋根の上に降りる芸当を女優をやったという理由で片付けるには乱暴すぎる)。これを知らされただけでは本書は凡百のミステリに過ぎない。
    しかし、この事件で最も読ませるのは真相で明らかになる複雑な人間関係だ。単純な事件の表層の裏に、かくも込み入った役割分担があったというのが驚き。
    ちょっと頭の足りない助手ジョセフがダーワースの情婦グレンダで、ジョセフの死体がテッドだったという真相はなかなか面白い。ただジョセフの死体については焼死体とはいえ、歯型で本人か否かを判断できるという瑕疵があるので、諸手を挙げて賛同は出来ない(1930年代当時ではこの捜査方法がなかったかもしれないが)。

    あと巡査部長マクドネルの役割も当時としては意外かつ大胆な趣向だったのだろう。この事件でこのトリック、そしてこの犯人を成立させるのにネックとなっていたのはこのマクドネルだから、共犯者として取り込むしかないのは当然なのだが。

    あとスウィーニー夫人=グレンダのミスリードは効果的だった。この推理ミスがあったためにグレンダのイメージが大柄な老女と固定されてしまい、ジョセフ=グレンダの真相の時に、脳内イメージが揺らぐ感じがした。

    残念なのは降霊会のテーブルでの人員配置が事件に何の関与していなかった事。降霊会はこの作品のモチーフだから、なにかに活用して欲しかったなぁ。

    最後の真相は面白いが、そこに至るまでの内容・文体にどうしてもノレなかったのでそれを差し引いて評価は3ツ星。もはや私自身がカー作品の(翻訳の)文体に忌避感を抱いているのかもしれない。

  • H・M卿の初登場作品。カーらしく怪奇趣味とミステリーが見事に融合した傑作です。やや真相の解明が唐突ともいえるが、布石は回収され、ロジックに崩壊もなかった。ただ、この訳者の和訳がわかりずらくストレスを感じた。他の訳者の同一作をつまみ読みしたら、とてもわかりやすかったので、次は別の訳者で再読したい。

  • H・M卿初登場作品です。
    盗まれた短剣と石室によって全編に漂う雰囲気が素晴らしく、カーのオカルト色が大変に強い作品です。
    プレーグコートと呼ばれる幽霊屋敷で博物館から盗まれた短剣で刺殺された降霊術師の死体が密室状態の石室の中から発見されます。
    石室の扉には閂が、窓には鉄格子という完璧な密室殺人です。
    密室のトリックには感心させられました。
    雰囲気に惑わされると真相を見誤ってしまいます。
    今回の不可能犯罪も素晴らしかったです。

  • H・M卿もの。密室ものとして名高い作品のひとつ。実際、その名に恥じない驚かされるトリックを使って、密室を作りだしており、その説明にも納得がいきます。さらに、ハウダニットだけではなくフーダニットも意外で、犯人が明かされるときまでの経過にも驚かされました。

  • H.M卿

  • H・Mシリーズ

    ヘンリー・メリヴィル卿初登場。プレーグコートの持ち主ディーン・ハリディのに求められやってきたケン・ブレイク、マスターズ警部。密室となった石室内で殺害された霊媒師ダワース。凶器はかつて殺人鬼が使用したナイフ。 ナイフの傷や大量の血液の謎、暖められた部屋。第2の殺人。被害者は霊媒師の助手。消えたディーンの婚約者の弟。ダワースの妻の秘密。

     2003年4月11日購入

     2003年4月22日読了

全7件中 1 - 7件を表示

著者プロフィール

Carter Dickson (1906-1977)
本名ジョン・ディクスン・カー。エラリー・クイーン、アガサ・クリスティーらとともにパズラー黄金時代を代表する作家のひとり。アメリカ合衆国のペンシルベニア州に生まれる。1930年、カー名義の『夜歩く』で彗星のようにデビュー。怪事件の連続と複雑な話を読ませる筆力で地歩を築く。1932年にイギリスに渡り、第二次世界大戦の勃発で一時帰国するも、再び渡英、その後空襲で家を失い、1947年にアメリカに帰国した。カー、ディクスンの二つの名義を使って、アンリ・バンコラン、ギデオン・フェル博士、ヘンリー・メリヴェール卿(H・M卿)らの名探偵を主人公に、密室、人間消失、足跡のない殺人など、不可能興味満点の本格ミステリを次々に発表、「不可能犯罪の巨匠」「密室のカー」と言われた。晩年には歴史ミステリの執筆も手掛け、このジャンルの先駆者ともされる。代表作に、「密室講義」でも知られる『三つの棺』(35)、『火刑法廷』(37)、『ユダの窓』(38)、『ビロードの悪魔』(51)などがある。

「2023年 『五つの箱の死』 で使われていた紹介文から引用しています。」

カーター・ディクスンの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×