プレイバック (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 7-3))

制作 : 清水 俊二 
  • 早川書房
3.43
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本棚登録 : 603
レビュー : 45
  • Amazon.co.jp ・本 (273ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150704537

感想・レビュー・書評

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  • ミステリで最も印象的な文章は何?と訊かれた時に、真っ先に思いついたのはこの台詞、

    「しっかりしていなかったら、生きていられない。やさしくなれなかったら、生きている価値がない」

    だった。フィリップ・マーロウの代名詞とも云えるこの台詞が出てくるのはチャンドラー最後の長編である本作なのだ。

    マーロウは馴染みのない弁護士からある女性の尾行を頼まれる。弁護士が指示した駅に行くと確かにそこには女がいた。その女は男と会話したり、コーヒーを飲んだり、暇を潰していたが、やがて動き出した。付いた場所はサンディエゴのホテル。マーロウは彼女の部屋の隣に部屋を取り、盗聴する。やがて駅で話していた男が現れ、その女性ベティに無心する。マーロウはベティの部屋に入ってその男を殴るが、逆にベティに殴られてしまう。
    その後ホテルを移ったと思われたベティがマーロウの部屋に現れ、無心をした男ミッチェルが移転先のホテルで死体になっているという。しかしマーロウが行ってみると死体はなかった。

    長編の中でも一番短い本書はあまり事件も入り組んでいなくて理解しやすい。登場するキャラクターも立っているので十分満足できる。
    ただシリーズの最後を飾る作品としては物足りなさ過ぎる。
    逆に本作がマーロウシリーズの入門書としてもいいかもしれない。

    この頃のチャンドラーはもう精神的にも肉体的にもボロボロだったらしい。『長いお別れ』を発表してからの5年間は愛妻の死、イギリス政府と泥仕合をすることになった国籍問題、そしてそれらが心を蝕んだ故にアルコールに溺れ、治療のための入院など、まさに人生としての終焉を迎えているかのようだ。そんな中で書いたのが本作。だからなんとなくマーロウも“らしくない”。そして本作発表の1年後、チャンドラーは没する。

    そしてこの題名。これは全く内容と関係ない。“バック”と付いていることから前向きではなく、後ろ向きであることがうかがえる。これはもしかしたら既に自分の作家としての能力に限界を感じたチャンドラーが昔の全盛期をもう一度と望んだ心の叫びなのかもしれない。
    舞台がロスでないなど、マーロウにこだわる読者の中では色々と不満があるようだが、個人的にはやはりあの台詞に出逢えた事がうれしく、十分満足できた。

  • チャンドラーの遺作にしてマーロウ最後の作品。事件が終わった後にパリの女からプロポーズされるのが、プレイバックというより蛇足かも(笑)

  • かの名言が非常に映える、
    静かに展開する大人の本。
    この作品はマーロウの周りにかなりの
    女が出入りし、そのうち何人かとは
    …な関係にまでなる、かなり色香漂う本です。

    でもそれでいてムッツリでないところが
    作家そのものの技量なんですね。
    非常にいい感じでした。

    決して派手な謎解き等、出てきません。
    でも読ませてくれるのです。

  • http://blog.livedoor.jp/axis_anri/archives/1339668.html
    「あなたのようにしっかりした男がどうしてそんなに優しくなれるの?」
    「男はタフでなければ生きていけない。やさしくなければ生きていく資格がない」
    ちなみに、うちの母親はチャンドラーの日本語訳された文体がよほど嫌いらしく、会うたびに文句をつけてくるので少々鬱陶しい。
    煙草を巻くだけの描写に何行も使うところが気にくわないそうな。
    私はそこがいいのでは?と思っているので、適当に流してきた。これまでに100回以上。
    別にいいじゃありませんかね。

  • hard
    gentle
    誰からも何も求めないかたくなな気持ち

    娘はこの本を「葉っぱの絵本」と呼んで、筆ペンでたくさんの絵を描いて、そして私の膝の上に乗って、「読んで」って何度も言った。

  • 私立探偵フィリップ・マーロウの七作目。

    違和感。
    マーロウはこんな男だったのか?

    尾行した女について行った街だからなのか。
    突然のヘリコプターの登場も、
    最後のプロポーズも違和感しかない。

    あの、有名なセリフを確認できたのは良かった。

  • フィリップマーロウという探偵が主人公のシリーズですが、普通の探偵小説とは趣が違っているこのシリーズ中でも、特に不思議な雰囲気漂う内容でした。小説内に出てくる話題も、脱線が激しく(それはそれで魅力的なのですが)、まるで話の主題はどうでも良いことのように、それ以外のいわば外野が、魅力たっぷりに勝手に主張している、そんな感覚で読ませていただきました。
    全体的に暗い雰囲気が漂っています。主人公が謎を解決していくのですが、それが気力を削いでいくような気にさせられます。なんというか、嫌な予感というものが当たっていく、それも次々に、そういう感覚でした。しばらく余韻が残りますし、しばらく読み返す気がしませんが、あと何年かしたら再度読んでみたい、その時はどう感じるだろうか。

  • 弟が名言が気になって読んだけど、面白さがまるでわからなかったっていうから、私も読んだ。私もわからなかった。
    最近読んだカズオイシグロの『充たされざる者』くらいわからなかった。

  • とらえどころのないストーリー、挿入される思わせ振りな意味のないシーン、読み終わった瞬間は怒りに似た感情すら覚えたが、これがチャンドラーの中でも異作であるとの解説を読んで納得。文章は好きでも嫌いでもなかった。

  • 続けて、また会えたね、マーロウ君!

    今回の作品は、チャンドラーさんが、「長いお別れ」ののち、
    四年半の沈黙を破って発表であり、且つ遺作でもある。

    ストーリーは、
    早朝高飛車な弁護士の電話でたたき起こされたマーロウ君、
    その電話で、ある特急電車から降りてくる女を尾行し、
    落着き先がわかったら報告する、と言う依頼を受ける。

    見付けたその女は駅構内のカフェで男と話しているが、
    どうやら脅迫されているようで…

    こちらはファンの間でも謎の多い作品と言われているとのことで、
    実際のストーリーとは関係なさそうなエピソードが
    長々と挿入されていたり、ラストである意外な人からの…
    と言うところで、みんな「へー」と考えちゃうんだな。
    あと、謎解きに関してもわりと肩透かしと言う雰囲気。

    あと今回のマーロウ君は
    女関係でちょっと感心しなかったなあ。
    それも、「へ?今?」なんてところでなんだかねえ。

    まあ、マーロウ君が上手なことはわかったよ。
    でも俺なんかはそこら辺のエピソード、
    今回ばかりは軽めに白けたけどね。
    なんだか女が煩く喋りすぎて興ざめなんだなあ。
    でも、まあ、マーロウ君だから、許してあげよ。

    今回特にマーロウ君のやせ我慢と、軸がぶれない感じは
    強めに印象に残った。

    あ~ぁ、そんなこんなで
    マーロウ君長編は全部読了しちゃったなあ~、
    せっせせっせと読んじゃってもったいなかった!
    とは言え、面白いんだもの、仕方ないよね…

    なんて思って、自分のレビュー見直していたら、
    「リトル・シスター」のレビュー、書きもらしてることに
    気付いたよ。あれれ?

    じゃ、清水さんの「かわいい女」で読み直すかな。

    あと、田中小実昌さんの翻訳バージョンも面白いらしいので
    そちらも探してみようっと。

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