高い窓 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

制作 : Raymond Chandler  村上 春樹 
  • 早川書房
3.86
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本棚登録 : 169
レビュー : 19
  • Amazon.co.jp ・本 (415ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150704650

作品紹介・あらすじ

探偵マーロウは頑迷な老女から義理の娘を探してほしいと依頼される。だが彼の行く手には脅迫と、そして死体が……。待望の新訳版

感想・レビュー・書評

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  • この手の文学的要素が強い小説は読み進めるのがきつい時もあると思ってるけど、今回はミステリーとしても面白かった。
    いつも通り、ハードボイルドな渋いフィリップ・マーロウも楽しめる。


    資産家の老女エリザベス・マードックから義娘リンダを探す依頼を受けたマーロウだったが、マードック家には秘密があった…

    ---

    70
    「我々が芝生を横切って近づいていくと、女は気怠そうにこちらに目を向けた。十メートル手前から見ると、とびっきりの一級品に見えた。三メートル手前から見ると、彼女は十メートル手前から眺めるべくこしらえられていることがわかった」

    155
    「いや、その通りだ。私はショックを受けていてね。頭が少しうわついているんだ。コーヒーをもらおう。ろくに味のしないやつを。それから紙のように薄いハムと、黴臭くなりかけたパンで作ったサンドイッチを。いや、食べるのもまだ無理かもな。それでは」

    397
    「その家が視界から消えていくのを見ながら、私は不思議な気持ちを抱くことになった。どう言えばいいのだろう。私を詩をひとつ書き上げ、とても出来の良い詩だったのだが、それをなくしてしまい、思い出そうとしてもまるで思い出せない時のような気持ちだった」

  • あいかわらず、最高にエンターテイメントとして面白い小説でした。他にも美点はありますが、まずそう言いたいです。主人公の魅力を十分に楽しむことができました。個人的に買って読むぞという時に、ワクワク感の伴う数少ない作家です。訳をされている村上春樹さんもそれが分かった訳し方をしていただいていると思います。
    他のチャンドラーの小説と少し違って、筋や人物背景がきちんと描かれています。それを吹き飛ばす勢いが減じているのがありますが、主人公マーロウの魅力が損なわれるわけではなく、随所でその行動に魅了されました。そして全体的に謎がすっきりと解決されています。それは人によって違うのでしょうけど、私は良かったと思います。
    探偵の仕事は、アニメなどで多数あるような、謎を一つの糸口にして明快に解決されるものではなく。この小説の主人公のように、泥臭い中で、一部の直感から導き出され、その結果は中途半端に煮え切らないものであるというものであること。それも他にない小説かなと思っています。

  • 清水俊二訳を読んで以来の再読。何年振りか。

    私立探偵フィリップ・マーロウは資産家の老女に呼び出された。行方をくらませた義理の娘リンダを探してほしいとの依頼だ。極めて貴重な金貨をリンダが持ち逃げしたと老女は固く信じているのだが…。老女の息子や秘書の振る舞いからは、なにやら裏がありそうな気配が窺える。マーロウは調査を始めるが、その行く手に待ち受けていたのは、脅迫と嘘、そして死体―二度の映画化を果たしたシリーズ中期の傑作。待望の新訳。

    とは言え、映画は二作とも観ることが困難なようです。素人から見ても「これは」という場面もありました(あとがきで指摘あり)が、全体的にはまずまずでした。

  • 私立探偵フィリップ・マーロウは傲慢な金持ちの老女・マードックから依頼を受ける。義理の娘・リンダを探してほしい。貴重な金貨をリンダが持ち去ったともいう。老女の秘書や息子の言動に不信を抱くマーロウ。調査を進めると行く手にいくつかの嘘と脅しと死体が。

    ・・というわけで、数年ぶりに村上春樹訳で再読。でも文体がチャンドラーというよりやはり村上春樹。ホントに「やれやれ」とマーロウが言うのか。いや、だからダメというわけではない(清水訳も過去に読んだけど、こちらはドライブ感があって文章のリズムがいい)。両方を読み比べるとまた違った味があっておもしろい。

    ネタバレになるので詳しく書かないが、印象深いことを二つだけ。チャンドラーの小説でいつも唸るのが、人物造形の豊かさとタイトルの命名センスである。


    例えば。マーロウが「この屋敷で頭がいかれてないのは、君くらいのものだな」と言って、マードック邸にある黒人少年像の頭をぱたぱた叩くところが好きだ(翻訳者自身もあとがきで書いている)。新米探偵フィリップスがマーロウに尾行を見破られ、「腕が良くないんだな」とため息をついて嘆くシーンなんかは、愚鈍さと純情を表しているようで可哀想に思う。ティーガー歯科技師のオフィスに忍び込むためビルのエレベーター案内の老人との会話も面白い。老人が目線でパス・キーの在り処をマーロウに示し「さてと、用を足してくるか」と言って立ち去るシーンなどは思わずニヤリとする。モーニーの高級ナイトクラブで大物映画監督に罵倒されたバーデンダーがマーロウに絡むシーンも映像のように目に浮かぶ。
    こういう脇役たちの人物造形の上手さと機微はチャンドラー小説の特徴だし魅力のひとつだろう。

    で、これが一番思うことだが、チャンドラーほどタイトルのつけ方が上手い作家はいない(自分で付けてたらの話だけど)。
    名作「長いお別れ」や「さよなら、愛しい人」は言うに及ばず、どの作品もタイトルの命名が秀逸だと思う。物語の本質を一言で表してそれをタイトルにする。読者が読み終えた後、表紙を見て「お!そういうことか」と膝を打たせる。このコピーセンスは見事だ。

    今作もそういうこと。つまり「高い窓」なのだ。そう。高い窓がある家の住人はろくな者じゃない。

  • 今回はアクションがなかったが、それはそれで落ち着いて緊張感のあるマーロウ作品だった。事件の真相も今まで読んだ作品の中で一番整理されていたように思う。そして相変わらず、ハードボイルドな言葉がかっこいい。

  • 村上春樹さんによるマーロウの新訳も5冊目。いつもボコボコにされる印象のあるマーロウですが、本作ではアクションなし、半熟気味のハードボイルドです。狷介な未亡人の依頼を受けるが、行く先々で死体を見つけ、ギャングにもポリスにも目を付けられ、退っ引きならない状況に追い込まれるマーロウ。一連の事件の真相や如何に。マーロウは私立探偵であって警官ではない、法が正義ではなく、時には人のため、悪をも是認する清濁合わせ持つ人間くささがある。

  • 村上春樹によるレイモンド・チャンドラー翻訳シリーズの第5弾。過去4作品も全て読んでいるが、やはり私立探偵フィリップ・マーロウのシニカルな語りと緊張感溢れる推理の構築の仕方は面白いし、村上春樹自身がチャンドラーから強い影響を受けていることもあり、翻訳された文章のリズムの綺麗さは言うまでもない。

    本作はマーロウシリーズの中では確かにミステリーとしてのプロットの正確さが強く意識されており、「高い窓」というタイトルが意味するところが次第に見えてくる様子にはワクワクさせられる。

    あとがきによると、チャンドラーの長編で村上春樹が未翻訳のものはあと2本残っているという。残り2本についても楽しみに待ちたい。

  • 村上春樹訳。表紙は2014年の単行本のデザインの方が良かったな~。

  • 2019.10.19〜

  • 資産家で飲んだくれの老女にマーロウが呼び出されるところから物語ははじまる。老女は行方をくらませた義理の娘リンダが貴重な金貨を持ち逃げしたと信じ、マーロウにリンダを捜索を依頼する。マーロウは老女の家族に振り回されつつも、相変わらずタフに動く。すんなりと読めた。もう少し勢いがあってもよかったかな…

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