プレイバック (ハヤカワ・ミステリ文庫 7-3)

  • 早川書房
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本棚登録 : 737
感想 : 50
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  • Amazon.co.jp ・本 (260ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150704537

感想・レビュー・書評

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  • 人生やり直しも楽しみ(プレイバック)
    街の権力者は法でも金と権力で何とでもなると思い上がる。だが、違った街での自由気ままな発言と行動は許されない。よく政治社会に居る「思い上がり」は権力を振り翳し、街ぐるみで自分の思った通りに動かすが、現実に「長いものには巻かれろ」の如く、言われるままの地位を持った輩でさえも多いのは寂しい限りだ。真実は虚意の世の中に潜んでいる、と言うことだ。
    「優しくなれ、さすれば生きていると言う証が見つかる」そんなミステリー小説。

  • ミステリで最も印象的な文章は何?と訊かれた時に、真っ先に思いついたのはこの台詞、

    「しっかりしていなかったら、生きていられない。やさしくなれなかったら、生きている価値がない」

    だった。フィリップ・マーロウの代名詞とも云えるこの台詞が出てくるのはチャンドラー最後の長編である本作なのだ。

    マーロウは馴染みのない弁護士からある女性の尾行を頼まれる。弁護士が指示した駅に行くと確かにそこには女がいた。その女は男と会話したり、コーヒーを飲んだり、暇を潰していたが、やがて動き出した。付いた場所はサンディエゴのホテル。マーロウは彼女の部屋の隣に部屋を取り、盗聴する。やがて駅で話していた男が現れ、その女性ベティに無心する。マーロウはベティの部屋に入ってその男を殴るが、逆にベティに殴られてしまう。
    その後ホテルを移ったと思われたベティがマーロウの部屋に現れ、無心をした男ミッチェルが移転先のホテルで死体になっているという。しかしマーロウが行ってみると死体はなかった。

    長編の中でも一番短い本書はあまり事件も入り組んでいなくて理解しやすい。登場するキャラクターも立っているので十分満足できる。
    ただシリーズの最後を飾る作品としては物足りなさ過ぎる。
    逆に本作がマーロウシリーズの入門書としてもいいかもしれない。

    この頃のチャンドラーはもう精神的にも肉体的にもボロボロだったらしい。『長いお別れ』を発表してからの5年間は愛妻の死、イギリス政府と泥仕合をすることになった国籍問題、そしてそれらが心を蝕んだ故にアルコールに溺れ、治療のための入院など、まさに人生としての終焉を迎えているかのようだ。そんな中で書いたのが本作。だからなんとなくマーロウも“らしくない”。そして本作発表の1年後、チャンドラーは没する。

    そしてこの題名。これは全く内容と関係ない。“バック”と付いていることから前向きではなく、後ろ向きであることがうかがえる。これはもしかしたら既に自分の作家としての能力に限界を感じたチャンドラーが昔の全盛期をもう一度と望んだ心の叫びなのかもしれない。
    舞台がロスでないなど、マーロウにこだわる読者の中では色々と不満があるようだが、個人的にはやはりあの台詞に出逢えた事がうれしく、十分満足できた。

  • チャンドラーの遺作にしてマーロウ最後の作品。事件が終わった後にパリの女からプロポーズされるのが、プレイバックというより蛇足かも(笑)

  • かの名言が非常に映える、
    静かに展開する大人の本。
    この作品はマーロウの周りにかなりの
    女が出入りし、そのうち何人かとは
    …な関係にまでなる、かなり色香漂う本です。

    でもそれでいてムッツリでないところが
    作家そのものの技量なんですね。
    非常にいい感じでした。

    決して派手な謎解き等、出てきません。
    でも読ませてくれるのです。

  • http://blog.livedoor.jp/axis_anri/archives/1339668.html
    「あなたのようにしっかりした男がどうしてそんなに優しくなれるの?」
    「男はタフでなければ生きていけない。やさしくなければ生きていく資格がない」
    ちなみに、うちの母親はチャンドラーの日本語訳された文体がよほど嫌いらしく、会うたびに文句をつけてくるので少々鬱陶しい。
    煙草を巻くだけの描写に何行も使うところが気にくわないそうな。
    私はそこがいいのでは?と思っているので、適当に流してきた。これまでに100回以上。
    別にいいじゃありませんかね。

  • hard
    gentle
    誰からも何も求めないかたくなな気持ち

    娘はこの本を「葉っぱの絵本」と呼んで、筆ペンでたくさんの絵を描いて、そして私の膝の上に乗って、「読んで」って何度も言った。

  • 私立探偵フィリップ・マーロウの七作目。

    違和感。
    マーロウはこんな男だったのか?

    尾行した女について行った街だからなのか。
    突然のヘリコプターの登場も、
    最後のプロポーズも違和感しかない。

    あの、有名なセリフを確認できたのは良かった。

  • フィリップマーロウという探偵が主人公のシリーズですが、普通の探偵小説とは趣が違っているこのシリーズ中でも、特に不思議な雰囲気漂う内容でした。小説内に出てくる話題も、脱線が激しく(それはそれで魅力的なのですが)、まるで話の主題はどうでも良いことのように、それ以外のいわば外野が、魅力たっぷりに勝手に主張している、そんな感覚で読ませていただきました。
    全体的に暗い雰囲気が漂っています。主人公が謎を解決していくのですが、それが気力を削いでいくような気にさせられます。なんというか、嫌な予感というものが当たっていく、それも次々に、そういう感覚でした。しばらく余韻が残りますし、しばらく読み返す気がしませんが、あと何年かしたら再度読んでみたい、その時はどう感じるだろうか。

  • 弟が名言が気になって読んだけど、面白さがまるでわからなかったっていうから、私も読んだ。私もわからなかった。
    最近読んだカズオイシグロの『充たされざる者』くらいわからなかった。

  • とらえどころのないストーリー、挿入される思わせ振りな意味のないシーン、読み終わった瞬間は怒りに似た感情すら覚えたが、これがチャンドラーの中でも異作であるとの解説を読んで納得。文章は好きでも嫌いでもなかった。

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著者プロフィール

Raymond Chandler
1888年シカゴ生まれの小説家・脚本家。
12歳で英国に渡り帰化。24歳で米国に戻る。作品は多彩なスラングが特徴の一つであるが、彼自身はアメリカン・イングリッシュを外国語のように学んだ、スラングなどを作品に使う場合慎重に吟味なければならなかった、と語っている。なお、米国籍に戻ったのは本作『ザ・ロング・グッドバイ』を発表した後のこと。
1933年にパルプ・マガジン『ブラック・マスク』に「脅迫者は撃たない」を寄稿して作家デビュー。1939年には長編『大いなる眠り』を発表し、私立探偵フィリップ・マーロウを生み出す。翌年には『さらば愛しき女よ』、1942年に『高い窓』、1943年に『湖中の女』、1949年に『かわいい女』、そして、1953年に『ザ・ロング・グッドバイ』を発表する。1958 年刊行の『プレイバック』を含め、長編は全て日本で翻訳されている。1959年、死去。

「2024年 『プレイバック』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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