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Amazon.co.jp ・本 (464ページ) / ISBN・EAN: 9784150704636
作品紹介・あらすじ
行方不明の兄を探してほしい。若い娘の依頼は、フィリップ・マーロウを虚飾の街ハリウッドの裏通りへ誘う。『かわいい女』新訳版
感想・レビュー・書評
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カンサスから来た田舎娘、オーファメイから失踪した兄を探してほしいと依頼された私立探偵のフィリップ・マーロウ。
マーロウは彼女の言動のちくはぐさに興味を抱き、彼女の差し出した虎の子の20ドルで特別に依頼を受ける。
ところが、事件は見かけほど単純ではなかった。
兄が住んでいたアパートを訪ねるが部屋にいたのは別人で、さらに管理人は首をアイスピックで刺されて殺されていた。
あるホテルに呼び出されたマーロウはそこでサングラスで顔を隠した女に襲撃され、彼を呼び出したチンピラの男がまたもやアイスピックで殺されていたのだ。
マーロウの行く先々に死体が転がり、事件はすべてハリウッドの映画界との繋がりが…。
金と愛欲にまみれた映画の都を舞台に孤軍奮闘するマーロウの活躍を描いた1949年発表のシリーズ第五作目。
清水俊二訳で長年親しまれた「かわいい女」を村上春樹がタイトルも新たに新訳。
いやぁ~、実に四半世紀ぶりにチャンドラー熱がぶりかえした。
それもこれも村上春樹の魅力的な新訳のおかげだ。
それにしてもチャンドラーが紡ぐ文章の味わい深さとその抗えない吸引力はほとんど麻薬のよう。
一度その魅力にハマると
次から次へと際限なくその味わいを欲してしまう。
チャンドラーの長編は冒頭の書き出しとラストの締め方が
どの作品も秀逸なのだけど、本作も然り。
なけなしの20ドルで兄を救って欲しいと
「リトル・シスター」であるオーファメイという若い女性の切実な依頼に
報酬を問題とせず引き受ける
気概あるマーロウが実にカッコいい。
(手塚治虫の「ブラックジャック」の原型はもしやフィリップ・マーロウなのかも笑)
一旦小説家を辞め、ハリウッドでシナリオ作家に転身した経験をフィードバックして書かれた本作は
以前の作品と比べ映画的なカメラ視点が効果的に取り入れられ、
映画の都、ハリウッドを舞台にしたショウ・ビジネスの裏側を硬質な文体で暴いていく。
依頼を受け、早速調査を開始するマーロウだったが、たった二日の間に
ホテルで謎の女に銃を突き付けられ、死体を発見し、
麻薬入りの煙草を吸わされ、死体にアイスピックで殺されかけ、
女優に強請られ、依頼人に罵声を浴びせられ、警察に尋問をかけられ疲労困憊する。
それにしても本作はチャンドラー自らが失敗作だと語るように
正直何度読んでもストーリーが分かりずらい(笑)
複雑に入り組むプロットに惑わされ、読み終えた今も犯人や動機の点でいまいち腑に落ちない。
原文に忠実でいて現代の日本語にスマートに翻訳することに定評のある村上春樹の腕をもってしても、そこは改善されていなかった。
普通の探偵小説やミステリーは
本筋の事件が最初から設定されていて、それを探偵役が紐解いていく構造だ。
しかしチャンドラーの小説はもともと
本筋の事件など最初から設定されていないのである。
最初にマーロウが係わり合う事件は殆どが横道の事件の連続であり、いくつかの派生的な事件に引きずられていくうちに、隠された真の事件にぶつかる。
つまり本筋がどこにあるのか、一見して分からない構造こそがチャンドラーの小説のカラーであり、
王道ミステリーに慣れた人にとっては読みにくさを感じる要因なのだと思う。
しかし、村上春樹の解説にもあるように、
だからといって本作が読むに値しない駄作だとは僕には思えない。
何度となくレビューで書いてきたように
チャンドラーの小説の魅力は
プロットよりも豊潤な文体にあり、
生き生きとした個性豊かな登場人物たちと主人公マーロウとの会話文や
シニカルなマーロウの一人語りにこそあるのだ。
本作で言えば、田舎娘オーファメイのミステリアスで掴みどころのなさが
旧タイトルである「かわいい女」に繋がったのは間違いないし、
(実際マーロウが世話を焼きたくなるほど、放ってはおけない妹的魅力を撒き散らしてるし、実は裏のある人物なのにどこかチャーミングに思えてしまう不思議な魅力を放っている)
下層階級から栄光を夢見てハリウッドを這い上がってきた
メイヴィス・ウェルドとドロレス・ゴンザレスの二人の女優たちの哀切さと
罪は罪として憎みながらも
どこかで彼女たちにシンパシーを覚え、赦す姿勢を見せるマーロウの葛藤こそが、本作の読みどころだろう。
(そう、いつもいつも金にならない仕事を引き受け、信じた女性に裏切られ続ける哀れなマーロウ…)
最後に、
本作には映画の街、ロサンジェルスの光と影が
チャンドラーの他の作品よりも色濃く感じる。
無計画な都市開発のため悪徳と荒廃が進行する新興都市ロサンジェルスを
『何でもあるが、ことごとく下らない』と、
ことあるごとに皮肉めいた口調でこき下ろしてきたマーロウだが、
その言葉の裏には必ず
慣れ親しんだロサンジェルスやカリフォルニアへの愛や未練があり、
愛憎半ばする心情が溶け込んでいるのが分かる。
『私は夜の空気の中に足を踏み出した。今のところまだ誰も、夜の空気を商品登録するところまでは至っていない。しかしおそらく多数の人間が試みているはずだ。そのうちになんらかの方策を見出すことだろう』
という何気ない描写にも
「我が街」ロサンジェルスの夜の空気だけは
誰にも変えられたくないというマーロウの複雑な心情が垣間見えて切なくなる。
ということで村上春樹のマーロウシリーズの長編、新訳版も
あと残り二冊。
次は最もミステリー色の濃い「湖中の女」かな。
ちなみに1969年に製作された映画版『かわいい女 Marlowe』では、
スティールグレーブが差し向けた殺し屋役で
まだブレイク前の若きブルース・リーがちょこっと出演していて、
事件から手を引けとマーロウの事務所を容赦なく破壊しまくる(笑)。
時間は短いもののかなりインパクトのあるシーンなので
興味のある人は小説と併せてどうぞ。
(マーロウに扮するはジェームズ・ガーナー)
★あの怪鳥音もハイキックも見応えあります!
『かわいい女 Marlowe』ブルース・リー出演シーン↓
https://www.youtube.com/watch?v=xeWwMLH654Q&feature=youtube_gdata_player -
▼マーロウもののなかでも、「とにかく美女にもてまくる」要素満載ですね。ただ、チャンドラーさんが素敵なのは、ただたんにモテるというよりは、
・好感を持たれるけれど。
・基本、利用されまくり、騙されまくり、場合によっては殺されかかる。
・なんだけど、マーロウさんはぶつぶつ言いながらも大まか受け入れていく。
・それでもって、男女のカラダのコトには実はまったくもって及びません。キスがせいぜい。というか、<会話とキス>にこそロマンがある(笑)。
▼原りょうさんを再読したいなと思ったことから、
<マーロウ全部順番に再読して、原りょうさんも順番に再読しようプロジェクト>
が、発動。道半ばです。愉しい。
オモシロかった。相変わらず。
▼あらすじ、と言うことで言うと、翻訳の村上春樹さんも言っているとおり、かなり複雑で分かりにくい。その上、よーく読んでいくと、何か所か破綻している(笑)。
なので、「どういう物語だったのか」ということの、特にミステリの謎解き説得性みたいなものは、チャンドラーの長編はほぼどうでもいいんですが(笑)。
志ん生の落語みたいなもので、多少間違おうがどうだろうが、「節回し」とか「声」とか「言い方」が愉しい。
でも一応備忘しておくと。
・田舎町から田舎臭い垢ぬけない美女が「兄がこの町で行方不明。探してくれ」と依頼。
・探しているうちに次々に死体に遭遇。どうやら組織暴力と薬物からみの事件っぽい。
・そこにハリウッドの芸能界、美人女優も絡んでくる。
~~~以下、キモのネタバレ~~~
●確か、依頼人の女性の<姉>が実は美人女優。隠しているけれど。
●依頼の<兄>は芸能界=暴力団的深みに落剝して、殺されていた。
●そもそも依頼人の<妹=リトル・シスター>も、けっこう悪者で、金のためだったし、なんならほぼ兄を見殺しというか殺しの片棒に近い感じだった。
●マーロウは複雑な真相を最後に暴いて、確か、女優のプライバシーを守り抜いた気がする。 -
普通なら一行にも満たないような何気ない一場面が、ここまで(くどい程に)表現できるのか、というくらい描かれていて、それが優雅に流れるように読めるのは、著者の力に村上春樹の翻訳の力があるからでしょうか。 内容的にすぱっとした明瞭さが無いのだけど、急がず、ゆっくり味わうミステリーとして堪能しました。女性陣も皆、我が儘なのにそこがとても魅力的です。
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マーロウ節が終始堪能でき、読み終わったあとしばらく言動がタフになりがち。
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ほのめかしと洒落た言い回しで進んでいく上にこの本はプロットが特別複雑で、読み終わっても事件の内容は全然掴めてないんだけど、チャンドラーはいつも魅力的なんだよなぁ。
途中にはオーファメイ・クエスト=実はお姉さんで、化けてるんじゃないかと疑いました(笑) -
マーロウはあんまり調子が良くない。でも人物がよく描かれておりおもしろい。最後に村上春樹訳者あとがきがありなかなかいい。
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ハリウッドを舞台にした探偵小説。訳者あとがきでも触れられているが、プロットはかなり入り組んでいて判然としない。初めに登場する不思議な依頼人が怪しいというのは、あまりに古典的だが、むしろこの作品から始まりなのだろうか。
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村上春樹もあとがきで書いていますが、誰が誰を殺したのかよくわからん。ですが、マーロウと周りの連中との減らず口のたたき合いや、独特なたとえなんかは相変わらずで、とても楽しめました。むしろそちらに集中していた感じで、チャンドラー節をみっちり味わえたまであります。
チャンドラー自身はあまり気に入っていない作品だったようですが、前に読んだ「高い窓」よりも良かったようにも思いました。最後のどんでん返しなんかは、かなりサービス精神を感じられました。
オーファメイが事務所を出ていったところで、きれいに終わっている感じがしたので、その後の展開はいらなかったかなぁ、と思う一方、最後のやり取りもなかなかに格好良かったので、それはそれでありなのかなぁとも思ったりもします。
他作品と比べてあまり評判が良くないという話でしたが、信じられないくらい個人的には良かったです。この作品を愛している村上春樹の訳だったからこそ、楽しめたのかもしれません。 -
チャンドラーの作品のなかでも、評判が悪く、自身も毛嫌いしていたという。確かに、話しが入り込んでいて、結局誰が殺したんだという事になる。
ただし、村上春樹氏が解説で書いていたが、オーファメイクエストの人物描写は見事で、魅力的で、生き生きと描かれており、フィリップ・マーローと共に輝きを放っていた。 -
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映画ビジネスという日本であまりきかない題材のせいかわかりにくいところもあった。春樹は気に入っているようだが。
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チャンドラーのほかの作品と同様。ミステリとしてはさほどではない。話が妙にこみいっているわりに、驚きの真相や、ハラハラの展開もない。本書の読み所は、そこじゃない。
疲れている。いつになく、ふてくされて、毒づいて、空虚で。そういう、疲弊したマーロウ=チャンドラーが実に味わい深い。
例えば以下のようなところ。
‘
”ふん、映画スターがなんだ。ベッドを渡り歩く達人というだけじゃないか。おい、もうよせ、マーロウ、今夜のお前はどうかしているぞ。”
(p138)
ハードボイルドだ。村上春樹や、原リョウさんへの影響を与えたのは、「長い別れ」より本書かもしれない。本書の先に、この2人の日本作家を感じた。 -
オーファメイが兄を思う気持ち、20ドル分をマーロウに託す・・例の様にもっさりと引き受けた感じで始まるドラマ。
簡単なようで、のっけからの走り出しがとてつもない。
あれよあれよという間に謎めく女やら、死体やら、ヤク入りの煙草やら。。。
何れにもアイスピックが。
原題「かわいい女」を「リトルシスター」としたハルキ氏の想いが何となく伝わった・・後書きでの解説がないとちょっとプロットの細かな点の疑問が理解し辛く、結構読了まで時間がかかった。
田舎でのパッとしない、それでいて向こうっ気の強いオーファメイ(後半で判明していく複雑なクエスト家の構成)兄オリンとオーファメイの間に存するリーラの立ち位置が見えて、何となくストンといった。
執筆は第二次大戦終結後すぐ、食うためにハリウッドでの下積みを必死に生きるメイヴィスとドロレス。
日本で言えば小股の切れ上がった姐さんに様な感じだろうけど・・やっぱりマーロウは温かい視線。
動きや気持ちが1行で済むところを、どうかするとくだくだしいまでの表現があちこちにあり、うっかりうとうとすると、読み手が置いて行かれる感じがあちこちに。
そこをハルキ氏が更なる巧みな言葉の駆使でよどみない流れに変えていく・・絶品です。
最初から最後まで何となくけだるい感触が漂うなと思ったのは他の方のレヴューにもあって納得。
いささか疲弊気味のチャンドラーに事情があったようで・・また意を決し、ハリウッドの脚本に熱い気持ちで取り組んでいったのは頷ける。20世紀真ん中、ほどなくこの世を去ることになった・・ロスを斜めに見た感じの作品だった。 -
登場人物のつながりが最後までなかなかわからなかった。
さらに、一気に読めなかったため、登場人物の名前が分からなくなり、最後の方はよくわからないまま読み終えてしまった。
一気に読むか、何回か読まないと理解できないのがチャンドラーなのだろう。
次はどうかな? -
「行方不明の兄オリンを探してほしい」私立探偵フィリップ・マーロウの事務所を訪れたオーファメイと名乗る若い娘は、二十ドルを握りしめてそう告げた。マーロウは娘のいわくありげな態度に惹かれて依頼を引き受ける。しかし、調査をはじめた彼の行く先々で、アイスピックで首のうしろをひと刺しされた死体が…。謎が謎を呼ぶ殺人事件は、やがてマーロウを欲望渦巻くハリウッドの裏通りへと誘う。『かわいい女』新訳版。
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女は怖いと思ったけど…思い違いだった。
男と女その間には埋まらない溝があるのかもしれない…
そして、それはそれでいい。 -
「誰かの夢が失われたようだね」そして身を屈め彼女の目を閉じてやった。好きだった割にはうろ覚えのチャンドラーを村上春樹版で読み直す。兄を探して欲しいという生真面目な小娘オーファメイの依頼を受け、兄の住んでいたアパートで見つけたアイスピックで首を刺された死体。そこに映画女優やギャング、裏通りの人たちが絡んでいく。チャンドラーが自作の中で最も嫌いと言明するリトルシスターは意外とファンが多い。モノクロ映画のようなゆったりとしたドキドキ感がある。フィリップマーロウの印象が他作品と少し違う。他の作品より登場人物が危険なくらい魅力的なのだ。村上春樹は女性の書き方が生き生きしてて他作と違うと言ってるがまあ、そんなところだ。
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リトル・シスター
(和書)2011年02月02日 20:38
レイモンド チャンドラー 早川書房 2010年12月
村上春樹さんの翻訳しか読んでいないけどフィリップ・マーロウ作品で今まで一番良かった。
読み易く、内容も比較的分かり易い。
登場人物の描写も魅力的で、村上作品への影響も伺えると思う。
本人が翻訳して種明かししているようにも見えて、そういう部分で誠実さも感じる。
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感想 :

お元気ですか。久しぶりにコメントしてみました。またお話ができると嬉しいです。
お元気ですか。久しぶりにコメントしてみました。またお話ができると嬉しいです。