さむけ (ハヤカワ文庫)

  • 早川書房 (1976年9月19日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (480ページ) / ISBN・EAN: 9784150705046

感想・レビュー・書評

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  • これも米澤さんの本から。私立探偵アーチャーが新婚旅行中の新妻失踪の捜査から過去の事件を調べ直す。ちょっと都合良すぎだが一気読み。アーチャーが思ってたより無味無臭的で、ハードボイルドの主人公は癖強いだろうという印象が払拭。

  • 『米澤屋書店』にて、クロフツの『樽』と対照的だと挙げられていた作品です。
    ダシール・ハメット、レイモンド・チャンドラーに次ぐハードボイルド御三家の一人だそうですが、いずれも未読なため、「これがハードボイルドか!」と新鮮に楽しめました。

    最初はささいな事件かと思われたが、しだいに十年前、戦前の事件へと広がっていく――。それはさすがに関係ないんじゃないかと思って読んでいたのですが、地道にコツコツと追いかけるリュウの執念がすごい。アメリカの地理に疎いのでアレですが、移動距離と体力もすごい。

    読んでいて思い浮かんだのは、宮部みゆきさんの『火車』でした。
    丹念に事件を洗い、周辺人物の話を聞くことでしだいに全容が見えてくる。決して派手さはないのに気付くと始まりの地点からずいぶん遠くまで来ている、そんな地味さが好みでとっくりと読みふけりました。
    ちょっとピンとこない『さむけ』というタイトルも、終盤になると冴え冴えと響きます。その嫉妬深さはもちろんのこと、およそ健全とはいえない生活を長年続けていたロイも相当に恐ろしい……。

    探偵仲間であるアーニー達とのやりとりは暖かく、もっと他の作品も読んでみたくなりました。というかペリン夫人の事件とは一体??気になります。

  • ロサンゼルスの探偵リュウ・アーチャー。新婚旅行第1日目で妻ドリーが失踪したと新夫キンケイドはアーチャーに捜査を依頼。宿を訪ねた男がいるという聞き込みで、それが実はドリーの父で妻殺しの罪で服役して出所したばかりなのだという。ほどなく妻の居所はつかめたが、妻は大学に入学していてその主任教授ヘレンが殺された。

    ある人物を起点に殺人が殺人を、人が人を結び付けていた。それを捜査するアーチャーの地道な捜査ぶり。丁寧すぎる描写かと思う所もあったが、どうつながっているのか?という興味がだんだん増してくる作品だった。最後の終わり方がどうかねー。悪者は捕まったけど、あまりに時間がかかりすぎた。周りにずっと不幸をまき散らしていたさもしい事件。

    引用がおもしろかった。
    文章のなかに引用があって、( )の中に由来は書いてあるのだが、わかっていれば、おおなるほど、わからなければ初めて知りましたわい、となった。
     「誰か探していらっしゃるの?」
     「いや待っているだけです。」
     「レフティを? それともゴドーを?」・・ゴドーはわかったのでにんまり。レフティはクリフォード・オデンツの「レフティを待ちながら」1935ということです。

    また、「サリーの前夫は、ドラキュラとユライア・ヒープ(ディケンズの「デヴィッド・コパフィールド」に出てくる人物)をつきまぜた人物」などと出て来て、おっ、あの70年代のロック・グループ、ユーライア・ヒープ、ってここからきてたのかと、ぽん、と膝をうったのだった。

    地道に捜査を続ける探偵アーチャー。事件は20年前の有力者の死、ドリーの母の死、教授ヘレンの死が実はつながっていた。この犯人が最後の最後でアーチャーが謎解きするのだが、最後までわからなかった。おっとそうだったのか。1963年の発表、生活費のための遺産や資産にこだわって、その所有者におもねる生活する人、を登場させている。それに対し、そんなうるさい親の元は出て自力で自由にやったらいいじゃないか、と発言する友人も登場させている。


    1963発表
    1976.9.30発行 図書館

  • 雰囲気がいい。主役である探偵の心情は描写せず、洒脱な会話と場の空気感をたっぷり演出しながら話が進んでいくその様はまさにハードボイルド。終盤で明らかとなる犯人と、犯人が行ってきた所業、その理由は、いくら何でもそこまで……という気がしなくもないけど、ミスリーディングの使い方としては気が利いていてハッとさせられた。刊行当時の衝撃は相当なものであっただろう。なるほど確かにタイトルはこれがしっくりくる。

  •  探偵リュウ・アーチャーの元に新たに舞い込んだ依頼は新妻の失踪事件というものだった。ほどなく居所は分かるが、彼女が殺人事件に巻き込まれてしまい…

     探偵の失踪人探しという出だしに、事件に対し過剰な感傷を挟まない文章、時々挟まれる小気味いいアーチャーと登場人物たちの会話など、「チャンドラーの後を継ぐ」と呼ばれている作家の作品だけあって確かにハードボイルドらしい雰囲気が楽しめる小説だと思います。

     過去の事件を追っていくことに話の軸が移っていき、それに伴い証言を集めることが中心になっていくので、少しその過程が退屈だったことや、
    行方不明となった新妻の話がちょっと中途半端に感じてしまったのが残念でしたが、
    ラストに明らかになるある人物の狂気にはタイトル通り確かに”さむけ”がしました。

     最後の最後までなかなか事件の全容が明らかにならず、「もうページ数もないのに決着を着けられるのか」と勝手に心配しながら読んでいたのですが、その不安は杞憂でした(笑)
    少ないページ数ながらしっかりと人の狂気とそれを向けられた人物や事件の皮肉さを、最後の数ページでしっかりと書き上げているのが非常に印象的でした。

  • 好きな作家さんのおすすめで読んでみたがいまいち。
    好きが全部一致する訳はないからこれはこれで良し。

    関係性が複雑でピンとこないし、登場人物が置いてきぼりな感じ。出てきたはいいがどうなったんだろう…

    いつか再読したい。

  • 「わたしのなつかしい一冊」で紹介されていたもの。
    紹介者は忘れたけど、後味は悪いけど・・・と書かれていたし、題名もなるほどそうかなぁと思いつつも、少し古典のミステリーが読みたくなった。

    結果、正解!読み応え十分。
    携帯電話がないだけで、古い時代でも違和感なし。
    これを機会に探偵リュウ・アーチャーのシリーズを紐解いてみたい。

  • 毎日新聞の「今週の本棚」で津村記久子が取り上げていた(2020年10月17日)のを読んで,全く予備知識なしに買ってみた.
    本当に何も知らなかったんだけど,ハードボイルドの古典的名作とされているんですね.
    20年の時を隔てて起こる3つの殺人事件を,私立探偵が一つに繋げる.足を使って集めた情報のすべてが伏線となって,次々と回収されていくのは気持ちがいいのだが,ちょっとご都合主義過ぎるかも.

  • 失踪した新妻探しの依頼を受けただけなのに、こんな複雑な事件に繋がるとは予想外だった。
    過去の事件、怪しすぎる登場人物たち、二転三転するストーリー。
    見事に振り回された。
    そしてラスト5ページの衝撃。
    真相に気づいた瞬間、鳥肌が立った。
    タイトルがあまりにも的確で思わず身震いした。

  • 初めてリュウ・アーチャーの出てくる作品を読みました。まだ一作だけだからかもしれないけど、フィリップ・マーロウの方がワイルドで好きだなぁ。


    テンポよく話が進んで、面白い。最後に色々つながってきて、犯人が誰だかわかったあと、また読み返したいと思った作品でした。

    なかなかすごい設定になっていた!

  • ラストわりとさむけした

  • 「おっさんになるまでハードボイルドなんて読むものか」と思っていたのですが,おっさんになったので最近は少しずつ読むことにしています.読んで驚いたのですが,この本は本格ミステリィです.容疑者は二転三転し,最後にはとても重たい真相が待っています.ぜひとも最後まで読んでほしい作品です.

  • この頃、ハードボイルド付いている、わたくし。
    (ただ、ひたすら、読んでいる、だけ!)

    さて、今回のロス・マクドナルド著「さむけ」は
    いつものミステリ指南本では、第24位。

    作者はハメット、チャンドラーと並び、
    「ハードボイルド御三家」と称されている、とのこと。
    日本のファンの間ではロス・マクと呼ばれているようだ。
    (日本では略されたら愛されている証よ)

    ある事件の証人として出廷していた主人公リュウ・アーチャーは、
    傍聴席にいた見知らぬ青年に呼び止められる。

    結婚式を挙げたすぐあと、新婚旅行先で姿を消した妻ドリーを
    探してほしいという依頼だが…

    引き受けたアーチャーは無事ドリーを見つけるが
    ドリーは夫のもとへ帰る気はないと言い張り…

    十年前の殺人事件、それにまつわる人々の過去…
    親子の確執や、因縁や、秘密や…
    重要人物密度が高いので、息苦しい。

    色んなものがこんがらがっていっぺんにやってくるけれど、
    じーっと静かにしていると、ちょっとずつちょっとずつ、
    繋がってくる。

    そしてパズルの重要なピースが遠くからポーンと飛んできて
    クルクルと回ってピタッとはまる瞬間がある。

    そして、意外な終盤に表題のとおりとなり、
    ラストのセリフで唸って、終わる。

    読み終わって、「あ、あぁそうか。」
    「あ!そういう事か!」
    と色々後から気付いて、ギャッとなること必至。

    また「そう想定されるのに、どうして?」と言う部分はあるけれど、
    それが人間の心理の不思議さなの!と言われれば、
    今回は「そうなんですね」とあっさり引き下がる私だよ。

    ところで、図書館で借りてきたこの本、裏表紙の粗筋が
    一部間違っているんだけれど、それがもう8刷となっているんだけど、
    誰も気付かないのかしらん?

    「数日後」じゃなくって、「その日」だよ!

    この本は今から25年以上前の発売だから、
    もういい加減、直してくださったかしら?

  • いやー、ハード・ボイルド謎解き、面白かったです。
    1976-09-30発行と昔で、個人情報ゆるゆるだなと…

  • ロス・マクドナルドの傑作。内容を忘れた頃に読むやうにしてこれで3度目くらいだが、何度読んでも素晴らしい。過去に起きた事件と現在の事件が二重螺旋を描くように展開して、最後の方になるまで結末が見当もつかない。そしてラスト、犯人の人となりを一言で表現した最後の1行の何とも言えない味わい深さがこの作品を傑作たらしめている。生意気ながら、よくできていると言わざるを得ない。

  • ハードボイルド御三家、ロス・マクドナルドの名著。
    10年近く前に読んだ本を読み直してみました。
    チャンドラーに比べたら、キャラクターの魅力も低く、気の利いた会話もないのですが、不思議と読み進めてしまう。
    ジャンル的には、ハードボイルドといった感もなく、どちらかと言えばサスペンス的な味わいがあります。
    特にラスト100ページの展開力は圧倒的です。
    それにしてもどうして男女の愛はこう人を哀しくさせるのでしょうね。

  • 次々に出てくるカタカナの名前に混乱しつつ、登場人物一覧と睨めっこしながらなんとか整理してたどり着いた最終章の衝撃と言ったら!この物語に、多くを語りすぎない『さむけ』というタイトルをつけたのも素晴らしい。まさにその通り。衝撃の鳥肌であり、「さむけ」による鳥肌でもあった。色んな事実がテンポ良く提示されるので五里霧中の序盤から中盤も全く飽きない。そしてあのラストが待ってるんだから、本当に読んでよかった。
    最後の一文がめちゃくちゃお洒落だなと思う。
    「あげるものはもうなんにもないのだよ、レティシャ。」
    こんなにかっこいい終わり方ある?これがハードボイルドか…。

  • 重厚だ。最終盤の加速に至るまでがとても長かった。

  • ハードボイルド御三家、私的には残すところ最後の一人となったロスマクの<私立探偵リュウ・アーチャー>シリーズ、その最高傑作として名高いのが今作。奥付によると1976年刊行らしいが、古臭さを殆ど感じさせない翻訳。プロットは錯綜していて、中盤の中弛み感も否めないが、チャンドラーで耐性がある私は然程気にならず。それよりも物語の発展と帰着、怒涛のラスト五頁までの牽引力に感嘆させられる。スペードやマーロウのような絶対者ではなく、あくまで等身大の探偵として在り続けるアーチャー。最後の呼びかけが闇夜に冷たく木霊する様だ。

  • 桜庭さん書評集より。おかげで挫折することなくすらすらと読み切りました!

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