幻の女〔新訳版〕 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

  • 早川書房
3.89
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本棚登録 : 706
レビュー : 80
  • Amazon.co.jp ・本 (407ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150705541

作品紹介・あらすじ

けんか別れした妻が殺された。そのとき、夫は街で出会った奇妙な帽子の女と過ごしていた。唯一の証人は彼女だけ……今はどこに?

感想・レビュー・書評

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  • “夜は若く、彼も若かったが、夜の空気は甘いのに、彼の気分は苦かった。”
    さすがの名訳ですね。冒頭からすぐさま物語に引き込まれます。そして、新訳がとても読みやすくてぐいぐい引っ張っていってもらいました。
    一言でいえば、面白い!
    《江戸川乱歩が絶賛した大どんでん返し!》との帯の文句に、うわぁ、江戸川乱歩とおんなじ小説読んじゃったよぉ!と、勝手に親近感。本を読むということは時代や国を超えていろんな人々と繋がることが出来るんだよねと、改めて実感。
    でも、ほんと、この大どんでん返しには唸りました。犯人もだけど、その犯人に対しての最後の追い詰めかたがね、そうきたか!って。ラストまで全力疾走です。息がきれてます 笑
    私の頭の中では、奥さんを殺したと死刑判決を受けた絶体絶命のヘンダースンを助けるために、捨て身の行動を起こす恋人のキャロルが主役となって走り回っていました。健気で勇敢で、最後まで彼のことを信じて行動した彼女があってこその事件解決だったと思うんです。ほんと、もう彼女を大切にしなきゃ罰当たりますよ、ヘンダースンさん!

  • 海外ミステリーの超有名作「幻の女」は絶対に読むべき作品です。
    恥ずかしいながらこの作品は知っていたものの、今まで読んでいなかったことに後悔しています。
    かなり古い作品ではありますが、かなり面白いです!
    この作品の最大の魅力はズバリ謎です!
    殺害容疑をかけられた主人公のアリバイを唯一証明してくれる「幻の女」を探し出す物語となっています。そこから明らかになる真実にあなたは必ず騙されること間違いないです!
    また、サスペンスとしての色もかなり強いと思われます。
    とにかく先が気になって手が止まりませんでした。
    読んだ方には分かると思いますが、作中に出てくるある人物がかっこよすぎです(笑)
    最近新訳版も出ていて凄く読みやすくなっています。
    まだ未読の方はぜひご覧になって下さい!

  • 「夜は若く、彼も若かったが、夜の空気は甘いのに、彼の気分は苦かった。」――という印象的な冒頭から始まる1942年刊行の名作サスペンス改訂版です。
    一夜にして最愛の人を失い、無実の罪を問われた主人公スコット。自分の無実を証明するため昨晩ともに過ごした“かなり個性的な帽子をかぶりこなした”女性を探そうとしますが、スコットの足跡を辿ると不思議なことに例の女性の痕跡が見当たりません。酒場の亭主も、タクシーの運転手も、誰一人彼女を「知らない」と言い、「スコットは一人だった」と証言します。

    読み手も、どこまでが真実でどこまでが虚構なのか混乱することに。
    「幻の女」の行方や関係者の不審死、そしてスコットの死刑執行日へのカウントダウン……謎が謎を呼ぶ焦燥感溢れる展開に一気読みでした。終始古き良き時代のフィルム映画を観ているような描写も印象的です。
    真相部分は賛否分かれそうですが、結末に至るまで読み応え十分だったので満足です。

    ==============
    ・“The night was young, and so was he. But the night was sweet, and he was sour.”

  • 2020.2.21読了

    古典の名作とのことで手に取り、時間をかけて味わった。
    表現に装飾が多くまどろっこしく感じたのは始めだけで、ストーリーの面白さに引き込まれ、どんでん返しが評価されてると知っていたはずなのに驚かされた。
    純粋に楽しめた作品。さすが古典として残り続けているだけあって、古びてない。

    しかし、世の中が便利になればなるほど、こうした味わい深いお話は生まれにくくなるだろうと思う。現在にもし置き換えたなら、人探しなどあちこちに設置されたカメラやSNSによってこれほど苦労することはなさそうに思うし、そもそも情報が多すぎて一人の死刑囚のことを誰もが知ってるという状況にはなりにくい。口止めは容易ではないし、科学捜査の精度は上がっているだろう、建築物の安全対策は法律で厳しく取り決められているし、状況証拠だけで死刑判決とはならないかもしれない。我が国で考えれば、執行日を明確にカウントダウンすることはできないだろう。

    なんてあれこれは野暮な話。お話に身を委ね行き着く先をぼんやりとしか意識せず流されていくことで鮮やかに欺かれる心地の良さは、良質の読書体験そのものと言って良い幸福な時間だ。

  • アガサクリスティー以外の推理小説を久しぶりに読んだ。時代を経ても決して色あせないこのジャンル。後半すぐに犯人がわかったけど、それでもなぜ?と疑問が残ったまま、ラストまで一気読み。タイトルの幻の女を巡って翻弄された主要人物たち。一縷の望みをかけてある行動に挑んだ結果は予想だにしないものだった。

  • 1942年発行、最初の邦訳は1955年という、古典的なミステリの新訳。
    著者は、コーネル・ウールリッチ、ジョージ・ハプリィの別名義も持ち、本作以外に『黒衣の花嫁』、『死者との結婚』などでも知られる。映像化された作品も多い。

    男がいらいらしながら夜の街を足早に行く。不仲の妻を宥めようと外出に誘ったが、こっぴどくはねつけられたのだ。腹立ち紛れに入ったバーで、派手な帽子の女と隣り合わせる。男はふと思い立ち、その日、妻といくはずだったショーに女を誘う。一夜限り。下心はなし。互いの連絡先も名前も聞かない。ただ食事をして、ショーを見て、グラスを傾け、「おやすみなさい」と別れよう。妻への当てつけと憂さ晴らしのつもりだった。女は承諾する。それなりに楽しい時間を過ごし、帰宅してみると、妻は殺されており、彼は容疑者だった。
    彼の無実を証明できるのは、あの女だけ。しかし、その行方は杳として知れなかった。

    出だしがなかなかの名文である。訳者あとがきに原文が引かれている。
    The night was young, and so was he. But the night was sweet, and he was sour.

    新訳ということで、あとがきには歴代の訳を紹介する解説が記載されている。
    まだ宵のうち、これからデートを楽しもうとする街の華やぎの中を、男は苦虫を噛みつぶしたように刺々しく歩く。冒頭で読者を作品世界にぎゅっと引き込む巧みな描写である。
    冒頭に限らず、情景描写、心理描写に気が利いている印象深い箇所が多い。帽子ばかりが目を引くが、容貌は取り立てて取り柄のない女。伝票に記された番号、「13」。エキゾチックでエキセントリックな歌手。

    絶望的な状況に陥った男だが、刑事も男が真犯人なのか疑いを持ち始めていた。
    けれど、このままだと男は死刑に処される。カウントダウンが進む中、男の恋人と友人が捜査に協力する。
    「幻の女」はどこだ。しかし、女に手が届きそうになると、するりと手がかりは逃げ去っていく。このあたりの展開も計算されスリリングで、終盤に向かってサスペンスが増していく。
    手詰まりかと見せておいて、最後に意外な結末が待つ。

    難を言えば、個々の描写は小粋だが、性格描写が今ひとつに感じる。容疑者の男には妻以外の恋人がいる。妻の機嫌を取って、離婚話を進めようとしていたのがその夜の計画だったのだ。ここで、妻が非常に邪悪であるとか、男が妻と結婚してしまうどうしようもない理由があったとか、それなりの「よんどころのない事情」が絡むならばともかく、そういうわけでもない。恋人はただ美しくて優しい女性で、彼はただ真実の愛が妻との間にはないことを悟ったのだ、といわれても、今ひとつ、男やその恋人に肩入れはできない。個人的にはそのあたりが少し「薄い」感じがした。

    ともあれ、全般にはらはらさせられるページターナーとは言えるだろう。
    余韻を残す「幻の女」も印象深い。

  • 最後はばーっと、飛ばし読みしてしまったが、なるほどなるほどな結末でおもしろかった。
    外国の物語は、ちょっと苦手。名前も外国でややこしや。

  • 名作の声高い本作を遂に読む。
    表紙裏の紹介文、妻と喧嘩して街に出て、ある女と劇場に行き、帰ると妻が殺されていた。アリバイはその女だが誰も見ていないという。それで幻か、と興味をそそられる。

    「夜は若く、彼も若かったが、夜の空気は甘いのに、彼の気分は苦かった」(The night was young,and so was he. But the night was weet,and he was sour.)冒頭の文が一番印象に残る。そしてこの一文が事件の内容をすごく表していると思う。この本は新訳なのだがここは旧訳の稲葉明雄氏のままにしたということだ。

    ここずっとクリスティを読んでいて、犯罪をとりまくからまった家族の人間関係に浸っていたので、装飾のある文体に慣れないのと、被害者と加害者の人間が読んでる間は見えてこなかった。

    まあ最後の刑事さんの説明で若い彼の生活は見えたのだが、「幻」になってしまった女のからくり、分かってみるとあっけない。映画とか2時間ドラマならぐいぐい引き付けるだろう。

    1942発表
    2015.12.25発行(新訳版) 2016.3.10第2刷 図書館

  • 変わった作品だった。最初の方でに主人公がナンパして一緒に食事をした女性の顔を思い出せないために殺人犯にさせられてしまう。「いくら初対面でも数時間一緒にいた人間の顔をまったく覚えていないはずがないでしょ!」と、かなり違和感を覚えた。
    しかし、なぜか続きを読みたくなってしまう。「寝る前に10分」と思って気がつくと30分経っていることが3回。さらに、”ある女性がバーのカウンターで開店から閉店までバーテンダーをガン見し続ける””という描写を読んだら、理由なく気持ちが高揚してしまい目がらんらんに。結局一晩眠れなかった。
    とにかく不思議な魅力のある作品だった。でも事件の結末はかなり強引。そんなに人は簡単に死なないし、そんなに都合のいい人間なんて見つからない。なので自分的には4.5点。

  • 夫が図書館で借りたので、ついでに私も読んでみました。
    有名な古典ミステリだそうですが、私は知らなかったー

    妻殺しの容疑で死刑判決を受けた彼を救えるのは、犯行時間のアリバイを証明できる「幻の女」だけ。
    死刑執行日までに名前も知らない彼女を探そうと立ち上がったのが、刑事と親友と愛人。
    手がかりを得ては空振りで終わるじれったさや焦りがドキドキ感を盛り上げ、一気に読むことが出来ました。
    騙された!面白かった!
    (古典ミステリなので、少々偶然が多すぎたり展開が強引だったりで現代ミステリと比べるとリアリティに欠けるんですが、そのあたりにはこだわっちゃダメです(笑))

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