レイディ・イン・ザ・レイク チャンドラー短篇全集 (3) (ハヤカワ・ミステリ文庫)
- 早川書房 (2007年11月8日発売)
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感想 : 7件
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Amazon.co.jp ・本 (484ページ) / ISBN・EAN: 9784150704599
感想・レビュー・書評
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「レイモンド・チャンドラー」のハードボイルド短編作品集『レイディ・イン・ザ・レイク―チャンドラー短篇全集〈3〉(原題:Lady in the Lake and Other Stories)』を読みました。
『チャンドラー短編全集3 待っている』、『さらば愛しき女よ』、『プレイバック』に続き「レイモンド・チャンドラー」作品です。
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本書には、「レイモンド・チャンドラー」が1938年から39年前半にかけて発表した五篇の中短編が収められている。
表題作『レイディ・イン・ザ・レイク』は、長篇『湖中の女』の原型となったもの。
『ベイシティ・ブルース』もまた、同長篇に組み入れられた。
『赤い風』はのちに主人公が「フィリップ・マーロウ」に書き換えられたバージョンでお届けする。
伝説のヒーロー誕生前夜の熱気を伝える画期的全集第3巻。
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「レイモンド・チャンドラー」の中篇、短篇のうち、1938年(昭和13年)から1939年(昭和14年)に発表された5篇を収録した作品、、、
先日読了した『チャンドラー短編全集3 待っている』と『ベイ・シティ・ブルース』と『真珠は困りもの』の2作品が重複していますが、訳者や訳された時期が違うので、異なった感覚で読めて新鮮でしたね。
■赤い風(原題:Red Wind)1938年 加賀山卓朗訳
■黄色いキング(原題:The King in Yellow)1938年 田村義進訳
■ベイ・シティー・ブルース(原題:Bay City Blues)1938年 横山啓明訳
■レイディ・イン・ザ・レイク(原題:The Lady in the Lake)1939年 小林宏明訳
■真珠は困りもの(原題:Pearls are a Nuisance)1939年 木村二郎訳
■作品解題 木村二郎
■エッセイ「ハメットとチャンドラー」 逢坂剛
『赤い風』は、自宅アパートメントの向いにある新装したバーで飲んでいた「フィリップ・マーロウ」… そのバーに女性を探すために訪れた男「ウォルド」が、カウンターで酔い潰れていた客から射殺される事件に巻き込まれる物語、、、
その後アパートメントに戻った「マーロウ」は射殺された男が探していた女… すらりとした美人で、茶色の髪、プリント地のボレロ、ビロードのリボンのついた、つばの広い麦わら帽子、青い縮緬のシルクのドレスという容姿・服装の女と出会い、射殺された男は彼女から真珠の首飾りを奪って買戻すことを要求していたことを知り、彼女を助けようとする。
彼女のために金にもならない危険を冒すところに「マーロウ」っぽさを感じますね… 「マーロウ」が、真珠の首飾りを取り戻すために同じアパートメントの階下に住んでいた「ウォルド」の部屋に忍び込んだところ別な男の絞殺死体を発見したり、バーでの目撃証人を消すために「ウォルド」を射殺した男「アル・テッシローレ」が「マーロウ」を狙ってアパートメントを訪ねてきたりと、中盤以降もハラハラドキドキの展開が続きます、、、
「マーロウ」は、首飾りを盗まれた女性が警察沙汰に巻き込まれないように守ろうとしますが、そのことが刑事にバレてしまい窮地に追い込まれます… この場面で、イタリア系刑事の「イバーラ」が機転の利いた柔軟な対応を見せ、人格低劣な白人警官「コパーニク」を渋々納得させる展開は、なかなか面白かったです。
「イバーラ」がカッコ良かったですね… イミテーションだった、真珠の首飾りを、本物の真珠に変えて持ち主に返した「マーロウ」の粋な計らいが印象的でした。
『黄色いキング』は、カールトン・ホテルの探偵(用心棒)「スティーヴ・グレイス」が、深夜に大騒ぎしていた宿泊客の著名なミュージシャン「キング・レオパーディ」をホテルから追い出してしまい、そのことが原因でホテルを首になったこがきっかけとなり、殺人事件に巻き込まれる物語、、、
「スティーヴ」は「レオパーディ」の部屋のゴミ箱に捨てられていた脅迫状を見つけ、事件性を感じて「レオパーディ」を追うが、「レオパーディ」と何らかの関係があったと思われる女性が扼殺され、やがて「レオパーディ」本人も「レオパーディ」から言い寄られていた歌手「ドロレス」の自宅で銃殺されているところを発見される… さらに、何かを知っていると思われた「ドロレス」宅のメイド「アガサ」が自身の車で死体となって発見される。
「スティーヴ」は関連性が疑われる複数の殺人事件の真相を探っていく… ヒントとなったのは、1年前にカールトン・ホテルで発生した、ある女性の自殺、、、
真相は、「レオパーディ」によって自殺に追い込まれた妹の復讐だったんですね… その事件に巻き込まれて関係者が殺されたり、疑いを持たれたりしたことから、複雑な様相をみせていたのですが、「スティーヴ」は見事に真相を明らかにします。
ちょっと哀しい結末でした。
『ベイ・シティ・ブルース』は、「オーストラリアン夫人」が自宅ガレージで一酸化炭素中毒により自殺した「オーストラリアン事件」の捜査を、第一発見者の「ハリイ・マトスン」から私立探偵「ジョニー・ダルマス」が捜査を依頼される物語、、、
再読ですが、前回読んだ作品では私立探偵が「フィリップ・マーロウ」だったので、底本のバージョンが異なるんでしょうね… 私立探偵が違うこと以外の展開は全く同じでしたけど、訳者が違うので雰囲気は異なっていたし、訳された時代の違いからか、こちらの方が読みやすかったですね。
「ダルマス」は依頼人の「マトスン」と接触しようとするが、直前に「マトスン」は殺害され、事件に関係していると思われる「マトスン」の元妻で「オーストラリアン医師」に看護師として雇われていた「ヘレン・マトスン」も殺害されてしまい「ヘレン」の殺害容疑は「ダルマス」に向けられてしまう、、、
「ダルマス」は、警官「ディ・スペイン」と協力して捜査を進め、容疑者を追い詰めて行く… 最後の最後で「ディ・スペイン」が第三の殺人に関わっており、自らの犯罪を隠ぺいするために「ダルマス」を利用しようとしたことが判明するという大どんでん返しと、ラストの「ダルマス」と「ディ・スペイン」に「オーストラリアン医師」や「アンダーズ署長」を含めた派手なアクションシーンは印象的でした。
二度目でも愉しめる作品でしたね。
『レイディ・イン・ザ・レイク』は、私立探偵「ジョニー・ダルマス」が、ドレーミー化粧品会社の支社長「ハーワード・メルトン」から、失踪した妻「ジュリア」の捜索を極秘裏に行うことを依頼される物語、、、
「ダルマス」は、「ジュリア」の足取りを追うため、不倫相手と思われていた「ランスロット・グッドウィン」の自宅を訪問するが、そこには射殺された「グッドウィン」が横たわっていた… さらに、捜索を進めるため「ジュリア」が滞在していたリトル・フォーン湖畔の別荘を訪れるが、番人役を務めている「ビル・ヘインズ」の妻「ベリル」も失踪しており、湖の桟橋の下で死体として発見される。
「ダルマス」は、別荘を出た後の「ジュリア」の足取りを追い、彼女が宿泊したサン・バーナーディノのオリンピア・ホテルへ投宿し、従業員から当時のことを聞き出し、依頼人「ハーワード・メルトン」の証言内容に矛盾があることに気付き罠を仕掛け「グッドウィン」の自宅に誘き出す… そこに現れたのは、「ハーワード・メルトン」と死んだはずの「ベリル」だった、、、
「ベリル」と「ジュリア」は髪質や体型が似ていたことから、「ジュリア」が殺され、「ベリル」の衣類を着せられて湖に沈められていたのだった… 事件の背景や、それぞれの意図が異なるため、動機や相関関係は解りにくかったですが、死体を別人に見せかける等、ハードボイルド作品では、あまり重要視されていない(感じがする)トリック等を解く愉しみがあり、面白かったですね。
『真珠は困りもの』は、「ミセズ・ペンラドック」の真珠のネックレス盗難事件の捜査を、飲んだくれの私立探偵「ウォルター・ゲイジ」が、彼の婚約者で「ペンラドック夫人」の付き添い看護婦「エレン・マッキントッシュ」から依頼される物語、、、
再読ですが… 訳者が違うので異なった雰囲気が愉しめたし、訳された時代の違いからか、こちらの方が読みやすかったですね。
「ミセズ・ペンラドック」は、夫が亡くなったあと家計を維持するために真珠のネックレスを旧知の宝石商「ミスター・ランシング・ギャレモア」に買い取ってもらっており、自分が保有していたネックレスは、その際に造ってもらった精巧な模造真珠のネックレスだった… 「ミセズ・ペンラドック」は盗まれたネックレスが模造真珠であることが発覚するのを懼れていた。
犯人と目されるのは、「ミセズ・ペンラドック」の元運転手で一昨日に辞めてしまった「ヘンリー・アイケルバーガー」… 「ゲイジ」は、「アイケルバーガー」の居場所を突き止め、真相を吐かせようとするが失敗するが、その後、二人は酒好きということで意気投合し、二人で大いに飲んで、協力して真珠のネックレスを取り戻そうとする、、、
捜査を進めるうちに、模造真珠と思われていたネックレスは、実は本物であった(宝石商「ギャレモア」が模造真珠と偽って、本物を返していた)ことが判明、そして、厚い友情が芽生えた二人に無情な結末が… でも、結果的には真珠の首飾りは取り戻せたし、二人の友情も破綻しなかった(多分)ので、ハッピーエンドだったのかな。
私立探偵「フィリップ・マーロウ」シリーズを代表とする、「レイモンド・チャンドラー」のハードボイルド作品を連続して読んでいるので、価値観や美学について、何となく肌感覚でわかるようになってきました、、、
次は私立探偵「フィリップ・マーロウ」シリーズの長篇第6作で「レイモンド・チャンドラー」の代表作『ロング・グッドバイ(長いお別れ)』を読んでみようと思います。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
とにかく酒が飲みたくなるのだが。
真珠は、展開ちと明るすぎか。 -
「赤い風」加賀山卓朗訳
「黄色いキング」田村義進訳
「ベイシティ・ブルース」横山哲明訳
「レイディ・イン・ザ・レイク」小林宏明訳
「真珠は困りもの」木村二郎訳
エッセイ「ハメットとチャンドラー」逢坂剛 -
早川書房から出ているミステリ作家チャンドラー短編全集の3冊目にあたる本で、
5本の中短編(各100ページ前後)が収録されています。
どれも簡潔な文章でありながら読ませる力を持っています。
ストーリーで引っ張るところが大きいのですが、
注意深く読むと、センテンス間の繋がり方、というか、
文章とそれが含む意味との、各文章間での飛び方のバランスだとか、
あとは会話の面白さだとかで引っ張っているところもあるなぁと
思えてきました。
チャンドラーは三冊目で、まだ長編は読んでいませんが、
どんどん面白く感じるようになってきました。
こういう昔の(20世紀半ばの)探偵小説では、個人的に苦手で嫌いな「殺し」をも
すんなり読めてしまうところがあります。
酒、タバコ、金、女、などの要素がふんだんに盛り込まれていても
男臭いがゆえの入り込みにくさ(没入しにくさ)って無いですね。
これが東野圭吾とかの推理小説にある殺しって、
陰湿というか陰惨というか、僕の場合そんな感じがして嫌悪の情が生じるんですよねぇ。
レイモンド・チャンドラーの小説の殺しって、乾いた感じなのかなぁと思います。
それでも、学生の時なんかは陰惨な『バトル・ロワイアル』っていう中学生同士が
殺し合う、バイオレンス小説を面白がって読んで、映画化されればみんなで
観に行ったりもしたんですが。
どんどんそういうのがダメになっていく中で、虚構としての、エンタテイメントとしての「殺人」を
楽しめてしまうようになってきました。
前に、アメリカの大学の映画の講義をNHKでやっていたのを観たのですが、
そこの教授が、「観客は、暴力とSEXが大好きだ!」と言っていましたね。
そういうものなんですね、人っていうものは。
それはそれとして、本書に収録されている5本の短編はどれも粒ぞろいでした。
どれを読んでも面白かったので、お薦めできますね。
最初は文体だとか世界観に慣れるのに時間がかかるかもしれませんが、
一話目の「赤い風」を読んでしまえば、あとはすらーっと読める人が多いでしょう。
チャンドラーはまだ長編を読んだことが無いので、
まず短編集を読み終えてから読もうと考えていますが、
もう本当に楽しみだったりします。 -
『真珠は困りもの』が良い。そのジョークセンスは、流石と言うしかない。
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「真珠は困りもの」は必読。チャンドラーの「コメディ」なんて初めて読んだ。
著者プロフィール
レイモンド・チャンドラーの作品
