赤い鎧戸のかげで (ハヤカワ文庫)

  • 早川書房 (1982年6月30日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (2ページ) / ISBN・EAN: 9784150704070

みんなの感想まとめ

テーマはH・M卿の奮闘とその独特なキャラクターに焦点が当てられています。休暇中の彼が警察に協力し、怪盗アイアン・チェストを捕まえようとする中で、様々なトラブルに見舞われます。特に、泥棒が鉄箪笥を持参し...

感想・レビュー・書評

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  • なんとカー作品で怪盗物が読めるとは思わなかった。
    しかもその怪盗が実に変っている。銃を携帯しているが人は殺さず、唯一2人だけ怪我を負わせた程度。そして最たる特徴は猿の顔の意匠がついた鉄の箱を常に携えているというのだ。

    そして本作の謎はこの怪盗アイアン・チェストが何者なのか、そしてコリアーがほんの数秒の間にどうやって鉄の箱とダイヤ原石の山を部屋から消したのかが焦点となっている。

    今回のカーはかなりフェアプレイに徹したと思う。
    文章をよく読めば、アイアン・チェストの正体は解るし―実際、2人に絞っていたが最後の対決シーンで私も解った―、そこから最後に明かされる鉄の箱の真相もなるほどと納得が行くのである。

    しかし、それでもやはり怪盗が嵩張る鉄の箱を携えているという設定には無理を感じる。HM卿はそれを怪盗の顔を忘れさせるためのガジェットだと論じているが、盗みに入る者が逆にそんな目立つ物を持ってくるだろうか?
    ただでさえ、帰りには盗品という荷物が加わるのに。
    こう考えていくと、本作ではまず鉄の箱のトリックが先にあったのではないかと思う。これを利用したいがために怪盗物の物語を肉付けしたのではないかと思えるのだ。
    実際、本作においてこの鉄の箱消失トリックはなかなかに面白く、そしてカー以外、考え付かないだろうというバカバカしさも孕んでいるのだ。

    今回の物語の舞台はタンジールという北アフリカの国(市?)であり、ここではスペイン語、フランス語、アラビア語が公用語として使われている。英語は教育を受けた人たちでもわずかでしか喋る事が出来ないところであり、警視総監のデュロック大佐の勘違い英語も本作におけるギャグの1つになっている。

    そしてHM卿の登場シーンは回を重ねる毎に派手になり、しかもよりドタバタコメディの度合いを強めているが、今回は本当に傑作!なんせお忍びで来たはずの―しかもハーバート・モリソンなる偽名まで使って!―訪れた旅先で、一国の大統領差ながらの手厚いセレモニー付きのお迎えと遭遇するのだから抱腹絶倒ものだ!
    しかもこれが事件の一連の捜査に密接に関わっているのだから、驚きだ。
    いやはやカーの隙のない演出に感嘆してしまった。

    そしてこの異国の地において、HM卿は新たな一面、いや二面、三面を見せてくれる。まずは出鱈目なアラビア語を駆使してムーア人の心を摑むだけでなく、アラビア人の扮装をして、聖者さながら輿に乗って街を練り歩く。更には暗闇から襲い掛かるアラビア人の刺客を身軽に交わし、何の躊躇もなく、喉を掻っ捌くし、ボクシングの野試合ではレフェリーをも演じると、今まで観たことも、聞いたこともない設定が続々と登場する。特に本作においては従来の滑稽なデブのおっさんではなく、数々の修羅場を潜り抜けた百戦錬磨の人物として描かれている。

    今まで述べたように、本作ではHM卿の色々な面を見せつつ、密室からの大きな鉄の箱の消失とたくさんのアイデアが放り込まれているのだが、総じて考えるとやはり全体のバランスに欠いているように感じる。それは前にも述べた怪盗が鉄の箱を携えて盗みに入るという設定に非常に無理を感じるのだ。

    更に加えてこの題名。題名に書かれている赤い鎧戸とは怪盗の相棒コリアーがタンジールで借りた部屋の目印として宿主に塗らした鎧戸のことだ。この影で行われた事が謎の中心だとカー自身、断っているのだろうが、ちょっとそぐわない感じがする。
    それも含めて考えると本作はやはり佳作の域を出ないだろう。

  • H・M卿シリーズです。
    休暇中のH・M卿は警察に協力を要請されて、泥棒である怪盗アイアン・チェストを捕まえるべく奮闘する事になります。
    アイアン・チェスト、日本語に訳すと鉄箪笥、怪盗鉄箪笥です。
    これには笑ってしまいました。
    鉄の箱を持って現れては盗みを働いていく泥棒です。
    推理部分はお粗末ですが、H・M卿の行動だったり、男と男の決闘だったりとその他の部分では楽しめます。
    そして、本作ではH・M卿がとんでもない事をやらかしています。
    これには驚きました。
    純粋なミステリとしては良作とは言えないのですが、H・M卿好きには楽しめる作品になっていると思います。

  • またもややってまいりました。
    H・M卿騒動記。
    彼の歩む道平穏なんか
    ちーーーーっともございませんから。

    冒頭から彼の運は
    すでになくなります。
    事件にしてもまたしかり。
    取り押さえたかに見えたら
    逃げられてしまったりと…
    何かとついていませんね。

    それよりもこのお話は
    関係のないところの描写が面白いです。
    何せH・M卿がとんでもないことを
    していたり、
    何気にあの太鼓腹の割には
    身体能力が高かったり…

    あ、犯人ですか?
    その真相は面白いですよ。
    ある作戦もまたえっと
    思わせられるでしょうし。

    でも結末は
    ファン作品です。
    あくまでもね。

  • 2009/11/26購入

  • H・Mシリーズ

    船橋図書館

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著者プロフィール

Carter Dickson (1906-1977)
本名ジョン・ディクスン・カー。エラリー・クイーン、アガサ・クリスティーらとともにパズラー黄金時代を代表する作家のひとり。アメリカ合衆国のペンシルベニア州に生まれる。1930年、カー名義の『夜歩く』で彗星のようにデビュー。怪事件の連続と複雑な話を読ませる筆力で地歩を築く。1932年にイギリスに渡り、第二次世界大戦の勃発で一時帰国するも、再び渡英、その後空襲で家を失い、1947年にアメリカに帰国した。カー、ディクスンの二つの名義を使って、アンリ・バンコラン、ギデオン・フェル博士、ヘンリー・メリヴェール卿(H・M卿)らの名探偵を主人公に、密室、人間消失、足跡のない殺人など、不可能興味満点の本格ミステリを次々に発表、「不可能犯罪の巨匠」「密室のカー」と言われた。晩年には歴史ミステリの執筆も手掛け、このジャンルの先駆者ともされる。代表作に、「密室講義」でも知られる『三つの棺』(35)、『火刑法廷』(37)、『ユダの窓』(38)、『ビロードの悪魔』(51)などがある。

「2023年 『五つの箱の死』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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