騎士の盃 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

  • 早川書房 (1982年12月16日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (352ページ) / ISBN・EAN: 9784150704100

感想・レビュー・書評

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  • HM卿最後の長編。カー自身も最後の長編だと意識していたのか、本作には過去の作品に出て来た人物達が見え隠れする。
    依頼人のヴァージニアの友人には『青ひげの花嫁』に出て来た弁護士が出てくるし、HM卿の執事は『青銅ランプの呪い』で出て来た当事者であるヘレン・ローリングに仕えていたベンスンだったりする。そして最後でありながら、実に微妙な謎を扱っており、非常に興味深かった。
    なんせ密室状態の中で盃の位置がなぜかずれており、なぜ犯人はこの盃を盗まなかったのかというのがテーマだからだ。

    そしてその真相は正に本格ど真ん中。手品のようなミスリードを披露してくれる。
    犯人の狙いは宝石で飾られた盃にあるのではなく、歴史上の人物が一文を刻んだ窓にあったなんて、正にミスリードのお手本ともいうべき真相には感心したが、本作のもう1つの魅力である密室の謎は正直がっかり。

    鉛の窓枠だなんてはっきりいってこの21世紀の時代には全く解らない。物語にちらほら出てくる鉛管工をこのような形で使うのにはカーらしくて非常に好きなのだが、今のこの世の中で本作のトリックを見破られる人がいるのだろうか?
    今、窓枠といえば鉄、ステンレス、アルミ、木ぐらいしかないのだけど。

    そしてもはや恒例となっているHM卿の奇矯な振る舞いは本作においても踏襲されており、なんと今回は教会の夕べの集いにて歌声を披露するためにイタリア人の教師に師事しての歌の稽古中なのだ。
    そして『仮面荘の怪事件』や『赤い鎧戸のかげで』などでも見られたように、この奇抜な演出が事件の解決に一役買っているのだから畏れ入る。最後の最後まで生粋のエンターテイナーぶりを見せてくれる。

    そして本作においてカーは登場人物の口を借りてミステリ論を開陳する。
    曰く、
    (探偵小説は)手のこんだ、洗練された問題を提起して、読者にも謎ときの機会を公平に与えてくれるものでないと(いけない)。

    さらに曰く、
    問題は謎(中略)。謎が単純だったり、簡単だったり、謎でもなんでもないときは読む気がし(ない)。

    まさしくこれこそカーが未来の本格ミステリ書きに託したメッセージではないか!
    それは現在、まだ連綿と受け継がれている。カーの精神は確かに受け継がれたのだ。

  • H・M卿シリーズです。
    最後の長編です。
    何者かが鍵のかかった部屋に入り込んで、家宝の「騎士の盃」を動かしているというブレイス卿夫人の奇妙な訴えにマスターズ警部が現地に赴きます。
    頼みのH・M卿は歌の練習に余念がないので、マスターズ警部は仕方なく自ら問題の部屋に泊り込むのですが、再び密室に忍び込んできた何者かに殴られ失神してしまいます。
    密室トリックは大したことなくて残念ですが、それでもこのトリックでここまでの話を書けるのだから凄いです。

  • 2020/06/28読了

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著者プロフィール

Carter Dickson (1906-1977)
本名ジョン・ディクスン・カー。エラリー・クイーン、アガサ・クリスティーらとともにパズラー黄金時代を代表する作家のひとり。アメリカ合衆国のペンシルベニア州に生まれる。1930年、カー名義の『夜歩く』で彗星のようにデビュー。怪事件の連続と複雑な話を読ませる筆力で地歩を築く。1932年にイギリスに渡り、第二次世界大戦の勃発で一時帰国するも、再び渡英、その後空襲で家を失い、1947年にアメリカに帰国した。カー、ディクスンの二つの名義を使って、アンリ・バンコラン、ギデオン・フェル博士、ヘンリー・メリヴェール卿(H・M卿)らの名探偵を主人公に、密室、人間消失、足跡のない殺人など、不可能興味満点の本格ミステリを次々に発表、「不可能犯罪の巨匠」「密室のカー」と言われた。晩年には歴史ミステリの執筆も手掛け、このジャンルの先駆者ともされる。代表作に、「密室講義」でも知られる『三つの棺』(35)、『火刑法廷』(37)、『ユダの窓』(38)、『ビロードの悪魔』(51)などがある。

「2023年 『五つの箱の死』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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