水底【みなそこ】の女 (ハヤカワ・ミステリ文庫 フィリップ・マーロウ)

  • 早川書房 (2020年1月9日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (448ページ) / ISBN・EAN: 9784150704674

作品紹介・あらすじ

私立探偵フィリップ・マーロウは、香水会社の社長から行方知れずの妻の安否を確認してほしいと頼まれるが……。旧題『湖中の女』

みんなの感想まとめ

複雑な人間関係と欲望が絡み合うミステリーが展開され、読者を引き込む作品です。私立探偵フィリップ・マーロウは、失踪した大富豪の妻の行方を追う中で、湖で発見された無惨な遺体や、絡み合う過去の事件に直面しま...

感想・レビュー・書評

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  • 依頼を受けて訪れた湖で、ブロンド女性の無惨な溺死体! タイトル通りのオープニングです。そして、姿を消しているブロンド女性が二人。調査するうち妨害を受けるのはよくあるフィリップ・マーロウですが、今回はなんと無実の罪で逮捕? 込み入った事件を動かしていた、犯人の欲望と末路に悪寒がします。

  • ▼フィリップ・マーロウ第4作。まさに太平洋戦争真っ最中に書かれたようです。とはいえアメリカは体力があったので、そんなに日本の戦時下ものみたいなことはなくて、余裕を感じます。

    ▼「警察の仕事は山ほど問題がある。
    政治と似ている。
    それは最良の人間を要請しているのだが、
    そこには最良の人間を惹きつけるものは
    皆無だ。
    だから我々としては
    手に入る人材でやっていくしかない。
    そしてこのような結果が
    もたらされることになる」。

     ・・・名文句。

     <警察の仕事>を、ほかのなんの仕事に置き換えても、使えます。

    ▼大富豪の奔放な妻が行方不明に。マーロウが雇われて調査開始。夫人が滞在した湖の畔の別荘。その別荘の管理人的な夫婦の、妻の遺体が湖底から発見される。さらに夫人の浮気相手のひとりだった男も殺される。さらに過去の、
    <セレブの間で麻薬を処方してた悪徳医師の妻の自殺に見せかけた殺人事件>
    も絡んでくる。マーロウも襲われる。
    正直に言うと錯綜してわかりづらい。
    わかりづらいけど一向に構わないで読めます(笑)。そういうことのための小説ではないのです。

    ▼ネタバレすると








    悪い女がいて、

    ショービジネスとかでのし上がった。

    悪徳医師の看護師もやっていた。

    その医師の妻を殺した。

    そのあたりのことを、大富豪夫人の浮気相手に知られた。

    それからその悪い女は生き延びるために刑事の妻になった。

    なんだけどやがて捨てて逃げた。

    湖畔の別荘管理人の妻になった。

    そこで再開した大富豪夫人を殺して、自分にみせかけて湖に沈めた。

    さらに自分のことを知っている、浮気相手の男も殺した。

    自分が殺した金持ち夫人になりすまして大金を握って逃げようとした。

    だが結局元夫の刑事がその女を殺した。

    みたいな流れなんですが、結構細部が「???」だったりします(笑)。

  • 村上春樹の翻訳順ではなく、シリーズの時系列順で読んでいる。ここに来て、ミステリ色が強くなった。今までで一番、謎解き要素があった。
    なんというか…女に翻弄される男たちの話なのかな、と思った。水底の女だけでなく、今までの話も。

    犯人の肩を持つとか、そういうことじゃないんだけど、女に騙されていたとか利用された(多分だけど、大方そういう表現でいいと思う)男が、行き場のない気持ちを抱えて、遂に、みたいな。でも、それって仕方のないことなんだろうな。好きで好きで愛していても、とうとう我慢が出来なくなってとかって、可愛さ余って憎さ100倍とか言うし、例え一時でも、そこまで誰かを愛することが出来るのは、ちょっと羨ましいな。罪を犯したくはないけど。

    今まで読んだ中では、後味は一番悪かったかも知れないな。

  • レイモンド・チャンドラー屈指の作品だと思います。
    『長いお別れ』『大いなる眠り』などの作品の影に隠れていますが…。
    ストーリー、魅力あるキャラなどは『長いお別れ』に匹敵すると思います。
    70年近く前に書かれたミステリとは思えぬ完成度、表現力、文体です。

    罪を重ねる美しい女、愛しい女にこれ以上罪を犯させないようにしたかった男はついに…。

  • 亡伯母からもらった本。他の作品も読もう。村上春樹訳、読みやすかった。

  • レイモンド•チャンドラーを村上春樹は全7作品訳しているが、これは最後の一冊らしい。
    フィリップ・マーローは、会社経営者に、男と駆け落ちした妻の安否確認を依頼される。
    マーローが行方を調査していると、湖の町の湖底から別の女性の遺体を発見する事になる。
    マーローは、町の有力者と警官との癒着など、町の暗黒部分に直面しながらも、クールに見つめて、解決に導いていく。

  • 読むのにかなり時間がかかってしまった。面白くないわけではないのだが、どうも先に花しっを進めていくエネルギーが弱い感じがした。次々の新しい展開が開けてくる感じは悪くないのだが、何事にも感情移入がしづらく、そういう意味では淡々と事件を追いかけている感じは悪くないのだが、ちょっと淡々としすぎている気がする。
    前半は特に登場人物や風景が魅力的で、そのあたりはとても気持ちよく読めた。ただ、小説のメインプロットがありふれたもので、落ちが何となく読めてしまうし、そんなプロットをさも意外なように扱っている謎解き部分が、なんだか一番しらけて感じた。ただそんな中にも魅力的な登場人物は顕在で、犯人が正体を現してからの展開はなかなか良い感じだった。
    今まで読んだマーロウものの中では、一番心に触れるものが少なかった。残念。ついでに言うと、どうもタイトルになじめない。

  • チャンドラー3冊目。
    どんでん返しに次ぐどんでん返しでハラハラドキドキさせられ、特にキーとなる登場人物の一人が全然関係ないと思われた事件とつながった場面では、本当に声をあげそうになった。
    結末はちょっと強引なような感じがしたが、まあ納得のいく終わり方だった。
    訳者あとがきに書かれていたが、この本はチャンドラーの7作の長編の最後の一冊ということだ。
    あと4冊、楽しみに読んでいこうと思う。

  • ちょっといつもとテンポが違うなぁ~とは思ったが、最後に名探偵の推理にカタルシスを得るという本格ミステリーっぽくなっててそれはそれで良かった。

  • 水底の女(みなそこのおんな)

    著者:レイモンド・チャンドラー
    訳者:村上春樹
    発行:2020年1月15日(単行本は2017.12)
    ハヤカワ・ミステリー文庫

    「湖中の女」(清水俊二訳)の邦題で知られてきた本作は、フィリップ・マーロウシリーズ第4作。読んでいるかなと思ったけど、記憶にない。初めて読んだ。そして、マーロウシリーズの中でも知名度がイマイチにもかかわらず、傑作であることが分かった。おそらく、推理小説のプロットとしては、シリーズ最高傑作だと思われる。最後の真相を明かすところでは、思わず「おうっ!」と声を上げてしまったほどだった。チャンドラーの作品は、あまりその面ではこったものはないだけに(チャンドラー作品の魅力はもっと違うところにある)、本当に驚いたし、もっともっと日本でも読まれて欲しい作品だとも思った。

    さて、村上春樹訳で読み直すフィリップ・マーロウ、全7作品中5作を読み終えた。あとの「長いお別れ」と「可愛い女」は昔読んだ清水俊二訳版が残っている。だからこれを読み返す手もあるが、ここまで来たら村上春樹訳版残り2冊も購入し、読み直してみようかと思っている。ストーリーを忘れたお陰で、あと2冊、楽しめる。

    (設定)
    化粧品会社経営のキングズリーから、1月ほど前から行方不明になっている妻を探して欲しいとの依頼。彼女はキングズリーが仲間と持っている土地に建つ人造湖畔のキャビンにこもっていたが、そこからもいなくなった。夫婦関係は冷めているので返ってこなくてもいいが、彼女が問題を犯すのが心配だった。なにかあると経営者としてのキングズリーの地位が危うくなるから。
    マーロウはさっそくキャビンに出かけ、管理人を訪ねる。すると、湖から死体が浮かび上がってきた。管理人の妻だった。彼女もまた、キングズリーの妻と同様に1か月前から消えていた。書き置きがあったので、自殺かもしれない。ところが、警察は管理人による他殺だと睨んで彼を逮捕した。
    キングズリーの妻の愛人を訪ねるマーロウ。しかし、2度目の訪問で彼は殺されていた。キングズリーの妻がやったことが濃厚になった(本人も自分がしたとマーロウに自白した)。
    そのまま終わるかと思いきや、大どんでん返しで、どちらも真犯人がいた。しかも、同じ女が殺していたのだった。

    **(個人用メモ、ストーリーバレバレ注意)***

    ドレイス・キングズリー(ジラレイン社経営)
    クリスタル(・グレイル)(その妻)
    クリス・レイヴァリー(クリスタルの愛人)
    エイドリアン・フロムセット(キングズリーの秘書)

    ビル・チェス(キングズリーの地所の管理人)
    ミュリエル(ビルの妻)

    アルバート・S・アルモア(医師)
    フローレンス(その妻)
    デガルモ(警部補)

    キングズリーは妻が1月ほど行方不明。人造湖リトル・フォーン湖のほとりに3人で地所を所有し、キャビンを所有、妻はそこに滞在していた。6月14日にはエルパソから電報で、離婚する、そしてクリスと結婚すると言ってきた。夫婦間は冷めているが、キングズリーは地位がある人なので妻がスキャンダルを起こすことだけ気にしていた。
    依頼を受けたマーロウは、まずクリスを訪ねる。彼女には会っていないしエルパソにも行っていないという。5月の第3週には行ったが。

    クリスの家向かいに医師のアルモアが住んでいたが、彼はマーロウの車を気にして警察を呼び、追っ払った。キングズリーに聞くと、彼はクリスタルの主治医で奥さんが自殺していることが分かった。

    キャビンへ。管理人のビルは1月前の6月12日に自分の妻が出て行ったことを告白。実はビルはクリスタル(ミセス・キングズリー)と火遊びをしていた。そして、同じ日にクリスタルも行方不明に。
    2人が湖畔を歩いていると、水底から女の死体が浮かんできた。ビルの妻、ミュリエルだった。自殺の線もあったがビルは逮捕された。

    失踪したクリスタルが車を残したホテルに行くと、6月12日に彼女に似た女性とクリスが来ているとボーイが証言した。

    クリスの部屋に再び行くと、彼はおらず、家主の女性がいた。階段のところで銃を見つけたという。弾は空ですべて発射済み、ただし半時間以上前。クリスが浴室で撃たれて死んでいた。クリスタルの服装に似ている服も残っていた。彼女が殺したのか?

    マーロウはキングズリーの秘書、フロムセットと話す。彼女は、医師アルモアやミセス・アルモアとクリスの家で会ったことがある、と認めた。アルモアは麻薬の注射を配っているとその場で噂され、それから少ししてミセス・アルモアは自宅駐車場で自殺したことがわかった。そして、彼女も以前にクリスとできていたことを認めた。

    マーロウがクリスの死を警察に通報すると、来た警察官のうちの一人はアルモアが呼んでマーロウに警告をした警部補デガルモだった。

    ミセス・アルモア(フローレンス)の両親を訪ねると、こう読んでいた。アルモアは麻薬医師で、中毒患者をぎりぎり薬漬けにしている悪だった。アルモアは看護婦と出来ていて、それを知った奔放なミセス・アルモアが脅していたのでアルモアにモルヒネを打たれて殺された。アルモアと出来ていた看護婦の名前は「ミルドレッド・ハヴィランド」。ビルの妻、ミュリエルの以前の名前であり、デガルモの別れた妻でもあった。

    キングズリーから連絡、妻から連絡があったとのこと。彼女は町(ベイ・シティ)から出る必要がありお金がいる、必要額より少ないが500ドル届けて欲しいとのこと。約束のピーコックラウンジで500ドル渡す。その後、彼女が滞在するアパートへ。マーロウが問い詰めると、エルパソまで行ったが嫌になって結婚は中止したと言った。マーロウは、クリスの家主のふりをしていたのは彼女であることを見抜いた。殺したのも彼女だ。問い詰めると彼女は銃を向けた。マーロウが払い落とすと大男が現れてマーロウは気絶。

    気が付くと女は裸で殺されていた。警察と思われる者が来たので窓から脱出して隣の部屋へ。シャツを着替え、窓から辿られる前に廊下に。警察官に声をかけられて隣人のふりをするが、もう一人出てきたのがデガルモで拘束される。デガルモはマーロウが犯人ではないことをもう一人に言った。しかし、非合法にマーロウに尋問をしようとしたのでもう一人は遠ざかっていった。マーロウはデガルモにことの詳細を話し、犯人はキングズリーであるかのように仕掛けた。そして、キングズリーがキャビンに逃げていることを確認すると、キャビンへ向かった。

    (真相)
    1.フローレンス(アルモアの妻)自殺か他殺か?
    彼女が賭博場で騒いだ時にアルモアが注射した量は適切だった。彼女は看護婦ミルドレッド・ハヴィランド(ミュリエル)によりベッドに運ばれたが、アルモアが打った注射とまったく同じところにさらに薬を打つことに成功し、それは致死量に達するものだった。なお、彼女はアルモアと出来ていて、それはフローレンスも知っていた。
    アルモアはまずいと思い、しかし、看護婦が追加で打ったなどと証明も出来ないために駐車場に運んで自殺に見せかけた。ミルドレッドの亭主だったデガルモは自殺で処理し、彼女を逃した。
    ミルドレッドはミュリエルとしてビルの妻になったが嫌気がさしたので、金をアルモアに要求してきた。名前はあくまでミルドレッド・ハヴィランドのままで。金を送れと言ってきた。アルモアはデガルモを送り込んで調べさせたが手がかりなし。しかし、彼女自身が書いたのだろうと思いついた。→ミュリエル殺しが疑われる立場。
    2.水底の女は自殺か他殺か
    鑑識の結果、溺死と判明し、自殺が濃厚になってきた。しかし、マーロウは他殺と断じた。実は、死んでいたのはミュリエルではなくクリスタルだった。ミュリエルは自分が邪魔なものは容赦なく消すタイプの人間でクリスタルもその対象。そして、彼女が持つ宝石やお金も魅力。看護婦だから水死させることぐらい簡単。殺して沈めた。1か月も水に浸かっていたため、遺体の状況が悪く、背格好が近かった2人は入れ替わることに成功した。ミュリエルは田舎生活に飽き飽きしていたので彼女を殺害し、金をゲットして脱出を図ったのである。
    3. クリスを殺したのは誰か?
    前述の通り、彼の家の家主になりすました女。ただし、それはクリスタルではなく、ミュリエルだった。マーロウが動きだし、バレるのが恐くて口封じに彼を殺した。
    4.クリスタルになりすましたミュリエルを殺したのは誰か?
    デガルモが殺した。誰でも殺していくミュリエルを愛しながらも、警官としてそれを許すのに耐えられなくなった。

    謎解きをした後、デガルモは拘束を拒否して逃げていった。しかし、ダム湖のところにいる軍の人間に阻止されそうになり、下に落ちて死んだ。マーロウはわざとキングズリーが犯人だと臭わせてわざわざキャビンまでデガルモを連れてきた。それは、ここなら結局逃げられないからと踏んでいたからだった。

  • フィリップ・マーロウシリーズの村上春樹翻訳もこれで最後。(マーロウシリーズ7冊の長編のうち4作目だが、村上春樹が翻訳した順番で言えば最後)

    マーロウは、実業家ドレイス・キングズリーに失踪した妻クリスタルの捜索を依頼され、キングズリーの別荘を訪れる。そこで雇われている使用人ビルの妻ミュリエルの死体が湖の底で見つかった…というところから始まる。
    が、出てくる死体はこれ一つじゃないし、「実は悪人でした」という奴らがぽこぽこ出てきて、なかなか飽きない展開だった。あと、この死体は実は医者の奥さん(つまり別人)で、自称アパートの家主は実はクリスタルで、自称ロス警官デソトは実はデガルモで、クリスタルを殺した犯人もデガルモで、系も多い。
    個人的には、他の作品と比べると、「ハードボイルド文学」というより、探偵ものミステリー小説という感が強めかなと。そもそも純文学を少々背伸びしながら読んでる身としては、謎解き要素やサスペンス要素が多いので読みやすかった。
    (一方で、村上春樹は解説にて、チャンドラーらしくないということも書いてる。かつ、ミストリーとしてのプロットにも論理的な破綻があると)


    (memo)

    296 - 「警察の仕事には山ほど問題がある。政治と似ている。それは最良の人間を要請しているのだが、そこには最良の人間を惹きつけるものは皆無だ。だから我々は手に入る人材でやっていくしかない。そしてこのような結果がもたらされる」(ウェバー警部)

    336 - 「こういうシーンはどうしても好きになれなくてね」と私は言った。「探偵が殺人者と向かい合う。殺人者は拳銃を持ち出し、それを探偵に向ける。そして探偵に悲しい話をそっくり聞かせる。話の最後には相手を撃ち殺すつもりで。そのようにして貴重な時間が浪費される。たとえ最後には殺人者が探偵を撃つことになるとしてもだ。ただ実際には殺人者が探偵を撃ち殺すことはない。それを妨げる何かが必ず起こるんだ。神様たちだってこういうシーンはあまり好きじゃないからね。だから彼らはいつだって邪魔を入れることになる」

    345 - 彼らはドアを蹴破ったりはしない。そんなことをしたら、足を痛めてしまうからだ。警官たちは足に対して気を配る。彼らが気を配る相手はせいぜい足くらいのものだが。

    365 - もし殺人者たちが、罪を免れて逃げ切れると思わなければ、人を殺す人間なんてほとんどいなくなってしまうはずだ

  • レイモンド・チャンドラー新訳シリーズ、最終作。もうマーロウに出会えないのかと思うとやはり寂しい気持ちが...。後書きを読み終え、感慨深い気持ちになっている。

    行く先々で様々なことに巻き込まれるマーロウ。「1日1殺人」は言い得て妙だなと思い、少し笑った。しかしそれも私立探偵が欲している答えの一部であり、呼び寄せるんだろうな、と。

    今回の作品は少しハードボイルド感に欠ける気もするが、普通に面白かった。真ん中あたりから抱えていた違和感が最後にスカッとした。私立探偵/フィリップ・マーロウに魅了されてよかったと心から思う。そして村上さん、ありがとうございました。

    (それにしてもやはり寂しい...ロング・グッドバイ、読み直そうっと...)

  • 2020/07/19

  • レイモンド・チャンドラー長編の村上春樹訳としては最終となります。名残惜しいというか、余韻に浸るように読んでいきました。他のチャンドラー長編とは大分違った印象のある本作。少し期待を裏切られながらも、本作には光る魅力もありという内容でした。その場その場に読者を引っ張り込む、魅力的な文章の力は、他作品よりは弱いところがあり、そのある意味筋を無視したエンターテイメント性が影を潜めています。筋をしっかりと持った、一般的な推理小説に近いものにしているのですが、著者にとっては慣れないことをしてしまったのか、最後は矛盾を呈するようになってしまっているのを感じます。やはりチャンドラー小説は、読者が状況を呑み込めないまま流れに翻弄され、その翻弄を楽しむようなところがあると思います。ここが失われてしまっているのが残念だと感じます。チャンドラー小説の登場人物の魅力は活きていて、それだけで他の作家とは違う地位に挙げることができる位なのですが。

  • 村上春樹が最後に翻訳したフィリップ・マーロウのシリーズ。今回の作品のマーロウは中年で、これまで以上にクールに動いている印象。行方不明の妻の捜索を頼まれたマーロウは、調査を進めていくうちに、水底に沈んだ女の死体を見つけることになる、行方不明の依頼主の妻とどう関係があるのか探っていくという内容。すべての人間、行動、話について保留の態度を持つ、というのは大切にしたい。

  • 四作目にしてミステリー要素を全面に押し出してきたものの、前作「高い窓」以上の偶発性と力業に頼ったプロットは流石に粗目立ちする。今作の登場人物ではパットンのキャラクターがとりわけ魅力的だが、私は依頼人キングズリーの人間味が妙に愛おしく思えた。物語の舞台となる湖畔の情景描写も秀逸だが、如何にもミステリーの謎解きですよと言わんばかりの終盤の展開はやり過ぎで、物語が一気に通俗的な方向性に転じてしまった。独自の哀愁をバッサリ切り捨てた締め括り方もやや唐突。ミステリーという枠組みにまんまと絡め取られた印象が残る作品。

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著者プロフィール

Raymond Chandler
1888年シカゴ生まれの小説家・脚本家。
12歳で英国に渡り帰化。24歳で米国に戻る。作品は多彩なスラングが特徴の一つであるが、彼自身はアメリカン・イングリッシュを外国語のように学んだ、スラングなどを作品に使う場合慎重に吟味なければならなかった、と語っている。なお、米国籍に戻ったのは本作『ザ・ロング・グッドバイ』を発表した後のこと。
1933年にパルプ・マガジン『ブラック・マスク』に「脅迫者は撃たない」を寄稿して作家デビュー。1939年には長編『大いなる眠り』を発表し、私立探偵フィリップ・マーロウを生み出す。翌年には『さらば愛しき女よ』、1942年に『高い窓』、1943年に『湖中の女』、1949年に『かわいい女』、そして、1953年に『ザ・ロング・グッドバイ』を発表する。1958 年刊行の『プレイバック』を含め、長編は全て日本で翻訳されている。1959年、死去。

「2026年 『ザ・リトル・シスター』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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