湖中の女 (ハヤカワ・ミステリ文庫 フィリップ・マーロウ)

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  • 早川書房 (1986年5月17日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (384ページ) / ISBN・EAN: 9784150704544

みんなの感想まとめ

物語は、探偵フィリップ・マーロウが閉鎖的な村で起きた失踪事件を追う中で展開されます。マーロウの視点を通じて、彼の行動や周囲の状況が描かれ、読者は彼と共に事件の真相に迫る体験をします。この作品では、探偵...

感想・レビュー・書評

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  •  これはハードボイルドとしてだけではなく、推理小説としてもかなり優秀かも。犯人は、まあ誰をこの事件の犯人とするかはいろいろと問題があるにしても、結果的には怪しいやつがそのままなんだけど、被害者が入れ替わってるというオチはちょっとびっくり。これじゃあハードボイルドというよりも本格推理だよな。スカーフの使い方もうまかったし。
     キングズリーが最後までいい人だったのが以外だった。フロムセットはそれほどいい女には思えないんだけど、マーロウはキングズリーに嫉妬しまくってるのが笑った。なんかこれまでの作品と人物の造形が違ってて新鮮だった気がする。デガーモはとことん嫌な奴だけど、それでも最後にいくらかの哀愁がただようのは、さすがチャンドラーというところか。
     パーカーの「ユダの羊」みたいにガーッとくるものはないし、ウェットな部分もあまりないんだけど、じわじわといい感じ。ひょっとすると、これが個人的にはベスト・オブ・チャンドラーになるかも。チャンドラーに慣れただけかもしれないけど。
     アルモア夫人、キングズリー夫人、ミルドレッド・ハビランド、クリス・レイバリー、デガーモと今回もいっぱい死んでます(^^;)。

  • 『湖中の女』(1943)は、レイモンド・チャンドラーによる私立探偵フィリップ・マーロウシリーズ第4作☆

     愛人とともに行方をくらました社長夫人の足取りを追う案件で、探偵マーロウは湖畔の別荘へ。
     湖からは誰とも見分けのつけがたい惨状の遺体が上がり、近辺を探るマーロウの身にも危機が迫ります。街を往けば怪しい人物だらけ。大都会の闇とは異なる不気味漂う、郊外の捜査ーー

     霧中を探るような探偵活動。錯綜した事態を表す文章も、どこか混沌としています。
     そして、ヴァイオレンスが強烈★ 悪漢にさんざん痛めつけられたマーロウ氏が、ボコボコにされてヨレヨレになっても死なないのが、事件の真相より謎でしょう。

     自分が初めて読んだマーロウシリーズが『湖中の女』でして、「このシリーズでは、探偵が毎回殴られてボロボロにされるのだろうか?」と心配になりました(そうでもないですね)。読んでて痛々しくてつらかったけれど、もし映画化するとしたら、アクションシーンが多いから映えるかもしれません★
     まったく、読み進めながら、何かの耐久テストでも受けているような気分に……と言うと熱い根性をイメージさせてしまうけれど、印象は逆で、色濃い疲労が沈殿していくような筆致。みんな病んでます★

     そんなハードな状況下で、何されてもどこまでも困難に屈しない主人公が、調査の進展より読みモノでした☆ かっこいいとか美学とかいった意味は皆無です★ 仕事とは、得てして耐久テストのようなものだと思ったのです。

     唐突ですが、経営成功者による自己啓発書ほど、参考にならない本はないですね。立派すぎてむなしい。
     だいぶ極端な話をすると、私にとって働いて生き残るうえで役立つ教訓をくれたのは、この作者ひとりだけです★ 綺麗事だけじゃすまないからこそ、自分は品を落とさずに非情な奴らと渡り歩け。と道を示す作家は、レイモンド・チャンドラー以外に見つかっていません。


    ▼ピンカートン探偵社の謎
    https://booklog.jp/users/kotanirico/archives/1/4122031427

  • 裏で糸を引く意味だと考えても、「湖中の女」が確かに中心人物だと言えると思った。

    また、マーロウの「私」視点で書かれてはいるが、地の文からマーロウが考えていることがわかるわけではなく、マーロウが見たものやしたことしかわからないし、そのほかに書かれていることもマーロウとその相手の会話文であるため、読者にわかることはマーロウの隣でマーロウの言動を眺めている場合と同じである。マーロウが気づかないことには読者も気づけないし、マーロウにしかわからないことは読者が知ることはできない。

    主観というのは、自分にだけ都合が良いものだということがよくわかる物語である。客観とは、それこそマーロウの顧客がマーロウから得られるものでしかないこともよくわかるいきさつだった。

    だが、読者がマーロウについて想像できることはあった。たとえば、「私」は、部屋が長い時間ずっと静かなことを「時が足音を忍ばせ」と表現し、実際にその後の場面で、自分と他人の足音に敏感なことがわかるため、探偵という職業に必要な繊細さを確かに持っていそうだと思える。また、時が足音を忍ばせた直後には、時間の経過を「三十分とタバコが三、四本たってから」と表していることから、「待つ」ことが日常のよくあるできごとであり、たとえ「待たされる」という望まない状況だったとしても、時計を見るのはだいたい30分間隔くらいという、気持ちに余裕がありそうな性格なのかもしれないとも思える。やはり探偵に向いている主人公だと思った。

  • フィリップ・マーロウは4作目の本作で初めてロスを離れる。化粧品会社の社長から頼まれた妻の失踪事件を追って、彼の別荘があるロス近郊の湖のある山岳地帯の村に入り込む。そこの湖から女性の死体が上がる。その女性こそが社長の妻だろうと思われたが、別の女性の死体だったことが解る。そしてマーロウは別の事件に巻き込まれ、命を狙われる。

    本書のテーマは卑しき街を行く騎士を、閉鎖的な村に放り込んだらどのように活躍するだろうかというところにある。しかもその村は悪徳警官が牛耳る村であり、法律は適用されず、警官自体が法律という無法地帯。つまり本書は以前にも増してハメット作品の色合いが濃い。
    この閉鎖的な村で関係者を渡り歩くマーロウは今回危機に陥る。この危機はロスマクでも使われていた。

    本書の最大の特長は他の作品に比べると実に物語がスピーディに動くことだ。原案となった同題の短編が基になっていることも展開に早さがある一因だろう。
    そして事件は解決してみると、死体が3つも上がる。しかもそれは1人の犯人によるもので、けっこう陰惨な話だったことが解る。

    しかし上にも書いたが、原型の短編を引き伸ばした感じが否めなかった。最初のスピーディな展開は多分チャンドラー作品の中でも随一なのだが、その後の展開が無理に引き伸ばしたような冗長さを感じた。特に印象に残るキャラがいないせいもあり、出来としては佳作といったところだろうか。
    数年後、私はこの原型となった短編を読んだが、これは非常に面白かった。プロット自体はいいのだ。湖から上がった女性の死体と、どこか本格ミステリを思わせるシチュエーション。そして閉鎖的な村に現れたマーロウという名の騎士。ただそれを十分に生かせなかった。

    どんな作家もいつもいい作品が書けるとは限らない。全7作を数えるフィリップ・マーロウの物語でちょうど折り返し地点に位置する本書は中だるみの1冊となるようだ。

  • ひさしぶりにチャンドラー。ミステリーもあまり読まないので、どうしても細かい部分が読み進めるうちに拾えなくなってくるけど、雰囲気に浸りつつ読むのが楽しかった。マーロウのキャラクター好きだなぁ・・・。

  • 私立探偵フィリップ・マーロウの四作目。

    愛してはいないが妻の行方を捜してほしいという化粧品会社の社長。
    湖近くの別荘に探しに行くと、別の女性の水死体があがる。

    女性二人の体格が似ているとあったところから、
    そこがポイントとなるのかと思いきや、
    思いがけない方向に話が転がっていった感じ。

  • 1943年発表だが、いささかも古臭さを感じさせない。

    本作は、ファンが泣いて喜ぶ名台詞も、マーロウ自身のロマンスも、魅力溢れる脇役やシビれるシーンも、チャンドラーマニアからの人気もあまりなく、いうならば地味な作品に位置する。

    けれども、警察権力に傷め付けられながらもストイックに謎を追うマーロウの姿は、ストレートな私立探偵小説の基礎となるスタイルを幾つも提示しており、読まずにおくのは勿体無い。

    マーロウの冷徹な視点を通した登場人物たちの造形と、湖畔などの自然や様々な情景での描写力はハードボイルドならずとも、秀れた小説技巧の手本となるべきものだ。すでに完成されていたスタイルはさらに磨き上げられており、硬質な清水俊二の翻訳によって輝きを増す。

    情感を抑えた狂言回しとしてのマーロウ。物語的にも、後のロス・マクを想起させる。

  • また会えたね、マーロウ君!

    さて、この度読んだこちらの本は、
    いつもの「東西ミステリーベスト100」では圏外。
    サブテキストとして使用している「海外ミステリ・ベスト100」の
    ハードボイルド部門で16位。

    ストーリーは、化粧品会社社長からの依頼で、
    姿を消したその妻の行方を追う為、
    まず訪れたと思われる別荘へ向かう。

    そこで、管理人とともに湖の底に沈んでいる死体を見つける…

    この、一番最初の依頼人とのシーンを、
    チャンドラーさんが、どの作品でも腕によりをかけて、
    念入りに描いているというのが
    ヒシヒシと伝わってきて、毎回嬉しくなってしまうんだなあ。

    命が危ないところでも、
    余計な話をやめない、マーロウ君。
    肝っ玉の据わり具合は半端じゃあないよ。

    お話は、
    あまりこんがらがることもなく、

    ある謎が、ある謎を解き明かしていく…と言う、
    どうしたって夢中になってしまう展開で、

    そしてもちろん、マーロウ君の魅力も存分に発揮されていて、
    もしまだマーロウ君の話を一つも読んだことが無い人がおられたら、
    この作品を最初に読むのがお勧めかも知れませぬ。

    あらあらマーロウ君含めみんなしてまた、勝手なことを…
    (ほんとうだったら大問題)と言うことも、
    うん、この本だから良いかな。

    謎解きに関して一言、
    私も最初、「あれ?この二人…」と思ったのになあ!
    (後から言っても駄目ですよ)

  • 先に「ベイ・シティ・ブルース」を読んでいたこともあって、すんなり文が入ってきた。一番好きなセリフがカットされていたのは残念だが、犯人を知っててなお楽しめる探偵ものも中々出合えない。

  • 地味ではあるが、印象的なキャラもいるし、謎解きのシーンもよくできている。

  • 短編である程度わかってしまっている流れはあったがそれを気にさせない面白さだった。かっこいいなあクソッ。

  • トリックはわりと早く見える話ですが、かえってチャンドラーの小説の中では筋がはっきりして読みやすい気がしました。この人の小説の最大の魅力はいつも謎解きよりも文章にあると思っているけど。「男に輪をくぐらせることのできる女」っていう言い回しがすごいなー。

  • さすが名作。
    主人公はよう分からんけど。なんで死なんのじゃ。
    魔性の女。

  • ちょっとマーロウのかっこよさは
    奥に引っ込んでしまっているので、
    いささか物足りなさが目立ちました。

    おまけにスリリングな暴力シーンも
    この作品ではなりを潜めてしまっています。
    おまけに女性との甘い場面もありませんし。

    多分チャンドラーの作品の中で
    一番目立たない作品でしょう。

  • 翻訳物は読み辛い…
    という苦手意識は忘れ、すっかりマーロウの虜に。
    何度ボコられても立ち上がり、自分の意思を曲げないマーロウには、「タフ」とか「意地っ張り」という言葉がピッタリ

  • 面白かった。

  • チャンドラーの長編4作目。謎解きが楽しい。

  • 第二次世界大戦下の時期に執筆されたこともあって、マーロウ他登場人物が戦争や徴兵について言葉空少なに語るシーンだけが取り上げられることの多い作品で、非常にもったいない! 良作ですよ!!<BR>
    まず、タイトルの勝利。そして、セリフの勝利。<BR>
    そっとドアをノックした先、『私の好きな場面じゃないな』の件はもう、鳥肌モノ。

  • 早川でレイモンドチャンドラーで訳が清水俊二のフィリップマーロウはかっこいい
    特にこの湖中の女はプロローグが良い
    依頼人とマーロウの丁々発止のやり取りが良い マーロウの目線に写る描写も良い
     
    湖中の女の名言は「私の扱いをきちんとする依頼人は生きているようです」
    映画の台詞にしたら 「あんたの命は俺次第だぜ」と こんなところかな

  • 推理小説は、小学生の頃は、江戸川乱歩の怪人二十面相やモーリス・ルブランの怪盗アルセーヌ・ルパン、コナン・ドイルのシャーロック・ホームズが大好きでした。中学生では、エラリー・クイーンにハマってました。でも、レイモンド・チャンドラーの作品に出て来るフィリップ・マーロウを楽しめるのは、もしかしたら還暦を過ぎたこの歳になったからかも知れません。

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著者プロフィール

Raymond Chandler
1888年シカゴ生まれの小説家・脚本家。
12歳で英国に渡り帰化。24歳で米国に戻る。作品は多彩なスラングが特徴の一つであるが、彼自身はアメリカン・イングリッシュを外国語のように学んだ、スラングなどを作品に使う場合慎重に吟味なければならなかった、と語っている。なお、米国籍に戻ったのは本作『ザ・ロング・グッドバイ』を発表した後のこと。
1933年にパルプ・マガジン『ブラック・マスク』に「脅迫者は撃たない」を寄稿して作家デビュー。1939年には長編『大いなる眠り』を発表し、私立探偵フィリップ・マーロウを生み出す。翌年には『さらば愛しき女よ』、1942年に『高い窓』、1943年に『湖中の女』、1949年に『かわいい女』、そして、1953年に『ザ・ロング・グッドバイ』を発表する。1958 年刊行の『プレイバック』を含め、長編は全て日本で翻訳されている。1959年、死去。

「2026年 『ザ・リトル・シスター』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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